寂しきロックンローラー
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第二章
「半分だな」
「そうなるわね」
「片翼で飛ぶか」
「仕方ないから、今はね」
「わかったよ、じゃあな」
「明日はオフだったわね」
「入院してる病院わかるよな」
「ええ、今から言うわね」
ソーサーはすぐにドワンゴにその病院の名前を聞いた、ドワンゴもその名前を聞いて納得してこう言った。
「わかった、じゃあな」
「明日行くのね」
「文句言ってやるよ」
ドワンゴはここでも苦い顔と声だった、そのうえでの言葉だった。
「あんたも来るかい?」
「当たり前でしょ、私は貴方達のマネージャーよ」
それでだと返す彼女だった、そうして。
その次の日彼はラビルが入院している病院に向かった、病院の入口に背の高いブロンドをショートにさせた青い目の女がいた、背は高く姿勢がいい。肌はドワンゴの色のそれと似ている。そのモデルと見間違うばかりのスタイルを黒のスーツとズボンで覆っている。右手には白いバッグがある。
その彼女にだ、ラビルは長い睫毛の黒い目を向けて右手を挙げて言った。
「よお」
「おはよう」
「いや、もう十時だろ」
おはようという時間ではないというのだ。
「ちょっとな」
「いつもその辺り五月蝿いわね」
「時間には厳しいんだよ」
「日本人みたいに?」
「ああ、お握りは大好きだよ」
ソーサーに笑ってジョークを飛ばす。
「後寿司もな」
「じゃあ彼が戻ってきたら復帰祝いは寿司バーね」
「そこにしようか、まあとにかくな」
「ええ、彼のところに行くわよ」
「だからバイクは止めとけって言ったんだよ」
ドワンゴは普段は明るい顔を苦くさせて言った。
「メキシカンはバイクに乗るとはしゃぐからな」
「貴方もメキシコ系じゃないから」
「だからわからんだよ、というかあんたもだろ」
「私はキューバ系だから」
少し違うというのだ。
「同じヒスパニックでもね」
「違うよな、確かに」
「そうよ、キューバでバイクはね」
キューバは狭い島国だ、だからなのだ。
「泳ぐのなら得意よ」
「じゃあ水着姿見せてくれるか?」
「あら、口説いてるのかしら」
「マネージャーを口説いたら駄目だろ」
「それは最低限のモラルね」
「ああ、ビジネスだからな」
こうしたやり取りから病院に入った、そのうえで白い病院の中を進みエレベーターを昇った。そうしてラビルの入院している部屋に行き。
ベッドの中のラビルを見た、見れば表情は明るい。だが。
その足は頑丈なギプスで覆われ吊り上げられている。ドレッドヘアに濃い髭ではっきりとした目鼻立ちである。ドレッドではなくベレー帽ならばチェ=ゲバラにも見える。
その彼がだ、ドワンゴとソーサーの顔を見て言って来た。
「見舞いか?チョコレートケーキかい?」
「チーズケーキよ」
「おいおい、わかってねえな」
ラビルはソーサーの言葉に笑って返した。
「見舞いはやっぱりチョコレートケーキだろ」
「そんな決まりあったの?」
「俺が決めたんだよ」
「全く、入院しても相変わらずね」
「変わるかよ、とにかくな」
「ええ、大怪我ね」
「ったくよ、ドジ踏んだぜ」
ラビルは天井を見上げた。そのうえで病室のこれまた白い天井を見上げてそのうえで言うのだった。
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