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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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とある休日。その時隊長陣は

†††Sideルシリオン†††

「ねえねえ、ルシル。何してるの?」

フォワードの早朝訓練が終わり、1日間の休日が言い渡されたみんなが解散した後、俺は自室に戻ってある用事を行っていたわけだが、ノックもしないでシャルが部屋へと入ってきた。一応姉弟とはいえ、親しき者にも礼儀ありと言うだろうが、ノックくらいしてほしいものだ。

「・・・まったく。ちょっとな。レヴィヤタンのスピードについて対策を講じていた。念のために他のヤツらへの対策として、捕縛神器の最終調整。そして玉座の本体(わたし)から、新しく複製された武装や術式に能力をダウンロードしていた」

シャルへと振り向かずにそのまま作業を続行する。残っているのはダウンロード作業のみだが、別に振り向かなくてもいいだろう。陸戦においてのシャルの機動力は、圧倒的に私より上。そのシャルより速いレヴィヤタンに私が接触した場合の対抗策を、暇のあるうちにしておかなければならない。私の場合は空戦であれば機動力においての競い合いでレヴィヤタンにも勝つ自信がある。だが、相手にしなければならないのはレヴィヤタンだけじゃない。そのための捕縛神器の最終調整と戦力強化だ。

「で? それはそうと何か用があったんじゃないのか?」

「ん? あ、そうそう・・・ねぇルシル」

本体からのダウンロードをようやく終え、シャルの居る背後へと振り返る。

「・・・どっち着たい?」

そこには女性物の服を両手にして私に見せるシャルが居た。やってしまった。女装の刑(そっち)の対策は結局何もしないまますっかり忘れていた。

「わ、私のような男が着れるサイズの女性の服など無いはず・・・どうしたんだ、それ?」

サイズは明らかに私に合わせているように見える。しかしシャルが既存の服のサイズ、しかも男のサイズに直すような器用な真似は出来ない。何せ聖祥の小中等部での家庭科の成績はお世辞にも良くなかったしな。それはともかくとして、私はある推測に辿り着き、頭の中の警報ランプがイエローを燈す。

「あぁこれ? 何で教えてくれなかったのかなぁ?」

シャルが手に持っていた服が光の粒子となって散っていった。あの微笑みは明らかにまずい。警報ランプはイエローからレッド。つまりは推測から確定へと移行してしまった。あの服は魔力物質化の術式で生み出された代物であることは間違いない。
しかしシャルの持つ魔術の中でそんな事が出来る術式は、神器や戦闘甲冑だけで、その他は存在し得ない。ということは、だ。バレてしまった、ということだ。私との契約・・・メンタルリンクをしたことで得られる恩恵に。

「我が手に携えしは確かなる幻想」

シャルが私のオリジナル呪文(スペル)を詠唱し、再度その手にさっきの服が魔力で構築された。

「あなたと契約すると、あなたの保有する複製武装や術式が引き出せるなんて最近知ったよ。まぁランクの高い武装や術式は、制限されちゃう所為でなんでも引き出せるってわけじゃないけどね。んでね、今の私が引き出せる術式の中では、この汎用性の高い魔力物質化の術式がお気に入り♪ だってこれって便利過ぎて、呆れを通り越して可笑しくて泣けてくるからね」

「そうか、それは良かったな。それじゃ私はこれで失礼させてもらおうかなっと・・・」

バレてしまっては仕方がない。もう誤魔化しは効かないだろう。フォワードの子たちは休日を満喫するために出掛けることになっていたはず。だからあの子たちに私の女装を見られることはまずないと見ていいだろう。だが、問題はそれだけじゃなくまだ山積みだ。隊舎には、六課の男女問わずの隊員が多く待機している。そんなところにいい歳した男が女装なんてして登場したら・・・

(さよなら、私の尊厳(涙))

