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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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宝貝の存在を忘れかけの宝貝使い苗の激闘記・14冊目

 
前書き
お気に入り登録800突破。700を突破した時期を認知してなかったことに今更気付いた今日この頃。

この前更新してないのに何故かランキングに上がった理由っぽいものを発見しました。
どうも理想郷のSS捜索板でこのSSを探している人がいたようです。その日から数日閲覧数がやたら伸びていたので、「何そのSS?」と興味半分で見に来た人たちの仕業(?)とみて良いでしょう。

12/16 不満点を結構加筆しました 

 
―――気に入らない。

『あ!ようやっと出てくれたか苗ちゃん!色々言いたいことはあるんやけど・・・今はそれどころやないからよお聞いてや!今、町が大変なことになっとんねん!今どこにおるん!?こっちはよお分からん雑魚モンスターのせいでいろいろ大変なんやで!?』

―――気に入らない。

『今度はちびリインやのうてリインフォースのそっくりさんが町で暴れとるらしいんよ!・・・シャマル、どない?・・・・・・あかん、あんまりよろしゅうないって!』

―――気に入らない。

『え?閉じ込められた?んー・・・そらあれや。苗ちゃんを町の騒ぎに巻き込みとうなかったんとちゃう?』



「あぁー・・・何だろうなぁ。なんか・・・すっごくイライラする!」

気に入らない。
ぽんずの命に飽き足らず約束を破って町で暴れまわる、あの銀髪が恨めしい。
人の意見も聞かずに一方的な善意で私を閉じ込めたあのシュテルに腹が立つ。
ぽんずが死んだことを知らないで、平然と話しているはやての声が癪に障る。
何より、その身勝手で理不尽とも言える怒りを抑えきれない自分自身がひどく気に入らない。

喪失感から一周回って周囲へのいら立ちに方向を変えた私の八つ当たりの感情は、一直線に市街にへと身体を突き動かした。

「約束、嘘だったの!?」




 = = =




「どっせぇぇぇぇぇいッ!!」
「せやぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

右からグラーフアイゼンの一振り、左からはラグネルの一撃、共に戦う騎士名だけあって寸分の狂いもない同時攻撃。武に優れるベルカの一撃―――しかもパワータイプの攻撃を同時に受けたとあらば、並みの敵では一たまりもない結果になる。が―――

「・・・ふム。あいゼンノ一撃はでータ通りダが、やはりろすトロギアが相手では多重結界ヲハらねばば止まラヌか・・・ツクヅク面倒な」

掲げられた両手から現われた超強度のプロテクションに阻まれ、一撃が届かない。そのまま攻撃に転じられる前になんとか自分の肢体を無理やり弾いて急速離脱する。瞬間、先ほどまで自分たちのいた空間を濃密な魔力の塊が貫いた。その威力は”原作世界”におけるなのは・フェイトの一撃と同じ威力である。

「面倒なのは貴方の方よ。私は残業はしない主義なの、とっとと墜ちてくれる?」
「もう暴れないで下さい!もう・・・ひどいことしないで!!」

2人と示し合わせたかのように上空から2人の魔導師が姿を現した。既にこれでもかと言うほど溜めこまれた桜色の魔力が充填されている。その魔力は発射と同時に二人の片割れ―――マリアンがブラスタービットを用いて張ったベルカ式2重収束魔法陣を通してその威力をさらに倍加、本来今のレイジングハートが耐えられる限度を超えた威力となって解き放たれようとしている。
更に加えて闇の書の周囲を白銀の光が次々に包む。術者はザフィーラだ。

「本来は”鋼の(くびき)”という魔法だが、あれは狙いが大雑把過ぎてな・・・故にこれは、”鋼の檻”だ!」
「小賢シい真似を・・・!」

次々に編むような規則的な形で折り重なった数多の光は菱形に闇の書を閉じ込める。バインドを使えないザフィーラが即興で編み出した拘束術だ。
無論それを突破できないほど闇の書は弱くない。が、今この瞬間において、その場に止める時間は一瞬で十分だった。

