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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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ここが本当の正念場 ラストバトルin海鳴

 
前書き
※おそらく過去最長です。
※今回はやりたかったネタ大放出です。
※6割くらいスパロボやってます。
※シャマル先生があられもない姿になります。

以上のコンテンツを許容できるならば、前へ進め若人よ。 

 
割といい加減なあらすじ!


リリカル魔導師連合軍と海鳴魔導戦術隊は共同戦線を展開し、エネルギー供給の途絶えたナハトヴァール戦闘躯体を破壊したかに見えた!だが、ナハトの残骸は消滅するどころか再生を開始!
何と、既にナハトの残骸は現世に定着してしまっていたのだ!!

定着した理由は「闇の書」のバグである転生機能と無限再生機能の2つを司る『永遠結晶エグザミア』!
無限の力を持つエグザミアを身体に組み込まれていた「闇の書」の一部ナハトヴァールは、肉の身体を得た瞬間にエグザミアの永久機関を再現し、崩壊から免れていた!これすなわち意識体から完全に独立した肉体を得たことを意味する!!

破壊不能な無限の力を持ち、永遠に再生し続ける化物に絶体絶命の魔導連合と戦術隊!だが、彼等にはまだ残された最後の手段があったのだ!!それは、無限の力を破壊するために、同じ無限の力をぶつけるというもの!!

だがしかし、無限の力同士の激突をこの世界で行えばその威力は星を砕いてしまうだろう!だから、彼らは一度ナハトの身体を八つ裂きにし、中核であるエグザミアを強引に抉り出して異空間へ転送!そこで無限の力を使うという策に出た!!!

果たして彼らは無限の力に抗うことが出来るのか!?衝撃の結末を見逃すな!!もしもチートシリーズ完全決着編、始まります!!!」

「お兄ちゃん誰と話してるの?」
「おおフェイト。画面の向こうでカップラーメンずるずる啜ってる皆に状況を説明してるのさ!物語内で全部こまごま説明するのが面倒で時間短縮を図ったわけでは断じてないぞ!!」
「そうですよフェイト。あれが読者さんへの細やかな配慮というものなのです。決して手抜きクソ野郎の手抜き執筆などではないのです」
「分かんないけど分かった!!」
「流石我が娘!察しがいいわ!!」
「じゃあ説明も済んだところでこれから一緒に殴りに行こうか!!」

この色々と大変な状況にふざけているとしか思えないテスタロッサ一家だが、彼らはこれで通常運行である。既に戦闘民族と化している彼らを動揺させるものはせいぜい家庭崩壊の危機くらいだろう。
そんな中、既に大体の魔力を使い切ったニルスと肩を組んで飛ぶクルトが取り敢えず指揮を執る。作戦内容は大体伝達済みなので皆の動きに淀みは無かった。

「先ずは近接戦闘組!湧いて出た触手共はレヴィが蹴散らせ!その隙にダブルヴィ―タ同時攻撃!!」


「よっしゃああああ!!パワー極限! 雷 刃 封 殺 爆 裂 けぇぇぇぇぇんッ!!!」


勇ましい叫び声と共にレヴィの背後に莫大な量の稲妻が渦を巻き、次の瞬間数多の電刃が一斉に解き放たれた。縦横無尽に駆け巡る電刃はナハトの残骸から発生した大量の触手を瞬く間に切り裂いていく。電刃の名は伊達ではないことを証明するように、電光石火の斬撃は瞬く間に進路を確保してゆく。
が、流石に数が多かったのか撃ち損じが出始めた―――その直前に援護が間に合った。飛び込んだのは残滓フェイトだ。


「続けて仕掛けます!!プラズマランサー・リンケージシフト!・・・ファイアッ!!」


レヴィのそれに比べ威力は劣るが数の上なら負けてはいない稲妻の刃が、残る触手を薙ぎ払った。2種類の電撃が3次元的に空域を駆け回り、2人のヴィータはほぼ直進でナハトの残骸の間合いへと潜り込む事に成功する。
援護を受けた残滓ヴィータは残滓フェイトの手腕に舌を巻く。

「雷刃封殺爆裂剣と自分の魔術を併合させて、レヴィの持て余した電気を応用して発射してやがる!即席で思いついたとは思えねぇな・・・よーしアイゼン!カートリッジをありったけロードしろ!!」
「アイゼン!こっちもロードだ!」
『『Gigant Form!!』』

