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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第44話 一難去って………

 
前書き
こんにちはblueoceanです。

かなり遅くなって申し訳ない。
取り敢えず前回の続きで、次はほのぼのと行く予定です。
その後はとうとう終盤かな……… 

 
「さて、その前に………おい小僧!!」

バルトに怒鳴られビクっと反応するエリオ。

「よく見てみろ、その突き刺した奴の身体を」

そう言われ、恐る恐る確認するエリオ。

「えっ、機械!?」
「そうだ。奴等はアンドロイドだ。見た目は普通の人だが、中身は違うって事だ」
「それじゃあ………」
「お前は人は殺していねえ」

そう言われたエリオは何も言わずストラーダを引き抜いた。

「もしかしたら上で死んでいた人達って………」
「全部バリアアーマーを着たアンドロイドだ。白衣を着てた奴も含めてな」

真白の質問に答えたバルトマン。

「だから死臭も無かったのか………」
『一応詳しく調べるべきだったな』
「出来るか!!死体を弄るなんて!!」
「ん?何を言っている?」
「い、いや別に………」

慌てて口を噤むエローシュ。

「一つ忠告しておく。覚悟も無ければ首を突っ込むな。でなければお前達が死ぬぞ」
「そ、そんな事………」
「本当にそうか?さっきの奴もお前達が殺す気でかかれば直ぐに掃討出来たはずだ。だからこそ奴も余力を残して対応出来た」

そんなバルトマンの指摘に返す言葉が無い4人。

「やはり本気で相手に来てなかったか………」
「信也君は気がついてたの?」
「根拠はなかったけどな。何度倒されてもマクベスには余裕があった。だからまだ何か隠している……と」
「そう言う事だ」

そう言われ、エローシュ以外の4人が悔しそうな顔で俯いた。

「バルトマン、アンドロイドなんて物が製造しているんだ?そもそもアンドロイドを使って何をしようとしているんだ?」
「それは分からねえ。俺は別にその件を調べているわけじゃねえし、ハッキリ言えば興味もねえ」
「!?じゃあどうして奴を追っている?」
「それは俺の狙っているターゲットを知っていると思ったからだ。だからそこ冥王教会のアジトや研究所をしらみつぶしに潰してきた。………結局無駄だったって事だ」
「無駄?」
「俺の狙っているターゲットの行方を奴は知らなかった。まだ冥王教会を利用しているとふんだんだが………」

そう呟きながら遠くを見るバルトマン。その瞳は敵を探す鋭い眼差しだった。

「さて、あまり長居も出来んから俺は消えるとしよう。俺の痕跡を残さないようにここは爆破する。早くしないと次元の狭間に閉じ込められるぞ?」

立ち上がり立ち去ろうとしたバルトはそう言い残した。

「なっ!?」
「爆弾!?」
「待て!!まだ聞きたいことが………」
「管理局には最低限必要な情報は教えたつもりだ。だから後はもう首を突っ込むな」
「ふざけるな!真白ちゃんと約束したんだ、無下にできるかよ!!」
「リクは子供を巻き込むのを最も嫌う。………奴の気持ちも察してやれ」
「ふざけるな!家族を心配するのは当たり前だ!!真白ちゃんにとってたった1人の父親なんだよ!!」
「父親か………」

先程と同じ様に遠くを見るバルト。しかし今度は悲しそうだと皆は感じた。

「バルトマン………あなたは家族の事、何も思わないの………?」

優理が恐る恐る問いかける。

「俺には………家族なんていねえよ」
「ううん、………バルトマンになってからもずっとあなたを待っている人はいるよ?」
「………」

そんな優理の言葉にバルトマンは何も答えなかった。

「とにかく、もう関わるな………」

バルトマンはそう言い残し、その場から消えたのだった………
















「………」
「ああ、あの様子はご立腹だな………」

激戦とバルトマンとの緊迫した話を終えたエローシュ達。優理とリンスを地球に送った後、エローシュ達は六課へと戻った。しかし時間はもう夜の7時を回っており、本来なら夕食を食べている時間帯になってしまった。
そして六課の入口にはエントランスのソファーに座っている隊長、副隊長の姿があった。

