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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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新たなる力へ
  Trick62_ドスコイ、ドス恋、プッチコニ




美琴と信乃の模擬戦の翌日。

常盤台中学では、とある噂が流れていた。

曰く、学園都市第3位が"風力使い"(エアロシューター) に負けた。
曰く、手も足もでない御坂美琴を甚振った。
曰く、勝負に負けた御坂美琴が、勝負後にデレデレになった。

etc,etc…

夏休み期間のため学校にいる生徒は少ないが、それでも噂は確実に広がっていった。



閑話休題



そんな噂を知らない、当事者を含めた5人の少女が常盤台中学の入口に立っていた。
足元には数日分の服などが入った、旅行に行くような鞄がある。

一人は御坂美琴。学園都市第3位の実力を持つ、通称『超電磁砲』。
信乃にA・Tを教えてほしいとお願いした少女。

一人は白井黒子。美琴を慕う、レベル4の空間移動の能力を持つ。
数日前、能力の向上について信乃にお願いした少女。

一人は婚后光子。プライドが少々高いが努力家で友人思いのレベル4の空力使いを持つ少女。

一人は湾内絹保。白井の級友で水泳部に所属し、レベル3の水流操作を持つ少女。

一人は泡浮万彬。白井の級友で湾内の親友。レベル3の流体反発を持つ少女。


5人はある人物との待ち合わせをしていた。

「それにしても遅いですのね」

常盤台中学(うち)の校長に連絡してから来るって言うから遅くなるって
 昨日でメールはもらったけどさ。
 でも、だからって校門(ここ)を待ち合わせにしていいのかな?」

「あの、どういう事ですか、御坂様?」

「ここからの移動だと、電車やバスに乗り継がないといけないでしょ?
 だったら最初から移動しやすいバス停とか待ち合わせ場所にしたらいいのにと思って」

「そういえば、そうですの」

「き、きっと西折様は理由があってそうしたと思います!」

「湾内さん、落ち着いて。なにも信乃にーちゃんが悪いっていっているわけじゃないわよ」

「そ、そうですか・・・申し訳ありません、急に大きな声を出したりして」

「湾内さん、(西折様の事に対しては)相変わらずですね」

「泡浮さんッ! わたくしは別に! ゴニョゴニョ///・・・」

「でも大丈夫でしょうか? 本当でしたら御坂様と白井さん、お二人だけが
 信乃さんと行く予定ですけど、急にわたくし達3人が加わってよろしいでしょうか?」

「大丈夫よ、湾内さん。信乃にーちゃん、よっぽどの事が無い限りOKしてくれるはずだから。
 こういうイベント事は、大人数でやるのが好きなタイプだし」

と御坂が言った時、校門の前にワンボックスカーが止まり、車から3人が降りてきた。

「みんな、お待たせ♪」

「少し遅れてしまいまして申し訳ありません、とミレイは愚兄の代わりに謝ります」

「・・・どうも、皆さん」

信乃、美雪、美玲の3人が降りてきた。

信乃はなぜか≪ニッコリ≫といつもとは違う笑顔を浮かべている。

「・・・・雪姉ちゃん、なんで信乃にーちゃんは機嫌悪いの?」

「(ヒソ)お姉様、信乃さんの笑顔はもしや・・・」

「(ヒソ)うん、黒子の思っている通りだと思う。
 前に話した機嫌が悪い時の笑顔。しかも怒り強め。

 ・・・たぶん、私がさっき言った『よっぽどの事』に触れたみたい」

「で、御坂さん。こちらの3人は何故旅行支度でここにいるんですか?」

「えっと・・・」

信乃の笑顔に、幼いころの"思い出"(トラウマ)が美琴を恐怖させた。

御坂の様子から、笑顔でありながら不機嫌である事を察した湾内は代わりに言い訳をする。

「あの、御坂様は悪くありません! わたくしが無理を言ってお願いしました!
 昨日の晩ですが、御坂様と白井さんが旅行に行く事を聞きまして、無理を言って
 お願いしたのです!」

「その時、わたしと婚后さんもいまして・・・・
 それで御坂様にご一緒できないかとお願いしました」

「よろしいではありませんの。常盤台中学の次期エースであるわたくしが
 ご一緒してあげますわよ。楽しい旅行になる事必須ですわ」

「琴ちゃん・・・・」

「ご、ごめん!」

今にも土下座をしそうな、綺麗な謝罪の90°お辞儀だった。

信乃は諦めたように一言ため息をつく。

「湾内さん、泡浮さん、婚后さん。今回の旅行ですが、
 プライベートで組んでいるチームの強化合宿です。

 御坂さんと白井さんはチームには入って無いですが、今日から別枠参加としています。
 合宿の場所も田舎ですし、一緒に行っても面白くないと思いますよ」

「もしかしてチームというのは、信乃さんが使ってらした『ろーらーぶれーど』という
 遊び道具に関係していますか?

