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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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一応能力を使ってる見習い騎士クロエの成長記・14冊目

 
前書き
KOS-MOSって可愛いくて美しくて綺麗だよね。いつかゼノサーガと何かのクロスとか書いてみたい。
(※試験の反動で寝言を言っています) 

 
既に時刻は深夜だ。しかし町はなお一層その騒々しさを増している。小学生はとっくの昔に家に帰ってなければいけないような時間帯に、なぜ僕は鎧に抱えられてまで前に進むんだろうか。体はくたくたで全身に重りを付けているような気分だ。

お父さんとお母さんは心配してるだろうか。お兄ちゃんとお姉ちゃんは今頃何をしているだろうか。門限を過ぎても帰らない二人の子供・・・絶対心配してる。帰ったらなんて言えばいいんだろう・・・あ、魔法使いってことをちゃんと説明しなくちゃ。

《少年、夜は冷える。寒くは無いか?》
「・・・寒くは、無いよ。だって一人じゃないから」

バリアジャケット(というか既に騎士甲冑?)の鎧部分はあちこち脱落しているが、それでもちゃんと体を守ってくれている。そしてゼルギウスさんという話し相手がいるので寂しくもない。

「他に誰もいなくたって、一緒なら寂しくないや」
《―――》

何か言おうとしたゼルギウスさん。でもその言葉はさっきまで僕が戦っていた目的地辺りから聞こえた大きな破裂音で遮られた。まさか―――皆の身に何か起こってるんじゃ?

「急ごう」
《諒解した》




二人が通り過ぎた通りの影から一人の女性がするり、と月光の下に姿を現す。その女性―――月村忍は、憐みを込めた目線で二人の行った方角を見やった。すずかを保護するために出張ったのだが、思わぬ光景を見たものだ。

「・・・他に誰もいなくたって、か。貴方はどこまでも孤独なのね」

人と化物は決して相容れることは無い、そういう意味の言葉に取れた。彼はヒトではないから、周りに何人ヒトがいようが彼は孤独なのだろう。あの鎧が彼の父親なら、彼はこれからいっそうヒトに対して壁を作るかもしれない。孤独でなくなったならば、彼がわざわざ人として生きる必要もなくなるから―――


―――無論、彼女の考えはクロエに対する盛大な勘違いである。真実を知る人間がそれを見れば「なんか見当違いなこと言って格好つけてる残念美人」というレッテルが張られること請け合いでだろう。勘違い、果てしなく。







「・・・で、結局自分ら誰なん?」
「えっと、あれです。ドッペルゲンガーです」
「そうそう、ドッペルゲンガードッペルゲンガー」
「ドッペルゲンガーです我がある・・・はやて殿」
「ん~嘘つくときのヘタクソ加減までウチの子そっくりか・・・特にシグナム。いよいよ分からんくなって来たで」
「あ、主よ・・・私は主に嘘をついたことなどあ、あ、ありま・・・」
(あるのか)
(多分お使いの時にうっかり卵一個だけ割っちまった件だろ)
(だから卵はもっと上の方に詰めといた方がいいって忠告したのに・・・)

僕が現場に戻ってみると(実際には抱えられてます。おんぶも肩車も鎧が邪魔で・・・)、なんだか大勢の人が集まってた。想定した最悪の事態には至って内容でほっと胸をなでおろす。というか、何故かシグナムさん、赤髪の子、ザフィーラさんが増殖している。

「あの・・・」
「むっ!?何だこの鎧は・・・って、お前はいつぞやの道場で・・・」

ラグネルを持ってない方のシグナムさんがこっちを見てそう言った。つまり、道場で戦ったシグナムさんは今日戦ったシグナムさんとは違う人?なんだろうか。きっと双子さんに違いない。格好もほぼ一緒だし。

