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IS 〈インフィニット・ストラトス〉~可能性の翼~

作者:龍使い
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第二章『凰鈴音』
  第二十七話『八千年之神狐(やちとせのみこ)』

 
前書き
本日のIBGM

○不死者の足掻き
Vestigial Dream(VALKYRIE PROFILE-LENNETE-)
ttp://www.youtube.com/watch?v=CjebLP21KWg

○夜都衣白夜
ウシワカ演舞(大神)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/nm8380048

○冷徹なる眼差し
覚悟なき者(大神)
ttp://www.youtube.com/watch?v=NdrWubMdpWM

○新たなる敵
殺戮言語永久機関(VALKYRIE PROFILE-LENNETE-)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm15099546

○武神の出陣
クシナダを乗せて(大神)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm14335190 

 
IS学園・第二アリーナ――

少女たちの激戦の末の勝利は、観客席にいた他の少女たちの心情にも、変化をもたらした。
「……勝った…の……?」
「私たち……助かった……んだよね……?」
「やった……、やったんだ……!!」
恐怖の使者は力尽き、アリーナは徐々にだが、安堵の空気に包まれはじめていた。
ある者は、見ず知らずの隣人と手を取り合い、喜びを分かち合った。
またある者は、緊張の糸が切れて泣き崩れ、友人に支えられていた。
はたまたある者は、早くこの惨劇を忘れ去ろうと、このあとのことや明日の予定を気にかけた。
段々と観客席は、喧騒にも似たざわめきを帯びはじめる。
そんなアリーナの片隅で――

『PipoPipo, PapoPapo ♪』

ピンク色の、耳の付いた球体が、Bカタパルトのマスドライバーの上で、呑気に弾んでいた。

『ウーサギウサギ ナニミテハネル?』
『PipoPapo, PipoPepo ♪』

『ツギイッテミヨー! ツギイッテミヨー!』

――――

第二アリーナ・バトルフィールド内――

奮闘を制した三人の少女たちに、修夜と一夏はゆるりと近づいた。
「すっげ~なぁ、みんな!!」
どこかまだ不機嫌そうな修夜を尻目に、一夏は箒、セシリア、鈴の三人の健闘を絶賛していた。
「あのセシリアのビーム、あんなの撃てたんだな!」
「近ぇよ、馬鹿。セシリアが引いちまってるだろ……」
興奮気味な一夏を、ぶっきらぼうに制する修夜。
そのやり取りに、セシリアは思いがけずクスリと笑う。
「あれは本来、超長距離狙撃のためのビームですの。本当なら数キロメートル先の的を狙うために、その間の威力減衰を考慮して、あの大出力になっているんですわ」
「なるほど、それをたった数十メートル先の相手に直当てすると、競技用リミッターがかかっていても、あの破壊力というワケか……」
「途中まで手動照準(セルフロック)で、照準倍率を変更しなくてはいけないんですけどね」
つまり、セシリアがスターライトmkⅢで放った極太レーザーは、今回のように扱うことは滅多にないうえ、使えたとしても手間がかかって撃つまでに時間がかかってしまうのだ。
「それに、あまり短時間に何発も高出力で撃つと、銃身や機関部が焼けてしまいますし……」
「へぇ~、“諸刃の剣”ってヤツかぁ……」
そんな一夏を、横目で不機嫌そうに見るのが、二名ほど。
(まぁ、セシリアが一番ド派手だったからな……)
箒は他の二人のために時間を稼ぎ、鈴は無人機の抵抗を止めた功労者だ。しかしながら、遠目で見ていると一番目立っていたのは、空を飛びながらビームを放ち、さらに急加速で上から斬撃を加えたセシリアだった。
誰が欠けても不可能だった連携のワケだが、最もダメージ量に貢献した二人が、目立ち方として割を食ってしまったのである。
(それ以上に、自分たちが褒められてないのが、ふてくされている一番の原因だな……)
「それよりも、頑張られたのは箒さんと鈴さんですわ。お二人とも、お疲れ様です」
「そうだな、うん。二人ともお疲れ様っ!!」
機嫌を損ねる二人に気付いたか否か、セシリアはさり気なく二人をフォローする。一夏もそれに気がつき、満面の笑みで二人をねぎらった。
「いや……べ、別に……大したことは……してないっ……!」
「お……おだてたって、約束のことは……許さない……んだからっ……!」
二人とも顔を赤くし、もじもじしながら一夏に返答する。
それを一夏は、何か不味かったのだろうかと、怪訝そうに見るのだった。
(常識力は付いても、鈍感力は相変わらず、か……)
修夜は、えらくまともになったかと思った一夏に対し、おそらく最重要である一点だけは相変わらずなことに、力無くうなだれるのだった。