「ありがと、ワンちゃん。ビットが6つしか使えないから拘束まで手が回らなかったの」
「スターライトブレイカーのバリエーション・・・!!」
「「彗星粉砕(コメットブレイカー)ーーーッ!!!」」


ラグネルとエタルドの激突にも劣らない、文字通り空を駆ける彗星さえ砕きかねない巨大な破壊の閃光が闇の書に直撃する。直後、爆発。手心の欠片も加えていない無慈悲な射撃は闇の書ごと大地を深く抉った。


「・・・ほう、カートリッジシステム無しでもサポート一つでこうも変わるか。ブラスタービットとは興味深い」
「言っとくけど私は最上位のビット使いだから。他の輩じゃこうはならないわよ」

感心したように頷くザフィーラに、先ほど使った6つのブラスタービットを自分の下に引き戻したマリアンは前髪を鬱陶しそうに掻き上げる。闇の書の不意打ちを防ぐために防御に回した2つのビットが破壊された所為で、慣れないベルカ式の魔法陣を使わざるを得なくなったようだ。
ミッド式なら力の循環は四角(スクウェア)が基本。しかしビットの数が減ったせいで効率よく魔法陣を展開できなくなったため、6と言う数を活かせるベルカ式の三角(トライアングル)に変更したのだ。

ベルカの騎士は知らないだろうがビットの制御は普通インテリジェンスデバイスと魔導師の共同運用。数を増やせば増やすほどに魔導師側の負担が増えるため、ビット使いは普通2~4個ほどしかビットを展開しない。つまり8つも並列操作していた上に慣れない術を使いながらも平然としているマリアンは、本人の言葉通り正真正銘「最上位」のビット使いである。

「それよりも、だ。気付いたか、シグナム?」
「ああ。あいつ・・・既に防衛プログラムに呑まれかけている。先ほどから声がおかしいのもその影響だな」
「それって、あの人の左手に出て来たうねうねと関係あるの?」
「・・・もう実体化しかけてるのか。いよいよもってヤバくなってきたぜ・・・!」

なのはの質問にヴィータは顔を歪める。話から察するに、その妙に生々しいうねうねした名状しがたい触手のようなものがあの人―――闇の書だったか?を侵食しているらしい。

正直、なのははそれよりもクロエと、一緒に避難した3人の事の方が気になっていた。すずかとアリサは無事安全圏へと避難できただろうか?クロエは倒れていないだろうか?クロエを庇ったシャマルは無事だろうか?渦巻く不安はしかし、マリアンの一言で何とか抑えた。

「なのは、緊急時には目前の問題を片づけることがイコール事態の前進に繋がるわ」

凛々しい顔でそっと肩に手を置いたマリアンはそう言った。管理局の魔導師で、自分とそこまで変わらない年齢なのに落ち着き払っているマリアンはなのはにとっての憧れとも言える。頭脳、実力、魅力、実戦経験。なのはの持たない全てを持っている。そんな人が共に戦ってくれる安心感が今は心地よかった。
それを横目で見たヴィータは、微笑ましいものを見る様ににやけた。

「・・・ふーん。こっちのお前は先輩に恵まれたな。大事にしろよ?」
「え?う、うん!マリアンさんはとってもいい先輩だよ!」
(きっと、こっちのなのはは”ああ”はならないだろ・・・)

世界が変わっても、その姿にはやはりもう真の意味で再会できない親友の姿がダブる。同じ結末を迎えないならば、それもまたヴィータの望みであり幸せだ。

「ねえ、ヴィータちゃん。貴方やっぱり私の事知ってる?」
「へっ、さぁどーだかな?」
「無駄話をしている暇はない・・・来るぞ!!」


コメットブレイカーが命中した爆心地にもうもうと上がる火煙を突き破るように黒い影が飛翔する。



そこには―――先ほどよりも更に触手が体を侵食した闇の書がいた。
その顔は憤怒とも歓喜とも知れない歪な形に引き攣られ、先ほどまで辛うじて感じられた知性が消滅しかけていることを感じざるを得なかった。



