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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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記録断章 ~一夜の追憶~

 
前書き
評価点5000pt突破。まさか完結前にこの域に辿り着くとは思わなんだ・・・ 

 
断章  ぽんず 死亡~再登場までの間


カチャカチャコチャカチャ・・・

何所とも知れない、手術室を思わせるその部屋に佇む一人の男がいた、年は中学生か、若しくはそれより少し若いほどだろうか。不思議なデザインの衣を着込んだその男は、手術台に寝そべる猫耳の女性の身体を一切傷付けないまま、どういうトリックか次々に構造を造り替えていった。
それは彼が非常に優れた空間操作技術を持っているが故に出来る芸当である。

『ぅまーお・・・』
「そう言うな。流石に猫の姿のままでは戦いは難しいのだ。一応猫の姿でも使えるようにしておくが・・・主を護る他のならこちらの姿を使えばよい」

何もない空間から響いた不機嫌そうな猫の声に返事をしつつ、男は手早く女性の身体をチェックする。

「太上老君からカツア・・・譲ってもらった旧式怠惰スーツは上手く加工できたの。足りん部分を妲己の金霞帽(きんかぼう)をバラして使ったから精神耐性もかなりのものに仕上がっておる。哪吒用の予備宝貝も役に立ったのは僥倖よ」

彼が先ほどから彼女の身体に組み込んだとするそれは、嘗てこの星で行われた「封神計画」終了直後のどさくさ等で回収した”宝貝(パオペエ)”という兵器である。

・・・ちなみに「旧式怠惰スーツ」とは太上老君という仙人が独自に開発した宝貝で、驚異的な強度、衝撃吸収能力、冷暖房、防音、etc・・・挙句の果てには人工呼吸装置までついた究極だらけスーツの事であり、最終決戦ではあの”四宝剣”の確立変動攻撃に耐える事に成功したある意味究極の防御宝貝である。(最終決戦でとうとうひびが入り破損したものを彼が半ば奪う形で持って行った。)

簡単に言えば、このスーツは周囲の時空間を歪曲させることでその考えられない強度を実現している。今現在、この女性の肉体に傷をつけられる存在は地球上でも殆どいないことになるだろう。

「ついでだから尻尾の中にニセ禁鞭も組み込むか。倉庫に転がっておった物を再利用じゃ!」

ニセ禁鞭とは張奎という仙人(1000年ほど前に道士から昇格した)が使う「禁鞭」という宝貝の劣化コピー品である。本物の禁鞭の10分の1の力しか持たないが、そもそもオリジナル禁鞭が射程距離半径数㎞、同時複数攻撃および多段攻撃可能、直撃を食らえば仙人クラスでも即死という出鱈目な性能を誇るので偽物でも十分強い。

この時点で改造される女性には攻防共に隙が無くなった。禁鞭は遠近中全ての間合いにおいて等しく威力を振るう万能タイプなのだ。

「ついでに封神計画終了のどさくさで地上に放置されておった四聖の宝貝も組み込んでおこうか!なぁに、消費する仙力はあの女禍と同等のレベルを誇るお前のご主人にも杏黄旗(きょうこうき)を通して負担してもらうから実質使い放題じゃ!」

四聖は「封神計画」の最中に一度交戦した敵の仙人たち4人組の事だ。それぞれ水を操る混元珠(こんげんじゅ)、大地を司る劈地珠(へきちじゅ)、遠隔操作型で凄まじい破壊力を誇る開天珠(かいてんじゅ)、無数のビームを発射し移動手段としても使える拌黄珠(ばんこうじゅ)を持っていたが、計画途中でひっそり敗北していたのだ。それを彼が回収し、使いやすいようにいくらか加工した。
なお、杏黄旗は特定の場所からエネルギーを受信する宝貝だ。

しかし彼女の肉体の基礎は魔法で構築されている。仙人の使う兵器を体に取り込めば不具合も10や20では済まなくなる・・・が。

「いくら魔法とは言っても所詮プログラムだから改変くらいちょちょいのちょいっと・・・なんか楽しくなってきたぞ!?ハァーッハッハッハッハッハッハ!!」
『ま、まーお!?』

その青年―――名を伏羲と言う―――は、割かし調子に乗りやすく凝り性な所がある。久方ぶりに仙人としての知識を動員した所為かその辺の想いに火がついたらしく、次々に異空間から余りの宝貝を取り出して彼女の身体に組み込み始めたのだ。

乾坤圏(けんこんけん)金磚(きんせん)、土竜爪、莫邪の宝剣、更には自身の宝貝である打神鞭を基に作った新宝貝「打風輪」に自身の扱う空間操作技術の一部をも魔法プログラムとして組み込み(一種の空間宝貝である)、止めとばかりに女性の頭部に肉体の持ち主―――ぽんずの魂魄を込めた霊珠(宝貝人間の中枢となる宝貝)を埋め込み、彼女は完成した。