「お帰り」
「あっ、ただいまです………」

申し訳なさそうに謝るエローシュだったが、フェイトの反応は冷ややかだった。
同様にシグナムも何も言わず、ただソファーに足を組んで座っているだけである。
パンツが見えそうと思い、かなり覗きたい衝動に駆られたエローシュだったが、流石に今回は空気を読んでぐっと我慢した。

「さて、それじゃあ何でこんなに帰りが遅かったか聞いていいかな?」
「あっ、それは学校で用事が………」
「それで7時過ぎ?」

そう突っ込まれて流石のエローシュも返す言葉が無かった。

「流石に遅すぎるよね?詳しく聞いてもキャロとルーテシアは『学校ので用事があるとしか聞いてません』としか答えてくれなかったの。ねえ何をしてたのかな………?」

穏やかな口調ながらそれでも一言一言に威圧感があった。

(全く、バルトマンと言い、フェイトさんと言い………今日はついていない………)

そんな事を思いながらエローシュは口を開いた。

「すいません!!用事が終わった後、友達に遊びに誘われて………元々気の合う奴等で最近全然遊べていなかったから断るにも断りづらくて………それでエリオと真白ちゃんも連れて遊んでました!!」

深々と頭を下げて謝るエローシュ。
そんなエローシュの言葉を聞いてシグナムは静かに立ち上がり………

「この大馬鹿者が!!!」
「うごっ!?」

エローシュの頭にげんこつを落とした。

「貴様にはライトニングの一員と言う自覚は無いのか!!」
「いや、分かってますけど流石にこうも学校を連続で休んだり、放課後に直ぐに帰ったりしてたらいくらなんでも不自然すぎますって。今回は特にそう思ったんで急きょ遊びに行ったんですって………」
「だが何故連絡もよこさん!!事情を話せば1日位大目に見てやるくらいの気概はある!!」
「いや、言ったところで結局殴られたような………」
「何か言ったか?」
「いーえ、何も?」

そんなシグナムとエローシュのやり取りにホッと安堵する真白とエリオ。

「………分かった。取りあえず先ずは夕食を食べてきなさい。でないとご飯抜きになっちゃうから」
「それはまずい!!あんなに動いた後だ!!食わないと死ぬ!!行くぞエリオ、真白ちゃん!!」
「う、うん!!」
「ま、待ってよエローシュ君!!」

エローシュについていき走って行く3人。

「………シグナム」
「ああ、私も感じた。やはり何か隠しているな。それも5人で」
「エローシュは流石だけど後ろの2人とキャロとルーテシアの2人が不自然だった」
「流石の奴もその辺りは頭に無かった様だ………さて、どうするフェイト隊長?」
「………もうちょっと様子を見ます。それを私自身も探りを入れてみます。エローシュ達が一体何をしているのか、何を考えているのか。………本当はこんな事したくないけど、でもあの子達は私の部下だから」
「私達だ。私も副隊長として出来る限りの事がする」
「うん、ありがとうシグナム………」

そんな話をした2人も先に行った3人を追って食堂へと向かった………
















「優理、リンス?私達が言いたい事分かってますね?」

場所が変わり、有栖家。
優理達は帰りは6時とそこまで遅くは無かったが、恰好が問題だった。
戦闘によって薄汚れた肌。そして先頭によるすり傷や切り傷。疲れからか帰るのを優先していた2人はそのまま家に入り、星達に見られ、問いただされている。

「何故相談も無しに勝手な行動に出たんです!?バルトマンも出て、下手をしたらそのまま生き埋めって事にもなったんですよ!!」

当然待っていたのは星の説教だ。
シャイデも居るのだが、俺や夜美、ライと共に椅子に座って様子を見ているだけだった。
因みに説教に関わりたくないアギトとセッテは遠くでテレビを見ながらこっちの様子を伺っている。
優理達は今日起こったこと全てを説明した。あの場所で戦ったアンドロイドの事、冥王教会の幹部の事、そしてバルトマンの事。