「ご無沙汰です」
「あ、ああ・・・それで、その鎧の御仁はいったい?」

僕の魔法です、と言いかけた口を噤む。そういえばこの町では最近この鎧が都市伝説「漆黒ナイト」として徐々に浸透しつつあるのを忘れてた。そこにいるメンバーの何人かが心当たりあり気な顔をしているし、茶髪の女の子と赤毛の子の片割れに至っては目をキラキラさせているような気がする。
幸い鎧は操作する人間はいても中に人は入っていない。中の人などいないのだから子供の夢を壊すわけにもいかないだろう。僕だって夢は見たいしね。

「親しっこく・・・だと思います。助けてくれました」
「はやてっ!はやてっ!本物だぜ本物!!」
「分っとるってヴィータ!流石存在感が違うなぁ・・・あ、サインを!」
「それは事が終わってからよ?はやてちゃんにヴィータちゃん」
「「・・・しょぼーん」」

・・・・・・シャマルさん、ではない。そっくりだけど僕を助けてくれたシャマルさんとは少なくとも別の人だろう。きっと双子さんに違いない。この世の不思議の大体は双子さんで片づけられるのだ。彼女の弱弱しい吐息を思い出すと少し胸が締め付けられる。二人に任せたから大丈夫だとは思うけど、できればさっさと戦いを終らせて様子を無に行きたい所存だ。
それはそれとして・・・いた。目立った怪我もないようだ。もしも怪我してたら家族のみんなに合わせる顔が無いところだった。よかった・・・

「なのは」
「お兄ちゃん!駄目だよ無理しちゃ!?」
「大丈夫・・・漆黒の騎士が僕の代わりに戦ってくれるって」
「えっと・・・貴方が漆黒の騎士さん、ですよね?」

ごめん、操ってるの僕だ。子供達の夢を壊さないために一応頷かせるけど。なのははその巨体に少し尻込みかけるが、意を決したように頭を下げた。

「その、ちゃんとお兄ちゃんを守ってあげてください!私も一緒に守りますから!」

やーいやーい妹に守られてやんのー・・・ぐすん。嘘はつくし妹に心配されるし、僕ってばダメな子だ。こんな調子じゃまた翠屋の手伝いさせられるに違いない。この戦いが終わったら精進して武装探偵でも目指そう。きっと男らしくなれる。とりあえず鎧には首肯してもらった。


「それよりも闇の書だ。どうやら海へ吹き飛ばされたようだが・・・『ナハトヴァール』が完全に目覚めるのも時間の問題だ!」

シグナムさん(ラグネルの人)、ザフィーラさん(見分けがつかない)、赤毛の子(後から来た方の赤毛の子には帽子にうさぎちゃんが付いていない)はあの『敵』に異常とも言える警戒心をむき出しにしている。あの敵がそれほど恐ろしいのだろうか?目覚める、と言うワードが妙に気になる。

「シャマル、転送準備は!?」
「座標は固定しましたよ。でもこの人数を一度に送るには魔力が・・・」
《少年。転移魔法ならば我々で補助が可能だ》

そうなの?そういえばそんな魔法あったね・・・確かこの世界に来た時と月村邸侵入の2回しか使ってないよね。

「僕たちがサポートします」
「む、お前たち・・・いいのか?二人ともまだ万全ではあるまい」

あれ?シグナムさんゼルギウスさんの事知ってたっけ?と一瞬疑問に思ったが、よく見ると僕の足元にユーノくん(つい最近その正体を知った)の姿。なんとまぁ間のいいタイミングで・・・

こうして準備をしている間にクルトさん、ニルスさんと何やら愉快な皆さんが合流してみんなで転移して―――



―――そして、今に至る。





~ 一応能力を使ってる見習い騎士クロエの成長記・14冊目 ~




≪グオォォォォォォォオオォォォォォ!!!≫

苦しむようにのたうつとんでもなく大きな化物『ナハトヴァール』。闇の書の背にあったものを連想させる巨大な黒い翼。6本の足に邪神像みたいな頭部。獣を思わせる強大な口に、背中には用途不明の光輪の様なパーツが回転している。RPGに出て来そうな見た目だ。周囲には触手の様なパーツが次々に現れ、その異様さを際立たせている。
放たれる負の波動と禍々しい魔力は、なるほど確かに3人が警戒するだけのことはある。あれで街中で動いてたら一体どれほどの被害が起きたか分かったものじゃない。

「でも応龍皇を見た時のインパクトに比べると・・・ねーアルフ?」
「そうだね、あれと比べたら・・・ねぇ?」
(・・・ひょっとしてそれ、例の超大型ロストロギアじゃないのか?)

