FAIRY TAIL 真魂の鼠
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第二十二話 俺の最後
前書き
こんばんは~☆07です☆
今回はシンの対決!思わぬ相手と戦う事にっ!?その相手とは・・・?
シン目線で書いていきます。
それでは、第二十二話・・・どうぞっ☆
S全「瞬間移動。」
赤面の吸血鬼のS級魔道士の奴等が言った瞬間、辺りが眩しい光に包まれて、俺は思わず目を瞑った。
?「おいおい、いい加減目を開けろよ。こんくらいの光で目を瞑っちまうなんて、男のくせに情けねぇな。」
すぐ傍で挑発的な男の声が聞こえた。俺は少しムッとしながら目を開けると、
シ「・・・はい?」
俺の目の前に広がる光景は、四方八方、うっそうと生い茂る高い樹木が聳え立つ森の中。太陽の光は射さず、森の中は薄暗かった。
シ「こ、ここは・・ど、どこの森だ・・・・?」
辺りを見回しても、ナツ達はどこにもいない。逸れたのか?不気味なくらい、辺りは静まり返っていた。
?「驚いたか?」
シ「!」
声が聞こえた方に振り向くと、左側に逆立った黒髪に黒い吊り目、黒いTシャツに黒いカーゴパンツという全身黒ずくめの男が白い歯を見せながら俺に笑い掛けていた。男の右耳には銀色のピアスが揺れていて、首には銀色の飾りで縁取られた黒い球体のペンダントが揺れていた。黒いカーゴパンツの左ポケットが少し膨らんでいる。
シ「お前が赤面の吸血鬼のS級魔道士の一人だな。俺の仲間はどこだ。」
赤い瞳で男を睨み付ける。男は笑顔を崩さずに、
?「そんなに焦るなって。お前さんの仲間は、俺の仲間と別の修行室で戦ってるさ。ちなみに、ここは赤面の吸血鬼の魔道士専用の修行室だ。この森は修行室に映し出したCGだ。リアルで面白いだろ?」
確かにリアルだが、そんな事を聞いた覚えは無い。
?「お前さんの仲間がどんだけ強いかは俺は知らねぇが、俺の仲間に勝つ事は百年経たねぇと不可能だぜ。」
シ「言ってくれるな。お前の仲間が強いか弱いかは知らねぇけど、あいつ等を本気にさせたら、後悔するのはそっちだぜ。」
CGだが、森の中に緊迫した空気が静かに流れる。俺と黒ずくめの男はしばらくお互いを見詰め合った。男の瞳は、常に何かを見透かしているようで、目を逸らしたり油断したりしたら何かを奪われてしまいそうで不気味だった。だから俺は、冷や汗を流しながらも男から目を逸らさなかった。
しばらくお互い見つめ合うと、男が「ふっ。」と鼻で笑った。
?「そんなに俺の目が怖いか?」
笑顔を崩さず問いかけてきた。俺は黙ったままだ。男はまた「ふっ。」と鼻で笑うと、
ユ「俺はユウヤ・スクレイ。赤面の吸血鬼のS級魔道士の一人だ。」
黒い吊り目が更に吊り上がった。俺はズボンのポケットに手を突っ込みながら、
シ「俺はシ・・・」
ユ「シン・バンギ。妖精の尻尾の魔道士、だろ?」
言おうとしていた事をそっくりそのまんま言われた。ていうか、
シ「何で、俺の名前知ってるんだ?」
俺、こいつと会う前にどっかで名乗ったっけ?
ユ「お前は名乗ってねぇよ。でも、俺はお前の事を知っている。」
シ「!?」
ユ「なぜかは、すぐに分かるさ。」
理由を聞こうと思ったが、「すぐに分かる」という言葉を聞いて、俺は言おうとした言葉をぐっと我慢した。俺は素早く五色腕輪を取り出し、紐から赤い腕輪を外すと右腕に着けた。両手に炎を纏うと、
シ「うぉらあああぁぁああぁぁあああああっ!!」
小さく地を蹴り、ユウヤに向かって駆け出した。すると、ユウヤは笑顔を崩さずに左ポケットから素早く何かを取り出した。それは手の平サイズの黒光りする棒だった。あれがあいつの魔法道具か?
