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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第45話 バカンス(前編)

「わぁ~!!綺麗~!!」

見渡す限り見えるマリンブルーの海を見て、ヴィヴィオが叫んだ。

「本当だ………沖縄よりも綺麗かも………」

そんなヴィヴィオの様子を見ながらなのはが感動しながら呟いた。

「沖縄?あの幽霊事件のあの海か?」
「あそこじゃないですよ。沖縄は日本の最南端にある県で海がとても綺麗なんですけど、ここはそこよりも綺麗です………」
「ほう………ってヴィヴィオ!!お前、そのまま海に入るなよ!!」
「分かってるよ~!!!」

バルトの注意にそう返事を返し、波打ち際で波を追ったり、追いかけたりするヴィヴィオ。

「全く、何が楽しいんだか………」
「初めて泳ぐ海に興奮してるんですよ。でも流石ヴィヴィオちゃんだな………私が初めて海に行ったときは遠くの大きな波が怖くて中々近づけなかったんですけど………」
「………小さい頃の話を聞くとどうしてこう育ってしまったのかつくづく不思議だな………」
「どういう事でしょうか…………?」
「………おいヴィヴィオ!!いい加減帰ってこい!!遊ぶのは着替えてからだ!!」
「は~い!!!」
「あっ、バルトさん!!逃げないでください!!!」


「………何やあの空間?」
「幸せそうだね………羨ましいな………」

そんな3人の様子を遠くから見ていたはやてとフェイト。

「完全に他のメンバーは蚊帳の外やな………昨日言った話聞いてたんかな………?」
「本当にするの………?」
「当たり前や。せやから上からもOKが出たんや。別に普通に遊んでればいいんやから気にしなきゃ良いんや」
「でも………」














昨日………

「ええ!?撮影が入る!?」
「そうや。流石に何も無しにバカンスなんて出来る訳ないやないか」

とうとうバカンスとなった前日。ロングアーチ含めて参加を希望していたメンバーを集めたはやて。
そして第一に放った言葉は、雑誌の特集で機動六課のメンバーの写真を雑誌の表紙にすると言った内容だった。

「でも何で私達もなんです?私達は別に表に出てないロングアーチですし………」

皆が動揺している中、アルトが手を上げて質問した。

「いや、さっきも言ったやないか。これは機動六課のメンバーの写真やって。ただ単になのはちゃんやフェイトちゃんだけやなしに、他の女性局員達も撮るって事や」

そんなはやての発言に皆が困ったようにざわざわと騒ぎ始めた。

「せやから前々から言ってたやろ?スターズ、ライトニング以外は自由参加やって。それにここは女性局員が多いんやからもしかしたら写らんかもしれへんで?」

それでもやはりあまり乗り気じゃないロングアーチの局員。因みに男性局員は特に反応は無い。

「まあ明日現地で点呼とるから嫌な人はゆっくり休んでな。それじゃあ解散!!」



















「ううっ~まさか誰も来ないなんて………」

そう言って涙目で唸るアルト。

「ありがとうアルト………あなたが来なければロングアーチで女性は私だけになるところだったわ………」

結果的に女性のロングアーチで参加する事になったのはアルトとルキノだけとなった。
理由はそれぞれ色々とあるのだが、1番の理由がなのはやフェイト達と比べられたくないといった理由が多かった。


「あの2人にシグナムさんやシャマルさん………はやて隊長だってスタイル良いし………こんな事になるんだったらしっかりダイエットしておけば良かった………」
「今更言っても仕方がないわ。もうなるようになれよ」
「そうだね………はぁ………」

そう言って大きくため息を吐くアルト。

「………何であんなにブルーになってるんだ?」
「さあ?」

そんな事は知らずグリフィスとヴァイスは2人の様子を見て首をかしげていた。

「………」
「ティ~ア!!」
「きゃ!?」

後ろから声を掛けられ驚いて後ろを見るティアナ。

「スバル!!何するのよ、びっくりするじゃない!!」
「えっ?でもいつものティアナだったら脅かす前に気が付くじゃん。………もしかしてヴァイスさんに夢中で気が付かなかった?」
「ば、バカ言わないでよ!!別に夢中になんか………」
「今日の為に水着も買ったもんね………」
「な、何でそれを!!」
「私もギン姉と一緒に買いに行ってたんだ。あまりにも真剣に選んでたから声をかけちゃ悪いと思って………」
「べ、べ、別に今日のためじゃないわよ!!水着は………そう!!サイズが小さい奴しかなかったから新しいのを買っただけ、そう!買っただけよ!!」
「本当に………?」
「本当よ!!」

