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寂しきロックンローラー

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第五章

 レコード会社の方から言われてもだった。
「今はいいさ」
「あんただけのレコーディングはか」
「ああ、そんなの何にもならないからな」
 だからだというのだ。
「ビッグバードは二人だからな」
「言うねえ、けれどギャラもだろ」
「ああ、半分さ」
 今はそれもそうなっているというのだ。
「二人の時と比べてもな」
「それでもいいのかよ」
「当たり前だろ、元々そうだったしな」
「半分かよ」
「俺が半分、あいつが半分でな」
 ギャラもそう分け合っていたのだ、そこに区別はなかった。
「そうしてきたからな」
「今半分でも問題ないか」
「それ以上はいらないぜ」
「ビックバードの出演でもかよ」
「ああ、受け取らないからな」
 それ以上余分にギャラが出てもだというのだ。
「そうさせてもらうからな」
「徹底してるな」
「徹底してるんじゃないさ、ポリシーなんだよ」
「あんたのポリシーかい」
「そうさ、だからな」
 それでだというのだ。
「俺はこれでいいよ」
「そうか」
「あいつが戻って来るまでな」
「コンサートも断ってるんだよな」
「そうしてるよ、そうした仕事はな」
 全部だ、ラビルが戻ってからだというのだ。
「そういうことでな」
「欲がないね、いや」
 レコード会社の者はドワンゴの言葉を聞いて笑になった、それでこう言ったのである。
「いいポリシーだね」
「ロックンローラーはポリシーだからな」
「自分の主義から外れたらいけないんだよな」
「若し外れたらそれでロックンローラーでなくなるんだよ」
 間違ってもそれをしてはならないというのだ。
「あと女殴ったりストーカーをするのもロックンローラーじゃないからな」
「それは只の犯罪者だろ」
「犯罪者でなくても人間のクズだな」
 そういうことをする奴はというのだ。
「俺はそういうこともしないからな」
「当然だな、そのことは」
「まあな、とにかくな」
「ああ、あんたはこれからもだよな」
「俺のロックを貫いていく」
 そうしていくというのだ。
「あいつと一緒にな」
「じゃあ新曲もアルバムもな」
「あいつが戻ってからにしてくれよ」
「そういうことでな」
 レコード会社とも話をしてだった、彼は一人での仕事を続けていった。昼はそうした態度で肩で風を切っていた、だが。
 夜になるとだ、いつもだった。
 彼は行きつけのバーで飲んでいた、そのバーは暗くロックな感じに満ちていた。店の中には様々な人間がいて楽しく騒いでいる。カウンターの半分指定席となっている席に座って飲む。
 そこでバーボンをあおっているとだ、ソーサーが来て声をかけてきた。
「ちょっと飲み過ぎじゃないかしら」
「おいおい、プライベートにまで言って来るのかよ」
 ドワンゴは自分の左手に座って来た彼女に顔を向けて笑って返した。
「それはマネージャーの仕事じゃないのかよ」
「友達としての忠告よ」 
 ソーサーはくすりと笑って返した。 
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