| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦争を知る世代

作者:moota
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六話  三年後。

 
前書き
こんにちは。mootaです。

第二幕の始まりです。
読んで頂けている方が一人でも居てくだされば幸いです。

ちょっとでもいいので、感想がほしいなぁ。。 

 
第六話 三年後。


火の国暦58年6月12日 早朝 稲荷神社
イナリ


パン、パン

静かな空気を割いて柏手を打つ音が響く。

「お稲荷さま、行ってきます。」
そう言いながら目の前のお堂を見る。
古い木造の建物だが、天井だけ新しく見える。

形だけ戻った・・・・そう思う。
神社はその見た目をあの日から変わっていないかのように見せる。
けれど、変わったところもある。お堂の屋根、家、倉庫は新しいものになった。

そして何よりも・・・いた人が、いるはずの人がいない。

あの日のこと、時々思い出す。
神社が炎に包まれている光景を・・・
お母様が、お父様がお堂で死んでいる光景を・・・


本当に形だけ・・元に戻った。


今でも時々、泣きそうになる。
ううん、泣いている。

・・こんなんじゃダメだ。
前を向かないと。
お母様とお父様が天国で泣いてしまう。
強く生きないと。


知りたいこともたくさんある。
あの日、助けてくれた白い狐・・・お稲荷さまだったのかな。
それに僕を包んでいた青い炎・・。
火影様は僕の一族に関係するって言ってた。
ふしみ一族って何なんだろう。

・・・僕は何も知らない、自分の事も、一族の事も、そして何よりあの日の真相を。

この前、中忍の人が話をしてるのを聞いた。
あの日の岩隠れの襲撃は不審なことが多いって。その不審の中に稲荷神社のことも含まれるって。情報が漏れた、いや漏らした人間がいるんじゃないかって言ってた・・・。

本当に誰かが、稲荷神社のことを・・。



もっと学ばなきゃいけない。
もっと強くならなきゃいけない。



そうすることで、僕が今、知らないことを知る事ができるかもしれない。



「さ、アカデミーに行かないと。遅刻しちゃう。」
気持ちを切り替えて、歩き出す。

アカデミーに通うようになって1ヵ月が経った。同じ年頃の友達と一緒に勉強をしている。
楽しい、みんなと一緒にいると暖かい気持ちになれる。嫌なことも忘れられる、そんな気がする。
もしかしたら、戦争をしている今のご時世では、僕同様に戦争孤児が多いのもあるかもしれない。

僕たち戦争孤児はアカデミーに進み、忍になることが決められている。
戦争は常に人を必要とする。それは人が失われていくから。それを補充するために《戦争孤児援助策》というものがある。
これは戦争による孤児をアカデミー卒業までの生活資金、学業資金等を全額負担する代わりに、アカデミーに入学し、忍になることを強制するというもの。

つまり、生きて行きたければ忍になり、里の為、国の為に戦えと言うことですよね。

これは二代目火影がその職にあった時に施行したもので、三代目が現職の今も続いている。
第二次忍界大戦後、非人道的と言われ、廃止されるかと思われたが、戦争による損失の補填、今後の里の戦力向上の為に廃止にはならなかった。
三代目は戦力の補填ができ次第、廃止すると言われていたそうだが、その間に岩隠れとの戦争が始まってしまった。

だから、僕も援助を受けてアカデミーに入学した。

でも、それでよかったと思ってる。
だって、それで友達と一緒に学ぶ事ができる、強くなることができるのだから。

そんなことを考えながら、アカデミーに向かっていった。


火影の役所 執務室
三代目火影

この建物の屋上から里を見るのがわしの日課。
新緑の青々とした匂いを乗せる風が駆け抜ける。
すっとした爽やかな風だ。

その風を割くように、わしの後ろにすっと上から降りてくる気配があった。

「どうであった?」
振り替えることなく、その気配に話しかける。

「はっ、岩隠れは思いの外まとまっているようです。」
その男、奈良シカクが話し出す。

火の国暦55年の里襲撃以降、シカクには岩隠れの里を中心に他里の動向を探らせている。

あの襲撃時には、すでに岩隠れではクーデターが起きていた。三代目土影はどうやら生きているようだが、里を追われどこかに逃れているようじゃ。あの両天秤のオオノキと言われたあの方がの・・・。

