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IS 〈インフィニット・ストラトス〉~可能性の翼~

作者:龍使い
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第二章『凰鈴音』
  第二十五話『雲間に蛍、危機に嵐』

 
前書き
今回のIBGM

○黒き乱入者との戦い
紅蓮の騎士(Xenogears)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/nm3138038

○打鉄S型覚醒
An Illusion of the Brainstem(VALKYRIE PROFILE-LENNETE-)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm16088310

○白銀の戦姫、到来
闘志、果てなく(スーパーロボット大戦)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/nm19494058

○最悪の二択
導火線(Xenogears)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/nm3232168

○台風少女、到来
我ニ敵ナシ(スーパーロボット大戦) or KEEP YOURSELF ALIVE Ⅱ(GUILTY GEAR XX)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm16738113 我ニ敵ナシ
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm18101462 KEEP YOURSELF ALIVE Ⅱ
 

 
IS学園・第二アリーナ、バトルフィールド内――

窮地に立たされた少女の目の前に立ったのは、幼い頃、いつも自分を救ってくれる幼馴染……一夏と修夜の二人だった。

――来てくれた

いつも颯爽と現れ、困った自分を助けてくれる。
そんな二人にいつか報いたいと、自分を磨いてきたはずなのに……。
自分の不甲斐なさが悔しい。
でも今は、それ以上に嬉しい。
「まったく……、待ちくたびれたぞ……、二人とも……!」
悔しさと嬉しさと安心感に、目頭が熱くなり、それを必死に隠そうと、精一杯強がってみせた。
「遅れてごめんな、立てるか?」
一夏は箒に手を差し伸べ、彼女を引っぱり上げようとする。
「あ……あっ、あぁ、ありが……と……」
箒はその行動に少し動揺しながらも、手を差し出して立たせてもらう。
修夜はそれを見つつ、どこか呆れ気味になっていた。
「二人とも、面倒をかけてしまってすまない……」
正直に二人に詫びる箒。
「別にいいさ。こっちこそ、駄々をこねる馬鹿のせいで、少しばかり予定が狂った」
「修夜……!」
何やらトラブルがあったらしく、一夏と修夜のあいだに漂う雰囲気は、芳しいとは言い難い。
特に修夜は、見て分かる憮然とした態度だった。
そしてもう一つ、箒は居るはずの“もう一人”の存在の欠如に気が付いた。
「そういえば、凰は……?」
「……来るのがめんどくさいから、嫌だとよ」
修夜からの言葉に、箒は思わず押し黙ってしまった。
修夜が不機嫌な理由がそれだと気付き、箒も複雑な気持ちになった。
「……俺は信じる、アイツはきっと来る」
対する一夏は、不安ながらもどこかで何かを信じようと、葛藤しているようだった。
≪CAUTION!! CAUTION!! CAUTION!!≫
≪ロックオンされています。攻撃に注意してください≫
三人の中空電子画面に、一斉に黄色い画面と黒いメッセージが表示された。
「くそっ、野郎まだ生きてやがったのか!?」
「飛ぶぜっ、箒!!」
「あっ……、あぁ!!」
三人が上空へ散開すると、その場所に二本の強烈なビーム光が走った。
さっきよりさらに一回り太い。
光源である煙の奥から、四つの赤い目が不気味に光っていた。
その様相に、攻撃を避けた三人も、修夜に近付いてきたセシリアも、得体の知れないバケモノを見ている心地だった。
「大丈夫ですか、修夜さん……」
「あぁ、アレぐらいなら、ソニックのスピードと反応速度があれば余裕だよ……」
セシリアの心配に対し、修夜は問題ないと抑揚なく返事する。
むしろ修夜をはじめ、四人は煙の中から巨躯をもたげて睨んでくる所属不明機(アンノウン)に、いかに対抗すべきかを必死に探っているところだ。
「今ので、どんだけ削ったと思う……?」
一夏は恐るおそる皆に問うた。
「さっき、私とセシリアのコンビネーションで、痛打を一発……」
「そこに俺と一夏のコンビネーションで、さらに……ってなると……」
「もう、半分以上はシールドを削ぎ落していておかしくないはず……。
 いいえ、むしろ箒さんがアレだけのお力で振るった一太刀を受けて、先ほどの攻撃なら、試合形式のIS戦なら、とっくにシールドエネルギーが尽きていてもおかしくないはずです……!」
