問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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乙 ⑥
「ど・・・どういうことですか?黒ウサギが・・・トップバッターって・・・!?」
「もちろん、戦ってもらうんや・・・そこの五人の誰かとな!!」
「ちょ・・・ちょっと待ってください!黒ウサギは、ノーネームの一員なのですよ!?」
「そうは言うてもなあ・・・今日に限りうちでバイトする、そう契約したはずどえ?」
黒ウサギは何も反論できず、五人に助けを求めるが・・・
「うむ、良いのではないか?面白そうだし。」
「面白そうだな。」
「面白そうだね。」
「面白そうね。」
「面白そう。」
「お気楽クインテットは黙っててくださいッ!!」
全員、ほのぼのーとした雰囲気で流した。
まあ、大した問題ではないのだろう。
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「多分この辺りに・・・あ、ありました音央ちゃん!」
「本当ね。一輝たちもあの辺りにいるかしら・・・」
鳴央を抱えて飛んでいた音央は、サーカスのテントを見つけてそこに降り、鳴央を降ろした。
「へえ、これがサーカステント・・・思った以上に大きいわね。」
「そんなことより、早く一輝さんたちに合流して黒ウサギさんを探しませんと!」
「あ、貴女達ノーネームの・・・・!!」
急に空からやってきた二人のメイドに、テントのそばにいたフェルナは驚きの声を上げた。
「どうしてここに・・・?」
「ちょうどいいところにいたわ、フェルナちゃん。」
「こんばんは、フェルナちゃん。私達、黒ウサギさんを探しに来たんです。」
「一輝から行方不明になったってメールは貰ったんだけど、さすがに遅すぎるもの。Dフォンも通じないし。今どんな状況か、教えてくれない?」
二人が問いかけると、フェルナは一瞬答えづらそうにするが、
「それが・・・サーカス団が実は魔王の一味だったらしくて・・・黒ウサギさんも取り込まれてしまったとか・・・」
「それは・・・一輝さんたちは、どちらに?」
「一輝さんたちは・・・」
フェルナは先ほど以上に顔に影が差したが、
「今は町外れの宿で休んでる。」
なんでもない顔で、嘘を伝えた。
「とりあえず、明日対策を練ろうって」
「「嘘ね。」ですね。」
が、二人に一瞬で切り捨てられる。
「え・・・いや、嘘なんて、」
「あの一輝が、友達が行方不明なのに『明日考える』なんて呑気なことをするはずがないわ。」
「一輝さんなら、見つかるまで休まずに探し続けるはずです。まあ、それはやめて欲しいんですけど・・・」
実際、二人の予想通り一輝は黒ウサギが行方不明になってから一睡もせず、食事もそこそこに捜索を続けていた。
「それに・・・もしそうだとして、あなたはこんなところで何をしているのですか?そんなに、このテントが気になるのですか?」
「そ、それは・・・」
「まあ、そんなことはないんでしょうけど。単に、ここから邪魔者を遠ざけるためにいる。ってことは、このテントの中で何か起こっている・・・」
音央はそう言いながらテントに手を当て、
「茨の檻!」
茨を放ち、テントを引き裂くが、テントは勝手に治っていく。
「え・・・元に戻った?」
「・・・あ、当たり前でしょ・・・内側からも外側からも、簡単に破れるわけないじゃん。」
「貴女・・・」
明らかに口調が変わったフェルナを、二人は警戒するように見る。
「“ペルセウス”や“グリムグリモワール・ハーメルン”に打ち勝ち、“ルインコーラー”が設置したゲームをクリアした奴等・・・。そいつらが仲間になれば楽しいだろうなぁと思ってたんだ・・・私達、トリックスターの仲間にね・・・そして・・・」
そして、次に顔を上げたときには、二人の知るフェルナの表情は、そこにはなかった。
「もっともっと・・・この箱庭を盛り上げるのよ!!!」
「フェルナちゃん・・・まさか、最初から・・・!!」
「待って、鳴央。さすがに様子がおかしすぎるわ・・・」
フェルナの肩に手を置こうとした鳴央の手を、音央がつかんだ。
「盛り上げる。盛り上げるの。それが私達の役目なんだ。たとえどんな手段を使ってでも!!!」
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さて、再びテントの中。
ここではもう既に三試合が終わっていた。
これまでの二試合の内容は・・・
一試合目、十六夜vs黒ウサギ。両者が思いっきりぶつかった結果、二人揃ってリングアウトし、引き分け。
印象的な一言。「ごめんなさい、黒ウサギが有能なばっかりに。容姿端麗鉄心石腸完全無欠なばっかりにぃぃー。」
二試合目、飛鳥vs猫娘。最初は劣勢だったが、ディーンを召喚し、客席を引っぺがし、投げつけることで飛鳥の勝利。
印象的な一言。「クソッタレが」「ぶん投げろ!!!!」
三試合目。耀vsブレーメンの音楽隊。小さな動物相手に手を出せなかったが、相手がロボットだと知るや否や遠慮なく攻撃した耀の勝利。
印象的な一言。「決して友達が少ないわけじゃ、ないし!!」
そして、これから四試合目が始まろうとしている。
「・・・さて、とうとう残すところあと一勝。戦況は確実にこちらが有利でございます!!」
調子に乗った黒ウサギは、団長相手に威張っている。
「見たところそちらのコミュニティでまともに戦えそうなのは団長さん一人!対してこちらにはまだ二人のプレイヤーがいます!つまり、どう転んでも圧勝必至!!これも我が新生ノーネームの圧倒的パワーと、黒ウサギの優秀さを以ってすれば当然の結果なのですよーーっ!!!」
「・・・・・・」
そして、対する団長は「ふっ」と鼻で笑い、
「せやな。」
「すみません・・・今回たいして何も出来てないのに調子乗っちゃってスイマセン・・・」
ほんの三文字で、黒ウサギを返り討ちに合わせた。
「にしても、妙だな・・・向こうが追い込まれてるはずなのに、なんだか余裕そうだし・・・」
「確かに、何か裏があるのかもしれませんね。でも!!」
早くも復活した黒ウサギは、十六夜を手で示し、
「ノーネーム最強問題児の十六夜さんがひとたび暴れれば、」
「いや、俺もうお前と戦っちゃってるし、参加できないぞ?」
「え?」
「はい、黒ウサギ。契約書類。」
黒ウサギは契約書類を読んで、十六夜にはもう参加資格がないことを知る。
「うむ、そう言うわけだから今度こそ私が、」
「んじゃ、次は俺が行ってくる。」
「「「行ってらっしゃい。」」」
勢いづこうとした白夜叉を無視して、一輝がステージに上がる。
「じゃあ、お相手願いましょうか、団長さん?」
一輝はそう言いながら水を漂わせ、戦闘準備を整える。
「へえ・・・じゃあ、ゆっくり調教してあげようやないの、坊や。」
「悪いけど、そっちの趣味はねえよ!」
団長が鞭を放つのに対し、一輝は水と日本刀で応戦する。
ここで量産型妖刀を抜かないのは、十六夜から言われたことを確認するためだ。
「なんや、防いでばっかりで張り合いありませんなあ。これなら白夜叉はんがきたほうが面白みがあったんとちゃいます?」
「それは、期待を裏切って悪かったな。」
「・・・ふん。まあ何しろ」
挑発に乗ってこない一輝に少しつまらなさそうにしながら、団長は続ける。
「坊やは絶対、私に勝てまへんけどな。」
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