「「………」」

星にそう言われ、何も返さない2人。2人も悪いと分かった上で行動を起こしたためである。

「黙っていては………」
「星、ストップだ。この2人だって悪い事したと分かった上で行動を起こしたんだ。しつこく言わなくても分かっているさ」
「レイ、ですが………」
「ああ、せめて連絡くらいして欲しかったな。お前達の担任は事情を知ってくれてるからまだ良かったものの、下手をしたら大事になってもおかしくなかったんだぞ?」

5時間目に入る際、エローシュ達がいないことでキャロ達を問い詰めた細野先生のお陰で優理達は急遽早退と言う事にしてもらった。そして俺達にも連絡が入った。シャイデの親友である細野先生は1年からずっとエローシュ達の担任を続けている。魔法の事も知っているので大変ありがたい先生だ。

「………ごめんなさい。でも言ったら絶対に止められると思ったから………」
「当然です!!」
「それじゃあ駄目なの。エローシュにもレイは目立ちすぎてるから気づかれるって言われたし、私達が友達の為に動いているのに大人の人にお願いしたら駄目だもん」
「ですが、バルトマンが関わる以上子供達だけには任せられません!!」
「それでも私達でやる!!」

何と言われようとも引かないと言っているその目に流石の星も困った顔で俺を見た。

「リンスも同じ気持ちなの?」
「うん。だって私も真白ちゃんの為に協力したい」

ライの問いかけにリンスは迷いなくそう答えた。

「………星、ライ、夜美、先に言っておくけど怒るなよ?」
「………何を言うつもりだ?」

夜美含め3人にジト目で見られるが俺は気にせず口を開いた。

「優理、お前の考え尊重しようと思う」
「「「レイ!!」」」
「だから怒るなって………」

そうは言ったものの予想通りの反応だったのでそんなに驚いてはいない。

「シャイデからも何か言ってよ!!」
「………私も零治と同じよ」
「「「シャイデ!?」」」

思いがけないシャイデの言葉に驚く3人。
かく言う流石の俺のシャイデの反応には内心驚いていたのだが………

「何でシャイデもなの?」

驚いていた3人を代表してライがシャイデに質問した。

「何でって子供達が決めた事を親がわざわざ口出す事無いじゃない?」
「でも相手はバルトマンがいるんだよ!?」
「そうね………だけどこの子達の目的はあくまで真白ちゃんをお父さんと会わせる事でしょ?だったら問題無いじゃない」
「だが、その道にはバルトマンが居る。もしも何かあってからでは遅いのだぞ?」
「そうね………だけど何もかも抑え込むのが親の仕事でも無いわよ?それに誰も全てを好きになさいなんて言うつもりは無いわよ?」

そんなシャイデの言葉に今度は優理とリンスが驚いた。

「どういう事………?」
「バルトマンが出てくるようだったら零治に言いなさい」
「えっ、でもそれじゃあ………」
「文句ないでしょ?だって貴方達の目的は真白ちゃんのお父さんなんだし、零治達がバルトマンを相手にしてても問題無いでしょ?」
「それはそうだけどお母さん………」

屁理屈の様に感じたリンスが困った顔でそう呟いた。

「シャイデは別に意地悪を言っている訳じゃない。お前達に目的があるように俺達にもバルトさんとの約束もある。それは話を聞いていた2人にも分かっているだろ?」
「それはそうだけど………でもレイは目立ちすぎるし………」
「それは俺達でバレない様に考えるさ。だからお前達は真白ちゃんの父親を、俺達がバルトマンをって事で互いに協力し合うって事でどうだ?」

そんな俺達の提案に困った顔で相談し始める2人。

「レイ、良いんですか!?」
「ああ、危険ではあるが、何でも縛り付けることが良い事につながるって事は決してない。だからこれでいいんだよ」
「ですが………!!」
「星、過保護すぎるぞ」
「レイだけには言われたくありません!!」

そう言い残して星はご飯の準備を始めた。ライや夜美も納得していない様子だ。

「やれやれ………」
「私も予想外だったわね。零治なら抱きついて離さないイメージだったんだけど」
「それじゃあ結局くすぶって最後には勝手に行動されるだろ?だったらある程度自由にさせた方が良いかと」
「レイ、それ本人の前で言っちゃ駄目でしょ………」