顔を真っ赤にしながらそう叫ぶティアナ。

「何が本当だって?」
「えっ?」

その声に釣られてヴァイスとグリフィスがティアナ達の元へとやって来ていた。

「ん?何だティアナ、顔赤いな………熱でもあるのか?」

そう言ってヴァイスがティアナの額に手を当てた。

「だ、だ、だ、大丈夫よ!!全然平気!!」

しかし直ぐにその手を振り払い、距離を取った。

「そうか?今日も暑くなるみたいだから熱中症には気を付けろよ?」
「わ、分かってるわよ………」
「本当か?お前は無茶するから信用できないからな………」
「大丈夫です!!」
「そうか。まあ今日は楽しもうぜ。グリフィス、エローシュ達の所にでも行くか」
「分かった」

そう言って2人はエローシュ達の元へと向かった。

「………」
「んふふ………」
「な、何よ………」
「いやぁ………ティアが乙女の顔してるから可愛くて………」
「スバル!!」


「青春してるわね………」

そんな2人の様子を見て呟く加奈。

「大悟さんは今日は?」
「見に来るとは言ってたけど流石に泳ぐのはね………」
「そんなに治りが遅いんですか?」
「普通に生活する分には問題無いわ。ただ力を入れたり、水に入れたりすると痛むみたいね。特に海水は拷問みないたものよ」
「そうですか………」

残念そう呟くギンガ。

「何?ギンガもしかして桐谷から大悟狙いに変更?」
「ちっ、違います!!」
「もはや桐谷狙いなのは隠す気は無いのね」
「あっ………」

失言で顔を真っ赤にするギンガを加奈はニヤニヤしながら見ていた。

「いいわね………これぞ夏が来たって感じ!」
「加奈、おばさんっぽいよ」
「えっ!?」

後ろからいきなり声を掛けられ、振り向くとそこに大悟がいた。

「だ、大悟さん!?もしかして話聞いてました………?」
「話?加奈のおばさん発言の事?」
「誰がおばさんですって………?」
「加奈、いふぁいいふぁい………」

頬を思いっきり引っ張られ、涙目で訴える大悟。

「大体来たら連絡しなさいって言ったわよね?」
「着いてすぐに加奈の姿が見えたんだから連絡するよりも早いと思ったんだよ………」
「だったらわざわざ近くに忍び寄って声をかける必要ないじゃない」
「いや、ちょっとしたいたずら心で………痛い、痛いって加奈〜!!」

再び頬を引っ張られ、痛がる大悟。

「本当に仲が良いんですね」
「でもこいつ最近モテモテだからいつ浮気しないか分からないんだけどね」
「浮気なんてしないって………」

赤く腫れた頬をさすりながらそう訴える大悟。

「でも入院中もナースさんとハーレムな楽しい入院生活を送っていたじゃない!!」
「そんなの俺は頼んでないって!」
「だけどかなり近い距離でお世話してもらってたじゃない。エミリーさん、巨乳ですもんね〜」
「あれだっていいですって言ってるのにやってきたんだ。決して邪な思いはなかった!」
「そうかしらね?私からは谷間を覗き込んでいたような気がしたけど?」
「違うって!!」

「あの………」

ギャーギャー痴話喧嘩を始める2人。そんな中ギンガは1人蚊帳の外だった…………









「うわぁ………」
「綺麗………」
「素晴らしい………」

3人を含め俺も海を一望して固まってしまった。
海を一望出来る崖の上から見る海の景色は、修学旅行の行った沖縄の海よりも綺麗でまさに宝石のように輝いている。


「確かに綺麗だけど、でかいだけのしょっぱい水たまりの何がいいのかしら………?」
「「「「………」」」」

そんな俺達の感動を一瞬でぶっ壊した奴がいた。

「クアットロ、お前は寂しい奴だな………」
「余計なお世話よ!ほら説明するからこれを取りなさい」

そう言われクアットロが持っている箱に入っていた手のひらサイズの四角いパーツを受け取った。

「これが?」
「ドクターが開発したダイバージャケット。それを展開したバリアジャケットの腰に付けて」

クアットロの指示通り、パーツを腰につける。するとパーツからシャボン玉の中に入ったかのように広がっていき。その後萎み、全身シャボン玉のアーマーを着ているような恰好になった。