シ「そんな棒で何が出来るんだよっ!」
後三mというところで俺は炎を纏った左手をユウヤに向かって振りかざした。俺の炎を纏った拳は徐々に無防備のユウヤの顔面に近づいていく。ユウヤの顔面まで後三十cmというところで、
ユ「出来るさ。」
ユウヤが小さく呟いた。それとほぼ同時に、俺の炎を纏った拳はユウヤの顔面に・・・当たらなかった。
シ「んなっ!?」
俺は目を見開いた。ユウヤは俺に笑い掛けた。俺の炎を纏った拳は、ユウヤがさっき取り出した手の平サイズの黒光りする棒で受け止められていた。手の平サイズの黒光りする棒は、いつの間にかユウヤの腕と同じくらいの長さまで伸びていて、棒の先端に圧縮された水の球が俺の拳を包んでいた。
ユ「ていっ!」
シ「うごっ!」
俺が驚いている隙に、ユウヤは反対の棒の先端で俺の鳩尾を殴る。俺はよろめきながらユウヤから遠ざかる。
シ「そ、それが・・お前の、魔法道具・・・か?」
痛みを堪えながらユウヤに問う。ユウヤは笑顔を崩さずに、
ユ「そうだ。ナノハナの街の魔法屋で奪い取ってきたんだ。確か・・・物質棒だったかな?」
奪い取ったのかよ・・・
ユ「魔法屋のおっさんの話だと、この物質棒は特別で、持ち運びに便利な折り畳み式バージョンなんだってよ。」
笑顔を崩さずに言った。五色腕輪と少し似てる気がする。ていうか、
シ「お前、物質棒についてやたらと嬉しそうに語るな。」
そんだけ物質棒が気に入ってるのか?すると、ユウヤは物質棒を手の平サイズに戻し、黒いカーゴパンツの左ポケットに仕舞い込んだ。
シ「何だ?俺の五色腕輪の凄さに驚いて降参か?」
すると、ユウヤはきょとんとした表情になった。あれ?俺変な事言ったか?すると、ユウヤが小刻みに震え出し、
ユ「ブハハハハハ!アーッハッハッハ!イヒヒヒヒヒ!ウヒャヒャヒャヒャヒャ!」
お腹を抱えて大爆笑した。
シ「な、何だよいきなりぃっ!」
ユ「イヒヒ・・は、腹いてぇ~・・・ブハハハ・・お、俺が降参だってぇ~?ウヒャヒャヒャ!お、お前も、随分と・・笑わして、くれるじゃねぇか。アハハハハハ!!」
まだ笑いが止まらないユウヤの黒い吊り目に笑いすぎたせいで涙が薄っすらと滲んでいる。
ユ「・・・ふぅ。やっと笑いが収まったぜ。」
あれからユウヤは十五分間笑い続けた。えっ?ユウヤが笑っている間に攻撃しちゃえばよかったのにって?俺も最初はそうしようとしたけど、あいつが笑っているのを見てると、何か攻撃しにくくてよ・・・俺も十五分間ただ呆然と立ち尽くしていた。
ユ「にしても、シン・バンギがこんなにも鈍感野朗だとは思わなかったぜ。」
シ「なっ!?何で鈍感に繋がるんだよっ!?」
話の辻褄が合ってねぇぞっ!