俺の話は当然優理とリンスに聞こえていた。

「別に俺はお前達の今日の行動を肯定している訳じゃないからな。はっきり言うと俺も星と並んで怒ってもいい気分だ」
「はい………」
「エローシュもエローシュだがフェイト達と協力してもらうとか出来ないのか?」
「管理局をあまり関わらせたくないんです………管理局が関わると真白ちゃんのお父さんも捕まちゃうから………」
「なるほどね………」

確かにリンスの言う通り管理局が介入してくれば真白ちゃんのお父さんは捕まってしまうかもしれない。だが自分達の身の回りを守るなら最強の魔導師が揃う機動六課であればいざという時も安全と言った感じか?そして何より最新の情報を得るにはうってつけの部隊でもある。

違かったとしてもやはりエローシュは頭が回る。全てを予測して行動していると俺は思う。
だからこそ信頼も出来る………

「一度エローシュとも話しておかなくちゃな………」

俺は優理とリンスの姿を見てそう思ったのだった………
















「ふぁ〜」
「おい、あくびすんなよ」
「平和だよな〜」
「私の話聞いてるか?」

6月下旬。
バルトマンが六課に攻めてきて実に1ヶ月ちょっと過ぎた。
零治やイーグレイ家に協力を求めたバルトだったが今の所進展は無かった。更に冥王教会の動きも全くと言って言い程なく、機動六課は毎日訓練の日々を過ごしていた。

「だがよ、ここまで何もねえとなぁ副隊長殿」
「何も無いのが一番なんだ!!それに実際は事件は起きてるぞ。ただその殆どを機動七課と地上の部隊で対応してるから私達に回ってこないだけだ。ロストロギア対策の部隊なのに黒の亡霊相手もあいつ等に奪われちまって………」
「………こちらとしてはやりやすくて助かるがな………」
「何か言ったか?」
「いや、何も?」

そんな会話を2人でしていると訓練が終わったのか残りのスターズのメンバーがこっちにやって来た。

「終わりか?」
「休憩です。この後、別のフォーメーションを試してみます。今度はバルトさんと加奈さんが離脱した場合を想定した3対2の戦闘を試してみたいのでヴィータ副隊長も次、お願いします」
「分かった、手加減しないからな」
「はい、お願いします」

休憩に入ってもディスプレイを展開して先ほどの戦闘の様子を確認するティアナ。

「あいつこそバトルジャンキーな気がするんだが………」
「人の努力をバカにしないでください」

そう言って汗をタオルで拭きながらバルトの隣に座るなのは。

「どうよ、さっきの戦闘は?」
「悪くは無いですね。加奈ちゃんを途中からアタッカーに回してギンガが加奈ちゃんの防衛。そしてティアナとスバルのコンビで陽動。加奈ちゃんはレパートリーが無いと言っても強力な攻撃魔法を使えますし、今回バルトさんを入れればかなり手強いと思います」
「まあこれは1対複数の場合だがな。実力のある奴が複数居たらスバルとティアナだけじゃ抑えられねえだろ?」
「その通りです。………まあそれはティアナ自身が分かってるでしょうけど。………まあ何にせよ」

そう言ってなのははスバルとじゃれているティアナを見た。

「変わりましたよティアナ」
「お前もな。前以上に良い顔で教導してる」
「そうですか?」
「ああ。今回の教導はお前にとってもかなりプラスになったな」
「………それだけじゃ無いです。バルトさんが私の隣にいてくれた事が一番………」
「ん?何か言ったか?」
「な、何でもないです!!あっ、それとはやてちゃんが次の休み、機動六課で海水浴に行こうって言い出してるんですけど………」
「はぁ!?機動六課全員で!?その間、六課はどうするんだよ?」
「休業だって」
「それを上は許したのか!?」
「結構前から準備をしていたみたいで、押し通したんですって。何か裏がありそうな気がするけど取り合えずヴィヴィオちゃんも大喜びだから良いかなって」
「………まあ別にのんびり出来るなら別に反対はしないが………」

そう言いながらも少々不安が募るバルト。

「で、いつ行くんだ?」
「7月入って最初の週末。一応自由参加なんだけどスターズとライトニングのメンバーは強制らしいです」
「………本当に何も無いよな?」
「私に聞かないで下さい………」