「私の暇つぶし、もとい娯楽のために・・・覚悟!!」

「暇つぶしも娯楽も変わらないだろうがっ!!」

なんて女だ、シャルロッテ・フライハイト。何故そこまでして私を女装させたがる。

「逃がさないよっ。我が手に携えしは確かなる幻想・・・」

「こんなくだらないことで魔力を消費するなド阿呆!」

私は必死に部屋から飛び出して、シャルの光の鞭から逃れる。全力で廊下を走り、何度か目かの角を曲がってシャルを振り切ったのを確認してすぐ、フェイトとエリオとキャロの3人と会う。

「あっ、エリオ、キャロ、今からか?」

さすがに無視して走り去るわけにもいかないために立ち止まって声を掛ける。純粋な走りの速度なら私が上なのは既知だ。さすがに閃駆や身体強化を使われたら追いつかれるが。十数秒くらいなら足を止めても問題ないはずだ。

「あ、はい。今からキャロと2人で・・・」

「そうか。エリオは男だから、しっかりとキャロをエスコートしないといけないぞ」

エリオの身だしなみを軽くチェック。よし、問題ないな。続いてキャロを見るが、確認するまでもなくOKだ。うん、可愛いぞ。

「よく似合っているよ、キャロ。本当に可愛らしい」

「え、あ、その・・・ありがとうございます、ルシルさん・・・」

頭を撫でてやりたいが、折角セットした髪を乱すわけにはいかない。それにしてもフェイトはどうしてモジモジしているんだ? 私に何か言いたいことがあれば遠慮なく言えばいいのに。どれだけの付き合いだと思うんだ。

「えっと・・・ルシルはこれからどうするの? もし良かったら、わた――」

「どうするの?って悪魔から逃げるんだ」

「「「え?」」」

私の返答にどう反応していいのか判らない3人は呆然としている。3人のそんな揃いすぎている表情は微笑ましくてまだ見ていたいが、これ以上ここに留まるのは危険だ。

「それじゃエリオ、キャロ、今日は楽しんでおいで。フェイトもまたあとでな」

「あ、ルシル! あぅ・・・」

改めて走り出して、シャルからの逃亡を再開する。魔力を完全カットしているために探査され発見、ということはない。だが走って逃げてばかりではいずれ見つかってしまうだろう。ならばどこかに潜伏するしかない。どこか良い隠れ場所はないか・・・?

「どないしたん、ルシル君?」

ここで出会ったのが、機動六課の部隊長である八神はやて。そうだ。ここは彼女に匿ってもらおう。

「はやて、悪いけどしばらく君の部屋に匿ってほしい」

「え? 私の部屋って・・・。そんなルシル君、ちょう大胆すぎへんか? というかフェイトちゃんがおるのに、浮気するんはどうかと思うんやけどな」

頬を朱に染めて、恥ずかしそうに俯きながらそう言うはやて。ちょっと待ってくれ。いろいろとツッコミどころがあってどうすればいいんだ私は。と、とにかく「違う。寮の君の部屋じゃなく、部隊長室だ」と弁明する。するとはやては「あはは、判っとるよ。冗談や、ジョーダン♪」と可愛らしい笑顔を見せた。

「んー、部隊長室に匿うってことやけど。まぁ別にええよ、困ることはないしな。でも・・・誰から逃げとるん? シグナムは外回りでもう出掛けてるはずやけど・・・?」

「まずは先に匿ってほしいんだ。話はそこで・・・」

今ならシグナムからの模擬戦の誘いでも乗ろう。悪魔(シャル)から逃げられるのであれば何だってしてみせる。シャルを姿を警戒しつつ、ようやく部隊長室へと辿り着き一息つく。だがあとあと考えると、潜伏場所を部隊長室に選んだのは間違いだった。

