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言う程もてない

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第七章

 体育の授業の後から秀幸には接近せず距離を置いて彼とその周りを見ることにした。するとだった。
 女の子は誰も彼をそれ程見ない、一瞬だけその外見のチェックを入れる日本人独特の行動があるがそれだけだった。
 それ以外は見ようとしない、そのことに気付いてだった。
 藍ははっとしてだ、昼休みに食堂でうどんを食べながら周りに言った。
「こんな感じだったわ」
「こんな感じ?」
「それってどんな感じなのよ」
「ほら、食堂で食べる時って一緒に食べる人とか周りで食べている人のメニューチェックするじゃない」
 こんな感じとはそういうことだった。
「何を食べてるのかって」
「目でね」
「そうするわね」
「それで次は何を食べようかって思うけれど」
 それでもだというのだ。
「それで終わりよね」
「まあそうよね」
「それで終わりよね」
 周りも藍の言葉に頷く、食堂の中は生徒達でごった返していて食券売り場もカウンターも人で一杯である。
 その中でだ、藍は周りに肉うどんと木の葉丼を食べながら言うのだ。
「いつも」
「そういうものっていうのね、秀幸君は」
「彼についても」
「皆秀幸君を見るけれど」 
 それでもだというのだ。
「一瞬だけでね」
「後はなのね」
「見ないのね」
「服装とかをチェックして」
 そしてだというのだ。
「何もなしよ」
「ほら、言った通りでしょ」
 離れた場所でチェックしてはどうかと言ったクラスメイトが藍に言って来た。この娘は焼きそば定食をたべている。
「そんなものなのよ」
「私が思ってるよりはなのね」
「あんたが秀幸君を好きなことは知ってるわ」
 そのことはだとだ、ソースで味付けされて黒くというかダークブラウンになっている焼きそばで白い御飯を食べながら語る。
「けれどね、それはね」
「私だけのことっていうのね」
「あんたが秀幸君を好きでも」
 このことは紛れもない事実だ、だがそれでもだというのだ。
「周りはそうじゃないから」
「あくまで私だけなのね」
「そう、あんただけよ」
 秀幸を一途なまでに好きなのはというのだ。
「それはね」
「そうなのね」
「そう、大体彼氏とか好きな相手とかいる人もいるじゃない」
 焼きそば定食を食べているクラスメイトは藍にこのことも話した。
「そうでしょ」
「私みたいに」
「私だっているし」
 彼氏がだというのだ。
「だからね」
「秀幸君も私が言う程には」
「もてないの、普通なの」
 あくまでだというのだ。
「ハリウッドスターみたいにはならないから」
「そうなのね」
「そう、ならないから」
 それは絶対にだというのだ。 
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