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危険なラブモーション

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第二章


第二章

「ブラッディマリーにな」
「また随分洒落たこと言うな」
「それをあの娘に言ったのかよ」
「それで振られたんだよ」
 こう言って告白して駄目だったのは何度目の告白の時だったか。もう覚えちゃいない。それだけ彼女には何度も告白しているからだ。
「俺は罪は無いのにハートが真っ赤に染まったんだよ」
「何か寒くないか?」
「あまりいい表現じゃないな」
 仲間達はそんな俺の言葉を聞いて首を傾げさせた。
「それじゃあちょっとな」
「駄目だろ」
「その時は駄目出しだった」
 その時だけじゃなかったがその時ということにした。
「切ないんだぜ、実際にな」
「それを告げてもかよ」
「駄目だってわけか」
「ドラマは嫌いらしいな」
 実際にはどうかわからない。あの娘もドラマ位は観るだろう。けれど俺とのラブストーリーは嫌いってわけだった。そういうことだった。
 それでだった。俺はさらに言った。
「それでもな」
「それでも?」
「一度でいいんだよ」
 今度は溜息と一緒に出した言葉だった。
「一度でいいからその奇麗な顔を俺に向けて欲しいんだよ」
「一度だけかよ」
「無欲なんだな、案外」
「できればずっとな」
 これが本音だった。実はだ。
「ずっとでも一度でもな」
「振り向いて欲しいってことかよ」
「その一度すらないんだよな」
 俺にとっては何処までも残念な話だった。どうしようもない位にだ。
「全然な」
「それでも夢は見たいってか」
「諦めてないんだな」
「ロマンスだよ」
 俺はそれをこう評した。自分でだ。
「それがな」
「ロマンチストってわけだな」
「そういうことか」
「そうさ、俺にとっちゃロマンさ」
 それ以外の何者でもなかった。本当に。
「あの娘とのランデブーはな」
「で、また告白するんだな」
「まただな」
「そうさ。俺は確かにな」
 ここで自分のことも言った。自分のことはわかっているつもりだ。
「背も高くないしな」
「まあ低い方だな」
「かなりな」
 俺は小柄だったりする。普通の女の子よりもまだ低い位だ。七フィートあったら誰でももてるとか聞いてるが俺には夢そのものの話だ。
「それもわかってるんだな、自分で」
「はっきりと」
「悔しいがそうさ」
 それが自分でわかってない程俺も馬鹿じゃない。それにだ。
「言葉だって上手く言えないさ」
「まあ洒落てはいないな」
「あまりな」
 仲間達はまた言ってきた。
「もっともあの娘はそんな言葉でゲットできそうにもないけれどな」
「まず無理だな」
「しかもな」 
 俺はもう一つ自分でわかっていることがあった。それは。
「金もないしな」
「プレゼントもだよな」
「そっちもな」
「精々お菓子とかそんなのばかりさ」
 俺はここでも自嘲して言った。
「小さなブローチとかな」
「あの娘がそんなので喜んでくれるかね」
「まさか」
 そんなことが有り得ないのはこれまた俺が一番よくわかっていた。そんなことは有り得ない。それも絶対にだ。絶対って言葉を今まで生きてきた中で一番味わうことだ。
 
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