「――で、どないしたん、ルシル君? かなり本気で困ってたよな・・・?」

「・・・私を女装させようとするシャルから逃げているんだよ。彼女が一体何を考えているのか本気で解らなくなってきた」

それを聞いたはやては何を想像したのか声を出して笑った。

「ルシル君の女装かぁ。昔は可愛いかったけど、今じゃ綺麗になるなぁ」

「想像するのはやめてくれ。それに結構傷つくんだぞ、可愛いとか綺麗だとか・・・」

今の私の背格好での女装姿を想像して綺麗だとはやては言う。綺麗だろうが可愛いだろうが、私としては多大に精神ダメージを負う。

「でも何でそんなことになったん? いきなりの女装しろ、やないんやろ?」

「まぁ結構前の話になるが・・・」

そうして話したのは、ホテル・アグスタでのメールの一件。フェイトのドレス姿の感想が云々とはやてに告げた。

「なるほどなぁ、シャルちゃんのあの時の行動はそういうことやったんやなぁ・・・」

口元に右手を当てて、その時でも思い返しているようだ。

「それでルシル君は、フェイトちゃんのそのドレス姿の写真を見てどう思ったん?」

ニヤニヤとしながらはやてが訊いてくる。フェイトのドレス姿の感想か。ごまかす必要がないため、「ん? あぁ綺麗だったよ」素直な感想を述べる。するとはやては私がそんな真正直に答えると思ってもいなかったのか、少し呆けた。

「なんやえらい素直やなぁ。もう少し照れて口ごもると思ったけど」

本人(フェイト)がこの場に居れば、少なからずはそうなっただろうなぁ」

「はぁ。ということはなのはちゃんはユーノ君と、フェイトちゃんはルシル君とかぁ。なんや私だけ売れ残りみたいや」
 
はやては自分だけ相手がいないと苦笑した。それはシャルも同じだが元々無理なこと。そしてフェイトとなのはの2人に関してだが・・・。シャルから聞いた話だと、なのはとユーノはまだそういう関係ではないらしい。が、可能性はアリとのこと。私とフェイトではそういう関係になるのは・・・考えるのはヤメロ。まぁ将来的に考えて、現状可能性があるのはなのはとユーノ組だけ、ということになる。

「待った。はやて、君にはアコース査察官がいるじゃないか」

1人忘れていたはやての恋人候補、ヴェロッサ・アコース査察官。彼とはそう多くの面識はないが、はやてとよくやっているのは知っている。

「ロッサ? んん、ロッサは異性とかゆう以前にお兄さんみたいな人やしなぁ」

「それがいつか気づけば恋へと発展・・・はないか・・・」

「「う~ん」」

2人して腕を組んで真剣に考える。しかし何か変な方向へと話が進んでいる気がする。それから少しした頃、「はやてちゃん・・・あ、ルシル君ここに居たよ、シャルちゃん」部屋のドアが開き、入ってきたのはなのは、フェイト・・・そしてシャルの3人。フェイトの背後ではシャルがニッコニコに微笑んでいた。あ、悪魔が降臨してしまった。

「「・・・・」」

そんなシャルを見たはやてと2人して沈黙する。はやての部屋に、友人たるフェイトやなのはが来るのは当たり前。その2人と友人のシャルが一緒に来るのもまた当たり前。そう、潜伏場所にはこの4人と関係が少ない場所を選択するべきだった。

「ルシル、シャルの念話に応えないなんてダメだよ? 何か大事な用事だったらどうするの?」

私を女装させることが大事な用事とは絶対言えない。

「フェイト、なのは。・・・シャルの用事が何なのか聞いていないのか?」

「「うん」」

そこは訊いておこうか、お2人さん。訊いていれば、きっと私の味方になっているはずだから。そんなあったかもしれない未来を、私は泣く泣く諦めた。本当に今更、「シャルちゃん、ルシル君にどんな用事なの?」そう訊ねるなのは。シャルは「それはね」と呟いたあと、パチンと指を鳴らした。