 もしそうでした、わたくしも前々から興味を持っていたんです!
 出来ればですがわたくしも合宿に参加させてください!!」

「湾内さん・・・本気ですか?」

「本気です!」

「西折様、湾内さんは前から『ろーらーぶれーど』に興味があると言っていました。
 どうか、わたくし達にご指導いただけないでしょうか?」

「まあ、湾内さん、泡浮さんがここまで言ってますし、どうしてもと言うなら
 あんた方の『ローラーブレード』に付き合ってあげてもよろしくてよ」

「婚后光子、信乃さんの靴、A・T(エア・トレック)は遊びではありませんの。

 あなた方も噂は聞いていらっしゃるでしょう?
 先月の襲撃事件を解決した信乃さんのチームについて。

 わたくしは信乃さんに能力開発の特訓をお願いしていますの。
 遊び気分でしたら帰った方がよろしいですのよ」

「あら、そうでしたの」

婚后は白井の指摘を適当に流した。

湾内を見れば目を輝せている。泡浮はその姿をフォローする。
以前に比べればましだが高飛車とした態度の婚后。

はぁ~、ともう一度深いため息をつくが、それは3人は気が付かなかった。

「御三方、確認を取ります。

 ≪ローラーブレード≫ことA・Tを教えてほしい、ということでよろしいですか?」

語気こそ変わらないが、信乃を良く知る美雪と美琴から見ると平常心ではない事は簡単に分かった。

「「「はい」」」

「了解しました。地獄行キノ車ニオ乗リクダサイ」

「「「え?」」」

ゆったりと執事風に後部席ドアを開いて5人を誘導する様子は、若干ながら3人は恐怖を感じた。

ちなみに美琴は頭を抱えてしゃがみ込んでゴメンナサイと小さく連呼していた。






移動中の車内。

運転席には唯一の免許書を持っている信乃。
助手席には美玲が座っていた。

なお、乗り込む際には婚后が美玲の正体に気付いたり・・・


「あら? そこの方、御坂さんの妹さんでして?」

「!? 2日間、常盤台で信乃にーさまのお手伝いをしていましたが、
 気付かれたのは白井さん以来です、とミレイは素直に驚きます」

「髪型や服の雰囲気で印象が変わっていますが、
 御坂様とそっくりのお顔をしていますね」

「本当ですわ。気付きませんでした」

「わたくし、人を見る目は確かなつもりですわよ?」

「同じ顔なのは当然です。遺伝子レベ「美玲さん」
 とミレイは信乃にーさまに発言を邪魔されてしまいました」

「彼女は西折美玲。戸籍上では私の妹になります。
 遺伝子と美玲さんは言ってましたが、同じ血が流れていれ似てもおかしくは無いですね。
 同じひいおじい様と、ひいおばあ様の遺伝子を 持ってますから。あと信乃にーさま言うな」

