| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

七章
  方針×風呂

「武田に関してはまだまだ情報が足りません。尾張に帰った後、間者を放って領内を探るのがよろしいかと」

俺はそうだなと思った。俺たちで潜入もいいが、今は一葉の方がいいだろうしな。兵を揃えて、上洛しして一葉と合流。所謂錦の御旗を手に入れる。その後、旗を振りながら色んな所と交渉し、鬼退治の協力を要請する。というのが今俺らがやらなきゃいけない事だ。

「で、一葉と合流したとしても協力してもらえるのかね?」

「恐らく無理でしょう。そもそも公方の威光にひれ伏す者が多いのであれば、このような乱世にはなっておりませんよ一真様」

「だよなー。でも無いよりはマシか」

「そういう事だ」

「物事には順序がある。それはよく分かったのですが・・・・あのザビエルがどう動くのか。そこが気になってしまいます。まだ行方さえも掴めていない状況で、悠長に構えてしまって良いのでしょうか?正直焦りますね」

「我も同じだ。だがこの国には、急いては事をし損じる、という言葉もある。物事を一つ一つ片付けていけば、いずれはザビエルとやらに通じる道も出来ようぞ。今は我慢せい」

「・・・・はい!」

「さて、とりあえずその方針で決まったけど、俺達はこれからどうすればいいのかな?」

市が客間を用意しているはずだという久遠だが、正直詩乃は眠そうな顔をしている。元々あまり体力がない詩乃だからか、ここまでよく我慢したなと思う。で、案内された客間に通された俺と久遠。

「ふむ。あまり慣れていないから、さすがに疲れるな」

「馬に乗るのも疲れるもんねー。お風呂、用意してあるから先に入ったら?」

「お、気が利くな。でも一番風呂は久遠の方がいいんじゃないの?」

「我はあとでも構わんぞ」

「そうか。では先に入るか」

「へ?そんなの二人で入ったら良いんじゃないの?」

「はい?」

「いくら恋人でも二人で入った方がいいでしょ!さぁ二人共!荷物を置いたらお風呂に行くよー!」

おいおい、いくら何でも恋人とはいえ、一緒っていうのは良い考えだな。俺は行く気満々だったけど、久遠は人の話を聞け!と言いながら風呂場に押し込まれた。しょうがないから、俺は量子変換機で裸になりボディソープとシャンプーとフェイスタオルを持って風呂に行った。

「ぜ、絶対にこちらを見るなよ!絶対だぞ!」

「それは無理な相談だな」

「阿呆!少しは努力せい!」

「無理無理。俺は女の裸は見慣れていると言ったらどうするよ?」

「~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!」

まあそうなるよな。反応的には。でもまあ俺は俺で一緒に入るのも悪くはないが、それにしても久遠と出会ってから随分と時が経つ。あちらはまだあまり時間は経過してないと思うけど。

「最近は俺の予想を遥かに超えているような気がする」

「鬼の事か」

「まあな、俺のいた世界では伝説になっている。正直、俺が鬼退治をする何て思わなかった。今分かっているのは、鬼をこのままにしてはおけない事かな」

「それは我も同じだ。だからこそ、手を尽くそうと考えているのだが、正直迷っている」

「やり方をかな?」

「うむ。まずは一葉と合流する。その考えは間違っていないとは思うのだが、それが本当に正しい事なのか確信が持てんのだ」

「どちらかが正解では、動く前から分かっていたなら苦労はしないさ」

「我のやり方で本当に人を守る事ができるのか。もしかしたら、より良い考えがあるのではないかと迷っている」

今、俺達は織田家と浅井家、二つの勢力で足利将軍である一葉と合流し、その将軍の威光をもって、各勢力に話を聞く耳を持たせようとしている。エーリカが言うように、鬼の存在を明らかにし、各勢力に助力を求めるというやり方なら権力とかは関係ないだろう。それに俺の存在を知らしめていても変わるかどうか。説得に時間が掛かれば鬼の被害は広がる。一番の問題は、説得が失敗に終わる可能性だってある。

「まあ良くても悪くても、俺は久遠を支持するさ」

「そうか。まあその・・・・嬉しくはあるが」

とまあ、こんな感じで話してたら、市が風呂場に入ってきた。何でも布団の準備が出来たとかで。で、宴が始まるまで休んでいろと。その後、久遠は先に出たが、少し危なかったかもしれない。俺の性欲が、もう少し上がっていれば久遠を襲っていたかもな。煩悩退散と思いながら、シャンプーで頭を洗ってから体を洗った後もう一回入った。風呂から上がって、パジャマに着替えた俺は部屋に行ったら、布団が一つしかなかった。

「いくら恋人とはいえこれはどういえばいいのだ?」

「まあよかろう、恋人であるならいつか夫婦になって一緒に寝る事もあろう」

「まあ、そうだな。じゃあ一緒に寝るか」

といって俺と久遠は一緒に布団に入って寝た。風呂から上がり、仮眠から目覚めると久遠の姿はなかった。どうやら、先に起きたらしい。俺は量子変換機で、普段着に着替えた。今は少し寒いからな、下着はヒートテックのだし。ジーンズも、秋冬用のでヒートテックみたいなもん。上は三枚着てたけど、これでも丁度良いくらいだった。宴の準備が出来たと呼びに来た小姓について行くと、酒宴の準備が整っているという大広場に向かった。その途中には・・・・。

「月を見ている訳ではなさそうだな」

「ええ、知っていますか?月には二つの顔があるというのを」

「ああ、月は聖なるものと讃えられている一方で、月は邪悪なものに力を与えられると忌避されると言われている。今は満月だ、という事は月の魔力に煽られて、悪魔共の力が活性されるからだろう」

「はいその通りです。この国のどこかで、罪無く力無き人々が、悪魔の犠牲になっているのかと思うと」

エーリカはそう思うかのように、月を睨みつける。

「気持ちは分かるが、その悲しみをエーリカ個人で背負う必要はないと思う。人間一人の力は無力に等しい。身近にある物を守るだけで精いっぱいなのかもしれないが、俺みたいな神仏の類が人々の祈りによって降臨したんだとね。その祈り一つずつがちゃんと神や仏は聞いてやっている。それに必要とあれば、俺はこの命を捧げてやるだろうしね」

「・・・・確かにそうですね。一真様みたいに神様だったら願いを叶えるためにやってくれると。それに人一人では強くなくとも数十から数千人が集まれば人は強くなる存在だと。人は得てして、自分自身の事はよく分からないもの。己だけが己の全てではなく、己は他者の心の中を反映し、己でも他者でもないところに形成されるもの。だから一真様の側に集まるのです。さてと、そろそろこの辺りにして宴へと参りましょうか」

俺はああと言って行こうとしたら、ひよが探して来てくれたようだ。何でも近江の名産だというが、鮒寿司はあまり苦手なんだよな。匂いが独特だから。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