Element Magic Trinity
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獅子の光
「・・・あら?」
レビィがせっせと術式を解読しているギルド。
そこでは、ティアが術式に近づいて首を傾げていた。
「どーしたんだよ、ティア」
「おかしいわね・・・」
ナツの問いに答えず、ティアは眉を顰める。
「ナツとガジル、ルーシィとカナとジュビア、サルディアとヒルダ、エルザにシュラン、ミラ。ハッピーとヴィーテルシアは頭数に入っていないし、私とレビィは参加してないし・・・」
ぶつぶつと呟くティア。
頭の上に無数の?を浮かべていたナツは、耐え切れなくなったように叫んだ。
「だーっ!結局お前は何が言いたいんだよ!」
「多いのよ」
「は?」
術式を見たまま呟く。
更にナツが首を傾げると、ティアは残り人数を指さした。
「残り人数が1人多いわ」
―――――――ここにいる、彼女達は知らない。
1人、大好きな人達を助ける為に存在を魔法で消していた青年がいる事を。
「ロキ!お前ロキじゃねーか!」
一方、こちらはマグノリアの街のホビーショップ近く。
そのショップの屋上には雷神衆の1人、ビックスローが立っている。
向かいの建物の屋上、そこにルーシィとハッピー、そして『獅子宮のレオ』ことロキとルーはいた。
「やっぱり星霊だったのかぁ。くーっ、そんな気がしてたんだよなぁ。黙っててやったのに俺に牙を剥くのか」
「気づいてた?」
「アイツは人の魂を見る事が出来るんだ」
ビックスローの言葉に疑問を覚えたルーシィに、ハッピーが答える。
「2人ともバトル・オブ・フェアリーテイルに参加か?あ?」
その問いかけに、ロキはビッとスーツを正しながら口を開く。
「その辺の事情にはあまり興味はないけどね」
そこで、表情が変わる。
数々の女性を惚れさせてきた顔は、獅子へと豹変する。
「僕の所有者・・・ルーシィをキズつける事だけは、何があろうと許さない」
ロキの言葉に続くように、ルーがゆっくりと口を開く。
「僕も同意見だよ。仲間同士で争うのってこれ以上ないくらいにバカだと思う、けど」
そして、牙を露わにする。
子犬と評される童顔は、一気に狼へと化していく。
「君が倒した人達とルーシィを同じ目に遭わせるなら・・・バカだけど、容赦しないよ」
2人の言葉を聞いたビックスローは、額に手を当てバカにしたように笑う。
「許さないとか容赦しないってオイオイ、お前ら俺に勝てた事ねーじゃん。俺はいつも手ぇ抜いてケンカしてやってんのになぁ」
笑い終えると、ビックスローは3人を指さす。
「昔みてーにいじめてやろーぜ、ベイビー!」
『オオー!』
5体の人形が、ビックスローの命令で動き出す。
「ルーシィ、ルー。下がってて」
「何言ってんの!」
右腕を広げてルーシィに下がるよう言うロキ。
が、ルーシィは鞭を手に取り、勢い良く地面に叩きつける。
「星霊は盾じゃないの!一緒に戦うのがあたしのスタイル」
鞭を構え、言い放つ。
その言葉にロキが微笑みながら振り返り、ルーシィも笑ってみせる。
「大丈夫だよ、ロキ。何かあったら皆まとめて守るからね!」
ルーが笑い、3人は軽く頷き合う。
それを見ていたハッピーは―――――――
「できてる」
「できてないっ!」
頬を染め、口元に手を当てて呟いた。
『!』
その瞬間、人形が一斉に魔力弾を放ってくる。
それを3人は後ろに跳んで避けた。
「人形は僕とルーがなんとかする!」
「道が出来たらルーシィは鞭でビックスローを叩いちゃって!」
「OK!いくよハッピー!」
「あい!」
ロキとルーの言葉にルーシィは鞭を構えハッピーと共に向かっていく。
「王の光よ、我に力を」
右腕を曲げ、曲げた部分に左掌を当てる。
ロキが光に包まれ、カッと目が見開かれた。
「!」