ユ「おいおい、まだ気づかねぇのかよ?だから「鈍感野朗」って、わざわざ俺がご丁寧に言ってるんじゃねぇか。」
どこが「ご丁寧」だよっ!?でも、俺は何に気づいてねぇんだよ?それが分からねぇ。俺が思っている事が分かったのか、ユウヤは「はぁ。」と小さくため息をつくと、首に着けていた銀色の飾りで縁取られた黒い球体のペンダントを外した。すると、
ボワワワワワァン。
白い煙がユウヤの体を包み込む。煙が晴れると、俺の目の前にはユウヤはいなかった。代わりに、黒くて小さな円らな瞳に細い足、黒い羽で覆われた丸い体をした、一羽の鴉が俺の事を見つめていた。
シ「えっ?」
俺はしばらく状況が読めなかった。ようやく分かった時、俺は目を見開いて目の前にいる鴉と視線を合わせると、
シ「お、おい・・ま、まさか・・・」
ボワワワワワァン。
白い煙が鴉の体を包み込む。煙が晴れると、俺の目の前には鴉はいなかった。代わりに、さっきまでいなかったユウヤがいた。
ユ「これで分かったか?俺は『十二支』の『酉』の血を持つスクレイ家の十代目だ。」
俺は言葉を失った。
シ「・・・う、嘘・・だろ・・・・?」
ユ「嘘ォ?何でそう思うんだよ?」
ユウヤが俺の言葉に首を傾げる。
シ「だ、だって・・赤面の吸血鬼は・・・や、闇ギルド、だろ・・・・?じゅ、『十二支』の、血を持つ、人間が・・・闇ギルドに、加入してる訳・・・」
俺は自分の声が震えている事に気づいた。俺の言葉に、ユウヤは肩を竦め、「はぁ。」と小さくため息をつくと、
ユ「お前の心は、広大な宇宙よりも広いな。」
例え方が大袈裟過ぎると思うぞ・・・
ユ「大袈裟になるほどお前の心は広いんだよ。『十二支』の血を持つ人間が、「必ず『光』の人間である事」っていう規則はねぇだろ?」
た、確かにねぇけど・・・
ユ「だから俺は、お前がシン・バンギであり、『十二支』の『子』の血を持つバンギ家の十代目って事も最初から知ってたんだよ。とにかく、ここは暗殺系の依頼ばかり遂行し続けた闇ギルド、赤面の吸血鬼。俺は赤面の吸血鬼のS級魔道士であり、『十二支』の『酉』の血を持つスクレイ家の十代目。そして、今俺の目の前にいるのは『十二支』の『子』の血を持つバンギ家の十代目。今ここで、お前を殺すっ!!」
そう断言するユウヤの黒い吊り目には『光』は射していなく、邪悪な『闇』が見えていた。ユウヤは黒いカーゴパンツの左ポケットから物質棒を取り出すと、手際良く伸ばし、棒の先端に圧縮した雷の球を出現させると、
ユ「でえぇりゃああああぁぁあああぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
物質棒を俺に向かって振りかざしてきた。俺は瞬時に炎を纏った拳で防御する。
シ「だりゃあっ!」
ユ「ぐはっ!」
防御しながら俺は右膝でユウヤの顎を蹴る。その隙に俺はユウヤから遠ざかると、緑と赤茶色の石のブレスレットを外した。
ボワワワワワァン。
白い煙が俺の体を包み込んだ。煙が晴れると、そこには『子』の姿になった俺がいた。それに応えるかのように、ユウヤも銀色の飾りで縁取られた黒い球体のペンダントを外した。
ボワワワワワァン。
白い煙がユウヤの体を包み込んだ。煙が晴れると、俺の目の前には『酉』の姿になったユウヤがいた。俺は小さな手足を必死に動かして走り出した。ユウヤも漆黒の羽を広げ、空を飛び俺を追いかけた。
シ「はぁ・・はぁ、はぁ・・・はぁ、はぁ・・はぁ・・・はぁ・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・はぁ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・はぁ・・・はぁ、はぁ・・はぁ・・・はぁ・・はぁ。」
俺は走りながら時々後ろを振り返る。背後では『酉』の姿になったユウヤが目を光らせていた。そして・・・