≪グオッ!?≫

「町の上空に現れた龍さんに比べると子犬みたいなものだよね、ユーノ君?」
「確かにあれなら何だか倒せるような気がしてくるよ」
「大きさは・・・200メートル位やろか?ガンバスターがあれば投げれそうやなぁ」

≪グオォォォッ!?!≫

「というか、さっきの不意打ちであれなら僕らが全力出せば粉微塵に出来ないかな?」
「ユーリ、あれのコアを取り込めるか?」
「取り込むのは流石に・・・本来の夜天ならともかくあれは混ざりすぎて本質を失ってるから。でもエグザミアの出力ではこっちが上だから、弱体化位はできる・・・と思う」

≪グオォォォォオオッ!?!?≫

「問題はアレを実体化させる憑代が供給を止めねば何度でも復活する点だが・・・」
「ああ、それならシャインっていう魔導師が心当たりあるみてぇだったから、そのうち解決するだろ」(※実際には魔導師ではないがまだ気づいていない)


≪お前らいい加減にしろよ!!何だそれはオイ!!私を虐めて愉しいかッ!?(´;д;) ≫


キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!
弱そう発言、小っちゃい発言、出力負け発言に次ぐ最後の止めを突き刺されてとうとうナハトヴァールが喋った。さっきから獣の雄叫びみたいなのばかり上げてたからてっきり喋ればいものかと・・・喋っているのは巨体のてっぺんらへんに埋まってる女の人?のようだ。・・・って―――

「何で服着てないんですか?えっちぃのはどうかと思います」
「おぉう、ええおっぱいしてるやんか・・・じゅるり」
「主はやて、スケベなオッサンみたいな発言はお控えください・・・騎士としてなんだか情けなくなります」
「垂れ下がった髪の毛と絶妙な埋まり具合でギリギリ地上波放送可能ね」
≪うるさいッ!!プログラム組まれるときに邪魔だからって引っぺがされたんだ!!≫

ナハトさんの悲痛な叫びが木霊する。どうやら彼女を作った人が裸の女の人大好きだったらしい。可哀想に、後で服を買ってあげよう。心なしかみんながナハトさんを見る目が生暖かい。

「露出狂ではないのか・・・わいせつ物陳列罪で補導するのは勘弁してやる」
「目隠ししてるのに前見えるの?」
「何で埋まってんの?」
「頭の角みたいなの触っていーい?」
≪お前ら馬鹿にしてるだろ!!絶対馬鹿にしてるだろ!!喋れるからって何いきなり普通に話しかけてきてる訳ッ!?≫

いろいろ話し合った結果、いくらなんでもこのままはセクハラだという結論に達したのでとりあえず服を着せてあげることになった。いくら今が初夏だからって流石にあれは寒いよね。お腹壊しそうだし。

「という訳でニルス。お前行って着せて来い」
「何で!?こういうのって女の人がやるべきじゃないの!?ナハトちゃんの身体はどう見ても女の子だよ!?」
「理由その一、非正規協力者に命令できる権限を管理局は持っていない。理由その二、局員のマリアンは現在魔力回復中、クロエ君はボロボロだしなのはちゃんはまだ熟練度において不安があるから前線には出せない。理由その三、お前ならやれる」
「最後の一個は何の根拠にもなってなぁぁーーーーい!!!」