そしてその光を両腕に纏い、その腕を振るって人形を破壊する。
「わあっ!」
「すげぇ!光を纏った獅子だ!」
初めて見るロキの『獅子宮のレオ』としての魔法にルーシィとハッピーは歓声を上げる。
が、人形が壊されようがビックスローは痛くもかゆくもない。
「無~駄だってぇ!魂に攻撃は効かない!いくら壊されても新しい人形に憑けるからなァ!いきな、ニューベイビー!」
その言葉に反応し、新たに操られる事になった人形たちがルーシィへと向かっていく。
ルーシィへと突撃していく人形達。
「大空風流!」
が、人形は1体もルーシィに当たらない。
「だったらこうやって吹き飛ばして引き離すだけだもんね!」
「何体こようがルーシィには近づかせない」
ルーが人形を吹き飛ばし、その吹き飛ばされた人形はロキによって破壊された。
「チャンス!」
たんっ、と屋上の床を蹴り、ハッピーに掴まれて飛んだルーシィは鞭を構える。
「これで観念しなさーい!」
「くっ」
バチィン、と音が響く。
ルーシィが振るった鞭はビックスローが後ろに跳んで避けた事によって外れ、地面を叩いた。
「おおっ、怖ーな女王様」
「違うって言ってんでしょ!」
ビックスローの言葉に叫ぶルーシィ。
「ビックスロー本体はそう力を持ってない!頑張れ!」
「遠距離系だったり召喚系の魔法の場合、肉弾戦をする事が滅多にないからね!」
「何だとコノヤロウ!」
ロキとルーの言葉にビックスローは怒る。
そりゃあんな事言われたら怒りたくもなるだろう。
「あふっ!」
そこに、ビックスローの頬目掛けてルーシィの鞭が決まる。
「ちくしょオ!アレをやるしかねぇか!」
ビックスローはそう言うと、自分の目元を隠していた仮面をかぽっと外した。
「造形眼」
それを確認した瞬間、ハッピーが両手で自分の目を閉じる。
「目を見ちゃダメだ!ルーシィ!ロキ!ルー!」
「え?」
ハッピーの叫び声にルーシィは目を閉じ、サッと顔を背ける。
「雷神衆は皆『眼』にセカンドの魔法を持っているんだ!エバはメインで使ってるけど」
「何!?」
「確かにメインで使ってるね・・・」
ロキも目を閉じ、ルーも目を閉じて呟く。
「ビックスローの目を見たら人形化して、魂を操られちゃうんだ」
「危なー」
目を見なくて良かった、と安堵するルーシィ。
が、それこそがビックスローの狙いなのだ。
「目をつぶったな」
その瞬間、人形が一斉にルーシィ達を襲う。
「きゃあっ!」
「ぐあっ!」
「うあっ!」
戦場において、相手の攻撃をどうやって確認するか?・・・目で見る。
目で見るから相手の位置を確認でき、目で見るから攻撃のタイミングや動作の確認が出来る。
相手の攻撃が向かう方向も、全て目で見ているから解る事。
が、今の目を閉じた状態では、それすらも解らない。
耳と鼻だけが頼りだが、ナツやガジルといった滅竜魔導士ならまだしも、ルーシィ達は耳と鼻だけで相手の攻撃を見極める事など出来ないのだ。
「ルーシィ!」
「ロキ!ルー!」
「盾を張ろうにも・・・どこから攻撃が来るか解らないよ!」
「3人とも、目を開けちゃダメだ!」
人形の猛攻は続く。
「あうっ!」
「くそ・・・こんな魔法が・・・」
「えいっ!あれっ?うわっ!」
ロキは闇雲に腕を振るうが、人形は軽く避ける。
ルーも必死に風を操るが、空振りに終わって勢いよく背中を蹴られた。
「ヒャーハッハッハッ!この【人形憑】と造形眼のコンボに勝てる奴なんかいねぇぇぇんだヨ!」
笑い声を上げるビックスロー。
「ルーシィ!君の星霊でほら・・・あの大きなのっぽの時計の星霊いたでしょ!名前なんだったか忘れたけど、あの星霊なら攻撃から身を守れる!」
「ホロロギウムだ!僕を一旦閉門して、ホロロギウムで守りを固めるんだ!」
どうしてもホロロギウムの名前を思い出せないルーに続けるようにロキが叫ぶ。
が、今のルーシィではホロロギウムは勿論、他の星霊も呼べない。
