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戦争を知る世代

作者:moota
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第四話 別れと出会い

 
前書き
こんにちは。

くどさ満点の話です。
どうか、ご勘弁ください。
こう、想像を書いてたらこうでなくっちゃと思ってしまいました。
ごめんなさい。 

 
第四話 別れと出会い


火の国歴55年6月12日 早朝 稲荷神社 お堂  
赤い服とその上に薄い茶色のベストを着た人



(まだ、人がいたのか。)
正直うんざりした気持ちを持ちながら、押さえつけている人を見る。
(しかも、子供。)

「はぁ・・」
思わずため息が出る。

自分が今回受けた任務は、“木の葉の稲荷神社にいる人間の皆殺し”だ。
聞いていた話では、ここにいる人間は二人。
「話が違う・・」

(あ、また声に出てしまった。)

自分の下にいる子供を見る。
子供は怯えたような目でこちらを見ている。
正確には、目の前にある鏡越しに、だが。

子供を殺したことは何度もある。
しかし、それは自分に武器を向けてくる子供―所謂、少年兵だ。
無抵抗の子供を殺したことはない。
一気に気持ちが下がるのが自分で分かる。

そもそも、今回の任務はどんなものだったか?

んー、思い出した。
稲荷神社にいる人間は、特殊なチャクラを扱うというものだったはず。
そういう一族の生き残りだとかーだったかな。
ということは、この子供もそうなのだろう。

でも、と少し考え込む。
ではなぜ、任務内容ではいるという人間が二人だったのか。
この一族が脅威であるというなら、もっと詳細に調べているはず。
子供一人を確認し損ねるなんてことあり得るだろうか。
・・・・今考えても答えを見いだせない。
ただ、何かおかしなことに巻き込まれているようで、変に落ち着かない気持ちになった。


「ねぇ?」
震えていて、少し擦れている声が聞こえた・・・



同日 稲荷神社 お堂  イナリ

僕の上に乗っている人は、僕を押さえつけてから何か考えているようで動かない。

この人の服装は、明らかに木の葉の人に見えない。

どうしてこうなっているのか?
この人は誰なのか?
お母様、お父様はどうして起きないのか?

色々なことが頭の中をぐるぐると廻っている。


勇気を振り絞って、僕の上で何か考え込んでいる人に声を掛ける。

「ねぇ?」
声が震える。
少し擦れているのが自分でも分かる。

「・・・なんだ?」
少し迷うような素振りを見せてから、答えてくれた。

「お母様、お父様はどうしたの?呼んでも起きないの。」

上に乗っている人は、ぎくっとしたように顔を顰める。

「・・・・・」
沈黙がお堂を包む。

答えてくれないのでもう一度聞こうと声を出そうとした瞬間・・


「死んでいる・・・」

上に乗っている人は答えた。



僕は・・・
この人の言っていることが分からなかった。


「え?」
(この人は何をいっているの?)


「死んでいるんだ・・・俺が殺した。」
もう一度、静かに言った。



(死んでいる・・・死んでいるんだ、俺が殺した・・・)
この人が言っている言葉が頭のなかを木霊している。

死んでいる。
死んだ。
死。

お母様が?
お父様が?
死んでいる?

もう一度、お母様とお父様の方を見る。
二人は寝ているように床に倒れている。
二人から赤黒い液体が流れ出ている。
それは、自分の下で池になっている。
生臭い匂いが鼻を突く。

少しずつ、少しずつ、
視界が歪んでくる。
前が見えない。
お母様、お父様が見えない。
眼が熱い。熱い。熱い。
身体が震える。
止まらない。
何かが、頬を伝う。
熱い何かが、頬を伝う。
溢れる。
何かが溢れて止まらない。

「うそだ・・・」
声が出た。
でもそれは、震えてきちんと言えていない。


「本当だ。」
誰かが答えた。


ずっと頬を熱いものが伝う。
前が見えない。

「うそだ!」
今度は大きな声が出た。


「本当だ!・・・お前の親は死んだ!」
大きな声で返される。

死んだ。
死んだ。
お母様が?
お父様が?
死んだ?
もう会えないの?
もう話せないの?
もう遊べないの?

二人の顔が浮かぶ。
二人と過ごした日々が浮かぶ。

優しいお母様。
心地いい声で僕の名前を呼んでくれるお母様。
ぎゅっと抱きしめてくれるお母様。

かっこいいお父様。
いつも一緒に遊んでくれたお父様。
大きな手で僕を抱えてくれたお父様。

色んな場面が駆けていく。

「あ、あぁああ・・・」
何も考えられない・・・
何も・・・
何も・・




『イナリ・・・イナリ・・・・イナリ・・』

どこか遠くで声が聞こえる。

『イナリ・・・』

また、声が聞こえる。
それに、何だか体が暖かい。
まるでお母様に抱きしめてもらっているみたい・・・


『イナリ!・・・』

「ん、んん・・」

『・・・気が付きましたか?』

少しずつ眼を開ける。
すると、自分の体が青白いものに覆われているのが分かる。
「なに、これ?」
これ、とっても暖かい。

『・・あなたが次の・・・ですよ・・・』
声がした。
意識が朦朧としていて、はっきり聞き取れなかった。
そこには自分の体よりも大きな白い狐が座っていた。
・・そこでまた気を失った・・・
 
 

 
後書き
どうでしたか、くどかったですよね。

でも、自分では納得してるので大丈夫です。
さて、戦争で相手を、人間を殺すときどんな気持ちだったのでしょう。
原作でも霧の国編などで悲しい表現がありました。
そんな人間臭いとこが書ければと思います。

ありがとうございました。 
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