――ピリリ、ピリリ

そんな寸劇のさなか、五人のISからアラーム音が、一斉に鳴り響いた。
「修夜、これって……!?」
「あぁ、多分な」
一夏が驚きと期待の眼差しで修夜に問いかけ、修夜もそれが期待通りだと、首を縦に振る。
期待を抑えきれないのか、一夏は中空電子画面(マルチモニター)に触れて
〔みなさん、こちらAモニタールーム。聞こえますか……!?〕
そこから聞こえてきたのは、Aモニタールームでアリーナのシステムを奪還すべく、拓海のサポートをしていた真耶の声だった。
「山田先生、俺です、織斑です!」
「織斑君……!?」
「はい!」
〔よ……よかった~~……〕
通信に威勢よく返答する一夏の声を聞いて、真耶は早くも涙声になりかける。
よほど心配していたに違いない。
〔修夜、聞こえてる?〕
「拓海か、お疲れさん……」
次に聞こえてきたのは、システム奪還の功労者である拓海の声だった。
〔そっちこそ、お疲れ様。とりあえず、通信妨害(ジャミング)の音声妨害をしていたプログラムを排除したから、テストも兼ねて通信して見たんだよ〕
「なるほど、映像が無いのはそういうことか」
修夜が拓海の答えに納得していると――
〔それにしても、どうして最後の方は女の子たちに、全部放り投げたんだい?〕
拓海たちには、唯一こちらの状況の判別できるものとして、バトルフィールド内のカメラからの映像があり、それを用いてこちらの戦況を窺い知っていたのだ。
「……不機嫌な鈴をあれ以上刺激すると、揉め事の種でしかないからな……」
修夜はばつが悪そうに小さく言い捨てると、面倒くさそうに鈴の方を見る。
〔なるほど、自分が加わって変に鈴を刺激するよりは、あれだけのダメージなら放任して三人で行かせる方が、変な軋轢を生まずにすむってことか……〕
「まったく、面倒くせえヤツらだよ……」
あの場で修夜自身も、無理に付いていって戦うことは出来た。
だが、自身の機嫌の悪さに加え、鈴の不機嫌さが追加されると、自分と鈴はケンカをはじめてしまい、箒とセシリアの足を引っ張ることになってしまう。それを予見して、修夜は敢えて突き離すかたちで三人を送り出し、ついでにあのあとに一夏も制止していたのだ。
一夏が加わると、今度は箒と鈴がケンカをはじめて、収拾がつかなくなる。
機嫌を損ねながらも、修夜は自分と一夏があの場に加われば、変な混乱が生じることを感覚として察知していたようである。
〔そう言う意味でも、今回のMVPはセシリアになるのかな?〕
「む……?」
〔熱くなると突っ込み気味な箒にブレーキをかけて、跳ねっ返りな鈴を説得して……。
 君の前だからと言って、変に張りきらずにサポートに徹し続けた、っていう意味ではね?〕
少し含みのある言い方をしつつ、マイク越しに拓海が笑みを浮かべているのが、修夜になんとなく想像がついた。
「なんでそこで、俺の名前が挙がるんだ……?」
〔まぁ、そんな返答とは思ってよ……〕
「……?」
何故か呆れられたことに、修夜は釈然としない心地になった。
「それより、そっちの進行具合はどうだ?」
ひとまず気持ちを切り替えようと、修夜は拓海に状況を尋ねる。
〔とりあえず、通信関連はひとしきりって感じかな。あとは一番防御の固い遮断シールドと、入口ゲートのドアロッ…を……す…け……〕
突然のことだった。
拓海からの通信は、先ほど一夏と鈴が体験した“音声の不調”へと変わった。
「おい、拓海……。おいっ……!?」
それ以降、コア・ネット通信から音声は再び失われた。
「なぁ、修夜。これって、俺がさっきの……!?」
慌てた様子で、一夏が修夜に問いかけてくる。
「落ち着け、一夏。俺にも分かっているさ……!」
再び五人の中で、ぼんやりとした不安が広がりはじめる。
その片隅で――

――ガシャリ

何か、金属がこすれる音が聞こえた気がした。
各々が意見を出して論議を交わし合う中、箒だけがその音に気がつく。
音は彼女の背後から響いた。
それを確かめるべく、箒はそっと自分の背後を振り返る。
「!?」
少女が目撃したのは、【倒したはずの無人機】が、上半身を起こして右腕のビーム砲を構える姿。
腕の砲門には、既に限界までビームがチャージされている。
「みんなっ、逃げろ、無人機が……?!」
箒がそう叫び、全員が無人機に注目した瞬間、ビームは最大出力で放たれた。
無人機はビームを撃つと、その負荷に耐えきれずに自壊し、今度こそ果てた。
修夜と一夏がが、一瞬のうちに行動を起こし、全員の前に立って盾になろうとする。
だが放たれたビームは、その速度で対応できるような遅さではなく、その場にいる全員を巻き込めるほど大きかった。