「名前変えたんだな」
「まあちょっとアーマーという程厚くならなかったから変更したわ」
「うわぁ〜!凄い!!」
「我らと同じように動くのだな」

夜美が空手家のように拳を前に突き出すとそれと同じ様にアーマーも動く。

「当たり前よ。それは泡じゃなくてれっきとした魔力で作ったジャケットなのよ。大雑把に言えばバリアジャケットを二重に着ていると思ってくれればいいわ」
「二重の層にしているって訳ですね」
「それと空気循環はダイバージャケットが自動でやるわ」
「了解です」
「それじゃあ私は日陰でのんびりデータを確認してるから。何かあったらその通信機で連絡しなさい」

そう言って説明を終えたクアットロはさっさと日陰へと向かって行った。

「暑いのが嫌なのだな」
「潮風が気持ち良いのに………」
「まあいいじゃないですか。さあ、ダイビングに行きましょう」
「そうだな。それじゃあ………行くぞ!!」

俺の掛け声とともに、俺達は同時に崖から飛び降りた………






















「ど、どうエリオ?」
「う、うん似合ってるよルー」

互いに照れ合いながらそう答えるエリオとルー。

「良い雰囲気………」
「頑張れルーちゃん!」

そんな2人を岩陰で隠れながら見つめる2人の少女が居た。

キャロと真白である。

「そう言えばエローシュ君は?」
「一緒に写真撮るってカメラ持ってカメラマンの人達と一緒になって写真撮ってる」
「あれ?でもシグナム副隊長とか真っ先に止めると思うんだけど………」

「そう言えばさっきエローシュ、フェイトさんとシグナムさんに抑えつけられて顔だけ出る様な形で埋められてたけど………」

エリオの言葉にその光景を想像して苦笑いするキャロと真白。


「まあいつも通りだね」
「そうだね」

そんな会話をしながらライトニングも楽しく遊び始めたのだった………












「なのはお姉ちゃん~!!見て~ヒトデさ~ん!!」
「きゃー!!ヴィヴィオちゃん、私にくっつけないで!!」

波打ち際でヒトデを持ったヴィヴィオがなのはを追いかけていた。

「全く………ヴィヴィオの奴はお淑やかさのかけらもねえな………」

ビーチパラソルの日陰で寝そべりながら2人の様子を見ていたバルトはそうぼやいた。

「そりゃあ父親がこんなんやからな」

そんなバルトに声を掛ける人物が1人。

「何の用だ?はやて」
「別に特に用はあらへんよ。ただ2人と遊ばない怠け者の父親の顔を見ておこうと思っただけや」

そんな皮肉染みた言葉を流し、はやてを黙って見るバルト。
はやてはアロハ柄の水着の上にパーカーを着ていた。ただし暑いためファスナーは止めていなかったので羽織った様な形である。

「な、なんやジロジロと………」
「お前着痩せするタイプだったんだな………脱いでみると中々スタイルいいじゃねえか………」
「ありがとさん。せやけどそこまで凝視されると流石に照れるわ………」

そう言いながらバルトの隣に座るはやて。

「飲むか?」
「ありがと。………ぷはぁ~生き返った………」

ペットボトルのスポーツドリンクを飲み一息つくはやて。

「撮影は順調か?」
「もう十分撮ったと思うで。だけどなのはちゃんの写真が少ないって撮影してた人がぼやいてたで?」
「そうか?何でだろうな?」

そんななのはとヴィヴィオを見ながら答えたバルトをはやてはニヤつきながた再び口を開いた。

「誰かさんが怖い顔でカメラマンさん達を睨んでたからやと思うんだけど?」
「ほぅ………で、それが誰だと思ってるんだはやては?」
「ふふふ………さあ、誰やろうな?」

ニヤついて笑いがながバルトを下から眺めるはやて。

「ちっ、もうこの話は終わりだ。お前がこっちに来たって事は撮影はもういいんだろ?」
「そうやな。一緒に混ざって際どいアングルを撮っていたエローシュ君も成敗されたし、後は各自、自由時間や」
「じゃあ他人をからかってないでお前も少しはのんびりしてろ。たまにリラックスしてないとなのはやフェイト達よりも早く老けるぞ?」
「余計なお世話や。言われんでものんびりさせてもらうよ」
「そうしとけ………さて、俺もそろそろなのはの所に行くか。アイツ何を勘違いしてるのかこっちを睨んでるしな」