そんななのはの呟きの後、同時にため息を吐いた2人だった………

















「水着ー!!!」
「「うるさい!!」」

キャロとルーテシアの息のあったげんこつが騒ぐエローシュの頭に落ちた。

「ふっ………」
「えっ!?」
「動じてない!?」

たんこぶを作りながらも何事も無かったかのようにドヤ顔でキャロとルーテシアを見るエローシュ。

「今の俺はスターを得た無敵変態エローシュ!!フィーバータイムが終わるまで俺は無敵だ!!!」
「やばい、エローシュが完全に壊れた………」
「あの拳骨の影響かなルーちゃん………?」
「まさか………でもエローシュだし………」
「何だろうね、その説得力のある理由………」
「エローシュだしね………」

そんな会話を少し離れた場所で話すエリオと真白。

「さあさあさあさあ訓練を始めましょうか!!!」
「えっ!?何どうしたの!?」

そんな中、訓練を始めようとやって来たフェイトがエローシュのテンションの異常さに慌ててキャロ達の所へ来て聞いてきた。

「今のエローシュ君は無敵変態エローシュ君なんです」
「何でヒーロー物の番組の題名みたいな名前になってるの!?」
「でも自分で名乗ってるので………私達もアイツの頭の中を完全に理解するのは不可能なんです」

そんなルーテシアの言葉に納得しながらも興奮状態が続くエローシュを確認するフェイト。

「ねえねえ、今私を見て舌なめずりしなかった!?」
「き、気のせいだと思います………」
「さ、流石にエローシュもそこまで気持ち悪い事は………しそう………」

庇おうと頑張ったルーテシアだが、諦めた。

「ん?どうした皆。訓練を始めるぞ」
「おっぱいサムライ!!」

そうエローシュが言った瞬間、空気が凍った。
皆が青い顔をしてエローシュを見ている。

「やれやれ………終わったな」
「あっ、エクス。出てきたの?」

次元を裂いて、滅多に出てこないエクスが皆の前に現れた。

「ああ。今のこいつは煩悩だらけで、正直付き合うのも耐えられん。すまないシグナム、死なない程度に眠らせてくれ」
「………ああ分かった。死なない(・・・・)程度にな………」

わざわざ死なないと言う単語を強調したのを聞いた時、皆がエローシュの末路が見えた。

「一撃で眠らせてやる。何、心配するな………」
「あれ?カードリッジ飛んでない?」
「結構本気ね………」

溢れる魔力を蓄えながらレヴァンテインを構えるシグナム。

「南無阿弥陀仏………」
「ルー!?死んでないからね!!」
「信也君、記憶喪失になって真人間になったりしないかな?」
「真白、それ今のエローシュ全否定してるよね?」
「フリード、あ~ん」
「クキュー」
「キャロに関してはもはや興味もない!!」

1人、ツッコミに奮闘するエリオ。エクスはただエローシュの様子を黙って見ているだけであり、フェイトに関しては今の状況にあわあわしている。

「紫電一閃!!」

そんな中、エローシュの処刑は行われた。
抜刀での斬撃は紅蓮をまとってエローシュを斬り裂く。

「アギャアアアアァァァ!!!」

当然非殺傷設定ではあるがその炎と斬撃による痛みがエローシュを襲う。
そして叫び声を上げながら仰向けに倒れたのだった。

「ああ、かなり痛そう………」
「さて、あのバカは俺に任せてお前達は訓練を始めろ」
「エクスがエローシュを医務室まで運ぶの?」
「まさか。見た感じ、こいつはただ黒こげになってるだけで特に重い怪我はなさそうだから端に引っ張って放置しておく」
「うそ………だってシグナムの攻撃だよ?いくら非殺傷設定だからってそんな事………本当だ………!!」

エローシュの様子を見て、状態に驚くフェイト。

「だからこのバカは気にするな。似合わないくせに最近気張りすぎだったんだ。良い休養になる」
「わ、分かった………」

エクスにそう言われ、既に訓練に入る準備を終えたライトニングの元に向かうフェイト。

(休息………?確かに訓練だとシグナムにしごかれていつも一杯一杯だけど………本当にそれだけ………?)

