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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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愛は壁を砕いて


神鳴殿がマグノリアの空に浮かんでいる。
ギルドには現在、術式によって出られないナツとガジル、昼寝中であり術式のせいで出られないヴィーテルシア、元々参戦する気のないティア、術式の解読をしているレビィがいた。

「う~ん・・・」

沢山の本を並べ、四つん這いに似た態勢でカリカリと解読を進めるレビィ。

「ローグ文字の配列情報を文字マテリアルに分解して・・・ルール構築に使う単語をピックアップ。L・O・S・U。さらにそれをギール文法に変換」

ぶつぶつと呟きながら時に本のページを捲り、様々な文字を書いていく。
その様子をガジルが唖然としながら見ていた。

「すげぇな、お前・・・何言ってるか全くわからねぇ」
「違う!LとSはブラフだわ!アルスがキーコードよ!」
「そ・・・そうか」

レビィの剣幕に押されるガジル。

「文字系の魔法を使う魔導士ならでは、って感じかしら」
「そういや、テメェは行かねぇのか?」

医務室から出てきたティアにガジルが声を掛ける。
S級魔導士であるティアが参戦すればかなりの戦力になりそうだが、彼女はギルドに残っていた。

「こんな愚かな余興に参加なんてしたくないわね。七光りが首謀者だっていうのも参加しない理由の1つだけれど。ま・・・残り人数が一桁になったら行こうかしら」

近くの椅子に腰かけ、視線を落とす。
その視線の先には術式解読中のレビィがいた。

「大丈夫。私がアンタ達をここから出してあげる」
「俺は別に・・・」
「お願い」

ガジルの言葉を遮り、レビィが顔を上げる。

「ラクサスを止めて」

真っ直ぐな眼を向けて言われ、ガジルは何も言えなくなった。
その瞬間、大きな音がギルドに響く。

「ヨユー」

苛立ちを隠さない表情はそのままに、術式に頭を打ちつけ、ナツが呟いた。












カルディア大聖堂。
そこにはラクサスとフリードがいた。

(神鳴殿・・・そこまでやるのか・・・?ラクサス)

戸惑うようにフリードが沈黙する。

「何をしている、フリード。ビックスローはまだ妖精狩りを続けているぞ」

フリードに背を向けたまま、ラクサスは続ける。

「ジジィの希望、エルザは俺がやる。ミストガンもだ」

ラクサスは知らない。
今、マカロフは医務室で眠っている事を。

「お前はカナとファントムの女をやれ。あの口の悪い女王様も参戦したら潰せ。どいつも俺の妖精の尻尾(フェアリーテイル)にはいらねぇ。殺してもいい」
「殺す!?今は敵でも同じギルドの・・・」

ラクサスの言葉にフリードは目を見開く。

「俺の命令が聞けねぇのかァ!」

電撃が舞う。
その怒りの表情にフリードは目を閉じ、ゆっくりと開いた。

「ここまでやってしまった以上、どの道戻れる道はない。俺はアンタについていくよ。たとえそこが地獄だとしても。任務を遂行しよう。本気で殺る。後悔するなよ」

そう言うと、フリードの体が文字となり、カルディア大聖堂から消えた。
ラクサスは口角を上げる。

「それでいい。『暗黒のフリード』よ。お前の本当の力、今こそ見せてやれ」










一方、エルザはとある建物の前にいた。

「エバーグリーンの話では、この建物にラクサスがいると・・・」

彼女は倒したエバーグリーンからラクサスの居場所を聞き出していた。
シュランは別行動をとっており、雷神衆を見つけ次第倒すよう言ってある。
・・・何故言う必要があるかというと、シュランは基本ガジルの命令で動く。その為か『御命令を』と恭しく頭を下げられたのだ。

「ラクサス!」

エルザが勢いよくその建物の中に入る。
その建物の中にあったのは―――――――――――

「エルザちゃん!?」
「ちょ・・・!何これ!?」
「ここは男湯だぞ」
「何かのサービス!?」

銭湯の男湯だった。
突然のエルザの登場に客は戸惑いを隠せない。

「どこだ、ラクサス!」

エルザは辺りを見回すが、当然そこにラクサスはいない。

「だ・・・騙されたのかっ!」

そこでようやくエバーグリーンが言ったラクサスの居場所が口から出まかせ、真っ赤な嘘だったと気づき、エルザはその場で膝をつき頭を垂れたのだった。








「くそっ!全然手がかりがない!」
「他にラクサスがいそうな所は思いつかない?」

ラクサスと雷神衆を倒す為にギルドを出たカナとジュビアは一緒に行動していた。

「う~ん・・・長い付き合いだけどね・・・今のアイツは心に余裕がないっていうか・・・」










そんなカナとジュビアとは別の場所。
カナ達と同じ目的でハッピーと共にギルドを出たルーシィは、街の中を歩いていた。

「何でギルドの拡声器使えないんだろ」
「『B・O・F中はマスター以外使用禁止』って術式があったのよ。本当・・・ありえない芸の細かさね。てか上着着てくるんだった。さむっ」