巨人の鉄槌が下る時が来た。左右を挟み込む形で展開したナハトの残骸に負けず劣らずの体積を誇るそれは、空を押しのける豪快な風切り音と共に全く同時に襲いかかった。


「「判決―――汝を圧壊に処す!双天爆砕・・・ツヴィリング・ギガントシュラァァァーーーークッ!!!」」


本来ならばあらゆる魔術を弾き返すはずの多重魔法結界をガラス細工のように砕く裁きの鉄槌が、ナハトの残骸を文字通り”圧壊”させる。砕け散って空を舞った魔力光とグラーフアイゼンの放った光が夜空を金色(こんじき)に染め上げた。

「ちっ・・・まだ元気いっぱいってか?」
「あわよくばぺっちゃんこの押し花みたいにしてやろうと思ったんだけどな・・・」

―――が、それでも潰れた端から再生・・・いや、最早膨張とでも呼ぶべき速度で溢れ出る異形のパーツ。そして、それを読んでいない魔導師連合ではない。既にそれすらも抉り取るための準備は済ませてあった。

「読み通りだな・・・!2人とも火を放て!!」

「疾れ明星!颯天(はやて)の翼に業火を宿せ!」
「駆けよ嵐隼(はやぶさ)ッ!!灰を掻き分け焔を抱け!!」
『Sturm Falken!!』

穹に矢を(つが)えるは烈火の射手。炎を宿すは知を司る星光の射手。限界まで引かれた弓と吐き出されたカートリッジが齎した魔力が、実態無き(やじり)を形作る。

2人の射手が生み出すは、この世の何より眩く燃ゆる幻の魔鳥。


「「 星 光 纏 い し 不 死 の 鳥(ル シ フ ェ リ エ ・ フ ェ ニ ッ ク ス) ッ!!」」


紅蓮の不死鳥が、戦場に顕現した。
途中再生した触手を文字通り灰に帰しながら邁進する炎の鳥はナハトの残骸に直撃し、煉獄の炎すら生ぬるいほどの熱量を以て爆ぜた。次々と身体から炎を吹きだし、パーツが溶解を始める。
地獄の窯を覗くような灼熱に周囲の海が全て蒸発し―――それでも尚、その身の大半を焦がして尚化物は止まらない。

「目標健在。更なる追撃が必要です」
「まだコアが見えないか・・・」
「しかし再生速度は落ちてきている!あの巨体を維持するのにエグザミアの魔力が追い付いていない証拠だ!!」
「だったらここは・・・アタシに任せてもらおうかぁぁーーーーッ!!」

闇の書の残滓が告げた化物の限界。それを見るため、アルフは単身未だ火の消えぬナハトの残骸へ飛び込んだ。魔力と無意識化でコントロールしている無限力で極限まで強化された掌が、ナハトの残骸のパーツ・・・背部のリングを鷲掴みにし、金属パーツに指がめり込んだ。

心臓から湧き上がる熱い血潮が全身に広がり、そして―――


「ぬぅぅぅぅぅおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁああああああああッッ!!!!」


―――ふわり、と200メートル大の巨体が宙に浮く。

「・・・んな馬鹿な」
「アカン、これガンバスターやのうてGガンかジャイアントロボの世界やった・・・」

これには流石の(テスタロッサ家を除く)一同も唖然とした。人間の持てる重量とは思えないそれを使い魔の身で持ち上げているというのだ。最早彼女の力を持ってすれば将来現れるであろう某ヴォルテールさえ投げ飛ばされてしまうだろう。

だが、攻撃はまだ始まってすらいない。何とアルフはジャイアントスイングの様に掴んだリングを有らん限りの力でぶん回し始めたのだ。その風圧に耐える一同だったが、巻き上がる突風に未だフェレット状態のユーノが紙きれのように吹き飛び―――

『うひゃぁぁぁーーーー!?』
「おっと、大丈夫?」

――ー後ろの方にいたぽんずに負ぶわれた苗にキャッチされた。

『ふう、助かっ―――』
「命拾いしたね、フェレット君?」
『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!女の子にされるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?!?』
「お、落ち着いてユーノ君!?大丈夫だから!苗ちゃんには事情話したから!ユーノくぅぅぅぅぅぅん!!」