「勝手に出てきて何言ってんのよ!鍵取られたんだって!」
そう。
ロキを一旦閉門する事さえ、今のルーシィには出来ない。
鍵がない限り星霊は呼べないのだ。
攻撃を喰らいながら、ロキとルーは顔を歪める。
「それに・・・」
攻撃から身を守る事は出来ない。
ルーの魔法があっても、どこから攻撃してくるかが解らないのでは盾も張れない。
目を開かない限り、こっちからの攻撃も不可能。
だけど――――――――――
「アンタ達を信じてるんだから何とかしなさい!」
ルーシィは、叫んだ。
ありったけの力を込めて。
その言葉は、確かに、確実に―――
「―――――うん」
「―――――任せて」
―――――――2人にも、届いていた。
「一か八かだ、ルーシィ、ルー。合図をしたら目を開けて突っ込むよ」
「考えは一緒みたいだね。その一撃で全てを終わらせる、でしょ?」
「でも・・・目を開けたら」
ルーシィは呟く。
それに対し、2人は笑みを浮かべた。
「信じてくれるんだろ?」
「何とかしてみせるよ」
それを聞いたルーシィにも、笑みが浮かぶ。
「・・・解った」
その答えを聞き、ロキは先ほどと同様の構えを取る。
右肘を曲げ、曲げた所に左掌を当てる構えを。
「王の光は満ちた」
キィィィン、と空気が張り詰めるような音が響く。
「妙なマネをされる前にとどめをさせ!バリオンフォーメーション!」
ビックスローが叫んだ、瞬間。
「獅子光耀!」
カッ、と。
眩いまでの光が、辺りに放たれた。
「何!?くっ、目くらまし!?」
その眩しさにビックスローは思わず目を閉じる。
そしてその隙を、ロキは見逃さなかった。
「今だ!」
叫ぶ。
それを聞いたルーシィとルーは目を開けた。
「やあ!」
「大空裂鞭!えい!」
「ぬおっ!」
ルーシィが鞭を、ルーが風で構成された鞭を振るう。
その2つの鞭はビックスローの首に絡まった。
「「ロキ!」」
「うん!」
名を呼ばれ、ロキが駆けだす。
「お前が俺に・・・勝てる訳・・・」
鞭を外そうとビックスローは引っ張るが、渾身の力を込めている2人はそれを許さない。
外れる事を必死で阻止する。
「あの頃の僕とは違うんだ・・・」
煙を抜け、ロキは走る。
「ルーシィに会って星霊本来の力が蘇った」
その右手に、光が集まる。
王の光が、集まっていく。
ビックスローが、薄く目を開いた。
「いや、ルーシィに会って僕は強くなった」
拳を、握りしめる。
「お前の操り人形とは違う!愛が星霊を強くする!」
叫び、全ての光を右拳へと集め―――――――――放つ。
「獅子王の輝き!」
光、そして同時に見えるのは気高き獅子。
「ぐぉああぁああっ!」
ロキの渾身の一撃に、ビックスローは叫びを上げて倒れ・・・気絶した。
「やった!」
ハッピーが喜びの声を上げる。
「ありがとうロキ、ルー」
「見て、ルーシィ」
ルーシィが礼を言うと、ロキは左手を近くの壁に向ける。
「愛の光を」
ロキの手から放たれる光。
そこには、『I LOVE LUCY』の文字があった。
「えーと・・・」
「でぇきてぇる゛」
「巻き舌風に言わないの!」
「むむぅ~・・・」
その光景にルーシィは戸惑い、ハッピーは茶化し、ルーは不貞腐れながらロキを正式にライバルと認識したのだった。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
最初はルーとロキで倒そうか、とも考えたんです、けど!
「アンタを信じてるんだから何とかしなさい!」って原作のルーシィのセリフ見て「あ、やりたいなコレ」と思い、こうなりました。
ルーに強力なライバル登場!・・・って事は、アニメオリジナルの星空の鍵編のレギオン隊、ダンも出てくればルーのライバルか・・・?
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