駄目だ、間に合わない――

全員が、無念と絶望の淵に落とされようとしていた。


(きょう)――!」


瞬く間の出来事だった。
修夜たちが光に呑まれんとしたとのとき、一つの人影が颯爽と現れ、こともあろうに【大出力で放たれたビームを腕の一振りでアリーナの吹き抜けの天井へと弾いてしまった】のだ。
弾かれたビームは遮断シールドに激突し、アリーナ全体を震わせる。
その振動ののち、やられたと思い、身をこわばらせる一同が、自分たちの無事に気が付き、固くつぶった目をゆっくりと開けた。

すると、自分たちの前に誰かが立っていた。
身の丈、おおよそ百六十センチメートル後半。髪は腰まで届く白銀の長髪、それを後頭部でお団子(シニオン)にして布をかぶせ、さらにそこから三本の尻尾上に分けて結っており、それぞれの先端にはさらに髪紐が巻かれている。肌は雪のように白く、絹のようにきめ細かい。服装は黒の腹掛け、群青色の腰巻に菜の花色の帯と赤い帯紐、脚には太腿まで届く白い脚絆、腕は和服の袖だけを切り取ったような奇抜な白い腕抜き。首には首輪と、勾玉のネックレス。腰には、当人の身の丈に届きそうな大太刀が()かせてあり、また帯から小さな黒い瓢箪が下がっている。
顔は小振りで美麗、かつどこか妖艶。金色の瞳を宿す悪戯っぽくつり上がった目、筋の通った形の良い小振りな鼻、口はやや小さいが薄く紅をさした唇は何ともいえない(つや)を放つ。
体はその扇情的な衣装に見あい、かたちの良い豊満な胸に、細く引き締まった腰回り、極上の曲線美を体現する桃尻から脚に向けてのライン。世間の健全な男が見れば、生唾を飲むほどの色香である。
そんな、この場から、あからさまに浮いた身なりの“絶世の美女”が、そこに腕を組んで佇んでいた。

「やれやれ、久しぶりに可愛いバカ弟子の顔を拝みに来たというのに……」
色っぽい唇から、童女とも娘とも老人とも、鈴が転がるようにもかすれているようにも、大らかそうにも挑発的にも、楽しんでいるようにも呆れているようにも、だがたしかに喜んでいるように聞こえる、そんな複雑で妙なる声が発せられた。