そう言われて、なのはの方を見たはやて。

「うわ………分かりやすいななのはちゃん………」

明らかにこっちを疑っている様に見えるなのはにはやては苦笑いしながらそう呟いた。

「そう言う事だ。お前もさっさと………うおっ!?」

立ち上がろうとしたバルトの背中に人の重みが乗っかり一瞬倒れそうになったがそのまま立ち上がった。

「おおっ、高い高い!!」
「おい!!お前何考えてるんだ!!そんな事したら………」

「バルトさん!!!ちょっとこっちに来てもらって良いですか!!?」

大声で呼ばれたバルトは嫌な顔した後、降りたはやてを睨みつけた。

「じゃあ私はお暇させてもらうわ」
「この野郎………散々かき回しやがって………!!」
「バルトさん!!!」
「覚えてろよ?」
「どうやろな?」

そう言って逃げるはやてを睨みながらバルトは渋々なのはの元へ向かうのであった………



















「あの………シグナム副隊長?脱水症状になるかもなんですけど………?」
「………」
「………あの、無視しないでくださいます?」
「死にたくなければ逃げれば良いだろ?」
「この状況でですか!?」

そう叫ぶエローシュは現在首だけ出た状態で砂の中に埋められていた。
夏の日差しと砂のサウナ。汗がダラダラと流れる中、エローシュは一生懸命シグナムに助けを懇願していた。
そんな中シグナムはビーチチェアで横になっていた。

「本当に倒れますって!!」
「その時はシャマルの厄介になればいいだろう」
「シャマルさんに申し訳ないですって!!」
「大丈夫だ、本人も脱水症状になったら直ぐに処置をするから呼んでと」
「何と言う事だ………」

因みにエローシュは寝た状態で埋められたのではなく、本当に下に掘られた穴に入れられ、首だけ出る様に埋められたので出ようにも出れない。

「畜生、目の前に海と水着が待っているのに………」
「なら取引しようか?」
「取引ですか?」
「ああ、お前達が密かに行っている事を教えてくれたら出してやろう」

そうシグナムに言われ、エローシュは無言になった。

「どうだ?」
「どうだ?と言われても言ってる事がよく分かりませんが?」
「前の帰りが遅くなった件、それに関係ある事で私達に秘密にしている事があるだろ?それを教えてくれればいい」
「そう言われても前言ったように学校で友達と………」
「何時も一緒のお前達がキャロとルーテシアを置いて3人で遊んだとは到底思えないがどうなのだ?」
「それはたまたま学校に残った際、そういう流れになって………」
「いつもおちゃらけている様に見せているお前だが、そんな理由で訓練をサボったりするような奴では無いのは私もよく分かっている。………心配なのだ、テスタロッサも私もお前達が危険な事に首を突っ込んでいるのでは無いのかと………」

不安そうな顔でそう答えるシグナム。

(全く、あなたにそんな顔は似合わないんだけどな………)

そんな事を思いながらエローシュは小さく笑みを溢した。

「シグナム副隊長。俺も自分の実力は分かってますし、部隊のみんなの実力も把握しています。………それでももし、本当にピンチで助けてほしい時は貴方達が頼りです。だから俺達の事も信じてもらえませんか?」
「………だがそれは裏を返せばやはり私達に隠し事があると言う事だな?」
「そりゃあ俺も含めて皆隠し事の1つや2つありますよ。特に俺はまだメンバーに内緒にしている事だってある」
「それは………いや、お前の言う通りだな」
「だけどそれでもやっぱり俺達がいざと言う時に頼りにするのは隊長、副隊長の2人なんです。だからいざと言う時は迷惑をかけると思いますが、助けて下さい」