魔法行使可能。宝貝使用可能。魔力と仙術エネルギーの精製、送信、受信可能。限定的ながら空間操作技術使用可能。組み込まれた宝貝の数(複数で1つと数えるものは1とする)、計16個・・・・・・なんだこれ。



この男、実はあの「司書」に並ぶ次元に至ってる存在なのでけっこう呑気してた司書もこれにはビビった。手に持っていた「封神演義」という漫画をデスクに置き、乾いた笑いをもらす。

『フラスコの中で勝手に劇物が出来ちゃったよ・・・参るよなぁ、伏羲(かれ)には。”僕たち”の存在に気付いてる節があるし。あーヤダヤダ、”歴史の道標”と勘違いされないように自重しなきゃね・・・』





断章  忘れられた分身苗


魂魄で構成された分身はオリジナルが消えたとしても動き続ける。何故ならば魂魄の一部を切り取って作られているから、欠片であっても本質的な部分はオリジナルそのものであることに変わりはないのだから。

よってオリジナルが今現在愛する猫を死なせてしまって絶望の淵にいたとしても、日常的に町を動き回っている分身の苗たちには関係のない事なのだ。
今日も彼女たちは自分たちに必要だと思う行動をとり、町中を駆け回っている・・・とはいえ、魂魄だけなので幽霊みたいなものだが。頑張れば生身の人間っぽい感じで姿を見せる事も出来るのでむしろ都合が良かったりもするし。

で、そんな彼女達は町で具体的に何がどう起こっているかなど知らない。オリジナル苗と魂魄をリンクすれば分かるが、向こうが一方的に繋がりを断っているのか全く繋がらない。そして目の前には排除する必要がありそうな謎の化け物たち。彼女たちは状況に困惑しながらも戦い続けるしか選択肢が無かった。


そんな最中、彼女たちは驚くべき光景を目撃した。

(どうする?)
(一先ずみんな合体!)
(そだね、オリジナルのふりして接触しよう)
(情報が足りなーい!!)

こうして分身苗は彼女たちに歩み寄った。


「うおーい!アリサちゃ~ん!すずかちゃ~ん!!」
「あっ、苗!!アンタ電話にも出ないでどこほっつき歩いてたのよ!!」
「良かった、苗ちゃん無事だったんだね?」
「いやぁ~携帯家に置いたまま夕日に向かってランニングしててさ?メンゴメンゴ」
「アンタは変わんないわねぇ・・・」

話を聞いたところ、2人は町をうろついているうちに八神家+なのは、クロエ兄妹に助けられたらしい。クロエ君ってのんびりしてるように見えて意外と強いのね・・・

「・・・シャマルちゃんは私が預かるよ。はやてちゃんの親戚さんだし面識あるから!」
「アンタに限って心配はいらないと思うけど・・・気をつけなさいよ」
「私たちは家に帰って大人しくしてることにするよ・・・ところで苗ちゃん」
「なーに?」
「その・・・ううん、やっぱり何でもない!」

・・・ふむ。片手でシャマルちゃん抱えてたのがいけなかったかな?それとも分身だってバレた?何れにせよシャマルちゃんの身柄確保ーさー二人を見送った後にはやてちゃん達の所に向か・・・って、え!?

「ちょちょちょ、シャマルちゃんの身体が崩壊してるぅー!?」
「「「何だとォォーーーッ!?」」」

※分身苗は未だに残滓の存在を理解していないのでシャマルと残滓シャマルの見分けがついていません。

原因は全く以て不明だが、シャマルちゃんの身体が端の方からぱらぱらと黒い粉みたいになって崩壊し始めている。当のシャマルちゃんは凄く苦しそうな顔をしながらも意識不明のまま。シャマルちゃんは元々魔法プログラムだったことを考えると・・・

「死にかけてるのかも・・・!!」
「そんな、嘘よね!?」
「でもこのままじゃ・・・!」
「どうする!?剣を使って元に戻す!?」
「でも安全性が・・・」

分身ズの顔色が変わる。このまま身体がすべて崩壊したら、シャマルちゃんはマジで死んでしまうかもしれない。崩壊の進行具合から他の八神家を読んでも間に合わないだろう。

ちょっと天然シャマルちゃん。台所のマッドサイエンティスト。そんな彼女をこんな所で、目の前で喪う。そんなものに納得できるはずもない。はやてちゃんも他の皆だってそう思うはずだ。
ではどうする!?剣か、剣を使うしかないのか!!どう思う、(わたし)!?