この場にいる誰しもが、その姿に驚いた。
特に【セシリアを除いた全員】が、この美女のことを“嫌というほど”よく知っていた。

「……し……」
修夜が、かつてないほど間抜けな顔で“し”の音を口にする。


「ししし……ししょおおぉぉぉぉおおっっ!?」


「元気か、バカ弟子~」
修夜に“ししょう”と呼ばれたその美女は、マヌケ面の修夜をはっきりと“弟子”と呼び返し、ひらひらと手を軽く振った。
「び……白夜(びゃくや)先生……!?」
「マジかよ、何で先生が俺たちの学校……ってか、アリーナ(ここ)にいるんだ……!?」
箒が白夜と呼んだその女性は、彼女と一夏に向き直る。
「その気配と魂魄(こんぱく)の波長……、お主(ぬし)、篠ノ之箒か?」
見慣れない顔に一瞬思案するも、白夜はえらく“スピリチュアル”なことを言いだす。
「ぁ……はいっ、お久しぶりです、白夜先生……!」
「おぉ、やはりそうか。いやいや……、ずいぶんとまた美しく成長しおったのぉ~。特にそこに、“立派に実ったもの”をぶら下げよってからに……!」
「むむっ……、胸ことは……どうだっていいじゃないですかぁ……!!」
まるでセクハラオヤジのように箒の胸を品定めする白夜に、箒は顔を真っ赤にして恥じらい、とっさに両腕で胸を隠した。
「はははっ、(うい)ヤツよのぅ~」
それを見て、白夜はカラカラと愉しそうに笑う。
「師匠、セクハラも大概にしてくれよ……」
修夜が呆れた口調で、白夜を諌めようと忠告する。
「そういうお前はどうなんじゃ、修夜。男として、目移りしてしまうこともあろう?」
「えっ……!?」
修夜をからかうように問いかける白夜の一言に、何故か箒が戸惑いの声を上げた。
「……中学時代、あれだけ師匠にセクハラされると、もう多少の色気じゃ動じませんよ……」
「な~んじゃ、つまらん奴よのぅ……」
「誰のせいですか、“誰”のっ……!」
丁々発止で漫談を続ける師弟を横目に、箒は修夜が自分に対して“そういう”見かたをしていなかったことに、ホッとしたような、でもどこか残念だったような、奇妙な気持ちに駆られるのだった。
(……いやいや、おかしいだろ私。何でこんな気分に……!?)
その感覚に、箒は自分から急いで訂正を入れ、悶々と悩みはじめるのだった。
「して、そっちの西洋人は?」
今度は、セシリアに向き直る白夜。
「あぁ、俺のクラスメイトで、俺や一夏の仲間の、セシリアだよ」
「あ……、は…はじめまして、連合王国代表候補生のセシリア・オルコットと申します……!」
修夜からの紹介を受けて、セシリアは白夜に少し慌てながらも、礼儀正しく挨拶をする。
「連合……、あぁ、イギリスのことじゃな。なるほど、なるほど……」
そう言うと、白夜はセシリアを箒の胸ときのように、じっくりと観察しはじめる。
その態度に、セシリアは少しばかり身構える。
「……っと、紹介が遅れておったわ。
 ワシは夜都衣(やとい)白夜。四詠桜花流(しえいおうかりゅう)総代で、そこの修夜の師と養母と、あと将来的には【嫁の一人】になる予定の者じゃな~」
「よっ……?!」
さらりと爆弾発言が飛び出し、思わずセシリアは目を白黒させた。
「師 匠 っ!?」
修夜は、手紙をポストに入れる感覚で爆弾を投げた師に、血相を欠いてつっこみに入る。
「なんじゃ、好いた男がたまたま養子で弟子だったという、単純な話じゃろ?」
「そうじゃなくて、アンタ、“まだ”【あの話】引っ張っているのかよっ!?」
あの話。
それは、修夜がまだ白夜に拾われ、しばらくの頃のことだった。
晩酌中でほろ酔い気分で白夜が、修夜に「ワシの婿になれ」と言い寄り、それの意味をよく理解せず眠気まなこだった修夜は、何の気なしに二つ返事でこれを了承したのだ。
以来、修夜に対する白夜のスキンシップは“セクハラ”へとレベルアップし、しばらくのちに来た多感な中学生時代に、修夜は度の過ぎた白夜の“お色気攻撃”に悩まされ、悶々とする日々を送ることになった。
その反動……もとい苦行の成果か、修夜の扇情への耐性は、修験者のように堅固なのである。
「当たり前じゃ、言質(ことじち)はしっかり取らせてもらっておるからのぅ」
「そうじゃなくって、大いなる誤解を生むから、往来でその話はやめてくれっ!!」
珍しくタジタジになりながら、修夜は必死に白夜に食い下がる。
「あの……、えぇ~っと……」
その様子にセシリアは、大いに戸惑い動揺する。
「落ち着け、セシリア……。あれは師匠の悪ふざけだから、毎度の冗談だから……!」
「失礼な、好いた男に“惚れた”と言うて、何が悪い」
「だから、今はひっかきまわさんでくれって……!!」
困り果てながらも、修夜は白夜の仕掛ける爆弾に、四苦八苦しながら対処していく。
「あ…の……、しゅ…修夜さんの……」
「ただの“育ての親”で“師匠”だから、ホントに、恋人でも、婚約者でもないから……!」
「そ…そう……ですか……」
白夜に付け入る隙を与えまいと、修夜は矢継(やつぎ)(ばや)に応える。
くたびれながらも語気を強めて話す修夜を見て、セシリアはとりあえず彼の言葉を信じ、納得しておくことにした。
「ずいぶん言いつくろうのぅ……。恋人か?」
やまない笑顔での爆弾攻撃。
「ち……違いますっ、わたくしと修夜さんは、そ…そんな“破廉恥”な関係ではっ……!?」
顔を焼けた石炭のように真っ赤にし、セシリアは今までになくうろたえていた。