ルーシィは現在もチアガール衣装である。

「とにかく神鳴殿から街の人を避難させなきゃ」
「その事だけど、オイラはやめておいた方がいいと思うな」
「何でよ」

橋の手摺の部分を歩くハッピーを見るルーシィ。

「今、この街は収穫祭でマグノリア以外の人々も集まって凄くごった返してるんだよ。パニックは危険だよ。必要のないケガ人が大勢出るし」
「でも、それじゃあ・・・」

確かにハッピーのいう事も正しい。
が、放っておけば神鳴殿から雷が落ち、大変な事になる。

「どうしよう」
『ねー』
『どうしよっか』
『ねー』

何かいい手はないか、とルーシィは考える。

「!」

明らかに自分でもハッピーでもない声がして顔を上げると、いつの間にかルーシィの隣に小さい樽形の人形が5体浮いていた。

「ルーシィ、危ない!」
「きゃわっ!」

それを見たハッピーは慌ててルーシィを掴み、飛ぶ。
それと同時に、人形から凄まじい量の魔法弾が放たれた。

「なっ、何コレぇ!」
「ビックスローだ!」

叫び、建物の屋上に着地する。
その向かいの建物の屋上には、グレイとスバルを倒した雷神衆の1人、ビックスローがいた。
「またフェアリーテイルだー」と人々が騒ぐ声がする。

「よォ・・・アンタが噂の新人かい?」
「噂って何よ!すっごいイヤな予感するんですけど」

ルーシィに関する噂とは――――――――――

「コスプレ好き女王様だろ?」
「どんだけ尾ヒレついてんのよ!」
「当たってる」

あまりいいとは言えない噂だった。

「それナニ?チアガール?」
『チアだー』
『チアだ』
「これは・・・!」

が、チアガールの格好で叫んでも説得力はない。
因みにルーシィの今までのコスプレはエバルーの際のメイド、週ソラ取材の際のバニーガールくらいしか思い当たらない(バニーガールってコスプレですか?よく解りません)。

「ヘイ、ベイビー!やっちまいな!」

ビックスローが叫び、ルーシィとハッピーを指さす。

「わっ!」
「ぎゃっ!」

その瞬間、5体のトームマンが再び魔法弾を放つ。
それをギリギリで避けるルーシィとハッピー。

「悪いねぇ。入ったばっかなのに優しくしてやれなくてさぁ。でも今はこーゆーゲームの最中だから」
「アンタ達、あんな事までしてマスターが許すとでも思ってんの!?」
「マスターの許しなんかいらないよ。このゲームが終わる頃にはラクサスがマスターだし」
「もうっ!」