「なるほど。御坂様とはハトコになるんですね。
 御坂さんをお姉さまと呼ぶと言う事は中学1年・・・身長は美玲さんの方が
 大きいですわね。

 あら? 信乃さんの妹さんですか? ですが戸籍上とは?」

「すみません、話すのはちょっと・・・
 身内の恥と言いますか、話したくない事がありまして・・」

「も、申し訳ありません! ずうずうしく聞いてしまいました!」

「いえいえ、皆さんが気になさらないのであれば、私も気にしませんよ」

「ありがとうございます。それにしても本当に御坂様にそっくりですね。
 婚后さん、すごいですわ」

「私に掛かればこれくらいのこと、チョチョイのチョイですわ」

ほとんどの人が初めての美玲は集団で座らせるのは酷だろうと考えて
信乃の指示で美玲は助手席に座った。

中央席には美雪、美琴、白井。
後部席には婚后、泡浮、湾内。

それぞれが談笑して和やかな雰囲気だった。




途中で高速道路のサービスエリアで休憩を取りつつ、3時間ほど車を走らせた。

第21学区、学園都市唯一の山岳地帯。
今回の≪小烏丸≫強化合宿のために、閉館した旅館を
スポンサーである氏神クロムが買い取って利用している場所だ。

「山岳地帯の為、自然は楽しむことはできますが、便利とは言えない生活になります」

「覚悟が必要ってこと? 大丈夫よ。強くなるって決めた時から
 理不尽な事でも受け立ってやる覚悟は出来ている」

「信乃さん、わたくしもお姉様と同じですの」

「が、頑張ります」「はい」「仕方がありませんわね」

「私もやるよ♪」

「早く空を跳びたいです、とミレイは興奮を抑えるのに精一杯です」

「納得いく返事をしていない方がいますが、相手にしていた時間がありません」

まだ不機嫌さがなおって位はいない信乃は、約3人の返事を無視することにした。




「到着、です」

着いたのは3階建ての古い建物。老舗の旅館と言う風貌だ。
世界最新である学園都市の中にこれほどの建物があるとは意外だった。

「お~♪」

「すごい建物ね。なんかいい感じ!」

「ですの。わたくしもお姉様と同じ事を感じてましたですの」

「ふ、ふ、風情があって、い、いいですね」

「た、たしかに・・・」

「あら、湾内さん、泡浮さん。お二人は日本風の旅館に泊まるのは初めてかしら?
 初めて見たのでしたらお化け屋敷に見えるのも無理はありませんわ。

 わたくしはお父様と何度も古い旅館を利用した事があるので、
 この旅館が素晴らしいのが分かりますわ。古いながらしっかりと管理されてますわ。
 だから大丈夫ですわ、安心なさって」

「そ、そうなんですか?」

「わたくしたち、無知でしたわ」

「気になさらなくて結構ですわよ。お~ほっほっほっほ!」

「なんで婚后さんが威張っているんですか」

信乃は呆れたように嘆息する。

「「いらっしゃいませ」」

出迎えたのは旅館の雰囲気に合わない2人。
執事服、メイド服を着ていた。

滝流(たきる)さん、紗和琥(さわく)さん。
 お久しぶりです。お二人はお変わりないようで」

妙齢の美人が二人。服装こそ違うが、同じ顔。双子である。

「あの、信乃。この2人は?」

知らない2人を見て美雪はすぐさま信乃の後ろに隠れ、問いかけてきた。

「お前、本当に人見知りだな。その分、仲良くなったら急に距離が近くなるし」

「で、だれなの・・・?」

若干、頬を膨らませて怒っている。
信乃が自分の知らない所で美人と仲良くなっている状況は、美雪にとっては面白くない。

「今回の合宿の為に雇ったお手伝いさんですよ」

「お初にお目に掛かります。千賀(ちが) 滝流(たきる)と申します」

「同じく、千賀 紗和琥(さわく)です。滝流の姉です。
 私達は同じ苗字ですので、滝流、紗和琥と名前の方でお呼びください」

「「宜しくお願いします」」

「・・・宜しくお願い・・します」

「「「「宜しくお願いします!」」」」

美雪もオドオドとしながらも挨拶を返す。
続いて車から降りた一同が合わせて挨拶した。

「皆さん、動きやすい服に着替えて、もう一度ここに集合してください。
 紗和琥さん、部屋への案内をお願いします」

「畏まりました。では皆様、こちらです」

紗和琥の後を追い、7人は旅館の中へと入って行った。



7人を見送り、信乃と滝流の2人だけになって問いかけた。

「佐天さん達の様子はどうですか、滝流さん?」

「はい、今もノートPCからの指示で練習しています。
 順調に実力を上げてます。

 “戦レベル”(バトルレベル)は、お二人共Lv70を超えています。
 あとは“スイッチ”を身に付かせれば十分かと思います」

「夏休みが始まってからずっと、ここで泊りこみですからね。
 すごい根性していますよ、二人とも。

 上達したなら、A・Tも新しく調律する必要がありそうですね」

「はい。氏神クロム様の命で、調律用の部屋もご用意しています。
 道具も部屋にあります。ご案内致します」

「お願いします」

信乃も滝流の後に従い、旅館へと入って行った。


*******************************


30分後、信乃は集合場所で待っていた。

近くには6足分のA・Tとヘルメット等ガード道具。この30分で即席に作った婚后、湾内、泡浮の分もあった。

だが、肝心の7人はまだ来ていない。

「(イライライラ)」

「珍しいですね。信乃様がこれほど不機嫌になっているのを初めて見ました」

信乃の近くに控えている滝流が声を掛けてきた。
気分を変えるために、話題を振って少しは気分転換できないかと考えての事だ。

「まぁ自分で思うのはおかしいと思うんですけど、私は怒りの沸点が低い方ではありません。
 温厚な方だと思います。 ですが、人の命とA・Tに関係する事では低くなるんですよ」