「師匠っ、アンタ初対面の人間にナニ聞いてんだっ?!」
「違うのか?」
「人の話、聞けよっ!?」
「はっはっはっ、すまんすまん、ちと()(ごと)が過ぎたかのぅ~!」
からからと大笑いする白夜に対し、修夜は気疲れし、あとの三人は呆気にとられるばかりだった。
「……おや、そこで隠れておるのは……」
(ぎくっ……!)
敢えて目につかないよう、四人の影に隠れていた鈴だったが、努力の甲斐もなく白夜に見つかってしまった。
「……なんじゃ、鈴か……」
特に何の感慨も無く、ノラ猫でも見かけたかのように、あっさりと鈴から目を離す白夜。
だが、この態度が逆に鈴の気に障った。
「ちょっと待ちなさいよ、何のよその態度!?」
「いや、大陸に帰ったと覚えていたんじゃが、あっさり出戻ってきおったなぁ、っと……」
「で……出戻りっ……?!」
「なんじゃ、違うのか?」
先ほどの無邪気な様子から一転、白夜の態度は随分と冷めたものだった。
「こう見えても、今のアタシは中国の代表候補生なのよっ!?」
「……で?」
「えっ……」
「だから、それがどうしたというのじゃ。代表候補とやらなら、そこのセシリアという娘もそうであろう。お前さんは何か特別なのじゃ?」
言われて、鈴はますます顔を険しくしていく。
かたや、白夜はそんな鈴を見て、呆れたように冷ややかな溜息をついた。
「あたしはね……、中華人民共和国・十数億人の中の、選ばれた人間なのよ。そこら辺の、おままごとみたいな試験で上がってきたようなのと、一緒にしてんじゃないわよっ!!」
威勢良く啖呵を切った鈴。
それを変わらず、冷淡に見つめる白夜。
小さな沈黙が、五人のいる場所を占めていく。
ピリピリとした空気が、二人のあいだに広がっていく。……が――
「ぷふっ」
白夜は、呵々大笑(かかたいしょう)した。
噴き出したかと思うと、(せき)を切ったように、見ていて不気味なほどに、大笑いした。
修夜たちが困惑するなか、ただ鈴だけが、その行動に怒りを加速させていた。
「……何がそんなにおかしいのよ、若作りババァっ!!」
鈴はその笑い声に負けない大声で、白夜に暴言を吐き捨て、叩き付ける。
するとわずかな引き笑いのあと、白夜はゆっくりと言葉を発しはじめる。
「おかしい……、おかしいのも飯事(ままごと)に興じていおるのも、全部貴様ではないか。
 のぅ、凰鈴音?」
白夜が向けた笑顔に、鈴は言いようのない恐怖を感じた。
殺人鬼が、獲物を見つけてそれに笑いかけている。そんな身の毛のよだつ笑顔。
「少しばかり、屋根の上からお前たちの戦い方を、見物させてもらったぞ。
 色々とひどい戦い方だった。ここであげつらえていれば、日が暮れてしまうほどにな。
 なかでも鈴、貴様の戦い方はなんだ。あの腑抜けた、やる気のない戦い方はなんだ。ひどいという以前に、もはや論外だ。よくそんな腑抜けで国を背負っているだの、選民思想だのに酔えるもの……いや、酔った“演技”が出来たものだな?」
不気味な笑みのまま、白夜は鈴の瞳から心を覗き見るように、彼女に目を合わせる。
視線を逸らしたくても、金色の魔の視線は鈴の姿を不可思議な力で引き付け、縛り上げる。
「はっきり言ってやろう、貴様には“覚悟”というものが無い。
 己が魂に聞かせ、殉ずるに値するものが、砂の一粒ほどにもな。
 まるで夜の暗闇を恐れ、一人で喚きながら棒切れを振りまわす幼児(おさなご)そのもの。
 貴様はそう、“この世界という無明(むみょう)に怯えておる”……!!」
蛇髪の女怪(ゴルゴーン)の眼の如く、鈴を縛り上げる白夜の金色。
無抵抗のその少女に、容赦のない“言の葉の槍”が急所に突きたてられる。
それに対して、鈴は怯えながらも唇を切りそうなほどに強く結んで噛み、気丈に耐えてみせる。
「もういいだろう、師匠。鈴への説教なら、あとでも出来る……!」
険悪になっていく雰囲気に耐えかねてか、修夜が白夜を引きとめに入る。
修夜の制止を聞くと、白夜も鼻から息を抜いて、鈴から視線を外して腕を組み、他の三人のいる方へと向き直った。
それを見て修夜も一息つくと、単刀直入に質問をぶつける。
「――で、質問。【屋根の上からお前たちの戦い見ていた】って、どういうことだよ……?」
何気なく鈴への問いかけの中で聞こえた、白夜の不穏な一言を、修夜は聞き逃さなかった。
「あぁ、そのまんまの意味じゃよ。向こうの屋根の上から、見物しておったんじゃ」
言って白夜は、観客席を覆っている、耐衝撃用シェルターと兼用のアリーナの屋根を指さす。
「ちょっと待て……いや、師匠ならそのぐらいは屁でもないか……」
「どうした?」
「いいえ、遮断シールドなんて、師匠にしてみれば扉の開いた玄関に等しいかな、と……」
何の気なしに白夜は話しているが、現在、このアリーナには外から侵入するすべが見当たっていない。入口ゲートは固く閉ざされ、立ち入りは不可能。空中も遮断シールドがレベル4で設定され、バトルフィールド内には、空中からも小蠅一匹出入りできない。
白夜がこの場に立っていること自体、実際にはあり得ないことなのだ。
「あぁ、あの結界のようなものか。あんなもの、店先の暖簾(のれん)のようなもんじゃろう」
ひょうひょうと言い切る白夜を見るにつけ、一同はつっこむ気力すら失せてしまった。
「……さて、それよりも修夜よ」
一同の様子も素知らぬ顔で、白夜は修夜に声をかける。