とまぁそんなコントを繰り広げている間に、アルフは”馬鹿げたジョーク”を現実のものとしていた。竜巻のような遠心力を持たせたナハトの残骸をその勢いのまま空に放り上げたのだ。
馬鹿げた質量が宙を舞い―――馬鹿げた使い魔がそれを追う。

「せいっ!せいせいせいせいせいせい!!せぇぇぇぇいッ!!!」

蹴り上げる。殴り上げる。蹴り上げる。殴り上げる。上昇を続けるナハトの残骸に拳と脚で猛烈な追撃。拳を振るたび巨体が陥没し、蹴りが放たれるたびに図体のどこかがへし折れる。やがて高度1000メートルにでも届くほどまで浮かび上がった肉塊を―――黄金の右足が蹴り潰した。


「ライトニングメテオ・・・インッ!フェルノォォォォォッッ!!!」


全身に回した全ての力を右足一本の身に一点集中させた雷神の蹴撃が、愚かなる獣を再び海鳴の岩礁に叩き落とされる。海底が砕け、もはや地形が変わり無数の地割れで見るも無残に変わり果てたその場所に、更に4の白銀が降り注ぐ。

「これも持って行くがいい!!」
「彼の者の傲慢を戒めよ!!」
「「『鋼の楔』ッ!!!」」

2人のザフィーラが極限まで注ぎ込んだ魔力の拳だ。二人の両手から合わせて4つ、未だにもがく巨体に輝く聖釘が撃ち込まれた。鋼の楔の延長線上にあるその魔法はシンプル故に強力。例えどれほど足掻こうとも、そう簡単に抜け出せる拘束ではない。

そして、動けなくなってしまえば最早それは唯の的に過ぎない。

「シグナムさん・・・ッ!!」
「応ッ!!!」

体力を回復させたクロエの手に光るエタルド。
最後の魔力を振り絞った残滓シグナムのラグネル。
そして―――シグナムから一時的に借り受けたレヴァンティンを握る漆黒の鎧が同時に三方から取り囲む。
勿論鎧を遠隔操作しているのはクロエだが、一時的にその操作を管理人格「ゼルギウス」に一任することで鎧でも全力を振るえるよう調整が施されていた。


「君の運命を知るのは・・・空から見下ろす月の光だけでいい」

蒼炎。


「偉大なる空に抱かれて果てよ!これぞ奥義!!」

烈火。


《――――!!》

そして、唯の”刃”。



「 大  月  光 !!」

「大ッ!天ッ!空ッ!!!」

《―――――――ッッ!!》



 = = =



―――その乱舞を舞っていた頃、残るメンバーの内、なのはとシャマルが最後の一撃に向け準備を始めていた。既にディアーチェ、はやて(リィンユニゾン済)の3人は追撃を仕掛けるために飛び立っている。

「ね、ね、リィン・・・じゃなくて今は闇の書だっけ?」
「・・・どうしたのだ、湖の騎士?」
「今の闇の書・・・あーもう言いにくいからヤミちゃんでいいや!」
「何だその突発的かつ唐突によく分からない面倒事に巻き込まれてしまいそうな漫画の登場人物みたいな名前は!?言っておくが髪の毛を自在に動かしたりは出来ないぞ!?」
「いやそうじゃなくて・・・あ、リヴァイちゃんもこっち来て」
「何ですかその三白眼で人類最強のチビな進撃漫画キャラみたいな感じの名前は!?言っておきますけどリィンは立体機動は出来ても巨人の駆逐は出来るかどうかわかりませんからね!?」

ここぞとばかりにボケて存在感を示そうとするシャマルにもうすぐ消えるかもしれないため必死で長いツッコミを入れる融合騎2名。本来シャマルは『旅の鏡』によるサポートという大事な役目があった筈なのだが、後からやってきたプレシアに仕事を根こそぎ持って行かれてしまいこのままでは救急箱のまま終わってしまうという絶望的な状況に立たされていた。

「こほん・・・皆、出番欲しいかーーー!?」
「「おーーー!!」」
「ニューヨークへ行きたいかーーー!?」
「「いや別に・・・」」
「では作戦を説明しますよ!!」

2つ目のボケにはいったい何の意味があったんだ、と訊きたくなった2人だった。おそらく最後の見せ場、ここで一花咲かせねば読者の皆様に忘れられてしまうというものだ。


その隣では・・・

「でね?私が頑張って魔力を振り絞るからフェイトちゃんが・・・」
「すごいよなのは!レイジングハートも!そんな魔法思いつきもしなかったなぁ・・・」
「えへへ~・・・お兄ちゃんが剣道してるところ見て思いついたの!」