「もう迷ってる暇はあらしまへんで!」
「せやで工藤!今使わんといて何時使うんや!」
「んだ!いまこそ使い時だっぺ!」
「なんくるないさー!けせらせら!かむさはむにだー!」
「ぽいぽいちゃくんてとっとてるり!ばーまばーまてろー!」
「ま~ぐまぐまま~ぐまっ!!」
「ぶっ生き返せー!!ぶっ生き返せー!!」

2人ほど何言ってるか分からないが多数決で使用決定!

「神剣抜刀!!全能の剣よ、シャマルちゃんを救い給えーーー!!」


ぺかーっ!と光が周囲を包む。その光が収まった先には―――

「うぅ・・・ん」

「やった!成功だよ成功!!」
「ヨッシャーーー!!」
「・・・あれ?でも何かおかしくね?」
「ぐまっ。まぐまぐ、ま?」

「「「「こっこれは・・・!?」」」」

世界は矛盾を嫌う。嫌った結果がどうなるかは別として。





断章  アースラのブリッジにて


「・・・どうやら、”アレ”は今度こそ消滅したみたいね」
『そうみたいだ。それにしても、クロノは強くなったな。あれでもう少し身長があれば男として文句なかったんだが・・・』
「それは贅沢っていうものよ、あなた。それに身長伸びなかったのは貴方が死んだストレスとかもあるんじゃないの?」
『好きで死んだわけじゃないよ・・・おっと、そろそろ身体を保てなくなってきたね』
「クロノに通信繋ぎましょうか?」
『いや、一目見れただけで十分だよ。それじゃリンディ・・・出来るだけゆっくり”あちら”に来てくれると嬉しいな』
「ええ、新しい旦那でも見つけて人生を謳歌させてもらってからにするわ。誰かさんの所為で女の幸せが少ない人生を歩んでるもの」
『はは、手厳しいな・・・それじゃ、また』
「ええ・・・いつかまた、会いましょう」


「艦長、いま誰と話していたんですか?」
「え?さあ、誰かしらね・・・」





断章  理想は現実になるか?


じぃ、っと自分の携帯電話を見つめる。父が買ってくれた、本当に通話とメールの機能した付いていない子供用携帯電話だ。

彼は「後で電話をかける」と言った。だから待っていればきっと電話がかかってくる。でもひょっとしたらかかってこないかもしれない。そう思うと不安で電話から目が離せなくなる。

彼と話をして、自分の父がちゃんと血の繋がった父であることを確認できた。私の身体の調子がおかしかったのも、彼が治してくれた。そして―――私には特別な力がある、らしい。
嘘っぽいけど、彼自身嘘っぽい魔法を使っていたし、大きな乗り物を呼び出して空を飛んでた。そんな彼が言うなら本当なのかもしれない。

「・・・シャイン」

名前を転がす。シャイン。光。shine。・・・ShiNe?シネ・・・?それって、どういうことだろう。嘘の名前だったのかな。お前なんかと仲良くする訳ないだろブスが死んでしまえ、って事なのかもしれない。優しくしてくれたのもディーエヌエーかんてい書というこの紙も嘘だったのかも。
だとしたら彼はいま、こうして携帯電話を眺めている私をあざ笑っている?・・・

piririririrririri!

「!!」



・・・・・・・・・



「また明日ね、って言った・・・」

また明日。明日会いに来てくれる?ひょっとしたら彼はもう私には用済みなのかもしれない。明日彼に電話をかけたら繋がらないかもしれない。
でも、彼は後でかけると言って本当にかけてきた。なら次の約束、と言えるほどのものでもないが、本当かもしれない。

また会える?分からない。でも会いたい気がする。
隣に座って一緒に私の事手伝ってくれた彼。約束を守った彼。とっても不思議な魔法使い。
私の事、知ってた。本当の悩みを分かってくれた、初めての人。
すこしあたまがぼうっとする。身体を動かしている訳でもないのに心臓が高鳴っている。
シャインのことばかり考えてる、私。

「・・・また、会いたいな。願って実現するのなら、また会いたい」


火照った顔を隠すように布団にくるまった月子は、ぬいぐるみのマロミを抱きしめながら眠れない夜を過ごした。

『つ、月子ちゃん・・・苦しい、苦しいから、ちょっと手を緩めてぇぇ・・・』
「また会いたいな。シャインに会いたいな・・・♪」
 
 

 
後書き
実を言うともう最終話まで書き終わってる。
流石に最終話で誤字は格好付かないのでチェック中なのよ。

宝貝「打風輪」は封神演義本編では打神鞭の技の一つとして登場した物です。何となく思いついただけで実際にはそんな宝貝は存在しません。イメージとしてはブラスタのSPIGOTとかみたいなリング状の宝貝。 
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