モダンな悪魔
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第五章
「天使の連中は契約破っても何か平気だけれどな」
「悪魔は違うんだ」
「当たり前だろ、あんな自分勝手な連中と一緒にするなよ」
悪魔は天使については忌々しげな顔で語る。
「悪魔は契約なんだよ」
「それが絶対なんだ」
「天使は約束を破ろうが契約以外のことをしても神様の名前を出してよしとできるがな」
「悪魔は無理なんだ」
「こっちは天界を追い出されたりあちこちの神様が勝手に悪魔にされたんだぜ」
イグナシウスは悪魔が生まれた経緯も話す。
「俺だって天界で座天使だったんだよ」
「座天使ねえ」
「ああ、ベリアル様は力天使を治める天使長の一人でサタン様の腹心の一人だったんだよ」
彼が仕える魔王のことも話すのだった。
「色々あって天界から追い出されてな」
「随分なことがあったんだ」
「そこらへんは色々な本にあるから読んでくれよ」
「勉強しろっていうんだね」
「そうだよ、とにかく悪魔ってのはな」
契約が絶対だというのだ、天使以上に。
「そういうものなんだよ」
「そうなんだ」
「そうだよ、悪魔のことは理解してくれよ」
「それじゃあ」
「契約な、俺が悪魔って証を見せることな」
このことについてだ、悪魔はあらためて確認してだ。
そのうえでだ、今度は少年達にこう言った。
「とっておきのを見せるな」
「ああ、今度こそな」
「あんたが悪魔っていう証見せてくれるんだな」
「ここじゃ人目があるからな」
これまでのことは実際に手品として説明がついた、だが今度やるものはというのだ。
「別の場所に行くかい?」
言いながら手にホットドッグを出して食べはじめる。
「そうしようか」
「ってあんたよく食べるね」
「ホットドッグもかよ」
「それでステーキとアイスも食うんだな」
「太るぜ、おい」
「大丈夫だよ、食った分はスポーツをしてるからな」
だからこのことは安心していいというのだ。
「ランニングにラップダンスに水泳でな」
「だからそういうところが悪魔じゃないんだよ」
「人間臭いにも程があるだろ」
少年達は悪魔にここでも言う。
「本当にな」
「人間みたいだよ」
「いいじゃないか、じゃあ場所は」
「その辺りの裏通りでいいじゃないか?」
クラウスが悪魔に提案する。
「意外と見られないよ」
「ああ、そうだな」
「ニューヨークの裏通りは危ないけれどさ」
何がいるかわからない、お世辞にも治安のいい街ではない。
「道によっては誰も見ないさ」
「よし、じゃあそこに結界を張って」
そしてだとだ、悪魔も頷いてだった。
一行はその裏通りの一つに入った、そこに入ってすぐにだった。
悪魔は右手の親指を人差し指を鳴らした、するとだった。
一行の周りを緑の光が包んだ、それはというと。
「これがだよ」
「結界なんだ」
「そうなんだね」
「ああ、そうさ」
まさにそれだというのだ。
「これでちょっとは信じてくれたかい?」
「まあな、ちょっとはな」
「信じられてきたかな」
そうだとだ、少年達も悪魔に返す。
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