――変化せしめし乱音(ディゾルディネ・カンビャメント)――

私を覆うように“ポンッ”と音を発しながら煙幕が生み出される。しまった、これは強制的に対象を着替えさせる術式・・・これまで覚えてしまったのか。

「「「・・・・」」」

煙幕が晴れて視界がクリアになると、フェイト達が私を見て何やら微妙な顔をしていた。原因は判る。もう私の着替えは済んでいるということだろう・・・。

「なぁ、シャ・・・変声魔術まで使ったのか君はっ!?」

私の声が女性のものに変わっていた。ここまでするかこの馬鹿女は・・・。

「ねぇ、シャルちゃん。さすがに可哀想だよ、ルシル君が。綺麗だけど・・・」

「そうだよ、どうしてこんなことをするの? 綺麗だけど・・・」

もう好きに言ってくれ(涙)。

「あぁそれ? 実はね・・・」

シャルが2人の耳元でこっそりと話をしている。すると2人はさらに微妙な表情へと変わる。

「シャルちゃん・・・」

なのははもう、どう反応していいのか判らないようだ。ごめんな、馬鹿な義姉で。一方、フェイトは私を見ては「あぅ」視線を逸らす、というのを繰り返す。私の女装の原因が、自分のドレス姿の感想云々ということを知っての反応だろう。

「シャル・・・悪用しないって言ったのに・・・もう」

「悪用じゃないし。でも気になってたでしょ、ルシルの反応が?」

「えっと・・・」

シャルの悪魔の囁きに耳を傾けているフェイト。

「でもさっきルシル君、フェイトちゃんのドレス姿は綺麗やったって言っとったで?」

「おいっ!?」

まさかここではやてが会話に参加してくるとは・・・。しかも私の感想を口にするってどういうことだ。

「そ、そうなの・・・ルシル・・・?」

「うっ」

フェイトが遠慮がちにそう訊いてきた。が、その目は爛々と輝いているけどな。するとシャルが「ナイス、はやて」と口にしながら再度指を鳴らした。一瞬の煙幕が生まれ服装が戻り、そして変声魔術も解除されたのが判る。

「ああもう・・・フェイトのドレス姿・・・綺麗だった・・・」

「あぅ・・・その・・・ありがとう、ルシル・・・。嬉しい」

シャルの奴、私にこれを言わせるためにわざわざこんな回りくどいことをしたのか? 何を考えているんだ本当に・・・。呆れてものも言えんわ。

「いや~、いいもの見せてもらったぁ。んじゃ私はこれで――」

「待て」

「え?」

私にこんな真似をさせたことに対する仕返しをまだ終えていない。君にも少し辱めを味わってもらおう。さぁ恥ずかしさに踊るがいい、馬鹿姉。

「我が手に携えしは確かなる幻想!」

――変化せしめし乱音(ディゾルディネ・カンビャメント)――

「ちょっ――」

シャルと同じ術式を引っ張り出す。そしてシャルに着せるのは、彼女が最も苦手とする服装。私は指を鳴らした。するとさっきと同じような間抜けな音を出しながらシャルの周りに煙幕が生まれる。

「「「可愛い❤」」」

「~~~~~~~~~っ!!」

シャルの格好を見た3人が歓声を上げる。その反面、シャルは顔は羞恥に染まりながら私を睨んできた。

「その格好で睨まれても凄みは全然ないぞ?」

シャルが苦手とする服装、それはゴシック&ロリータ・・・俗に言うゴスロリだ。そして今彼女が着ているのは、“異界英雄エインヘリヤル”の1人、“水銀燈”のドレスだ。

「やってくれたね・・・ルシル・・・!」

さらに目を細めたシャルは、「ルシルも恥ずかしさに踊れ!と指を鳴らした。

――変化せしめし乱音(ディゾルディネ・カンビャメント)――

「ひゃっ?」「うわっ?」「なんや!?」

しかし私ではなく、フェイトたち3人に煙幕が発生した。精神の乱れが術式発動に影響したようだ。

「うわっ、なんやこれ!?」

「え、えええええっ!?」

「な、何でこんなっ!?」

「あれ、なんで!?」

シャルたち女性陣は混乱の極みに達してしまったようだ。なのははどこぞの貴族が着るようなドレスで、日傘まで装備している。そしてフェイトは振袖。はやてに至っては十二単という始末・・・なんか頭痛がしてきた。元凶たるシャルは、私が着せた服装のままで、術式発動のミスを起こしたことに混乱中。