そう、考えているとシカクが続きを話しているので意識をそちらに移す。

「クーデターの首謀者である“天戸衆”(あまとしゅう)ですが、若い忍を中心に支持を集めており、支持をしない者には容赦なく罰を与える、そのようにして里を掌握しているようですね。また、若者には“我々は岩戸より隠れ出る者であり、世を真に照らす者である”と、そして、”我らに賛同する者も我らと同等である”と信じこませています。ただ、その手法はまだ、分かっておりません。」

「うむ、まるで宗教じゃの。」
目を細め、ぎゅっと眉を寄せる。

それを見たシカクが重苦しそうに続ける。
「まさにその通りです。事は我々が思っているよりも深刻かも知れません。」

「奴らは支持せぬ者を力で押さえているとお話しましたが、どうやら“天戸衆”は特殊な瞳力、チャクラを使うようです。」

「特殊な瞳力、チャクラか。それで具体的な能力は・・・?」

シカクが罰の悪そうな顔をする。
「申し訳ありません。まだ、分かっておりません。」

やはりか・・・
今回のクーデターの主犯である“天戸衆”のことは、案外早く判明した。しかし、その構成、思想、能力等が分からなかった。どのように隠しているのか、全く敵の内情が探れないでいる。

シカクが申し訳なそうにしている。
いかんな、こやつは優秀であるが故に、調べが付かないことを気にしているようだの。話を変えるか。

「シカク、稲荷神社の方はどうであった?」

「はっ、やはり、情報は流れていたようです。スパイの話では、今や岩隠れの忍の間で噂されておるそうです。うちはや日向などと同じようにです。」
・・・考えがたい、ふしみ一族は里でも知ってる人間は多くないというのに。

「漏れた、若しくは岩隠れに情報を獲られたとは考えられないか?」
そちらであってほしいと思ってしまう。
だが、淡い希望は裏切られる。

「可能性は低いでしょう。何よりも襲撃のタイミングが不審過ぎます。たまたま、あの日だったとは考えにくい。」

そして、わしの希望を突き崩すように話は続く。
「さらには、稲荷神社への襲撃者が一人だけであったと報告がありました。特殊なチャクラを扱う一族への襲撃で一人だけを向かわせるなど考えられません。やはり、事情を知っていたとしか・・・」

わしは何も言わずに目をつむる。
シカクも何も言わない。

考えたくはない、身内に、しかも稲荷神社の秘密を知るのは数少ない実力者、そのうちに情報を流したものがいる。
何のために?
やはり、あれか・・・

「シカク、理由は考えられるか?」
シカクが目を細める。

「三代目が考えておられる通りでしょうな。九尾の封印式での件が原因かと。」


やはりか。
九尾封印式事件・・・九尾を入れ換える際に起こったあの事件。あの事件では、多くの者が死んだ。あれで恨みを持っている者も少なくはないかもしれない。

里の実力者達はあの場に居た者も多く、その関係者の被害もより多い。
他の者はただ、九尾の封印式が失敗したとしか知らぬが、あの場にいた里の実力者達は真相を知っておるからの。
ただ、あれで痛みを被ったのはふしみ一族とて同じなのだが、理解できぬ者もいるのであろう。


「わかった。とりあえず、調べを続けてくれ。あと、うずまき一族にも一応探りを入れてほしい。」

「!?渦隠れも、ということですか?」

「いや、うずまき一族のじゃ。あの場にうずまき一族もおったからの。我々と縁深く、結び付きも強いうずまき一族じゃが、調べねばならんだろう。わしはミト様に探りを入れてみよう。」

「わかりました。」
すっと気配が消え、この場からシカクが去ったことが感じ取れる。


悲しい・・・
いや、虚しいのかもしれないな。
初代様が望んだ木の葉の里は、皆が愛し合い、笑い合う、誰もが幸せになれる里だ。
それが今や戦争は繰り返され、身内同士で恨み合うような事が起きておる。
初代様が見たら、泣かれるに違いない。

もっと、精進せねばならんな。
そう、強く思う。

「さっ、仕事に戻るかの。」
そう言いながら執務室に戻る階段を目指して歩く。


ふと、気がつくと、
いつの間にかよい香りを運んでいた風は止み、生暖かい風が吹いている。


暑い夏がもうそこまで来ているのかもしれない。

 
 

 
後書き
いかがでしたか?

もう、かなりオリジナル設定がはいっております。
オオノキさんが身を隠しているとか、戦争孤児援助策とかですね。

あ、でも原作になる頃には一応元に戻して行く予定です。
今回の進行度から行くと先は長そうですが。
アクションも入れていきたい、今回は説明が長くなってしまい入れられませんでした。ごめんなさい。

また、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。

ごめんなさい、ミト様間違っておりました。
修正しました。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