女子二人でものにした乾坤一擲の太刀と、男二人のコンビプレーを受けてなお、一向に衰えを知らない所属不明機。
「まったく、本当にバケモノみたいだな……?!」
修夜の脳裏に、苦々しい記憶の一片が想起された。
(このタフさ加減、無感情なぐらいに冷たい雰囲気、まるで……!!)
「……っていうか、アレ本当に人間が操縦してんのか……!?」
一夏が、ほろりとそうこぼした。
「……何を言い出すんだ、一夏。あんな動きができるなら、どう考えても……!!」
その一言に、箒が反論する。
「でもさぁ、お前がセシリアとデカイ一発を入れて、俺と修夜があの攻撃入れて、普通の人間なら、ショックで気絶していていもおかしくないぐらいだぜ……!?」
「ですが、ISには絶対防御による生命保持の機能もありますわ。一概にそうとは……」
セシリアも、一夏の意見には懐疑的だ。
何せISは“人間”、しかも一夏と修夜という例外を除けば、“女性”にしか操縦できない。
仮に“別の何か”が操縦しているとするとしても、候補に当てはまるものは見当たらないのだ。
「……箒、セシリア、痛打を与えたって言ったが、どんな感じにだ?」
修夜は眉間にしわを寄せながら、二人に質問をぶつける。
「え~っと……、まずセシリアがビットでカタパルトの下のフェンスまで追い込んだあと、私が逃げ場をなくしたヤツに飛び込んで……」
「そのあと、そこから逃げられないようにビットで上空から掃射をしかけまして、数発当たって怯んだところを、箒さんがバッサリと……」
二人は顔を見合せながら、そのときの状況をざっと振り返った。
「一夏、お前はどうして、囮役を買って出たんだ?」
今度は一夏に問いかける。
「どうって……、ひたすら“俺だけ”を狙ってくるから、必然的に囮になったというか……」
二人の戦いは、モニタールームから窺うことができたが、その経緯までは分かっていなかった。
「一夏さんだけを、ですか……?」
「うん、鈴には攻撃したときに、たまに反撃するぐらいだったし……」
その一夏とセシリアのやり取りを聞いて、修夜はますます怪訝な様子で考えはじめる。
「……変だろ、どう考えても」
修夜がぼそりと呟く。
「変って……」
箒が尋ね返す。
「あのビーム砲での大火力、あの巨体での瞬発力と機動力、ISを殴り飛ばすほどの腕力……。
 どれをとっても一級品のそいつが、なんでそんなまどろっこしい戦い方をするんだ?」
言われて、皆がその矛盾点に気が付いた。
「確かに、それほど突出した機体性能と技量があるなら、一夏さんと凰さんを同時に相手にしても、二人に勝つことはできるはず……!」
最も戦い慣れているセシリアが、最初に修夜の疑念に賛同した。
「……言われてみれば、さっきも私やセシリアを無視して、真っ直ぐに一夏の方に向かっていた。妨害されているのなら、まず邪魔をしている私たちを封じてからのほうが、効率はいいはずなのに……!?」
先ほどまで熾烈な駆け引きを演じた箒も、その違和感を見抜いた。
「俺ばっかり狙って、他のみんなが眼中になくて……。
 なんか、ボールを追っかけている犬っていうか、セシリアのビットみたいというか……」
「い……犬……、ですか……」
どう繋いだらそうなるのか、一夏の少々突飛な例えに、例えられた物体の操縦者は苦い顔をした。
「けど、“ビットみたい”だというのは、あながち間違っちゃいないと思うぜ……」
訝しげだった修夜の目が、この状況で隠された“何か”を捉えようとしていた。
「そもそも、あの所属不明機の目的はなんだ?
 何で一夏ばかり狙う?
 遮断シールドをブチ破れるほどの力があって、何故その力で俺たちをねじ伏せない?
 今までの戦いで、なんで自分の実力に合わない、非効率的な戦い方にこだわる……!?
 それに……、こんなに悠長にしゃべらせておいて、何で不意打ち一つかけてこない……!」
振り返ってみれば、所属不明機の行動は矛盾だらけなのだ。
テロ目的にしては、犯行声明や観客への警告の一つぐらい、あってもいいはずである。
一夏を狙ってきたにしては、取り巻く人間への対処が雑すぎるうえ、手際が悪い。
単純な破壊が目的だとしても、わざわざ遮断シールドに遠慮する必要性が見当たらない。
「それに気になったのが、ヤツの異常なまでの頑丈さだ……」
「……あ」
言われて箒は、修夜の指摘に合点がいった。
「いくら絶対防御で保護されていても、体に来る衝撃は相当なもんだ。
 まして全力での斬撃と、二十メートル以上は吹っ飛ばした蹴りにミサイルの追撃……。
 手練(てだれ)の操縦者でも、それだけ食らえばフラフラで、立つのもやっとだと思うぜ?」
「確かに……。それに、アレだけのダメージを受けておいて、復帰から攻撃に転じるまでの早さも、普通の人間なら無理なぐらいの早さだ……!」
そのことは、先ほど所属不明機からの鉄拳を受けた箒自身が、身をもって知ったことだった。
ここに来て、所属不明機に根本的な“疑惑”が生じはじめる。