原作主人公2名も最後の一撃に備え作戦会議を行っていた。互いのデバイスにカートリッジシステムなどと気の利いたものは付いていないが、やはり唯で終わるつもりはないようだ。



 = = =



それは一撃一撃が武の道を極めた必殺必滅の剣。敵を屠る為だけに抜かれた神の刃。
3人の剣士の剣の演武が化物の身体を散らしてゆく。一撃一撃がその身を焼き、裂き、砕き、そして最後の一撃にて大地諸共華を散らすように引き裂かれ尽くす。

音さえも置き去りにする神速の斬撃を繰り出す漆黒の鎧を、シグナムは自身も斬撃を繰り出しながらも驚かずにはいられなかった。驚きの理由の一つ、それは鎧の中身が「からっぽ」であること。機械ならば機械で驚きだが、あれは本当に中に何も入っていない。だが、それを上回る驚きがその圧倒的な剣技の実力である。
明らかに自分より数段格上。一閃一閃が驚くほどに速く重い。今日初めて握ったであろうレヴァンティンをまるで自分の武器のように振り回し、カートリッジシステムまで使いこなすこの剣士が凄まじい習練を積んでいたことは想像に難くない。(事実、現在鎧を操っているゼルギウスは技量だけなら原作のゼルギウスと同等である)

そしてその動きの一つ一つに・・・クロエの剣術と似通っている動きがあった。彼の剣術はクロエと同じと言うより彼の動きを更に極めた形に見える。事情は知らないが恐らくは剣の師、或いは親か。鎧の中に気配は感じられないが、その剣には騎士としての強い意志が確かに感じられた。


昔、どこかで聞いたことがある。人の魂をレンキンジュツと呼ばれる魔術で鎧に移す術師がいる、と。魂を移された鎧は破壊されるまで宿った魂の意思によって動き続けるという。

(死してなお、弟子の行く末が気になったか?ならば存外、厳つい鎧にそぐわぬ優しい人間だったのかもな)

・・・世の中には知らない方がいいことも有る。現実はなかなかに美談とはいかないものだ・・・特に転生者の周りは。
尚、これは未来の事になるが・・・彼女の情報も高町家に勘違いとして伝わり、クロエは余計に鎧の正体を言いにくくなったという。


『3人ともそろそろ引いてぇな!今から王様と私でその子を吹っ飛ばすでー!!』

矢は手からの念話にすぐさま反応した3人は弾かれるようにその場を散会し、ズタズタになりながらもまだ再生しようとするナハトの残骸が残った。その残骸をチェーン、ワイヤー、リングなど実に様々な拘束魔法(バインド)が一斉に縛り上げた。後方に下がっていた苗、ユーノ、クルト、マリアンの4人同時束縛である。

「どんなに壊しても膨れ上がるなら、ふん(じば)って抑えつけてやるさ・・・!」
「何も役に立ててないんだから、これぐらいは!!」
「ここからが正念場よ、踏ん張りなさいよ男の子!」
「初めてだったんだけど・・・まぁまぁかな?」

・・・苗のバインドが馬鹿に大きい。祭りに使われるしめ縄のようなサイズでみしみしと音を立てながら拘束するそれは、バインドと言うより処刑道具に見えなくもない。だが、これから処刑されるということを考えれば間違いでもない。

そう、これより残骸に最終地獄が訪れる。



 = = =



「やるんだな・・・本当に!」
「わ、私もこんなこと初めてだから上手くいくか不安ですぅ・・・」
「女は度胸!!ここでやんなきゃ一生後悔することになるわ!」

シャマルのデバイス「クラールヴィント」が指輪より伸び、碧の輝石はツヴァイを、蒼の輝石はヤミを包む。

「シグナムもヴィータも出来るんだから、同じヴォルケンリッターの私に出来ない道理はない!!」
「だからと言ってこれは・・・」
「ちょっと無理が・・・」
「無理を通してして道理を蹴っ飛ばすって昔偉い人が言ってました!!」