人はそれをめんどいから押しつけたというのではないのだろうか。流石ニルスさん、大人だなぁ。



「はぁ、何で僕が・・・ナハトちゃん、ちょっと失礼するよ?」
≪そのナハトちゃんって言うのやめろ・・・私は闇の書自動防衛システム『ナハトヴァール』だ!≫

怒ったように体を動かすナハトヴァール(以後略してナハトでいいか)から目を逸らすニルス。動くたびに胸を覆う髪の絶対防護領域が崩れそうになっているのだ。マジで勘弁してほしい。
夜天の書人格管制プログラムであるリィンフォースに何所となく似ているが、こちらは肌が薄く青みがかっていて、髪が灰色だ。ついでに存在感在りまくりの角(?)もあってか、不思議とイメージは一致しなかった。

「ほらじっとして・・・服をちゃんと着たら皆もうからかってこないと思うから、ね?」
≪ほ、本当か?皆私の話を聞いてくれるか?(´∀`*)パァァ≫
(何だこの子・・・)

目は目隠しの様なもので覆われているが声と口元で表情が簡単に読み取れる。何だかすごく期待している感じの雰囲気だ。ナハトちゃん、暴走体だとか言われてたけど全然暴走してないんじゃないのか?そう疑問に思いながらもニルスは管理局の上着(マリアンの提供)を着せてあげようとして・・・ふと気付いた。

「あ!腕が埋まってるから袖通せないじゃん!?」
「・・・ウエェェェーーン!みんな・・・みんな私を馬鹿にするんだぁぁぁーーー!!」
「ああっ!泣かないでナハトちゃん!大丈夫、大丈夫だから!!おーいクロノ君!ちょっとアースラの医務室からローブタイプの病院着転送してもらって―!!」



しばらくお待ちください・・・



目隠し+両手両足拘束状態で泣いている女性に服を着せるニルス。限りなく犯罪チックな光景だが本人たちは至って真面目である。男性陣はクロエを含めて目を逸らしているのが何とも変な空気を作り出していた。女性陣は誰も止めない。泣きわめくナハトをあやしてみせたニルスの手腕を買っての事である。そんな腕前は買われたくなかった、とニルスは肩を落としながらローブを巻きつけていく。

≪そ、そこは少しゆっくりしてくれ。擦れるから・・・≫
「ご、ごめん。こんな感じでいい?」
≪・・・お前の手は暖かいな≫
「ナハトちゃんの身体はひんやりしてるね?・・・はい、出来た!」

ローブを着せ終えたニルスはふう、と一息ついた。何せ女性に服を着せる任務など殆どしたことが無い(救助任務で何度かしたことはあるが)ので神経を使ってしまった。だが、これで漸く一段落である。

≪服・・・服だ。着るのは600年ぶりくらいかな?・・・ふふっ♪≫
(なんだろう、ナハトちゃんが余計不憫に思えてきた・・・民間人救助のためとはいえ射撃魔法叩き込んでごめんね?)

「おー・・・」
「ちょ、はやてちゃんガン見しすぎよ・・・」
「んー・・・・・・裸ローブって逆にエッチやない?」

≪・・・・・うわぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁん!!にるすぅぅーーーー!!!≫
「あぁよしよし大丈夫だよ。僕はちゃんとお話聞いてるから、ね?」

その後泣き止ませるのに3分ほどの時間を要した。そしてその間にナハトに対する皆のイメージは完全に塗り替えられてしまったとか。

「流石ニルスさん、手慣れてるなぁ。スクライアの里で『親より親らしい魔導師No,1』の座に輝いただけのことはある。ニルスさんを超える引率者は向こう100年は現れないだろうね」
「ニルスさんって管理局員より保育園や幼稚園の先生になるべきだと思うの」
『世紀末保育士伝説ニルスの杖!絶賛放送中!!』
「・・・君は一体何を言ってるんだエイミィ?」

なお、その光景を見ていたリインフォース2名は((あんなのが私の中にいたのか・・・))とものすごく複雑そうな顔をし、ツヴァイは(もう深く考えるのは止めてノリにまかせたほうがいいんでしょうか・・・)と諦観の目をしていたとか。
  
 

 
後書き
あれ?こんな話だったっけ?途中からニルス君主役みたいになってるし・・・
劇場版ナデシコにこんなやり取りあったな・・・ 
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