「さっき、アイツを“ビットみたい”だと言った一夏の意見に賛成したのは、これだ。
 誘導ミサイルのように、周囲を無視して一夏を狙う不可解な行動。
 大ダメージを食らっても、異常な速さで復帰する頑強さ。
 加えてヤツは、箒とセシリアに一泡吹かされるまで、一夏以外に積極的に攻撃をしていない。
 まるで、そう【プログラムされている】みたいに、だ……!」

一同の心身に電流が走った。
「プログラム……――【ロボット】……?」
一夏の口から、そんな単語がこぼれ出た。
「確かに、各国でISの操縦が可能な【無人機】の研究が進められていると、以前より聞いていましたが……」
「私も、ネットやニュースで聞いたことがある……。
 でもそれは、最近になってようやく、歩行が可能になったとかのレベルの話だったはず……」
いつの時代も、危険なことに対して、できるだけ人命へのリスクを減らしたいものである。
ゆえに各国では、過酷なIS実験における負担の軽減のため、試験用の無人機の研究と開発が進められている。だがISに、機械と人を誤認させるだけでも手こずっているのが現実であり、目の前にいる所属不明機のような高性能の無人機の開発など、まだまだ先の話なのだ。
「仮にヤツが機械、つまり【無人機】だとしたら、今までの矛盾は大方解消できる……!」
つまり、プログラムに沿って一夏だけを狙い、機械の体だから並大抵のダメージにもひるまず、任務の続行に支障が出るから箒の排除に動いた。そう考えれば、矛盾だらけの所属不明機の行動に、一応の説明がつくのである。
「そういえばアイツ、鈴が衝撃砲でロックオンしたときには、撃たれるのが判っているみたいに、“撃たれる前”ぐらいからもう避けようとしていた……?!」
「わたくしも、蒼い雫(ブルー・ティアーズ)での攻撃を、まるで見透かしていたかのような動きで回避されましたわ……!」
一夏とセシリアが、ここでさらに所属不明機の不可解な行動を思い出す。
「私も、最初の斬り込みを、見計らったかのように避けられた……!」
箒も、最初のチャンスを逃したときのことを思い出し、二人に共感した。
「ハイパーセンサーでのレーダーをAIに直結させていれば、ロックを感知するだけで、あとは勝手にAIが演算対処して動くだけ……。人間には不可能な、六十分の一秒単位の反応が可能ってワケか……!」
机上の空論だった『無人機説』に、ますますもって現実性が増していく。
「でも、それをどうやって――」
箒が、その証明法に対して問おうとしたそのとき、下からブースターを蒸かす音が響きだした。
「くっそ、また動きだしやがったか……?!」
「一旦、散開しましょう!」
修夜の声を聞き、セシリアがすばやく散開の指示を全員に出すと、四人はアリーナのBカタパルト側とCカタパルト側に散らばった。
それを見た所属不明機は、迷わず一夏の飛んでいったBカタパルト側へと向かっていく。
「くそぉ、やっぱり俺かよっ!?」
悪態をつきながら逃げる一夏に、無人機は再度、細いビームの連射を浴びせかける。
対する一夏は、それを避けながらフィールド中央からBとCのカタパルト側を中心に逃げ回る。
「あの馬鹿、鈴に被害がいかないように、ワザとあそこで逃げ回っててやがるなっ……!」
たとえ協力を拒まれようと、大切な幼馴染には変わらない。
一夏の行動は、そんな彼の“お人好しぶり”が見て取れるものだった。
『セシリア、箒、一夏の援護に入るぞ。
 仮にヤツが無人機なら、多少のキツイ攻撃でもぶちかませる、遠慮は無しだっ!!』
マイク機能で声を拡大した修夜は、苛立ちながらもそう宣言し、一夏の援護に入る。
その言葉にはじかれて、箒とセシリアも所属不明機に接近を試みる。
「シルフィ、ラプターだ!!」
《了解っ!!》
修夜の声に応じて、エアリオルのAIであるシルフィは、改良領域(カスタマイズ・スロット)からアサルトライフル【ハウリング=ラプター】を現出(セットアップ)させる。
その黒い銃身を握った修夜は、標的に向かって構え、フルオートで発砲した。
だが、やはり銃弾は背中に目があるかのように軽快に回避され、虚しく空を切っていく。
「これなら、どうですっ!」
止む間もなく、セシリアが大型レーザーライフル【スターライトmkⅢ】で狙い撃ちにかかる。
しかし、これも同様に回避。軌道を修正して、再び一夏を追い回す。
「これ以上はやらせん!!」
セシリアの攻撃を躱しきった直後、所属不明機の背後から割り込むようにして、箒が実体刀【(あおい)】を携えて肉薄。三度目の気合い一閃、絶妙なタイミングに見ている皆が決まったと確信する。
しかし――
「なっ……!?」
その一閃を所属不明機は、ことあろうにその巨大な二つの手で鷲掴みにし、実体刀を捉えてしまった。
あまりの自体に動揺しつつ、箒も自分から武器を取り上げよう力を加える所属不明機に抵抗し、必死に踏ん張り続ける。
だが次の瞬間――