ラグネルを構えたシグナムがその場の全員に告げる。

「全員聞け。もしアレの理性が完全に失われたら、最早この町はそれ自体が持たなくなる。浸食の果てに現れるであろう『ナハトヴァール』の破壊は今の我々では止める事叶わず、だ」
「そんな・・・あれ以上強くなるって言うんですか!?」
『有り得ない・・・!!』

外で結界を維持していたユーノが悲鳴染みた声を上げる。元々全盛期の魔力まで回復しきっていないユーノではマリアンの負担を和らげるだけで精いっぱいだ。にも拘らず、それでも現状では戦力が足りないという。

「一応私の同僚がここに急行してる筈なんだけど・・・さては他の連中に邪魔されてるのかしら?全く忌まわしい・・・」
「ロストロギアの力で戦えているシグナムはともかく、アタシはちょっと魔力が心元ねぇ。ザフィーラはまだいけるとして、なのはは?」
「私もまだいける、けど・・・」
「・・・町に死人を出さないためには、アレを海でも荒れ地でも、周囲に誰もいない環境に引き込む必要がある。本来ならシャマルかユーノの転移魔法でそこまで飛ばす手筈だったが・・・最早力づくでこの町の海岸線まで奴を吹き飛ばすくらいしか方法が無い」
(・・・あれ?この人なんで僕の名前を・・・それに使える魔法まで?)

違和感を覚えたユーノだったが今は押し黙る。答えは事件が終わってから考えればいいことだ。

この戦いに退路はない。増援はあるかもしれないが、それもいつ来るかは分からない。
既に闇の書は魔法陣を展開し、戦闘を再開しようとしている。


「お前たち―――命を懸ける覚悟はあるな?」

「へっ!誰に向かって言ってんだよ!」

「我等は騎士。もとより覚悟は出来ている」

「町の皆を・・・友達を・・・家族を護る為なら、駄目って言われても絶対に退かない!!」

『僕だって、こんな所で逃げてたまるか!!』

「覚悟ならあるわよ――― 一人たりとも死人を出さない覚悟が」


6人の英雄が、立ち上がった。










その、瞬間。



「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

ズドォォォォォォォォォォォォォォォォンッッ!!!

「が・・・はぁッッッ!?!?!」


闇の書が、およそ平均的な人類の認識出来る領域を超えた速度で吹き飛ばされた。一瞬遅れてエタルド・ラグネルの激突による衝撃を生き残ったガラスさえ根こそぎ砕くソニックブームと、まるで理性の無い獣のような雄叫びが6人を襲った。


その時、全員は見た。

それはほんの一瞬ではあったし、常人ではまず間違いなく見えなかったであろう超音速移動の刹那を切り取った視覚情報。バリアジャケットと騎士甲冑がなければ間違いなく見逃していた瞬間。

なのはと変わらない年齢の女の子が―――闇の書を殴り飛ばしたのを。




 = = =




その顔を見た時。なのはちゃんが戦ってるのが見えた時。私の理性は崩壊した。

考えまい考えまいと必死に頭を振って否定しようとした。認めても何も変わらないし、認めれば私は自分が許せなくなりそうだったから。

でも。


「お前が・・・お前がいたから!!ぽんずは・・・っ!!」


フラストレーションによる攻撃行動。理性ある人間の最も醜い責任転嫁。
自分のせいだと分かっている。それでもこの感情を抑えられない。


―――あいつが、憎い。


「お前が殺したんだ・・・!!お前がぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!」


瞬間、私の身体は枷が外れた獣のようにあり得ない筋力で足場のコンクリートを陥没させ、その反動で弾道弾の様に空を駆けた。煩わしい空気の抵抗とGをまるっきり無視した動きに全身の筋肉が軋む。それでもこの(よわい)9歳であるはずの肉体はそれを事も無げに耐えきった。