「どうやら、次の客人のお出ましの様じゃぞ……?」

その一言を待っていたように、アリーナの遮断シールドの状面から、静電気がはじけるような音が聞こえてきた。
見ると、空中から遮断シールドをやすやすとすり抜けて、周囲の風景に擬態した透明な影が、空から降りてくる。
その影は、アリーナのフィールドから少し浮いた位置で停止し、自身に施していた光化学迷彩を解除して、修夜たちの眼前に現れた。
「なっ……」
「うそ……だろ……」
「何の冗談だよ、こいつは……!?」
全員が悪い夢でも見ているかのように、一瞬にして顔を青ざめさせた。
「コイツらは……!?」

そこに現れたのは、【先ほど倒したはずの無人機とまったく同じIS操縦者】だった。
しかも今度は、【二人】。

その姿を見た観客たちは、それまで弛緩していた危機感は再び刺激され、またしてもパニックを起こしはじめた。
再び阿鼻叫喚(あびきょうかん)に包まれるアリーナ。
「なんでまだあんなのがいるのよっ!?」
「終わりよ、今度こそ終わりよっ!」
「出して、早くここから出してぇ!!」
女子たちの悲痛な叫びは、瞬く間にアリーナを席巻し、地獄がよみがえっていく。

「やれ、やかましいのぅ……」
そんな様相を白夜は、近所の騒音を煩わしく思う程度に聞き流す。
しかし、修夜たちは目の前の状況におののき、その顔に焦燥の色をにじませていた。
「おいおい、またあんなバケモノを……しかも今度は二つも同時にか……!?」
一夏の中で、焦りとためらいが徐々に“恐怖”へと変貌しはじめる。
「さっきはみんなで辛勝だったが、あれを二体同時に相手取る体力なんて、もう……」
箒も、実際に戦ったものとして、目の前の相手の危うさは身に染みて理解していた。
「わたくしたちはまだしも、一夏さんの体力は……」
セシリアのほうは、連戦で疲労がたまっている一夏が気にかかるらしい。
さきほどの勝利は、五人揃ってはじめて得たものだが、そこに至るまでに一夏の体力はかなり消耗されている。とどめを刺した戦闘には参加せず、多少休めたとはいえ、所詮は付け焼刃でしかない。
他の四人も、一夏ほどではないとはいえ、疲労の色は拭えない。
「そもそも、さっきのが偵察で、今来たのが本隊って可能性も無くはないぞ……」
その一言に、五人のあいだでさらに不安が広がりはじめる。
先ほどの強さで敵情視察なら、本体であるあの二つはどれほどの強さなのか。それを疲労で精彩の欠いた現状で、対応できるかなどは、なおさら無謀としか言えない。
「やれやれ……」
“弱気”という魔物に足を掴まれ、ずるずると引き下がる一同を見かねてか、白夜はため息一つのあと、おもむろに皆に出る。
「ナニを弱気になっておるのやら……」
そう言いながら、組んでいた腕を解き、手首を回して、首を左右に傾ける。
「状況が好転せぬ以上、あの鉄の人形を相手にせねばならないのは、自明の理じゃろうて……」
「人形……って、じゃあ、あれも……!?」
「“気”も魂魄の“波長”も、一切感じられぬ。においも、金属と油の臭いしかないしのぅ」
スピリチュアルの次は“野性の感覚”。まったくもって、掴みどころのない(じん)である。
まだ一同がぼんやりとするなか、白夜はさらに一歩二歩と、前に歩み出る。
「修夜、一体はワシが“遊んでおいて”やろう。
 その代わり、あと一体は【十分】で片付けろ。当然、そこの(うつけ)も参加させてな。
 出来なければ一週間、昼夜を問わず修行づけじゃからな……?」
とんでもない無茶を修夜にふると、白夜はそのまま風のように駆け、新たな無人機へと向かっていった。
「ちょ……ちょっと、お待ちになってくださいませっ、危険すぎますわっ!?」
「いいや、心配しなく出大丈夫だ、セシリア」
「修夜さんっ、ナニをそんな呑気な事を……!?」
大太刀以外の武装らしいものが無い白夜を、無謀と思い引き留めにかかったセシリア。だが修夜は特に焦る様子もなく、セシリアの制止を無粋とも言いたげに、逆に止めに入った。
「端的に言うぞ。師匠は千冬さんが『ISあっても戦いたくない』って、逃げ出すほど強いから」
「…………はい……?」
セシリアには、修夜の言っていることの意味が分からなかった。
ISはそれだけ一機で都市一つに大打撃を与え得る、一騎当千の兵器である。
そして織斑千冬は、第一回世界大会(モンド・グロッソ)での優勝を十代の内に勝ち取り、今なお世界有数のIS操縦者として、憧憬と羨望を集める稀代の女傑だ。
その兵器が、その女傑が、無敵の二つが“裸足で逃げだす”というのだ。