――びきっ……、ぼりんっ、べきしっ

「なっ……?!」
全員が、自分の目を疑った。
「ぅえっ、実体刀をへし折りやがったっ!?」
「なんて握力ですの……、実体刀は超合金素材のはずでは……っ!」
実体刀の刃に力を加えた所属不明機は、超合金素材の【葵】をアメ細工での砕くかのように握壊してしまった。
巨大な腕部が、伊達や酔狂で付いていないことを、まざまざと見せつける。
その破壊の愉悦に酔うこともなく、所属不明機はすぐさま箒に怪腕を振り上げ、反撃に出る。
箒もとっさに身構えた。
「やめろぉっ!!」
真っ先に反応した一夏は、弾丸のように所属不明機に突撃し、所属不明機も斜め後ろに跳び上がって、一夏の突撃を回避する。それと同時に、右腕からビームを放ち、一夏を牽制。一夏はこれを紙一重で躱し、箒を庇うようにして彼女の前に立った。
「大丈夫か、箒っ!?」
「う…うん、でも……」
少女の手には、無残に刃を砕かれた実体刀の名残が握られていた。
箒が唯一扱える武器である実体刀【葵】が砕かれた以上、箒には手慣れた武器が存在しない。
悲しげな顔をする幼馴染を見て、一夏は悔しげに残骸を睨んだ。
「なぁ、俺たちの武器と交換とかって、無理なのか……!?」
なんとか箒を励まそうと、一夏は修夜とセシリアに尋ねる。
「む……無茶ですわ……。
 ISの武器は、IS本体に登録されたものでなければ、汎用性の高い後付装備(イコライザ)でもないと……。
 それに箒さんのような量産型ならまだしも、わたくしたちの機体のほとんどは“専用機”、しかも“第三世代型”。一世代分も性能が変わるうえに、私たちの武器では型を合わせようにも、そのIS用に調整されているせいで、余計に……!」
セシリアからの返答に、苦い顔を隠そうとしない一夏。
「……いいんだ、一夏」
「箒……!」
箒の諦めともとれる一言に、一夏はすかさず反応した。
「心配するな、まだ私には焔備(ほむらび)がある。
 銃の扱いは、まだ……全然慣れてないけど……、何もないよりは……いくらかマシだ」
「箒……」
一夏の優しさを無碍にしまいと、箒はショックを押し殺して気丈に笑って見せる。
その痛々しい姿に、一夏もあとの二人も、かける言葉を見つけることは出来なかった。
≪CAUTION!! CAUTION!! CAUTION!!≫
またも白式の中空電子画面(マルチモニター)に、警告文が発せられる。
「くそぉ……!」
再び各々は散開し、去ったその場に強烈なビームが通過する。
「あの肩の穴、腕のと同じビーム砲だったのか……!!」
エアリオル=ソニックのミサイルを受けた後に放ったビームは、この肩からのものだったのだと、避けた一夏はとっさに理解した。
「箒、慣れてないなら無茶はするなよ。一夏の後ろについて、援護に徹していろ。
 失敗しても、俺らかいくらでもカバーしてやる……!!」
「わたくしと修夜さんで、しっかりお手本を見せてさしあげますわ……!」
「……すまない、修夜、セシリア」
修夜からの叱咤とセシリアから応援を受け、改めて自分の不甲斐なさを悔い、また仲間がいることのありがたさを噛みしめる。
「とにかく、一旦後ろに下がって焔備を用意するんだ。
 あとはタイミングを見計らって、一夏の後ろに付けばいい」
「わかった……!」
修夜の指示に従い、箒は一旦その場を離脱する。
「箒……」
「……本当にアイツの気持ちに応えたいなら、ぼーっとしているヒマはないぞ、一夏」
「……あぁ」
その姿を見つめる一夏に、修夜は素っ気なく声をかけ、一夏も応えるように気合いを入れ直す。
振り向けば、漆黒の怪物が赤い目を光らせ、三人の少年少女を見据えている。
「一夏、セシリア、気合い入れていくぞ……!」
「はいっ!」
「おぅっ!!」

――――

一旦戦線を離脱した箒は、すぐさま拡張領域(バススロット)内の武器の検索に入った。
――まではよかった。
「……な……なんだこれは……!?」
ISに思念を送り、拡張領域を検索する画面で表示されたの――