そんな疑問を持ちながらもフェイト達、ライトニングは訓練を始めた………
























「へえ~海水浴ね………」
「そうなんですよ!!私達ロングアーチも自由参加ですって!!」
「はやてさんはよくこんな企画上に通したな………」
「色々苦労してましたけど、クロノさんも巻き込んで結構強引に通したみたいです。………何故か僕やルキノも手伝わされましたし………」
「グリフィス、ルキノお疲れだな………」

所変わって、食堂。
そこにはロングアーチのグリフィス、ルキノ。そしてヘリパイロットのヴァイスとアルトの4人が談笑していた。話題は当然海水浴の件だ。

「だがまあお前等のお陰で海水浴が楽しめるんだ、サンキューな」
「いえ。喜んでくれれば頑張った甲斐があります………」
「そうだよ!!それに2人も海水浴行くんでしょ!!」
「ええ、何故か自由参加なのに強制とはやてさんに言われましたから」
「しかし部隊長も粋な計らいをするもんだ。ここの部隊は美人でスタイルの良い人ばかりだからな………部隊長の3人にヴォルケンリッターの姐さんにシャマルさん。………ヤバい、カメラの用意を………」

そんなヴァイスの言葉に白い目で見つめる3人。

「な、何だよ。冗談だって………」
「本当ですか?ヴァイスさんはエローシュ君と同じくらい危険ですからね………」
「いや、確かにアイツは弟分みたいな奴だが、変態さで言えばアイツの右に出る奴はいない」
「何でですかね、否定する事が出来ない」

グリフィスの言葉にうんうんと頷く女性陣。
エローシュはマルチタスクの優秀さから時々、ロングアーチの手伝いをさせられているため、それなりに接点があるのだが、ロングアーチでもその変態さは健在であった。

「あの歳でこれだと将来心配だね………」
「管理局のイメージが悪くなるかもね」
「まあ本当にしちゃいけない事はしない奴だから捕まる様な事はしないと思うが………ヤバい、俺も不安になって来た。絶対にラグナには会わせねえ………!!」
「ああ、シスコンモードだ………」

とめんどくさそうに呟いたアルトに2人も苦笑いするが、ヴァイスは気にせず話し始めた。

「そもそもラグナは清純で礼儀正しくてしっかり者で家庭的で可愛くて気配りが出来てスタイルは………まあこれからに期待だけど、それはもう俺には勿体ない大事な妹で………」
「それじゃあ行こうか?」
「良いのこのままで?」
「シグナムさんやバルトさんが居れば叩いて止まったけど、私じゃ無理。今の内に逃げないと捕まえられて永遠と聞く羽目になるよ?」
「逃げようか」
「そうね………」

アルトも言葉を聞いてゆっくりと席を離れる3人。
そのまま、ヴァイスは一旦話し終えるまで1人で喋っているのだった………





























「海?」
『そう。実は昔、移送中のレリックを1つミッドチルダの海に落としたのを思い出してね………』

7月。
夏本番に入り、暑くなり始めた昼間が過ぎ、夜となったが、6月の名残りか、かなりジメジメとした湿気に暑苦しく感じる。
そんな夜にスカさんから連絡が入った。

「あの………スカさん?もしかして潜って回収して来いと?」
『ちょっとしたダイビング気分で………どうだい?』
「どうだいって言われても………沈んだって事はかなり深い海底にあるって事でしょ?そんなのどうやって潜っていくんです?」
『素潜りで』
「とうとうボケたかスカさん………」
『はっはっは!!手厳しいね!!』

つい、失礼な事を口走ってしまったが、スカさんは笑いながらそう答えた。

『当然考えはあるさ。今回バリアジャケットに空と同じ様な感覚で海の中を移動出来る機能を開発したんだ。そのテスターとしてとついでに沈んだレリックを回収してきてほしい』

何て画期的な機能。確かに海の災害時に水の中を空と同じ様に自由に動ければかなり救助の効率がよくなる。
実際に使用できればまさに歴史的発明と言えるんじゃないか?