「では今、機嫌がよろしくないのは・・・」

「A・Tに関係しているからですよ。正直、“表の人間”相手にここまで怒ったのは
 久しぶりですね。

 3つのA・Tを新しく組み立てた私より遅いとはどういう事なんですかね?」

「まぁまぁ、落ち着いてください」

それから10分後、ようやく7人が来た。

美琴、白井、婚后、湾内、泡浮の5人は常盤台中学の体操着。
美雪と美玲はおそろいのジャージ(薄い赤、薄い黄色)を着ていた。

「デハ、試験ヲ始メマス」

ニコニコしながら信乃は言った。
それに美雪、美琴の2人だけは笑顔の理由を理解してガタガタと震えていた。

美玲は何となく機嫌が悪いのを察しているが、怒った信乃を見た事が無いので
恐怖とまでは感じていない。

残りの4人は信乃の機嫌に全く気付いていなかった。

そんな状況に、震えながらも美琴は手を上げて聞いた。

「あの、信乃にーちゃん、≪試験≫ってのは? 訓練じゃないの?」

「信乃にーちゃん言うな。

 ≪試験≫で間違っていません。これから白井さんを抜いた
 A・T希望の6人には試験を受けてもらいます。

 不合格の方にはA・Tに二度と触れられないので悪しからず」

「え!? 信乃にーちゃん教えてくれるんじゃなかったの!?」

「私は『教えてくれ』という回答に対して、この場所に連れてきただけです。
 教えるとは一言も言っていない」

「それでしたら、足元にあるA・Tは何ですの?」

「試験で使います。

 あ、白井さんは安心してください。
 連絡があった能力強化メニュー、仮ながら作成しました。
 そちらの方は実施します」

「そうですの」

「白井さんは≪ローラーブレード≫とは別のメニューがありますの?」

「ええ。曰く、レベル1のお姉様をレベル3に上げたのは信乃さんの指導の賜物とか。
 それに信乃さんが教えた困難への立ち向かい方が、お姉様の超能力(レベル5)へと
 繋がる努力となったと聞いてますの」

「そ、それは本当ですか、御坂様!」

「湾内さん、御坂さんの能力は、御坂さんの努力の結果です。
 私はそれほど役には立っていないですよ」

「と信乃にーちゃんがいつも言っている。
 だから私も、信乃にーちゃんのおかげだと“勝手”に思っている」

「なんですの・・・こうしてみるとお姉様と信乃さんは似てますのね。
 素直になれない所とか」

「ツンデレなところとか♪」

「「ツンデレ言うな!!」」

((((そっくり・・)))

2人を除いた全員が同じ事を思った。

「オホン! 話を戻します。

 A・Tを教えてほしいと言っているのは美雪、美玲、御坂さん、
 婚后さん、湾内さん、泡浮さんの6人。

 能力開発の特別メニューは白井さん。

 先にA・Tの試験について説明します。着いて来てください」

信乃はA・Tと防具一式を各員の前に置く。
そして旅館の裏側に移動した。

そこには大自然の中に一部だけ切り取ったように100m(メートル)走用のレーンが
整備された状態であった。

「皆さんにやってもらうのは100m走です」

「100m走?」

「はい。100mを一定時間以内に走ってもらいます。

 他のルールして次のものを守ってください。
  1.3日後の朝に試験を行う
  2.A・Tの練習内容は歩く(ウォーク)と走る(ラン)のみとする
  3.練習密度に指定なし。何本でも走ってよい
  4.この練習用コース以外での練習を禁止する
  5.以下のスケジュールに従う
      7:00 起床
      7:30 朝食
      9:00 A・Tを配布 練習
     12:00 昼食
     13:00 練習
     15:00 自由時間
     18:00 A・Tを回収後に自由時間
     19:00 夕食
     20:00 自由時間
     22:00 就寝
  6.小烏丸のメンバーへのアドバイスを求める事を禁止する
  7.能力とA・Tの併用を禁止する