≪Q. ナツ ハ ヨル≫
≪Please your answer !≫

たったこれだけの文字。
その下に、三つの空欄が存在し、肝心の焔備を示すものが一切なかった。
「『ナツ ハ ヨル』などと言われても……、いやいや、そもそも肝心の武器が……!?」
人が急いでいるときに、こんなクイズを出されても苛立ちが募るだけである。
(一体、どうすれば……?!)
ここに来て、こんなワケのわからないものに引っ掛かり、戦力外になるのでは、自分の復帰を信じる三人に申し訳が立たない。それだけは避けたい。
意味不明な画面を睨みながらも、箒はここに来て肚を括った。
「……えぇいっ、四の五の言っている場合か!!」
拡張領域を呼び出してこのクイズが出題されたということに、箒は無理を承知で意義を見出そうと、頭を回転させはじめる。
「こうなったら、とことん付き合ってやる!!」
遊んでいるようにしか見えない状況だが、一刻も早く三人を助けたい。
その思いで、記憶の回路をフル回転させ、答えを探し出す。
(どこかで聞き覚えが……、どこかで……!?)
焦るほどに脳回路は膠着し、考えが鈍っていく。
「ナツ ハ ヨル……。ナツ ハ ヨル……、夏……」
口に出して呟き、必死に解を求め続ける。
(思い出せ、思い出せ、私……!!)

――ねぇ、箒ちゃ~ん

一瞬のことだった。
脳裏に浮かんだのは、久しく見ていない“ある人の顔”。
その人がいつか、自分に語った言葉……。

「……『夏は夜。月の頃は更なり、闇もなお、蛍の多く飛びちがいたる。』
 『また、ただ一つ二つなど、仄かにうち光りて行くもおかし。』」
 『雨など降るもおかし』……」
清少納言『枕草子』、その序文の二節目。
いつの日か、その人が戯れに語ったその言葉が、箒の口から紡がれる。
すると――

≪That's right !! Present for you !!≫
≪螢火 -KEIKA-≫
≪更月 -SARATSUKI-≫
≪雨垂 -AMADARE-≫
≪闇行 -ANGYOU-≫

「これは……」
画面が切り替わり、そこには二刀一対の実体刀と、肩のユニットが展開されて出現する砲塔、そして背中に増設された小型の四機のスラスターが表示されていた。
呆けている間に、その画面のさらに上から、別の画面が表示される。


≪*【Infinite Stratos】*≫
≪第二世代型・量産“特機”≫
≪打鉄改S型 -Uchigane Custom Type.S-≫
≪――正式機動承認――≫


すると、打鉄の装甲は静電気の発しながら、見る見る色を変えていった。
メインフレームの鉄色は銀色へ、サブフレームの深い緑は濃い赤に、赤いフレームは金色に。
「打鉄が……変化した……!?」
驚いている間に、画面には≪更月・雨垂、現出開始≫の文字が浮かぶ。
そして両手が、プログラムで強制的に正されたかと思うと、右手には黒い柄の、左手には青い柄の実体刀が出現し、それを握らされる。
「二刀流……なのか……?」
ともに、刃渡り九十センチメートルほどで、本来の実体刀【葵】に比べて小振りである。
だがこのスタイルは、箒が【最も自身の身に叩きこんだ太刀筋】に近いものだった。
(……使える、篠ノ之流古武術の真髄……『二刀の剣舞』が……!)
実戦で使ったことはない。何せ、本来は神のために舞う“奉納神楽(ほうのうかぐら)”の一種であり、戦いの技としては些か“美しすぎる”からだ。だが裏を返せば、その“流れに身を任せる動き”は敵を翻弄する格好の『身のこなし』ともなる。
篠ノ之流古武術の源流も、神前での奉納神楽をルーツとしていると伝承にあるのだ。
「あと、もう一つは……」
残ったのは【螢火】という装備。
先ほどの画面から察するに、肩のユニットが展開されて出現する砲塔がそうなのだろう。
「実際に使ってみるか……」
意識を集中し、画面で見た展開映像をイメージする。
すると、両肩のアーマーの上部が上向きに開き、そこから十センチメートル角の黒く無骨な方針が姿を現した。砲塔は、斜め内側の上に伸びた後に真上に折れ曲がり、開いた装甲を閉じて箒の顔の真横で前を向いた。
箒の顔の両側に、二門のビーム砲が完成する。
「これは……なんだ?」
箒の疑問に対し、画面上には――
≪肩部小型ビーム砲塔【螢火-KEIKA-】≫
≪目標を視認し、意識することで、自動的に攻撃します。≫
――と、あった。
「つまり……飛び道具……なのか……?」
いまいち【螢火】の使い方に理解ができない箒。
元来、非常に感性的な感覚のこの少女には、実際に使ってみないと理解できないという意味で、複雑な仕様の武器を扱うには向いていない。銃が苦手なのも、これが一因にある。
(この説明はつまり……、敵をグッと意識すると、そのままこのビーム砲がドンッと攻撃してくれる……ということでいいのだろうか……?)
ご覧の様相である。
(……だとすれば、これなら私でも使える……!)
根拠こそないものの、感覚的にこのビーム砲が自分向きであることを箒は理解する。
(この打鉄が、どうしてこんな姿になったのかは解らないが……。
たぶんこの打鉄は、かなり“私向き”の改造をしてある……!)
胡散臭さは拭えない。彼女自身、このまま使っていいものかは、当然だが疑問に思っている。
だが現状において、これ以外の打鉄への換装は不可能であり、修夜たちに加勢するには、たとえ胡散臭かろうと“背に腹は代えられない”のだ。
(疑問は後だ、誰が何の作意であのピットにこれを搬入したかは解らないが……。
こうなればこの力、とことんまで使わせてもらう……!)
二刀を強く握りしめ、生まれ変わった白銀の装甲をまとい、少女は鉄火場へと翔けて行った。