「私がここに居るのはまずそうだから失礼する。シャル、ちゃんと術式を解除しておけよ」

私はこの場からの逃亡を図る。このままシャルが術式を暴走させて、この4人が男に見られてはいけないような格好になってしまう可能性もある。そこに私が居たら・・・しかも、その場面を誰かに見られたら・・・DEATH

「待ちなさいルシル!!」

――変化せしめし乱音(ディゾルディネ・カンビャメント)――

再度指を鳴らして複製術式を発動させるシャル。

「チッ、今度は成功したか!?」

視界を煙幕によって遮られてしまった。次はどんな女装になってしまうやら・・・。不安でいっぱいだったが、「・・・・・学ラン?」着ているのは学ラン。よかった、女性の服じゃなかった。だがシャル達もまた服装が変わってしまっていた。もうターゲットが定まっていない。なんて災害だ、これ?

「えっとシャルちゃん・・・何で私たちもなのかな?」

今度のなのはは純白の修道服を着ている。“エインヘリヤル”の1人、“禁書目録(インデックス)”のモノだ。

「これ・・・どっかの制服?」

フェイトはブレザーにミニスカート・・だけならよかったのに、頭の上にはウサギのような耳、そしてふわふわな尾。あの格好も知っている。“エインヘリヤル”の1人、“鈴仙・優曇華院・イナバ”のモノだ。

「私だけメンズのようやね」

はやては確かにブラックスーツにサングラスという黒一色になっていた。あれは知らないな。メン・イン・ブ○ック?

「何で私は着ぐるみなわけ?」

シャルは不細工なペンギンの着ぐるみを纏い、短い膝をついて項垂れている。あれも知らない・・・いや、どうだったかな。

「はやてちゃん、ただいま・・・ってなんですかこれはーーっ!?」

このカオスな現場に現れたのはリインだ。まぁ扉を開けて入ってきてみれば、主たるはやてがブラックスーツ、なのはは修道女、フェイトはウサ耳の制服姿、シャルはペンギンの着ぐるみという、普通じゃお目に掛かれないものばかり。そんなわけの判らない格好をした彼女たちを見れば、声を上げるのも当然だ。

「あ、リイン。おかえりや」

苦笑混じりでリインに応えるはやて。リインは戸惑いながらはやての側へと飛んでいく。

「はやてちゃん、それにみなさんもどうしてそんな・・・」

戸惑い続けるリインに簡潔な説明をした。するとリインも私たち同様シャルに呆れてしまった。

「シャルさん・・・」

「反省してますよ、えぇ反省してますよ」

本当に反省しているのか疑わしいが、もうどうでもいいや、わぁ~い・・・。現実逃避したくなるのも仕方ないじゃないか。自分の意思を無視されて着せ替え人形のような状況に陥れば、誰だってこうなるはずだ。

「そういえばリイン、帰ってくるの遅かったけど、メンテナンスチェックとかしてた?」

「はいですっ。わたしと蒼天の書のフルチェックをやってもらってたです♪ あ、シャーリーが、はやてちゃんのシュベルトクロイツと夜天の書をあとで受け取りに来るって言ってたですよ?」

「「「「「え゛」」」」」

シャーリーがこの部屋に来るのか? いや、まだ女性だからマシな方・・・なのか?

「シャルちゃん、早く元に戻してっ」

シャーリーがここに来ると知ってなのはが慌てる。シャルの前で指を組むなのはは正に修道女(シスター)

「あ、うん!」

――変化せしめし乱音(ディゾルディネ・カンビャメント)――

再度指を鳴らして術式を発動させたシャル。私たち5人に煙幕が一瞬だけ生まれる。

「わわっ、リインもですかー!?」

そんなリインの声を聞いて、シャルがまたミスしたことが判った。私の視界の中には、リインも含めた女子5人の服装がまた変化していた。もちろん私も・・・これは女性の韓服チマチョゴリ? 何故?