『どうしたんだい零治君?』
「………こんなのジェイル・スカリエッティじゃない………」
『何を言ってるんだい?今の私はジェイル・イーグレイだよ。これからの生活を考えていくならこう言った皆の為に役に立つ物を開発していかないとね』

言っている事は素晴らしいのだが、何だかな………

『それでこの機能は『ダイバージャケット』と名付けようと思っているんだが、言葉通り、バリアジャケットを魔力の泡が覆う。その泡が水から守ってくれる。空気は水から循環出来る様にしてあるから問題は無い。問題は今の段階では高ランク魔導師でなければ長時間の潜水は無理と言った点位かな』
「水圧はどの位耐えられるんです?」
『その辺りも詳しいデータが欲しいんだ。恐らくだけど泡の魔力量に左右されるかな』
「だけど水中だと………砲撃魔法が得意なミッドの魔導師は戦えないんじゃないか?」
『今の所戦闘は考慮してないからね。水難救助用と考えてくれれば良い』
「なるほど………」

確かに水難救助だったら戦闘は必要無いから魔法が使えなくたって問題無いか………

「でもそれなら娘達でも………」
『零治君ならいざと言う時での転移出来るだろ?それなら万が一の時でも問題無いかと思ったんだ』
「なるほど………」

確かに俺だったらいざと言う時に転移で逃げられるかもしれないけど………

『当然報酬も用意するよ。取りあえずこれくらいで………正式採用されたらその内の3割を』
「………マジっすか?」

その金額は初めて会ったときに雇った時と比べればかなり少ないが、それでも今のバイト代の5か月分位にはなる。しかも正式採用されたときにその時の3割なのでかなり美味しい話だ。

『それにそこの海はミッドの中でもかなり綺麗な海で、生態系も地球と違っていて面白いんじゃないかな?たまには星君達と一緒にデートでもどうだい?』
「海中デートか………」

確かに最近学校やらバイトやらミッドの事件やらでゆっくりデートしている暇も無かったな………

「ちょっと星達と話してみます」
『ああ、分かった。返事を楽しみにしてるよ』

そう言って通信を一旦切った俺。

「………さて」

俺はアギト達にバレない様にメールで3人を部屋に呼び出した………

















「おっ、来たな。………ってか随分遅かったな………」

同じ家に住んでいる筈なのに、何故か30分も待った。
そして何故か3人はモジモジしながら並んで俺の部屋のカーペットに正座した。

「だって私達も4人では初めてでしたし………」
「その………」
「心の準備が………」

恥ずかしそうにそう呟く4人。
………一体何を言ってるんだか?

「いや、少し話があるから呼んだだけなのに………」
「えっ!?」
「話!?」
「そうなのか!?」

「いや、他に何があるんだ?」

そう俺が問いかけると3人共真っ赤になってあわあわし始めた。
その様子は可愛いので眼福なのだが、30分も過ぎ、スカさんを待たせているのにも関わらず本題にも入っていない今だと流石に心の底からは喜べない。


結局5分ほど、落ち着くのを待った。

「落ち着いたか?」
「はい………全く、レイはまぎわらしいんです………」
「そうだよ、この朴念仁………」
「迷惑な事だ………」

「俺、ただ呼び出しただけなのに何この扱い………」

キャロや優理を抱っこして泣きたい気分だ………

「で、何の用ですか?」
「あ、ああ………えっとな………」

そう言って俺は先ほどのスカさんの話を始めた………








「「「行きたい!!!!」」」
「おおう!?」

今にも襲われそうな位迫られてそう言われた。
危険かもしれないのにこの反応には少々驚いた。

「い、良いのか?もしかしたら不具合があったりするかもしれないぞ?」
「何言ってるんですか!!こんな経験人生で一度も無いかもしれないんですよ!!」
「そうだよ!!ダイビング、一度してみたかったし、自由に海の中を動けるってすごく楽しそう!!」
「それに海中デート何てロマンチックではないか!!」

「そ、そうか………」

取り敢えず3人は行きたいみたいだ。
実際俺もかなり興味があるし、こうなれば断る理由もないな。

「よし、なら行くか。4人で!!」

こうして俺達は4人で海中デートへと向かう事になった……… 
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