3人をベルカ式の同調型魔法陣が包み、シャマルは声高らかにその儀式の開始を告げた。

二重融合(ダブルユニゾンイン)!!」

ユニゾンイン。それは融合騎と呼ばれる特殊デバイス―――リインフォース達のような存在―――のみが行える高度な魔術であり、文字通り融合を果たすことで戦闘能力を相乗効果的に増大させるベルカの秘術である。だが、ユニゾンは普通一人と一機で行うのが基本である。
では、2人同時にそれを行ったらどうなるか。


≪光強ければまた闇も(ふか)く、(あまね)く光照らさば、(ことごと)く闇に(おお)われん・・・ク、ククク・・・≫

《《あっちゃー・・・やっぱり無理があったか・・・》》

結論:人はダブルユニゾンをすると中二病を発症する。

清潔感のあった緑の騎士服は残滓の影響か藍色と赤を基調とした色に染まり、その髪は元々の金色を完全に無視した深い紫。口元に浮かべる貫禄たっぷりの微笑は最早あんた誰レベルである。

《やはり精神に異常を来したか・・・だからやめておけと言ったのに。録画されて主にイジられても知らんぞ?》
《3つの人格が同時に存在する訳ですからねぇ・・・負荷でねじが外れちゃってます》

≪アナタ方に、この『ネオ・シャマル』の力をお見せしましょう・・・≫

しかし腐っても鯛。ダブルユニゾンによってシャマルは『ネオ・シャマル』を名乗るに相応しい莫大な魔力を得ることに成功していた。具体的に言うと・・・今限定でSSSランクに手が届いているのだ。今までは戦闘向きの騎士でもなかったためシステム的に回される魔力量が少なかったが、こうなってしまえばこちらのもの、と言わんばかりにどこぞの野菜人みたいな名前で自分を呼ぶその姿は・・・まさしく芸人の鏡なのかもしれない。

≪さぁ皆さん、準備はいいですか?≫
「多分シャマルが別の意味で一番アカンと思うんやけど・・・」
「何だそれは?偉大な王である我の真似事か?そうなのか?」
≪黙りなさい慢心王。自分の事を”我”とか呼んで恥ずかしくないのですか?≫
「うっ!?頭がパーなはずなのに何故かいつもより頭がよく見えるぞこの塵芥・・・!?」
『いつでも準備は出来ています!タイミングを教えてください!』

はやて、ディアーチェ、シャマルの3人による一斉射撃の後、すぐさまなのはとフェイトが攻撃を仕掛ける。バインドの拘束で一時的に再生能力を阻害されている今こそ勝負の時だ。

「ふん・・・合わせろよ、夜天の。ギャラルホルンはとうに鳴った!!」
「タイミング外さんといてな、紫天の。これが私の全力全壊や!!」
≪ククク・・・さあ、おしまいにしましょう・・・≫

言葉は不要。常勝の王は唯その手を振り下ろせばそれでよい。
夜天の主は祝福の風と共に、3陣連結魔方陣を、紫天総べる王は巨大な5重魔方陣を。
ネオ・シャマルはクラールヴィントを用いて展開した増幅魔方陣を3段重ねで展開した。

≪この魔法は空間と時間全てを歪曲し、破壊します―――さあ、覚悟はいいですか?≫
「紫天に吼えよ、我が鼓動!!出でよ巨重―――」
「響け、終焉の笛―――」


≪ディストリオン・シャマルビィィーーーーム!!!≫

「ジャガーノォォォーーートッ!!!」

神々の黄昏(ラグナロク)ッ!!!」


射線上に存在するすべてを殲滅する白、紫、翠の閃光は丁度中心点―――ナハトの残骸を空間ごと呑み込んだ。神の怒りに触れた混沌の獣は、神々の断罪でその罪に押し潰される。最早肉片の一つも残っていないと考える方が自然なまでの破滅の濁流から逃れる術は存在しなかった。



『・・・・・・・・・・・・・・・・私は今、お前たちと本格的に事を構えなかったことを心の底から感謝している』
「ナハトちゃん、反省した?」
《正直調子乗ってた。これからはニルスの言うことちゃんと聞く。だから・・・見捨てないでくれ》
(この子は一体何キャラなんだ・・・)

龍鱗機できっちり存在を定着させ、5体満足で這い出てきたナハトは必死その物の顔でニルスのバリアジャケットの裾を掴んで懇願する。・・・自身の頭部から生えた不思議な形状の角がニルスの頭に何度か激突している辺り、結構天然のようだ。



3つの魔法は中心でせめぎ合い、周囲の魔力素濃度はとうとう90%を突破した。恐らく今現在地球に存在するすべての魔力素が集まっているのではないかというレベルのこの魔力素を―――

「さあ、やろうかレイジングハート!」
「付き合ってね、バルディッシュ!」
『『All right!!』』

―――最後の一撃に丸ごと利用しようとしている大馬鹿者が2人と2機存在すると言ったら、皆さんはどうする?