いつものふざけた様子もなく、真面目な顔で小さく頭を下げたエローシュ。

「………分かった。しかしその形で真面目に言われても雰囲気がな………」
「こうしたのはシグナム副隊長でしょ!?そう思うならいい加減出してくださいよ!!」
「分かった。取り敢えず脱水症状にならないようにペットボトルとストローは用意しておく」
「今日ずっとこのままですか俺!?」

そんなエローシュの言葉をスルーし、飲み物とストローを準備したシグナムは海の方へと向かって行ったのだった………

















「わああああ………!!」

エメラルドブルーの海。沖縄の海も潜ったがそれ以上の美しさがこの海にはあった。

「凄いですね!!本当に空を飛んでいる様に海を移動できます!!」

そう言いながら星は人魚の様にスイスイ泳いでいた。いや、飛んでいると言ったほうが語弊が無いのかもしれない。

「レイ、もう深海へと下りていくか?」
「取り敢えず深い所まで移動だな。100m位進めば水深の深い場所にも行ける様になるだろう」
「ようし!!だったら競争しよ!!」
「ライ、せっかくですし、競争よりも周りの景色を楽しんで行きましょう」
「そうだぞ。せっかく4人で海中デートしているのだ、スポーツをしに来た訳では無いのだぞ?」
「………ええっ」

俺もどちらかと言えば星と夜美と同意見である。………だけど空を飛んでいる様に泳げる状態で競争も面白そうだ。

「じゃあ帰りは競争するか。かなりのスピードで海の中を進むのも面白いかもしれないぞ?」
「本当!?」
「そうですね………帰りでしたら私も良いです」
「我も構わない」
「じゃあ決定ね!!」

そう嬉しそうに答えるライ。

「さて、それじゃあのんびり進むか」

そして俺達は本格的に海中デートを始めたのだった………

















海中を進む俺達。やはり陸から離れていくと不安な気持ちも出てくる。まだ海底が見えた浅瀬は周りの景色に感動していたが、徐々に深くなっていくとやはり底は暗く見えなくなってくる。それはまるで暗黒の中。降りていけば一生出られないのでは無いかと思わせる。

それでもやはり気持ち良さそうに泳ぐ、綺麗な魚達。群れをなして凄いスピードで進む魚や俺達よりもデカい魚が向かって来たり、サメが普通に近くを泳いできたりと、色々な体験が出来てかなり楽しめた。

そして目的地と考えていた海域についた俺達。

「それじゃあこの辺りでやるか。皆、ライトの準備な。もし危険そうなら魔法で明かりを作っても良い。だけどそれは生態系も壊すかもしれないから極力無しで」
「うん」
「分かった」
「りょ、了解です………」

ライと夜美が普通に返事する中、星だけは不安そうに俺にくっついて弱々しくそう答えた。
何故そうなってしまっているかと言うと、この海域に近づいた時の話が原因だ………


















「底が見えなくなってきましたね………」

暫く進んでいき、下を見た星が不意に溢した言葉。
その時のライのニヤリと小悪魔な顔をしたのを俺は見逃さなかった。

「そう言えばさ………僕ね、今日楽しみで海の生き物について調べたんだ」
「ほう、ライにしては珍しいな………」

確かに調べるとか前もって準備するような計画性のある子では無いので俺も内心びっくりしたのだが、先ほどの笑みが頭に残っていたため言葉に出る様な事は無かった。

「しかし調べてもここは地球とは違うので生態系も違うのでは?」
「僕も最初はそう思ったよ。だけど違う世界って言ってもやっぱりそんなに大きく変わったりはしないと思うんだ。だから取り敢えず見てみたんだけど………それでね、僕とある魚に興味を持ったんだ」
「とある魚?」
「うん、深海魚!!」

そう答えた所でライの意図が分かった。

「ほう、興味があるな………我も名前は聞いた事はあるが実際どんな魚なのか全然知らないのだ」

どうやら夜美も理解したらしくニヤリと笑みを溢しながらそう答えた。

「私もですね………まあ深海の暗く、水圧のある世界に住んでいる魚なので自然とその環境に適応した姿になったせいで歪な魚が多いと………」
「そう、確かにそう書かれていたけど、色々調べていたら妙な事が書かれていたんだ」
「妙な事?」
「深海魚は事故や自殺なんかで沈んだ人の死体を食べたせいであんな姿になったって………」

