少年少女の戦極時代Ⅱ
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ヘルヘイム編
第3話 vsデューク! 小さすぎた力
『ああ。キミは確か――室井咲君だったね。キミも変身してみてくれないかな?』
咲が答えないでいると、青いアーマードライダーは首を傾げ、そしてまた咲をまっすぐ見た。
『そのベルトは貸してあげてるんだよ? いわばレンタル料だ。なあに。大したことはしない。ちょっとした性能実験に付き合ってもらいたいだけだ』
咲は腹に着けっ放しだったベルトをとっさに掴んだ。
(大のオトナの紘汰くんがやられてる。そんな相手にあたしなんかが勝てるわけ――ない。ない、けど)
咲はドラゴンフルーツの錠前を開錠した。
「――変身」
《 カモン ドラゴンフルーツ 》
ロックシードをバックルにセットし、拳を打ち下ろしてロックとカットを同時に行う。
《 ロックオン ドラゴンフルーツアームズ Bomb Voyage 》
クラックから炎の形をした果実が咲の頭に落下し、咲の全身を装甲した。アーマードライダー月花――室井咲の戦装束だ。
「だめ、だ…逃げろっ、咲ちゃ…」
咲とて紘汰を傷つけた相手の言うことなど本当は聞きたくない。だがここで応じず、戦極ドライバーを取り上げられるなどあってはならない。これはリトルスターマインを守るための力だ。
そして今は、紘汰というトモダチを助ける力だ。
DFバトンを繋げてロッドにする。月花はゆっくりとロッドを構えて腰を落とした。
『はあああああっ!!』
馳せる。ジャンプしてDFロッドで上からデュークを打撃しようとした。だが、デュークは弓さえ使わず、右腕のみで受け止めた。
『え…!?』
『ふむ。やはり軽いな』
腕を振るわれ、月花は容易く吹き飛ばされ、地面を大きく滑った。
負けじと月花はすぐに起き上がり、両手で持てるだけのDFボムをデュークに投げつけた。DFボムはデュークに的中して爆発する。
やりすぎたか、と月花が内心焦ったところで、煙が晴れて。デュークはそこに健在だった。
絶望に近い思いで悟った。デュークの防御性能は月花や鎧武と桁違いに上だと。
『う…そ』
『さすがに小学生が変身するとなると、ドライバーのほうがアームズに補整をかけたか――』
「葛葉! 室井!」
知った声に後ろをふり返る。駆紋戒斗がそこにいた。
戒斗は状況を見るなり、バナナの錠前を出してバロンへと変身した。
バロンがバナスピアでデュークに斬りつける。
『お前、何者だ!』
『せっかくの時間を邪魔しないでほしかったんだが。まあしかたがない』
バナスピアが弾かれる。直後の隙に月花はDFロッドでデュークの腹を突こうとした。
しかし今度は、デュークはロッドを掴んで止めた。そしてロッドを持ち上げる。
『あわっ…わ、わ、わ、わ!』
『ごめんよ』
デュークはロッドごと月花を放り投げた。月花は二度地面を滑って転がった。
バロンが入れ替わりにバナスピアを突き入れたが、デュークはこれも難なく躱し、返す弓の二撃であっさり勝負を決めた。
…
……
………
負けたのが悔しいとは思わない。だが、あの凶悪なほど強大な力を持っているのが、よりによって戦極凌馬であることは――
――“そのベルトは貸してあげてるんだよ?”――
咲はぶるりと震えて両肩を自ら抱いた。
ベルトを返す時に添えた手紙に「貸してください」と書いたのは失敗だったかもしれない。これからも「レンタル料」と称して凌馬に戦いを強いられるとしたら。
一度は仲間にも言われた。もうビートライダーズ同士で争うことはないのだから、戦極ドライバーも手放していい、と。そこに咲への労りと感謝が込められているのはちゃんと知っている。
それでも力を手放せないのは――
(紘汰くんと戒斗くんが戦ってるのに、あたしだけ先にリタイヤしちゃいけない気がする)
街を守っている紘汰。巨悪を暴こうとしている戒斗。どちらにも背を向けられないほど、咲も深く事情を、そして彼らの為人を知っているから。
思考の整理はついても心の整理はつかないまま、咲は前を見て、今度こそ家路を急いだ。
後書き
はいさくっと負けました。ここで小学生ライダーが勝ったら紘汰と戒斗立場在りませんから。
戦極さんは紘汰だけでなく咲も気になるみたいです。まあ小学生を被験者にして実験なんてしてなかったでしょうから、小学生の咲が新鮮なんでしょうね。
戒斗からの呼び方は紘汰=「葛葉」に倣って「室井」、苗字呼び捨てにしました。
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