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問題児と最強のデビルハンターが異世界からやってくるそうですよ?

作者:Neverleave
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OP ~オープニング~

 
前書き
問題児たちとDMCのクロスがないので作った。
後悔はしていない。

というかDMCのクロス作品自体が基本的に少ないよなぁ……
というわけで、やっていきましょう。どうぞ 

 
「俺が……負けるのか……」

 俺の目の前で、バージルが跪いていた。
 地獄のような光景が広がる魔界の深淵。俺たちの足元を濁流が流れ、そしてそれは背後にある滝から落ちていく。
 そこで俺と兄は……剣を手にして対峙していた。
 自らの父親の形見である剣。
 父親の魔力。
 母の形見であるアミュレット。
 そして、うり二つのその姿。
 双子として生を受け、母の愛を受け、父の背中を見て過ごしてきた幼少期。
 そして同じときに俺たちは母を亡くし、互いを見失い、荒んだ人生を送ってきた。
 力を手にするまで偽りの名で自らを隠し、人々の生活の中に紛れることで姿を眩ませ、そして戦えるようになってからはその剣を振って迫りくるすべてをなぎ倒してきた。

 なのに。俺たちは袂を別ってしまった。
 俺は人を守るための人の道を選んだ。
 バージルは、更なる力を求める悪魔の道を選んだ。
 双子なのに。家族から同じものを受け継いだはずなのに。
 母から、愛を教えてもらったはずなのに。

「どうした? それで終わりか?」

 俺たちは同じ時に生まれ、同じものをそのとき与えられたはずなんだ。
 それは力なんかじゃない。誇り高い、その魂を。
 思い慕う者のために素晴らしい力を引き出す人間を愛し、そして人のためにかつての同胞と戦う覚悟を決めた、スパーダの魂を。
 俺たちは……どちらも受け継いだはずなんだ!!

「立てよ……あんたの力はそんなもんじゃない!!」

 そうだ。そんなものじゃない。
 あんたの力はそんなもんじゃない。
 人を愛するあんたの……スパーダの息子の力は……こんなものなんかじゃあないはずだ!!
 力のみに執着する、そんな心が生み出すちっぽけなものなんかじゃないんだ!!

 静かで、でも怒りに満ちた俺のその言葉を受けて、バージルは立ち上がる。
 もうボロボロで、とっくに限界なんてものは来ているはずなのにバージルは立ち上がった。
 そのとき、俺たちのいるこの場所が激しく振動して、俺とバージルの足を揺さぶってくる。

「人間界への道が閉ざされようとしている。アミュレットが分かれてしまったせいか――」

 バージルは振動の正体をいち早く察知したようだ。
 魔界と人間界を結ぶその道を作り出すとき、俺たち兄弟が持っていたアミュレットは一つになった。
 それが分かれたことで本来発揮する力は再び封印され、道が閉じようとしているのだ。

「終わりにしよう、バージル。俺はあんたを止めなくちゃいけない――」

 もう時間はなかった。
 ここで、兄と弟が会話することのできる時間は……もう残っていなかった。
 バージルが、自分の間違いを認めてくれなければ……もう……

「――あんたを殺すことになるとしても――」

 最後の俺の言葉を聞いても、バージルは止まらない。
 その手に握るのは、俺たち兄弟の父親が振るった最強の魔剣。
 それを構え、俺を見据えるとバージルはそのまま俺めがけて走り出した。
 俺も、もう迷うことは許されなかった。これまでずっと共に戦ってきた親父の形見魔剣・リベリオンを手に……俺もバージルめがけて走り出す。
 雄叫びをあげ、互いがすれ違うそのときに俺たちは剣を振る。

「らァァァァァァああああああああああああああああ!!」
「ハァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 ザンッ!! と。
 剣が肉を斬り裂く音が、濁流の音に紛れて響く。

 決着が、そこでついた。

「あ……ぐぁ……あぁ……」

 俺の剣が血を分けた兄を斬り裂き、そしてバージルは魔剣とアミュレットを落とす。
 だがすぐにアミュレットを拾うと、そのままバージルは滝の方へと後ずさっていく。

「……これは誰にも渡さない」

 バージルは、アミュレットを片手に俺を見据えると、そう言った。
 そこには力に固執する冷徹な悪魔ではない……家族を思いやる、一人の兄の姿が、あった。

「これは俺のものだ……スパーダの真の後継者が持つべきもの――」

 やがてバージルが、あと一歩でその滝から落ちるというところにまでに至ったとき、俺はヤツの元へと駆け寄った。
 だが、バージルは刀を抜いて俺を制止する。

「お前は行け。魔界に飲み込まれたくはあるまい……俺はここでいい……親父の故郷の、この場所が……」

 そうして、バージルは俺の目の前で、自ら滝へと落ちていった。
 手を伸ばす俺。でもそれはバージルに届かなかった。
 あいつは俺の手を拒絶した。刀を振るい、俺の手を斬った。
 ただ俺は……バージルが……ただ一人の家族が、闇に落ちいていくのを見ていることしかできなかった……

 ……俺は、バージルを救えなかった。
 あいつが、悪魔としての生き方を選ぼうとしているのを止めることができなかった。
 差し出した手を斬られても、それでも落ちようとするあいつを止めることは、俺にもできたはずだったのに。
 俺の手をあいつが拒んだことが、どうしようもなく俺の心を揺さぶって。
 俺は……もうそれ以上、何もすることができなかった。