当然デマである。
しかし聞いていた星の動きがぎこちなくなった。

「それでね、深海には死んで幽霊になった人達も大勢いて、そこから妖怪も生まれているんだ」
「そ、そんなわけ………」
「海坊主っているでしょ?あれもそこから生まれて海の妖怪もそこから生まれたとか確かぬらさんも言っていたような………」

嘘だな。詳しくは覚えていないが海坊主はそんな理由じゃ無かったはずだ。それに妖怪は人と言うより動物を元にした妖怪の方が多い。海も同じだろう。

しかし星にとってはかなり有効で凄い青い顔をしてぶるぶる震えている。

「さて、この世界の海には一体何がいるのかな………?」
「レイーーー!!!」



















とこんな感じでライが脅した星で俺から離れられなくなってしまったのである。
当然その後にネタ晴らししたが、それでも一度意識してしまうと中々忘れられないのが人である。

流石に逃げる様な事は言わなくなったが、それでも怖いのか俺の近くを離れずにいる。

「むぅ………自業自得とはいえ、星ばっかりずるい………」
「まあ仕方がなかろう。誰しも苦手なものはある」

少々不満気なライを夜美に任せ、出来るだけ皆近くに固まりゆっくり深海へと潜っていく。

「ダイバージャケットに何か変化があったら教えてくれ。本当に不味い状況になったら一気に転移する」
「了解~」
「了解だ」
「了解です………」

もう視界もすっかり暗闇になりライトをそれぞれつける。

「ひっ!?」
「うおっ!?」

すると丁度俺と星の目の前に顔程の大きな魚の目があった。やはりその体は歪で、顔が7割、体が3割とかなりアンバランスな形だった。

「うわっ!?何あの魚!キモイ!!」

失礼な事を言うなと言いたい所だが、ライの言う通り皆かなり歪だ。

「大きい魚もいる。………あの長い壁は魚ではないか?」
「………確かに。クジラほどではないけど人を普通に丸呑み出来そうな大きさだな………」

長い壁に見えたその場所に光を当ててよく見てみるとどうも鱗の様に見える。

「皆、出来るだけ魚達を刺激しないようにしよう。会話も小さい声で、ライトも直接は当てない様にな」
「うん………」
「分かった………」
「はい………」

俺は3人の返事を聞き、更に深くに潜っていくのだった………



















「ん?あれは………」

それは潜り始めて30分経った頃だ。未だに海底までは光を当てても見えず、果てしなく暗闇に小さな光の道を作っているような状況である。

そんな中、視界の前を照らしていると赤い光が見えたのに気が付いた。

「動いている」

それは光に照らした後、直ぐに暗闇の中へ移動した。

「星、ライ、夜美、急いで俺に掴まれ!ここに何か居る………」

俺の指示を聞いた3人はすぐさま、俺の背中に来て、それぞれ触れた。

「これで転移は出来るな。………さて、あれは一体………」

そんな事を思っていると静かだった水中に大きな流れが現れた。

「!?来るか!!」

ライトを口にくわえ、刀を抜刀する。

「誰か、俺の前を照らしてくれ!!」

そんな声に直ぐに反応したライと夜美は言葉通り、俺の目の前を照らしてくれた。

「なっ!?」

目の前に居たのは巨大なエイの様な魚。目が大きく口が人を食べれる程大きく歯が鋭い。見た目で3m以上と予測できた。
そんな巨大エイもどきの魚が猛スピードで俺に向かって来ていた。

「ちっ!?」

丸呑みしようと口を開け、襲い掛かってくるエイに剣を向けた。

(魔法は使えない。あのスピードで突っ込んでくるエイを仕留められるか………?)