音が置いてけぼりになっていた。だからどうした。
なのはちゃんが見てる。だからどうした。
今の私は、お前が憎くて憎くて、嬲りたくてしょうがないんだ。
ぽんずの仇。家族の仇。約束を破った嘘つきのけだもの。


「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「が・・・はぁッッッ!?!?!」

私の拳はあいつの顔に直撃した。固いものが砕ける感触。鼻か、頬か、或いはもっと大きな骨か。
痛いか?でもぽんずはもっと痛かったはずだ。それとも、苦しむ暇さえ与えられなかった筈だ。
だからお前ももっと、壊れろ。

「お前がっ!お前がっ!お前がっ!お前がっ!お前がっ!お前がっ!お前がぁぁぁーーーーーーーー!!!」

殴る。殴る。何度も何度も繰り返すように殴る。殴って吹き飛んだあいつをさらに追いかけて殴る。そして吹き飛んだあいつをさらに殴る。殴るたびにあいつの身体のどこかが壊れた音がして、それでも殴る。
殴るたびにアイツ以外の何かが壊れている気がした。でもそれは、今の私にとっては大事なものじゃないに決まっている。

「お前のせいでお前のせいでお前のせいでッ!!!ぽんずは・・・お前なんかが居なければッ!!お前がぁッ!!!」

最早意味のある言葉にならない感情の吐露を止める口は持ち合わせていない。殴るたびに相手は吹き飛び加速するのが気に入らない。殴られるために止まっていろ。私の気は収まらない。
町が早送りの様に後ろへ駆け抜けていき、その先に月光に照らされた海が見えても、私は我慢ならず、もう一発殴り飛ばした。

「壊れろぉぉぉぉーーーーーーーッッ!!!!!」

あいつはその腕に巻きつく気味の悪い触手を粉々に散らせて猛スピードで水上を跳ねた。人間ならば水の抵抗で既に全身の肉と言う肉がぐしゃぐしゃになっているのだろう。それでもあいつを許せない私は追跡を止めなかった。
そして海に吹き飛んだあいつに追いすがり、私は有らん限りの力で彼女の首を絞めつけた。

相手がどうなるかなんて考えなかった。歯を顎が砕けるほどの力で噛み締め、握力を全開にして一心不乱に首を締め付けた。あいつの力か、私は海に堕ちず空中で首を締め付け続けてる。

お前さえいなければ。お前が代わりに、ぽんずの代わりに死―――


『あり・・・・・・が、とう』
「・・・!?」

念話だった。私は思わず首を絞める手を緩めた。

『あり、がとう。私を憎み、殴ってくれて・・・』
「・・・・・・意味が・・・・・・意味が、分からない」

闇の書の顔を覗きこむ。・・・ひどい顔だ。口や鼻から血を噴出し、美人だった顔は無残に腫れ上がっていた。歯も何本か無くなっている。まるで別人みたいにぼろぼろだった。

それを見て、私は急激に自分の肝が冷えてきたことに気付いた。

感情に任せて怒りや鬱憤をぶつけて、それで満たされるのは一度だけ。終わった後になって、自分の返り血で濡れた手が自分のやった事の醜さを否が応でも教えてくれる。それはまた繰り返してしまった、自己嫌悪と言う名の心の津波。
先ほど、私は間違いなく”考えてはいけない事”を考えた。後ほんの少しで、口から出るところまでに至った。

だが、こいつはそんな惨めな私を見て、邪気も嫌味もない喜色を浮かべていた。

『私は・・・お前の猫を殺すより以前にも、沢山の命を殺めた・・・魔法生物、地元原住民、あるいは星そのもの・・・主の為と思っていつでも命を貪り食ってきた・・・感情を認めるまでずっとずっとだ』
「ぅ・・・?」