*****


「……ったく、またかよ」

 ダンテは事務所のソファの上で目を覚ますと、苛立たしげに舌打ちして起き上がった。
 あんなことがあって、もう五か月も経つというのに。
 未だに過ぎたことを引きずってばかりなのかと思うと、我ながら女々しいものだと自嘲せずにはいられない。
 不機嫌さ丸出しの大股歩きで、そこらへんに倒れている椅子のところにまで行くとその椅子を蹴り飛ばす。
 椅子は空中で何度も回転し、やがて着地すると机の前に正しく配置された。
 ダンテは机の上に足を置いてだらしなく座り込み、電話をチラリと見やる。
 それから数十秒ほどジィッと見続けていたが、一向にその電話が鳴る気配はなかった。

「……今日も仕事はなし、かねぇ」

 こういうときこそ好き勝手に暴れまわりたいというのに、今日は悪魔も休業日と洒落込んでいるらしい。
 合言葉つきの仕事の依頼がここでやってきてくるような気配はなさそうだった。
 やり場のないこの苛立ちをいったいどこへ向ければいいのかもわからず、ダンテはただ自分の事務所――デビルメイクライの天井を茫然と眺め続けた。
 こういう暇なときのためにビリヤード台なんかも一応用意してはあるが、今はそんなものをやりたい気分ではない。やってもいいが、たぶん怒り任せにショットをぶち込んですべての球が崩壊する事態となりそうだ。
 というかまず、なんで一人でそんなことをやらなければならないというのか。

「How boring……Don’t you think so, Rebelion?(退屈だ……そう思わねぇか、リベリオン?)」

 ため息交じりに、ダンテは壁にかけてある自分の愛剣・リベリオンを見て話しかけた。
 まるで何かの鉱石から大きく抉り取ったかのように分厚いその剣は、電球の灯りに照らされて鈍く輝きを放つ。
 もちろんリベリオン自体に意思は存在せず、返事など返ってくるはずもない。
 ますますダンテはやりきれない気持ちになった。
 どうもこういうのはいけない。刺激があるからこそ人生は楽しい。これこそが彼のセオリーだ。
 だがここ最近は刺激というものからほど遠く、彼にとっては味気がなさすぎて困る。ストロベリーサンデーとデリバリーのピザでもなければ、もはややってられるものではない。
 加えて、先ほど見たあの夢。
 こんな気持ちで、これから何もしないままここで座っているなど、彼にとっては地獄にも等しかった。

「……飯にしようにも、いよいよツケ払いももうダメだと言ってきたもんだからな……いよいよすることがねぇ……」

 落胆し、重いため息を吐くダンテ。
 これからいったいどうしたものかと、そんなことを考えていたそのときだった。

「はぁ……ん?」

 机の上に……というより、彼の足の上に奇妙な紙が封筒が一つ、置いてあったのである。
 しかしダンテはこんなものが自分の足に置かれたことなどまるで察知できなかった。
 誰が置いた?
 いったいこれはなんなのか?

「……」

 ふいに、ダンテは自分の口元を横に広げる。
 いったいどこの誰が置いたのかわからないが、興味がわいてきた。
 暇つぶし程度にはなるのかもしれない。
 そう思いながら、彼はその封筒を手に取って、乱雑に開け始めた。
 少しばかりの期待で胸を躍らせながら読み始めたその手紙には、こう書かれていた。

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
 その才能《ギフト》を試すことを望むのならば、
 己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、
 我らの箱庭に来られたし』

「……?」

 書かれていた内容はそれだけだった。
 差出人の名前も何もありはしない。ただ、箱庭などというところに来いという指示だけがそこには書かれていた。
 いったいどういうことなのか、文面に書かれた内容に首をひねるダンテだったが、すぐにそれは解消されることとなった。
 少々、乱暴な手段を取られることによって。

 次の瞬間、彼の視界は事務所の中から一転して、上空4000mの広大な青空へと変わる。

「……あ?」
「わっ」
「きゃっ!」
「ど……どこだここ!?」

 もちろんそこに足場などあるはずもなく、ダンテは重力に引っ張られるままに地面へと落下していくこととなる。
 ダンテの他にも数人ほど同じく空から落ちている人がいるらしく、それぞれが悲鳴、もしくは誰にともなく問いかける疑問の声をあげた。
 そしてそこは……事務所はおろか、ダンテの知る場所とは完全な別世界であった。
 視線の彼方には、世界の果てを彷彿とさせる断崖絶壁。
 下には巨大な天幕に覆われた、未知の都市。

「おいおいおいおい……マジかこりゃ!」

 ダンテは今度こそ、堪え切れなくなって笑い出す。
 暇つぶしだなんてとんでもない。こいつは本気で面白いことになってきた。
 きっとこれから、想像を絶するような楽しいことが待ち受けているに違いない。
 確信に近いそんな予感を感じて、ダンテは声高に叫んだ。

「It looks like this is going to be one hell of a party!!(楽しいパーティになりそうだな!!)」

 子供のように無邪気な、それでいて凶暴な笑みを浮かべてダンテは新世界へと乗り出した。 
 

 
後書き
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