掲げられた不屈の心の先端に膨大な魔力が集中していく。自前の魔力、フェイトから分けてもらっている魔力、空気中に散っている皆の魔力とこっそり紛れ込む無限力。清濁併呑とばかりにあらゆるエネルギーを集めまくったそのチャージスフィアは膨張を続け――――とうとうギガントシュラークの先端パーツを超えるサイズまで膨れ上がる。今まで空気中にどれだけ出鱈目な量の魔力がばら撒かれていたかを証明すると同時に、なのはのリンカーコアの魔力処理量も馬鹿げていることがはっきり分かる。

「うぅっ・・・これが最大かな・・・!フェイトちゃん!!」
「分かった!バルティッシュとレイジングハートのコントロール同期・・・いっけぇぇぇーーーーー!!!」

レイジングハートと隣り合って掲げられたバルディッシュからレヴィのそれにも劣らぬ莫大な雷が漏れ出し、チャージスフィアに纏わりつく。

次の瞬間、巨大すぎるほど巨大なスフィアが弾け、構えた真上に桜色の魔力光が放出した。

「何だ、失敗か!?」
「いいえ、違うわ」

自身の想像していた展開と違う光景に”暴発”の2文字がよぎったクルトだったが、その考えをプレシアがすぐさま否定した。

「よく見なさい、あの魔力の奔流を・・・」
「・・・!?まさか、放出される魔力を強引に魔力刃に変換してる!?そうか、1つのデバイスでは処理が追いつかなくとも2つを同期させれば・・・!!」
「魔力刃の長さが500メートルを突破、まだ伸びますね・・・フェイトはいいお友達に出会ったようです」
「おい、言ってる間に刃の長さが13㎞を突破したぞ」
「ちょ、いくらなんでも長すぎだ!?」

ちなみに地上から真上に13キロという事は、既に対流圏を突破して成層圏と呼ばれる大気層に到達していることになる。控えめに見ても人間の起こす現象ではない。最早一種の戦略兵器の域である。

「す、すごい魔力量・・・!!レイジングハートを握っているだけで精いっぱい・・・!?」

だが、それだけの規模となれば当然魔力を放出するなのはへの負担も桁違いとなる。当初の予測では10㎞伸びれば御の字という計算だったのだが、既に規定の長さを大幅に上回っているのは嬉しくない誤算だ。
下手をすればコントロールできなくなり、負荷がかかりすぎたレイジングハートごと爆発四散で南無三の可能性がある。何を隠そうレイジングハートが一番焦っているのだし。

「大・・・っ丈夫!!私が、付いてるから!!友達がいればこれくらいのピンチは何度だって乗り超えられるッ!!」

それは魔力刃を延々と形成し続けているフェイトも同じことだ。それでも彼女たちは退かない。媚びない。省みない。この一夜の戦いの結末を見るために、そしてもとより友達として、ここで諦める気など存在しなかった。

と、その負担が急に減少する。はっとなって目を開ければ、レイジングハートには―――クロエの小さな手が添えられていた。バルディッシュにはアルフの手が。そしてその後ろではリニスがその場の全員に強化魔法をかけている。

「なのは、重心を確り。身体の重心が大地と直角になる様にすれば、地面が勝手に手伝ってくれる」
「お兄ちゃん・・・!!うん、頑張る!!」
「全く水臭いよフェイト?あたしだってフェイトの友達だろうに」
「・・・そっか。頼る友達は1人じゃなくたっていいんだよね」
「そして友達じゃなくたっていい。さぁ二人とも!私たちはあくまで単なるお手伝い!後は自分たちで決めるんです!!」