それはまるで懺悔のようだった。―――違う。謝るべきなのは私の方じゃないのか。そう思っても、声が出ない。

『主に存在を認められ、感情を得た時のことを・・・死に際の事を覚えている。あの時私は歓喜を感じると共に・・・・・・果てしない苦痛を感じたのだ。私が単なるプログラムでなくなることは、同時に私は決してして赦されることのない罪に一生さいまれることだと、そう思ったんだ。だから、闇の書の意思は死を選んだ』

「やめて―――やめて。私のやった行為を美化しないで。受け入れないで。お前は卑怯で自分勝手だと怒ってよ。私は、そんな言葉を言われたくて殴ったんじゃないよ・・・!」

言葉の一つ一つが、訳も分からぬ自分の心を締め付けた。これだけのことをしてなお私に笑顔で語りかけてくるこいつを見てると、私は何所までも惨めな姿を晒していることを自覚させられた。

『私が殺めた人間の家族が石を投げたら、甘んじて受け入れる。それが私の罪なのだから。でも、形ある敵意や悪意をぶつけられるのは同時に本人に償いの実感を与えるものでもある、と私は思う。誰にも罪を弾劾されずにいる事は、自分の犯した許されざる罪を償うことも出来ずにのうのうと生きる背徳感と罪悪感に蝕まれること。他に何をやっても実感を得ることの出来ないそれは―――怒られ、憎まれ、殴られるよりもずっと辛くて恐ろしい』

そう言った闇の書は、右手で苗の頬を撫でた。皮肉にも、彼女の言葉は苗の心の苦しみを、的確に表していた。
闇の書はなぞる様に苗の頬を撫で、おもむろに力いっぱい抓った。ぎゅー、と引っ張られる頬が伸びるが、苗は悲鳴をあげない。その行為の意味を察してしまったからだ。

「なぐ・・・られた・・・仕返し、だ」
「・・・私、貴方が大っ嫌い。自分勝手だし全然リインに似てないし、仕返しなんて言ってるのに・・・全然怒ってないじゃない」
「事実、怒って・・・いな・・・・・・・・・?あの、苗。私の腕に巻きついてたうねうねは何所に?」
「え?最後のパンチをぶちかました時に取れて海に散ったけど?」


ズゥ・・・・・・ン

背後の海がうねった。


「そのうねうねがどうかしたの?」
「いえ、あれは防衛プログラムが実体化した姿でして・・・あれが単体になってしまうとプログラムが暴走するのです。そうならないように全力で抵抗してたのですが・・・」
「・・・ちょいまち。抵抗って何よ?」


ズズゥ・・・・・・ン

背後の海が急激に膨張し、怪しい光に包まれ始める。


「えぇと、そのまま実体化させるとどれ程甚大な被害が出るか分からないので私自身の身体に封じ込めていたんですが、途中から乗っ取られ気味になって」
「ぽんずを殺した時は!?ぽんずを殺した時、もしかして貴方・・・!?」
「それはその、あの・・・って、あ」
「ん?・・・あ」


ズザァァァァァァ・・・・ン!!


≪グオォォォォォォォオォォォォォォォオォォォォォォォォォォォン!!!≫


言い争う二人の後ろには、とんでもなく強大な化物―――闇の書自動防衛システム「ナハトヴァール」がその姿を現していた。というか、大口を開けて今まさに二人を飲み込もうとしていた。

「・・・うっそん。こんなのアリ?」
「たった今、しつこく話しかけてきた貴方をちょっぴり本気で恨みました」


空を飛べない苗と死にかけのリインフォース。この時、運命は決まった。



かに、見えた。



「構え!!・・・()ぇぇぇーーーーッ!!」

その瞬間に何者かが二人をその場から救いだし、残された闇の書に数多の射撃魔法が雨霰と打ち込まれたことによって、余りにも下らない結末を迎えようとしていた二人の運命は見事に変更される。