そんな考える暇も与えぬまま、エイは俺に襲い掛かった。

「神速!!」

視界は変わり、世界がモノクロでスローモーションへと変わった。

「よし、これで………!!」

頭の痛みに耐えながらエイの軌道から離れ、難を逃れる。

「あれは………!!」

神速を切ると同時に見えたあの赤い宝石。

「レリック………!!だけどあんな風に生物と同化するなんて………」

エイの頭に赤い宝石が埋め込まれていた。
本当にそれがレリックかどうか怪しいが、見つけた以上見過ごせないだろう。

「どうするか………」

俺の後ろに隠れている3人が一生懸命照らして探すがエイは写っても直ぐに逃げるため位置を特定する事は出来なかった。

「だが直ぐに襲い掛からないのは俺達に警戒してか?」

相手にとっては狙った獲物がいつの間にか違う所にいると不思議がっているのだろう。
だがその間はこっちにとって都合が良かった。

「この暗闇で高速で動く奴を捕えるには………やはりこれしかないか」

神速の影響で頭が痛い状況でこの手は使いたくないが、これしか方法が無い。

「皆、聞いてくれ。奴の頭にレリックらしき赤い宝石を発見した」
「えっ!?あの大きな魚に!?」
「どうするんですかレイ!?」
「アイツも一緒に転移で上に戻る。だからお前達も決して俺から離れるなよ?」
「しかしあのスピードだぞ!?どうするつもりだ!!」
「神速を使い、アイツと触れたと同時に転移する。かなり緊迫した状況だろうから絶対に離れないでくれよ?」
「わ、分かった!!」
「レイも無茶はしないで下さい!!」
「しかし………奴は来るか?」
「来るさ!!奴だって獲物を逃がして悔しい筈だ。絶対に今度こそと突っ込んでくる!!」

そう予測し、奴が来るのを待つ。
この作戦は俺の方に襲い掛かって来た瞬間に神速で視界を変更し、3人と離れない様に触れて転移する事が確定条件だ。
なので俺も3人がちゃんと触れている事を把握して跳ばなくてはならない。

更に3人には言ってなかったが、神速を発動した状態で転移はまだ一度もした事が無い。どちらも頭を使うのでどの位負担になるのか俺自身把握していないのだ。

「普通にアイツを無視してほおっておけば良いんだろうけど、見つけた以上そういうわけにもいかないよな………」

そう自分に言い聞かせ覚悟を決める。最悪4人で逃げる事もちゃんと考えておかなければならない。

「さあ………来い!!」

奴にも譲れないプライドがあるのか、全く先ほどと同じ様に俺の正面から向かって来た。

「よし、行くぞ3人共!!」

俺に向かって大きな口を開けた瞬間、神速を発動。世界がモノクロへと変わり、エイの動きもスローモーションとなる。
それと同時にエイに触れ、

「行くぞ………ジャンプ!!」

そのまま上へとジャンプした………















「あれ?ここは………」
「上が見える。………って事は海底から上がって来た様ですね」
「見ろ、エイが………」

明るい場所に出たのでエイの姿がはっきりと見えたがその姿はやはり異質で、姿はエイを大きくした姿に近いのだが、その体の色や模様が異質だった。

「うわぁ………凄い色………黒っぽいのに斑点がぽつぽつとあってなんか気持ち悪い………」
「だがそれでも普通のエイとあまり変わりは無いみたいだな」
「見て下さい!あの頭の部分についている赤い宝石」

そう言って星の指を指した方向を見るとそこには確かに赤い宝石が付いていた。

「何か弱ってるね」
「光が苦手なのだろう。いつもは海の底に生息しているのだからな」
「そっか。………なら」

そう言ってライは近づき、赤い宝石を掴む。

「えっ、ちょっとライ………?」

星がライの行動に不安を感じ、声をかけたが………

「エイ!!」

ライはそのまま赤い宝石を引っ張って取ってしまった。

「ライ!!」
「大丈夫だよ夜美。ほら!」

そう言って手に持った赤い宝石を見せるライ。

「分かったからこっちに来て下さい。………ってあれ?レイはどうしました?」
「そう言えば………レイどこだ?」

零治が居ない事に気が付いた3人は周辺を見渡してみる。

「レイは………居た!!」

零治を見つけたのは2人よりも少し離れていたライだった。
零治は海の中を静かに漂っている。

「レイ、終わったよ!………レイ?」

声を掛けているのに反応が無い事におかしいと思ったライは直ぐ近くまで近づいた。

「!!星、夜美来て!!!」

慌てた大きな声で呼ばれた2人はもうスピードでライの所に向かった。

「レイ、レイ!!しっかりしてレイ!!!」

呼ばれる零治だったがライの声に反応することは無かった……… 
 

 
後書き
結局前後半と分かれてしまいました。ですが後編が終わったらとうとうラストスパートですかね。
もう少し付き合っていただければと思います。 
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