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寂しきロックンローラー

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第一章

            寂しきロックンローラー
 カルロス=ドワンゴは自分の携帯からこれ以上はないまでに嫌なニュースを聞いた、それで電話をしてきたマネージャーのクリス=ソーサーにこう尋ね返した。
「嘘だろ」
「嘘でこんなこと言うかしら」
「いや、あんたはそんな奴じゃない」
 ドワンゴはすぐにそれはないと返した、ラテン系にアフリカ系の色が入ったその顔で。
「嘘は言わないからな」
「じゃあわかるわね」
「あいつ死んでねえよな」
「無事よ、けれどね」
「それでもかよ」
「脚をやられたわ」
 そこをだというのだ。
「全治半年よ」
「おい、長いな」
「アキレス腱を切ったのよ」
 それでだ、それだけの治療期間が必要だというのだ。
「だからね」
「ったくよ、じゃあ半年の間はか」
「貴方一人でやってね」
「俺達ビッグバードは二人で一人なんだけれどな」
 彼その怪我をしたパートナーであるフランシスコ=ラビルとでだ。二人共よく認識していることだ、何故なら。
 二人はメキシコ系だ、親がそれぞれカルフォルニアまで移住してきてロスのヒスパニック達が集まっている区画で同じ小学校だった、ジュニアハイスクールで二人でユニットを組んでハイスクール卒業と共に今の事務所に自分達を売り込みデビューをした。
 それから二人でバイトをしながらやって来て最近やっと音楽で食える様になってきた、だがその矢先だったのだ。
 そのラビルがだ、バイクで事故ってだったのだ。
「それがかよ」
「他に怪我をしたところはないわ」
「頭とか手は無事なんだな」
「ええ、足だけよ」
 そのアキレス腱だけだというのだ、怪我は。
「ギターを持つ手もね」
「大丈夫なんだな」
「綺麗なものよ」
「じゃあアキレス腱がよくなったらか」
「すぐに復帰出来るわ」
「そうか、けれどな」
「半年の間はね」
 そのラビルが復帰するまでの間はというのだ。
「ドワンゴ、貴方だけでね」
「何でもやっていかないと駄目なんだな」
「テレビやラジオの出演もコンサートもね」
 そうした仕事を全てだというのだ。
「貴方だけよ」
「新曲のレコーディングとかはどうなるんだよ」
「延期よ」
 二人でないとならない仕事はというのだ。
「貴方一人の収録は嫌でしょ」
「ビッグバードは二人だろ」
 だからだとだ、ドワンゴは携帯の向こうのソーサーに返した。
「だからな」
「そうよね、私もそのことはわかってるから」
「延期だな」
「彼が戻ってからよ」
 それはというのだ。
「わかったわね」
「ああ、それじゃあな」
「暫くお願いね」
 一人でというのだ。
「翼は一つしかないけれどね」
「片翼のビッグバードかよ」
 何故ビッグバードというユニット名かというと二人、両翼で羽ばたくでかい鳥だからだ。二人で話してユニット名を決めたのだ。
 しかし今は片翼だ、それでドワンゴは苦い顔と声で言うのだ。 
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