「「「「可愛い!!」」」」

自分たちの服装そっちのけでリインを見つめる女子4人。私もその視線の先にいるリインを見てみると、「ほう」そこには純白のウェディングドレスを着たリインがいた。きっちりブーケまであるとは恐れ入った。

「これって・・・ウェディングドレス、ですか?」

リインが頭に被ったベールをいじりながらクルクル回っている。4人は目を輝かせながらリインを見ている。

「まさか私らより先にリインがそれを着る日が来るなんて・・・」

はやてはフランス・アルザスの民族衣装を着ながらそんなことを呟く。

「リイン、すごく綺麗だよ」

なのはは羽織、色やデザインからして新撰組なのが判る。それを着ながらリインを見てうっとりしている。

「あ、相手って私・・・なのかな?」

フェイトは白いタキシード。明らかにリインとペアといった感じだ。自分の服装とリインを見ながら戸惑っている。

「・・・ルシル、助けて・・・(涙)」

そして馬鹿女シャル。シャルはフリルがたくさん付いた黒いエプロンドレスだった。偶然とはいえ、自ら苦手な服へと変えたことに精神的ダメージを受けている。アホか。

「確かにこれ以上は馬鹿馬鹿しいな。まったく、貸し1つだぞシャル?」

シャルの頭に一発、軽い拳骨を落としてやってから、「我が手に携えしは確かなる幻想」複製術式を発動させるための呪文を詠唱。

――変化せしめし乱音(ディゾルディネ・カンビャメント)――

今度は私が指を鳴らして術式の解除を行う。きっちりと全員に煙幕が生まれたことを確認する。

「「「「「「・・・」」」」」」

一瞬だけの煙幕も晴れて・・・全員が無言となる。当然だ、再度わけの解らない服装になっていれば誰だってそうなる。

「そんな馬鹿な。私もミスをするだと?」

メイド服を着ながら自分のミスに唖然となる。シャルならまだしも私がこんなミスを犯すなんて信じられない。

「ウソ・・・でしょ? ルシルまでミスするなんてどうなってんの?」

シャルが桃色のフラメンコドレスを着ながら項垂れた。

「え、戻せないってこと!?」

「それってしばらくこの格好でいなきゃダメってことだよね!?」

なのははドイツのディアンドル、フェイトは沖縄の盆踊り衣装エイサー・・・。何故かは知らないが本当にごめんなさい。

「なぁルシル君、これってルシル君の趣味なん?」

「そんなわけがあるかっ!!」

紅白の巫女服を着ているはやてからのあんまりなお言葉。思わず怒鳴るように反論してしまったが・・・すいませんでした!!

「そうですよね。ルシルさんがそんな変な趣味を・・・」

リインは・・・様々な雪の結晶が描かれた浴衣を着ている。というかな。そう思うなら私から徐々に離れていかないでくれ、リイン。

「くそっ、元に戻るまで何度だってやってやるさ」

こんなことをせずとも直接着替えればいいじゃないか、という簡単な解決法に誰も辿り着けなかったのは仕方がないと思う。かなり焦って混乱してたしな。それから何度も無駄な労力を注ぎ込んで術式の発動、解除を繰り返した。
シャーリーのことについては、その時まともな服になっていたリインが渡しに行ったことで解決。そして元に戻る1つ前の服装となったのはシャル達の母校、聖祥小学校の制服だった。その制服にシャル達は嬉しそうな恥ずかしそうな・・・そんな表情で頬を赤らめていた。

「やっと・・・元に戻った」

結局半日近くこんなことをしていたと思うと泣きたくなってくる。ここに居る全員がぐったりとしている中・・・

『こちらライトニング4。緊急事態につき現場状況報告します』

キャロからの緊急連絡に、私たちは瞬時に意識を仕事モードへと変える。
 
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