――――

一方で、修夜、一夏、セシリアと、所属不明が競り合う鉄火場。
所属不明機は、相変わらず巨体に似つかわしくない俊敏さで、三人の攻撃を華麗に避けていた。
「大人しくしろってぇの……!」
火を噴く【ハウリング=ラプター】の連射を、右に左に躱していく所属不明機。
《マスター、【ラプター】の残弾がヤバいかも……!》
「くそっ、【イーグル・ハンター】じゃ、連射がラプターより気かねぇし……」
エアリオル=ソニックには、威力重視のリニアレールガンと、連射と弾数を重視したアサルトライフルが存在する。
【ハウリング=ラプター】は、そのうちの連射重視のアサルトライフルであり、本機における近距離射撃での主力武器でもあるのだ。
「いい加減、大人しくなさい……!!」
セシリアも、ビットを巧みに不規則な動きで操りながら、所属不明機の隙を作ろうと攻撃する。
だがこれも、まるでバレエでも踊るように、くるくると回りながら所属不明機は避けていく。
「しつこいんだよ、この真っ黒ストーカー野郎っ……!」
執拗に追われる一夏も、ここに来て掌部圧縮砲【六花(りっか)】で積極的に迎撃しはじめる。
非ロック式のため、超反応での回避こそされないはずなのだが、所属不明機は撃つ前の隙を察知しているのか、一向に当たる気配がない。
「駄目だ……、まるで当たる気配がない……」
三人は一旦、距離をとって所属不明機の様子を窺う。
所属不明機も、深追いはせずにその場で止まった。
「セシリア、大丈夫か。だいぶビットを使い続けているぞ、お前……」
「大丈夫です、これしきのことで、倒れるワケには参りませんわ……!」
クラス代表決定戦での経験から、修夜はセシリアの様子を気にかけていた。
BT兵器は、脳波での命令をIS本体から攻撃をおこなう子機に発進する武器であり、その際には空間の状況を把握しつつ、子機の行動パターンを正確に脳内で想像する必要がある。また、脳波をISに読み込ませるために、強い集中力も必要になる。そのために、BT兵器使用者には高い空間認識力と、強靭な精神力が求められる。BT兵器の酷使は、そのまま脳への負担と精神的疲労に繋がるのだ。
先の決定戦でセシリアは、これがたたって試合後に気絶したことがあった。
「お前ら、シールドの方は……?」
修夜が状況確認のため、二人に問いかける。
「俺は……、714」
「わたくしは……、921……ですわ」
一夏は執拗な攻撃にさらされて。セシリアはビットを操作する関係で、反撃をギリギリで避けることが多いため、この数値となった。
「……俺は、927だな」
修夜もセシリアと同様、攻撃に専念する一方で、不意の反撃を紙一重で回避していた。
皆一様に、徐々に疲労の色が濃くなっていた。
シールドの値以上に、体力と精神力を削られていく一同。
特に一夏は、もう1時間を超えて飛びっぱなしであり、目に見えて息切れしてきていた。
一方、所属不明機はあれだけの猛攻を掻い潜りながら、まったく疲労する様子を見せない。
『おいっ、真っ黒野郎。なんで俺ばっかり狙ってくるんだ、理由を言いやがれっ!!』
マイク機能で盛大に怒鳴る一夏だが、問われた方はまるで聞いていない様子である。
『一応俺からも聞きたい、お前の目的はなんだ?
 どうやって“海上要塞”といえるIS学園に侵入したかは解らないが、なぜ戦闘行為をする?
 事と次第によっては、俺はお前を容赦なく叩きのめすっ……!!』
「…………」
「やっぱ、無言かよ……」
一夏に便乗するかたちで問いただした修夜だったが、所属不明機はこれも無視。
「そもそも、言葉が通じているのかどうか……」
セシリアが怪訝そうに言った直後、所属不明機は再びこちらに突っ込んでくる。
三人ともとっさに身構え、疲労感を押し殺して迎撃の姿勢に入った。