それを理解できるかといわれても、まず常人には及びもつかない事態である。
「え……えっと、それはISに匹敵し得る、何か特別な兵器を――」
「無いな。あれぐらいなら、大太刀一本あれば(なます)に叩くだろうし……」
「……はいぃぃぃいい……!?」
いつも淑女然と優美に構えるセシリアの顔が、このときばかりはとても間抜けなものになった。
自分たちがさんざん苦労して撃墜した金属の怪物を、あの妖艶な美女は【生身】であしらってしまうのだと、修夜は言っているのである。
「そんな……そんな荒唐無稽なお話が――!?」
「白夜先生なら……イケるな……」
「うん……、白夜先生なら……舞を舞うように、華麗に倒しそうだ……」
修夜の証言が信じられないセシリアだったが、一夏と箒の遠くの故郷を望むような、生気の抜けた目と空笑いを見て、二人はその“片鱗を見た”ことで自分の無力感に浸っているのだと、直感で理解した。
「気を抜いている場合じゃないぜ……」
ぐずぐずの雰囲気の中で、修夜は全員に気を引き締めるように声をかけた。
「師匠が一体潰し終えるまでに、俺らはもう一体を潰さなきゃならない。
 俺個人の進退もそうだが、一番はまたパニックになったこのアリーナを、もう一度、鎮静化させなきゃならないってことだ」
十分以内での無人機の撃破。
とてつもない無茶ぶりだが、これを成功させなければ、修夜は白夜から一週間こってりと絞られることになる。それだけならまだしも、事実、現状を打破するには、無人機を再び黙らせる必要がある。
「そんなこと言っても、宛てはあんのかよ……!?」
一夏がもっともらしい一言を、修夜に向けた。
「俺の【ブラスト】と、一夏の零落白夜(れいらくびゃくや)を解禁すれば、たぶんな……」
「ブラスト……?」
修夜の口から、聞き慣れない単語が飛び出した。
「セシリア、Bピットルームで話しただろ、“格闘特化の重装型”の新装備のこと」
「……あ、あれ……ですか……?」
修夜は突撃作戦の前にシルフィから、『ASBLシステム』の“新装備”が追加されたことを、セシリアとともに知った。それは、拓海曰く“近接距における無敵の装備”であり、修夜が『斬奸突撃(ざんかんとつげき)の“烈風”』と称したもの。
「なになに、なんか秘密兵器でもあんの……?」
「まぁ、隠し玉にするつもりでもなかったが、使うタイミングを逃してしまってな……」
一夏が興味深そうに、修夜の話に耳を傾けはじめた。
「一言でいえば、一夏、お前の白式とコンセプトは同じ。
 “突っ込んで叩き潰す”っていう、一撃必中の“格闘バカ”な武装だ」
「ちょ……、いくらなんでも、ちょっとひどくね、その言い方……」
オブラートに包まない修夜の発言に、一夏はちょっと傷心になってしまう。
「でも、打撃一発の攻撃力なら、おそらく『エアリオル』でも“最強”の武装だ。
 そこに一夏の零落白夜が重なれば、たとえあの化け物でもひとたまりもないだろうさ……!」
強い確信を持っているのか、修夜の言葉は終始、力強いものだった。
「そんなに……なのか……?」
箒が、修夜の核心の所在を問いただす。
「実戦投入は今回が初めてだ。
 だけど拓海曰く、『下手すると競技用調整でも相手を重体にしかねない暴れ馬』らしい……」
自然と眉を寄せた修夜の言い方に、箒は思わず息を飲む。
相沢拓海という男は、飄々としてこそいるものの、仕事に関しては下手な冗談をいうような性格ではない。それを知る者からすれば、彼がそう言ったならば、その可能性は間違いなくあり得るのだ。
「ただ、この装備は“格闘戦特化”、つまり射撃で相手の隙を突くための兵装がほとんどない。
 だからこそ、みんなの協力が不可欠になる……!」
無人機は肩と腕のビーム砲を主軸とした、中距離からの射撃戦を得意とする。
また、見た目の大きさに反して機動力も高い。
これを格闘専用の武装だけで捉えるのは難しい話であり、動きを封じるためには、一定距離からさっきのよう複数人で狙い撃ちにし、釘付けにしてしまうのが最善だ。
「協力と言われましても、具体的には……?」
修夜の意見に対し、セシリアは不安な表情で問いただす。
「俺が思うに、ヤツはロックオンされれば最善の方向とタイミングで逃げるよう、プログラムされている可能性が高いと睨んでいる。
 ロックオンされれば、センサーで状況を判断して、撃たれるまでに最善の回避パターンを展開できるように、な……」
思い返せば、修夜の予測には的を射ているところがあった。