カプッ。
シ「うああっ!」
ユ「確保ー!」
俺はユウヤに捕まった。今の俺の状態は、鴉に食べられそうになっている鼠だ。ユウヤはそのまま宙返りをし、急降下し始めた。
ユ「このままお前を床に叩きつけてやるっ!!これでお前はあの世行きだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
俺はギュッと固く目を閉じた。その時、
ボワワワワワァン。ボワワワワワァン。
白い煙が俺とユウヤの体を包み込む。急降下している為、通常より早く煙が晴れると、俺とユウヤは人間の姿に戻っていた。
ユ「くそっ!タイミングが悪すぎるっ!」
シ「おっしゃ!」
ユウヤにはタイミングが悪かったが、俺にとってはタイミングが良かった。俺は両足でユウヤの体を押さえつける。
ユ「なっ!?」
両手に炎を纏うと、
シ「おらあああぁぁああああぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
力強く、ユウヤの顔面を殴りつけた。
ユ「ぐおぉぉおああああああぁぁあああああぁあああぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
それとほぼ同時に、ドドドガガガガガアアァァァァァァァァァァン!!!と凄まじい音を立てて、俺とユウヤは墜落した。
シ「・・ぅ・・・うぅ・・い・・・・ってぇ~・・・・・!」
あの勢い、あの高さから真っ逆さまに落ちて、よく命が残ったと思うとすごいと思う。その代わり、体の骨のほとんどは折れているだろう。そのせいで、起き上がる事が出来ない。
ユ「・・・お、俺の・・完敗・・・だな・・・・い、いてっ!」
ユウヤも命は残ったみたいだ。でも、俺と同様骨のほとんどは折れているだろうな。ユウヤも起き上がる事が出来ないみたいだ。俺は仰向けの状態のまま、
シ「・・・・お、俺の・・勝ち・・・だな。」
途切れ途切れに呟いた。
ユ「・・・認めたく、ねぇけど・・じ、事実、だから・・・仕方ねぇ・・な。」
ユウヤも途切れ途切れに呟いた。
ユ「・・・九。」
シ「ん?」
ユ「今の勝負で・・・お、お前が、勝ったから・・・・お前は、『十二支』の・・中で、九番目だ・・・」
これでまた、俺は『任務達成』への終点に近づく事が出来た。
シ「・・・なぁ、最後に・・一つ聞いて、良いか・・・?」
ユ「何だ?答えられる、限りの事・・・なら、答え・・・るぞ。」
ユウヤならそう言うと思った。俺は一度目を閉じ、ゆっくりと目を開けると、
シ「・・・ユウヤは、何で・・赤面の吸血鬼に・・・・加入、したんだ・・・?」
ユ「・・何だ、そんな事かよ・・・」
ユウヤはしばらく何も言わなかったが、ゆっくりと目を閉じると、
ユ「・・・ここが、赤面の吸血鬼が、俺の、最後・・だからだ・・・」
シ「えっ?」
ユウヤにとって、赤面の吸血鬼が、最後・・・?
シ「お、おい・・どうゆう意味だよ・・・?」
ユ「お前が知るのは、まだまだ先だ・・・とにかく、これからは俺も、お前の事応援するから・・・俺の期待、裏切るんじゃねぇ・・よ・・・」
そう呟くと、ユウヤは気を失った。
後書き
第二十二話終了ですっ☆
『十二支』の『酉』の血を持つスクレイ家のユウヤを倒したシン。また『任務達成』への終点が近づきました。ユウヤが最後に言った「最後」とはいったいどうゆう意味なのか?それを知る時が来るのは、まだ先のお話です。
本来、『酉』はニワトリなんですが、FT真鼠では鴉にしました。
次回はナツの戦い・・・って、あれ?赤面の吸血鬼の五人のS級魔道士は全員倒れたけど・・・?
オリキャラ説明にユウヤのキャラ説を足しておきますので、よろしければそちらもご覧下さい。
それではまた次回、お会いしましょう~☆
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