その瞬間――
上空から両者のあいだに碧緑の閃光が走り、所属不明機の進行を阻害する。
三人が上空を見上げると、そこには白銀の鎧をまとった女武者の姿があった。
「あれは……」
「ほ……箒っ……?!」
「何なんですの、あのISは……!?」
そこにいたのは、間違いなく箒だった。しかし、彼女のISは先ほどまでの打鉄とは違っており、打鉄といえばそうだが、装甲が白銀となり、肩にはビーム砲が装着され、両腕には二本の太刀が握られていた。
「みんな、待たせてすまない……!」
三人が呆気にとられている間に、箒は降りてきて三人に合流する。
「箒、その打鉄……」
「あ……、これは……。
 拡張領域を検索したらクイズを出されて……、それを解いたら……こうなった……。
 わ……ワケが分からないと思うが、……正直、私もよく分かっていない……」
修夜の問いに、箒も出来るかぎりの説明をしてみる。
けれども、そんな珍現象を即座に理解できるほど、三人に精神的な余裕はなかった。
「え……っと、つまり……なんだ……?」
「その打鉄は……、先ほどの打鉄と同じ……なんですよね……?」
「あ、あぁ……。正確には、【打鉄改S型】とか表示されたが……」
混乱する一夏に、どうにか箒の現状を読み解こうとするセシリア。
問われたことを、そのまま返すしかない箒。
「あー……、この際面倒は、後回しだ……。
 さっきのビームは、その肩の砲塔で撃ったんだな、箒……?」
「あぁ、そうだが……」
ここで問答していても埒が明かないと考え、修夜は話を前に進めることにした。
「それ、どうやって撃ったんだ?」
「えっと……、目標を見据えながらグッと念じると、そのまま撃ってくれるんだ」
「グッと、って……」
箒の感覚的な表現に、一夏はさらに間の抜けた顔で頭を抱えはじめる。
「まるで、一世代前のBT兵器みたいですわね……」
セシリアがぽつりとつぶやいた。
「一世代前……?」
「はい、わたくしの『蒼い雫』のビットも、目標へと直接飛んでいく前は――」
「箒、セシリア、悠長に話している時間はなさそうだぞ……!?」
修夜の忠告に促された女子二人が振り向くと、所属不明機が腕の砲門を構えてビームを発射。
四人は一斉に散開して回避、所属不明機に向き直って身構える。
『とにかく今は、アイツを大人しくさせるのが第一だ……!』
修夜の拡大された声に、一同が黙って頷き、眼前の黒い巨体を見据える。
高まる緊張の中、所属不明機がやはり一夏に正面を向け、肩の砲門が機関銃のようにビームの雨を撃ちだしはじめる。
「また俺かよっ、いい加減にしやがれってんだ……!」
『一夏っ、そのまま旋回しながら近付いていけ、こうなったら一気に攻めるぞ!!』
一夏に指示を出した修夜は、所属不明機が一夏から離れすぎないよう、【イーグル・ハンター】による牽制で足止めしはじめる。
『セシリア、スターライトで援護っ!!』
「了解ですわっ!」
セシリアは修夜の指示を聞くと、すぐさま【スターライトmkⅢ】を現出し、さらに所属不明機を翻弄していく。相手の超反応を逆手に取り、その場に釘付けにしようというのだ。
『箒も旋回しつつビームで牽制、タイミングを見て一夏と一緒に突っ込めぇ!!』
「了解した!!」
一夏の体力が心許ない以上、短期で決めるしか活路はない。
修夜はとっさにそう判断し、戦いに幕を下ろす覚悟を決める。
所属不明機を中心に展開される、弾丸とビームの嵐。
その中心を焦りの色も見せず、淡々と踊り続ける無貌の舞手。
(さっき、全員で砲撃に回ったとき、突っ込んだ箒には判断が遅れた……。
なら砲撃で躍らせて、反応が間に合わないところに攻撃を叩きこめば……!)
一夏と箒が徐々に距離を縮め、加速による一撃離脱が狙える位置に達したと修夜は判断。
『いまだ、突っ込めぇ!!』
「おらああぁぁぁあっ!!」
「でぃえやあぁぁぁあっ!!」
修夜の声に合わせ、一夏と箒は、対角線から挟み込むように突撃を仕掛ける。
その行動に反応し、再び上へ逃げようとする所属不明機。だが、そこを再びセシリアがビットによる射撃で抑え込みにかかった。
「上には逃がしませんわっ!」
一夏と箒、所属不明機の距離――ともに四メートル。
所属不明機はビットの掃射に抑え込まれ、身動きの取れない。
――これで終わりだ
全員が強く願い、確信をもって斬撃の一瞬を見守った。
だが――

