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危険なラブモーション

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第三章


第三章

「そんなことはないさ」
「ダイアとかあればいいんだがな」
「それこそ零れ落ちる位一杯な」
 周りがまた俺に言ってきた。
「そういうのがあったらな」
「あの娘とな」
「ああ。けれどな」
 それでもだった。俺は言わずにはいられなかった。
「あの娘への想いは絶対だよ」
「絶対か」
「そうさ」
 このことには絶対の自信があった。誰にでも言えた。
「それこそな。あの娘を見るその目はな」
「それだけ強く想えるのは凄いよ」
「実際な」
 周りもそれは認めてくれた。俺のあの娘への想いはだ。
「それだけはな」
「けれどな。実際は」
「やばいぜ」
 周りは俺に対して忠告する言葉になってきていた。
「あの娘はな」
「危険な娘だぜ」
「わかってるさ」
 周りの言うことは俺もわかっていた。それも嫌になる程度。
「それはな」
「それでもかい」
「想いはか」
「止まらないんだよ。どうしてもな」
 俺は困った顔で左手を軽く振って述べた。
「わかっててもな」
「それで今度もか」
「ああ。右目で見て」
 またあの娘を見る。相変わらず周りの視線を釘付けにしてそのうえで煽情的に踊り続けている。胸も腰も脚も肩も。顔も髪も見ずにいられない。
「右手で誘ってだな」
「そこに左も入れたらどうだ?」
「そうしたらどうだい?」
「そうだな」
 言われてそれに頷く俺だった。
「そうやってくか」
「ああ、そうしな」
「精々頑張れよ」
「頑張っても報われないし」
 俺はまた苦笑いになった。それからブラッディマリーをもう一杯飲んでもう一杯受け取って。そのうえでまた飲もうとしながら述べた。
「若し実っても危険だけれどな、猫みたいな娘だからな」
「ははは、猫か」
「そうだな」
 周りは今の俺の例えに笑ってきた。
「気紛れで我儘で高慢でな」
「まさにそうだよな」
「そんな娘だけれど惚れたが負けさ」
 まさにそうだった。俺にとっては。
「何処までもやってやるさ」
 俺は言った。そうしてまた彼女に告白することにした。そのブラッディマリーを飲みながら。


危険なラブモーション   完


                    2009・10・24
 
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