人形の攻撃を避けながら、宙を睨む。

「あの飛んでるのが邪魔ね」

そう言うと同時に、ルーシィは鍵を構える。

「開け、人馬宮の扉!サジタリウス!」
「お呼びでありますか、もしもし」

呼び出したのは長距離攻撃を得意とする弓の名手、サジタリウス。
今日も相変わらず馬の着ぐるみを着ている。

「おお!星霊魔法!?つーか星霊にもコスプレかよ!」
「違うからっ!」

何か勘違いをしているビックスローにルーシィはツッコみを入れる。

「狙いは飛び回ってる奴、OK?」
「了解であるからして、もしもし!」

ルーシィからの指示を受け、サジタリウスは矢を放つ。

『うぎゅ』
「おお、ベイビー!」

人形が1つ、射抜かれた。
続けて1つ、また1つと射抜かれ、遂には5体全部が破壊される。

「氷漬けの後は粉々かよ!」
「やった!」

それを見て喜ぶルーシィ。

「NOーーーーー!ベイビーーーーー!」

攻撃手段であった人形を全て壊され、ビックスローは頭を抱える。
だが―――――――――――

「なんつって」

頭を抱える必要なんて、ない。

「!」
「サジタリウス!」

次の瞬間、サジタリウスに攻撃が当たる。
人形は全て破壊したのに、だ。

「もしもし・・・?しばらく休憩が必要であります・・・から」
「そんなっ!」

その攻撃によって大ダメージを受けたサジタリウスは、そのまま星霊界へと戻っていってしまった。

「いくら人形壊しても、『魂』を操る俺には全く関係ねーし」
『だねー』
「魂!?」
「ビックスローは魂を人形に憑かせる魔法を使うんだ」

ハッピーが説明した瞬間、クマの人形がルーシィに向かっていく。
そして、その手から星霊の鍵の束を掠め取った。

「あ!」
「この下、ホビーショップ。人形の宝庫よ」

つまり、何度破壊されようが代わりになる人形は山の様にいる、という事だ。

「あたしの鍵!」

鍵を取っていった人形を目で追うが、その人形はどこかへと飛んでいく。
そしてすぐさま、別の人形3体がルーシィへと襲い掛かる。

「いっ!」

星霊さえ呼べれば対処できるが、所持(ホルダー)系の魔導士の弱点が今は突かれている。
アイテムを盗まれたり無くしたりすると魔法が一切使えなくなってしまう、それが能力(アビリティ)系との違いであり、弱点だ。

「んぎゃ!」
「きゃあ!」

1体の人形にハッピーは蹴り飛ばされる。
ルーシィは別の人形によってコケさせられ、尻餅をついた。

「もう後には退けねぇんだ。悪ィな、コスプレ嬢ちゃん」

ビックスローの口角が上がる。

「ラクサスの為にその魂を捧げろ!」

仮面の奥の目が、光った。

「バリオンフォーメーション!」

その声に反応し、5体の人形が五角形にフォーメーションを組む。

『てぇい!』

そして、その中央から凄まじいまでの砲撃を放った。

「なに・・・これ・・・」
「やめろーーーーーー!」

迫り来る砲撃。
今のルーシィにこれ程の砲撃を防ぐ術はない。
ハッピーが叫び、ルーシィが目を見開き――――――――――












大空(アリエス)ゥゥゥゥ・・・鉄壁(シールド)ォォォォォォォォッ!」


















突如、星霊使いと人形使いの戦場に、2人の乱入者が現れた。
1人は魔法陣を展開させ、風の壁を造り出して砲撃を防ぎ。
もう1人はルーシィを抱えて爆発の余波から庇った。

「!」

一瞬の出来事にその場にいる全員が呆然としていると、ルーシィを抱えた青年が口を開く。

「何でだろうね。僕だけが君の意志に関係なく自由に(ゲート)を通れるみたいだ」

そう言う青年はオレンジ色の髪をライオンの鬣のようにセットし、スーツを着ていた。
ブルーカラーレンズのサングラスから見える眼差しは温かい。

「これは人と星霊との壁なんて、僕達の愛の前では砕け散るという事なのかな」

その言葉に、盾を作った青年は反論する。

「むぅ・・・確かに君はルーシィが好きみたいだけど・・・」

風の壁を消し去り反論する青年は、エメラルドグリーンの髪を揺らす。
学生を思わせる服装に少女のような童顔、ルーシィや青年と比べると幼く見える。

「僕だってそれ以上にルーシィが好きだって事忘れないでよ!愛だよ、愛!」

煙が晴れる。
ルーシィを抱えていた青年がルーシィを降ろした。

「・・・愛って・・・何、バカな事言ってんのよ」

頬を赤く染めながら、ルーシィは苦笑いを浮かべて呟く。

「お・・・お前らは・・・!」

そこに立つ2人の青年を見て、ビックスローは驚愕する。




「無事でよかったよ、ルーシィ」
「約束を果たす時が来たようだね」




その2人の青年の名は――――――――

「ロキ!ルー!」

―――――星霊使い(ルーシィ)人形使い(ビックスロー)の戦場に。
今、獅子(ロキ)大空(ルー)が現れる。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
やっぱりルーシィといえばルーでしょ!という事でやっぱりここ2人は共闘です。
でもってティアとフリードと戦いは不可能っていうかそこまで人気ないんで、止めます!
だから今回、ティア戦闘のシーンはありません!皆無です皆無!
ビックスローはルーシィとルー、ロキ。フリードは原作通りミラちゃん。でもってラクサスはナツとシュランの絶対この先出来ないタッグ!
・・・まあ、楽園の塔編でよく頑張ったね、という事で。

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