「な……っ」
「ぅわっと……?!」

突然、所属不明機は糸の切れた人形のように、その場から落下を開始した。
そのせいで、決まるはずだった同時攻撃は、あえなく空振りに終わってしまう。
しかし次の一瞬で、所属不明機は再びスラスターを地上付近で再点火し、軟着陸する。
「おいおいおい、あんなのアリかよ……!?」
修夜はその行動に、思わず顔をしかめて歯噛みした。
どこまで追い詰めても、しぶとく生き抜く未知の敵。
今度はその敵が、脇をしめて拳を構え、肩と腕の砲門にエネルギーを集約させはじめる。
《マスターっ、圧縮された高エネルギー反応が……!!》
「分かってる!!」
《聞いてっ、アレが撃たれると、遮断シールドに甚大な損害が入って、今度こそ観客席に被害が出ちゃかもしれないんだよっ?!》
「なんだとっ……!?」
シルフィから告げられた非常事態宣言に、修夜は思わず動揺した。
「防ぐ方法は……!?」
《たぶん……、一夏が白式で【零落白夜(れいらくびゃくや)】を全開で使えば……、なんとか……》
最悪の二択である。
このまま回避して、観客に被害が及ぼすか。
一夏に託して「零落白夜」を使わせ、せっかく補給したエネルギーを空にし、戦力から外すか。
(くそぉ、どう転んでもヤツに有利にしかならねぇじゃねえか……!)
セシリアに狙撃を頼むか。しかし、狙いを定めている間にチャージが完了する可能性がある。
なら誰かが突っ込むか。それこそ、ビームの餌食であり、側面から迂回する余裕はない。
「修夜っ、あれってヤバいんじゃないのか!?」
一夏が深刻な面持ちの修夜に、核心を突いた一言を放つ。
(……背に腹は代えられねぇか、畜生っ……!!)
苦渋の決断を、修夜は下した。
「一夏、シルフィによれば【零落白夜】で全力で突っ込むしか、アレを防ぐ方法は無いらしい」
会場中の全員を巻き込むより、苦渋の果てに本懐を達成するべきだ。
「あとの心配はいい、アレをどうにか止めてくれっ!!」
“切り札”はまだ残っている、最後はそれに賭ければいい。
「……分かった。修夜がそう言うってことは、よっぽどヤバいんだよな……!」
ことの危険性を察し、一夏は反論せずに所属不明機に向かい合い、雪片二型を構えなおす。
「いいのか、修夜……!?」
「修夜さん……」
「……観客席に被害が出るかの瀬戸際だ、やるしかねぇ……!」
修夜の悔しげな様子に、女子二人も言葉を続けることができなかった。
《エネルギー収縮、急上昇。来るよっ!!》
「一夏っ、構えろっ!!」
「行くぜっ、【零落白夜】……発――」
緊張が最高に高まったその一瞬――


――ずがしゃあぁんっ!!


突然、所属不明機は何かにぶつかったように、横に向かって吹き飛んだ。
所属不明機は、そのまま慣性に従い、地面に倒れ込んで転がっていった。
さらに運の悪いことに、うつ伏せに倒れ込んだ所属不明機は、発射寸前までため込んだエネルギーを地面に向けて暴発させ、自爆。そのまま大爆発とともに空中高く舞い上がったのち、地面に仰向けに叩き付けられて倒れた。
全員が、突然の状況に唖然とする中、地上に見慣れた影が一つ、ぽつりと浮かんでいた。

「あ……あれって……」

赤紫のメインフレーム、刺々しい非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)
強気なまなざしに、活発な性格を端的に表す黄色いリボンのツインテール。まとまった愛らしい顔つきは、大切な決闘を邪魔されたうえに、厄介事に巻き込まれ、さらに最もムカつくヤツに散々なじられた結果、くっきりと眉間にしわを刻んで険しくなっていた。
その手には、所属不明機を吹き飛ばして帰ってきた二刀一対の青龍刀・【双天牙月(そうてんがげつ)】が、ツインブレード状態で握られている。
「「鈴っ!?」」
「「(ファン)(さん)っ!?」」
全員が声を上げて驚嘆した。
先ほどまで、散々ぐずって協力を惜しんでいた修夜と一夏の幼馴染、凰鈴音(ファン・リンイン)が、先ほどの態度がウソのように堂々たる佇まいで立っていた。


「……まったく、いい加減にしてよね……!」


台風少女は、そんな愚痴をこぼしつつ、静かに闘志を燃やしはじめた。
 
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