それは正確すぎる予測回避能力と、それ比べて鈍い格闘攻撃や非ロックオ式の射撃武器への反応だ。特に痛打が通ったときの状況は、一対多数でロックオン式を回避され続け、格闘攻撃を避けて退いた“次の瞬間”だった。
「だから、あえてロックオン式の射撃で、ヤツを回避に専念させる。
 そこに格闘攻撃での追い打ちがあればベストだ、ヤツはさらに回避に躍起になるだろう」
これも痛打の通った状況を振り返れば、おのずと見えてきた答えである。
「そこで、だ。箒、セシリア、鈴の三人でヤツを出来るだけ引き付ける……。
 その隙を狙って、一夏が零落白夜でバリアーごと叩き斬るぐらいの攻撃を与え、最後に俺がバリアーの外れたところを“ブラストの切り札”でヤツを粉砕する……!」
それに対し、唐突に異論を挟んできたものがいた。
「……待ちなさいよ、何であたしまで付き合うのが前提になっているのよ?!」
先頃、白夜になじられたことから立ち直ったらしい鈴が、ここでも“(われ)(かん)せず”と主張した。
「師匠が言っていただろ、“お前も一緒だ”ってな。意地でも引っぱって行くぞ?」
「だから、どうして誰かに指図されなきゃ――」
「俺は師匠に言ったよな、“説教ならあとでも出来る”って。あれは師匠なりの叱咤だ。
 あんなもん、俺からすれば『愛の鞭』でも一番ぬるい方だよ」
会話から外れている三人は、白夜のあの狂気混じりなテンションで“ぬるい”と言いきった修夜を見て、普段がどんなレベルなのか、想像するのも恐ろしくなった。
「それに知らないワケじゃないぞ。お前が師匠に、俺や拓海の次ぐらい可愛がってもらっているのは……」
その事実に、一夏と箒は思わず鈴を注視する。
鈴はそれを指摘され、明らかに動揺した。
「アンタ……、どうして……それ……!?」
「一夏もいないのに、師匠の鍼灸院によく顔出して、色々話しているのを見ればな……」
白夜は、修夜たちを養うために、最近まで鍼灸・整体の診療所を開いており、地元でも評判であった。
白夜自身は、知人の伝手を使えば衣食住に困ることなどないが、修夜たちの世間体を考慮した結果、得意の鍼灸と整体を使えばいいだろうと結論付けた。
結果として院は繁盛し、地元では名の知れた診療所として、また老人たちを中心として周辺住民の憩いの場の一つとなった。
その人の群れの影に、ときおり鈴の姿があった。
「“何をしに来てたか”までは知らないが、師匠が珍しく親身になってたからな」
修夜の記憶では、人の波が去る夕方五時前後に、鈴がよく訪れていたと、白夜からこっそりと聞かせてもらっていた。だがそれ以上のことは、修夜に対しても頑なに秘密を通した。
「お前、せっかくの師匠の親切心まで、ここで裏切る気か……?」
その静かな問いに、鈴の顔は今までにないほど、はっきりと戸惑いの色を浮かべた。
二人のあいだに何があるか、修夜にはまるで見当がつかない。
それでも鈴には、さっきの叱咤と今の修夜の一言に、何か響くものがあったらしい。
「鈴……」
俯きながら迷う鈴を、一夏は不安げに見つめていた。
一時の、短く長い沈黙。
その末に、鈴は下げていた手で拳をつくり、声を出す。
「……ゎかったわよ」
風にさえ掻き消されそうな小さな声。
「わかったから……、やればいいんでしょ、そうよね……!」
二度目は、どこかで自分を言い聞かせようとする、そんな荒っぽく大きな返事だった。
「あぁ、やり方は問わないさ。好きなだけ暴れてくれ」
修夜の返事も、あっさりとしたものだった。
「よかった、鈴。やってくれる――」
「その代わり……!!」
鈴が前向きな意思を示したことを素直に喜ぶ一夏の声に、鈴の声が被さってきた。
「その代わり、これが終わったらあの夜の借り、すぐにでも返してもらうわよ……!」
ここに来て、鈴は修夜に自分の暴挙を一夏の前で暴露されたことを、引き合いに出してくる。
だがそれも、どこかとってつけたように、苦しい言い方だった。
それでも、他の三人からすれば理解に苦しむものであり、一様に険しい顔を鈴に向ける。
「……いいぜ。この際だ、これが終わったら、全部白黒つけようか」
いつもならこの態度を糾弾する修夜だが、それさえも今は“諾”とした。
後の三人は、ただ驚くばかりだ。
「他に異論はあるか?」
修夜は全員に、作戦への異議を問う。
皆、一様に沈黙でそれを返す。

「じゃあ、はじめるぜ。ぶっつけ本番の“電撃作戦”を……!!」

その声にやはり返答は無いく、ただ皆一様に、倒すべき敵に向き直り、表情を引き締めた。
 
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