なのはがフェイトを横目で見る。それを見たフェイトは無言で頷いた。

とうとう巨人の剣が振るわれる。


「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」」


刃が傾き、水平になる。2人はそれをあらんかぎりの力を込め、最終目標に向けて横薙ぎに振るった。伝わる魔力の衝撃で2つのデバイスが鉛の様に重く感じられたが、それはこの剣がそれだけの威力を内包している証左だ。
刃の先端が海に激突して跳ねる。収束が崩れた魔力が先端で爆発して海を抉るが、最早この段階まで来れば関係のない事。


「「薙ぎ払え!星ごと敵をッ!!」」


水平線を”薙ぎ払い”ながら轟音を立ててナハトの残骸がいまだあるであろう場所へと進む刃。先端の爆発の所為でどんどん大きくなる"しなり"が水平線を容赦なく切り裂くその様は―――まるで、この地球と言う惑星そのものを薙ぐが如く。

この地球上の何よりも巨大な光の刃が、今こそ最後の敵を薙ぐ時。




「「 星  薙  ノ  太  刀 (スターライト・ ス ラ ッ シ ャ)ァァァーーーッッ!!」」




音が、影が、存在するはずのすべてのものが真っ白な光の中に消え去る。


その切っ先が敵を捕らえた様を、アースラの乗員たち全員が『大気圏の外から肉眼で』確認した。


たった二人の9歳の少女が生み出した刃は―――紛れもなく、『星を薙いだ』。


「私達に・・・!」
「斬り落とせぬもの無し!!」








「捉えました・・・!!」




その瞬間を。

全ての無駄が削げ落ち、『エグザミア』が姿を現すその瞬間を。

シャインと共に話し合った結果、そうすると決めて。

ユーリ・エーベルヴァインは待っていたのだ。

「エグザミアの力を確実に封じ込めるならば、同じエグザミアの力が最も確実だから・・・!エンシェント・マトリクスッ!!!」

エンシェント・マトリクスとは、魔力素を「魔力刃よりも更に純度の高い形」に固定して、それを武器とする魔法である。本来ならば相手のリンカーコアから直接取り出した魔力素を武器とするのだが、今回のこれは特別である。

エグザミアの無限魔力から抽出した力で封じ込めてしまえば、いくらナハトヴァールとはいえ暫くは完全に動きを封じ込められる。

「出来ました、シャインさん!!」
「母さん、頼んだ!!」
「第1座標固定!第2座標、転移座標軸、Z999999・・・さあ、いってらっしゃい?―――因果地平の彼方まで」

大魔導と呼ばれたその才能が可能とする個人空間転移。それが、何の間違いもイレギュラーもなく発動した。









そこはまさしく無を体現するような空間だった。
因果地平の彼方―――時間も空間も何もない、虚数空間の限りなく近いその世界でユーリの戒めを解いた残骸は再び膨張を始める。―――が、その残骸の後ろに、それの迎える結末が待っていた。


『やぁ、最早唯の暴走プログラムでしかない君に今更お喋りをする気はないんだ。それじゃ―――』


それは神性。

それは四龍の長にして最強の超機人。

無限の力をその身に宿す、ただただ巨大な一頭の龍。


それが一度本気で力を振るえば、太陽系などと言うちっぽけな宇宙は塵と化す。しかし、この因果地平の彼方には、遮るものなど存在しない。故に、手加減など必要ない。
コントロールを失い急激な膨張を続けるナハトが砂粒に見えるほどの巨龍が、口を開いた。


『―――特別サービスに最大出力をお見舞いしよう!アカシックレコードからも消し飛ぶ超特大の雷槍だ!!!』


何もなかった因果地平の彼方を、大きな大きな、銀河そのものを吹き飛ばすほど大きな雷が駆け抜け、銀河系を丸ごと消滅させそうな威力の爆発を発生させた。
その規模、ちょっとしたビッグバン。いつまでも宇宙の果てを照らし続けるそれは、最早全能神の所業と同列だった。


『―――これだよこれこれ!!いやぁー・・・・・・やぁっと!遂に!漸く・・・チート能力を全力で使えたぁぁぁぁ~~~~!!!はっはっはっはっ!あっはっはっはっはっはっはっはっ!!!』


この時を以て永遠結晶は、この宇宙から永遠に消滅し―――海鳴の戦いは幕を閉じた。 
 

 
後書き
神に逆らうものは、悪魔に決まってるじゃないか・・・

後は憑代を失った残滓たちの話を片づけて完結となります。もう少しお付き合いくださいな。 
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