全く状況が呑み込めない苗だが、ナハトヴァールの正面部分がごっそりえぐれていることに気付いた。
そして、それを行ったのはとても沢山の味方達。

「無事かナエー!?助けに来たぜー!」
「一人でキレーにナハトと切り離してやがる・・・あいつギガヤベーな」
「全弾命中っと。んー!やっぱり砲撃はブラスタービット全部そろえてないと撃った気がしないわよね!」
「お前だけだそりゃ。そしてニルス・・・・・・また随分色とりどり連れてきたな」
「ちょっとクルト!?何で僕=子連れみたいな言い方してんの!?」
「お兄さんのお友達さんですか?」
「腐れ縁だけどね。さて、デュランダルの準備しておこう」
「ほえー、王様ってほんま私に似てんなぁ」
「そうであろう?光栄に思えよ?」
「フェイトが一人フェイトが二人フェイトが・・・三人!?」
「ど、どうも。残滓のフェイトです」
「僕はレヴィ!”へいと”じゃないよー!!」
「へいとじゃなっくてフェ・イ・ト!!」
「・・・カートリッジシステムが無いのですか?オリジナルの世界と随分違っているようですね」
「うう、また私の事知ってる人が・・・」
「しかも顔そっくりだよ?一体何者なんだ・・・って質問は、今は野暮かなぁ?」
「む、何故他の連中は同じなのに私の残滓だけ違う剣を?」
「これは借り物だ。愛剣は、その・・・」
「あれ?私の残滓はいないんですか?」
「リタイアした」
「・・・僕のせいで・・・ごめんなさい」
「それは倒れた本人に聞かせてやれ。但し、謝罪ではなく感謝をな」
「・・・・・・皆どうして、そんなにオリジナルと仲良くできるんですか?リインには・・・分かりません」
「と言いつつも付いてきたではないか。お前も・・・本心は決まっているのではないか?先ほどもみなと共に魔法を放っていたな?」
「それは・・・でも」

揃い踏んだは現在この町に今いる魔導師オールスターズ。
なのは、ユーノ、クロエ(+甲冑)、フェイト、残滓フェイト、アルフ、八神一家、ツヴァイ、残滓騎士、管理局四天王、紫天一家・・・・・・お前ら数い過ぎだ。参加してないのは残滓シャマルとプレシア・リニス両名と助けられた残滓闇・苗位か。
これでは色々と防衛プログラムが居た堪れなくなってくるレベルの過剰戦力である。実際、抉られた箇所がいまだに修復できていない辺りが洒落にならない。きっと今いるメンツだけで戦争が出来るだろう。

そんな彼らを空中にぶら下がりながら呆然と眺めていた。状況が激しく移り変わりすぎて脳が追い付いていない現状、とりあえず思ったことをしゃべってみる。

「全然知らない人もいるよ・・・」
「なーお」
「そーね、後で名前聞かないと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」

体が浮き上がり、見知らぬ女の人の背中に背負われる。外国人モデルの様な背の高さだったが、おんぶの形なので顔は見えない。薄いブラウン色の髪の毛は肩ほどまで伸ばしており、どこか温かみが感じられる。


でも、目の前に見える頭にそり立つピンとした獣の耳には―――


―――カナダオオヤマネコ特有の黒く突き出た毛が風に揺れていた。


微かだが、その耳からは毎日のように嗅ぎ慣れた匂いがして、思わずその女性の髪を触る。


もふっ


どう見ても人間の髪にしか見えないそれはしかし、7年間触り続けたあの感触に相違なかった。


「ぽんず・・・・・・なの?」

「なーお」


またあったね。そう言われた気がした。

 
 

 
後書き
最高のバッドエンドよりも安っぽくて下らないハッピーエンドって、誰かが言ってたな。 
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