 と、これぐらいですかね」

「ふ~ん。これと言っておかしい部分はないわね」

信乃のルールを聞き、頭の中で整理する美琴。

「信乃にーさま、『一定時間以内』とはどれぐらいですか、
 とミレイは肝心の部分をあえて話してないであろう箇所に質問をします」

「美玲さんの言うとおり、あえて話していません。そして話すつもりもありません。
 試験直前に話します」

「どこまでが合格か分からないようにしてるの?
 面倒臭いテストですわね。ですがわたくしに掛かればそんなもの意味を持ちませんの。
 常に最善を尽くすだけですから」

「素晴らしいですね、婚后さん。

 では、皆さんのやる気を落とす情報を教えます」

「やる気を」「落とす情報ですか?」

湾内、泡浮が少し怯えたように、言葉を繰り返した。

「はい。

 皆さんに行う試験はの一定時間は 佐天さん、黒妻さんがA・Tを始めて1週間後に
 合格したタイムです。

 1週間かけて出来たタイムを、今日を含めた3日で合格してくださいね」

本日一番のいい笑顔をして信乃は言った。




その後、≪歩く≫(ウォーク)の基本動作、≪走る≫(ラン)について
大事な箇所などを信乃が実際に見せながら教えた。

「はい、今見せるのは1回だけです。あとは皆さんで頑張ってください」

「ちょっと、今の一回だけなの!?」

「はい。

 私は佐天さん達の様子を見てきて、自分用のメニューを実施します。それでは」

スタスタと置いていく事に何の躊躇もないように歩いて行った。

「では白井様、私達も行きましょうか」

「ですの。
 お姉様、わたくしは滝流さんに特別メニューをお願いしていますので
 わたくしも失礼させて頂きますの」

「うん、分かったわ。そっちも頑張りなさいよ」

こうしてA・Tの試験を受ける人だけが残った。

「「「「「「・・・・・」」」」」」

まさか練習を教えてくれる人が誰もいない状態になるとは思っていなかったため、
全員が沈黙してしまった。

「・・・とにかく、まずは≪歩く≫をしてみようよ♪」

一番小柄ながら一応最年長、西折美雪の言葉で皆は動きだした。

各人に宛てられたA・Tと防具をつけてゆっくりと立ち上がる。

「≪歩く≫は、手を前に腰をおとして足ひらいてそのまま前に歩く、であってるよね?」

「なんだかお相撲さんみたいだね♪」

「ドスコイ、ドス恋、プッチコニ、プチコニシキ! とミレイは奇妙な電波を受け取りました」

「なに言ってのよ美玲。ってうぁ!?」

足がもつれて美琴は前の方に転んだ。

「痛った~」

「大丈夫、琴ちゃん?」

「うん。膝のガードのやつがなかったら、かなり擦り剥いていた。良かった~」

「これは・・・ひゃ!?」

「とても難しいです」

「み、認めたくありませんが、確かに難しいですわね。キャ!?」

湾内、泡浮、婚后の3人も苦戦している。泡浮は転ぶことは無かったが、他2人が
お尻から転んで痛そうにさすっている。

「簡単にいくとは思っていなかったけど、予想以上ね。
 ・・・それに佐天さんが1週間かけて出したタイムと同じのを、3日で出せって
 ひどくない?」

愚痴を言いながらも美琴はゆっくりと立ち上がり、≪歩く≫を再会した。

「それにしても雪姉ちゃん、上手ね。ゆっくりだけど、危なげなく≪歩く≫をしてる」

「これね、体幹を真っ直ぐにするとすごく安定するの♪」

「あ~、どおりで。運動が苦手な雪姉ちゃんが上手なわけだ」

「お姉さま、それはどういう事でしょうか、とミレイは疑問をぶつけます。痛っ」

「玲、話をするのは良いけれど≪歩く≫にも集中しなさい。

 雪姉ちゃんは健康療法に太極拳をしているのよ。
 実際には戦えないけれど、型の練習をしてるとバランス感覚が良くなるらしいのよ」

「なるほど、とミレイは納得します。
 しかし雪姉さまは運動が苦手なのですか?」

「苦手、というよりは筋力が無いのよ。
 鍛えても、身につかないから・・・・「グスっ」って雪姉ちゃん!?」

「グスッ。いいもん。私は一生運動が苦手なまま生きて行くもん!」

「ゴメン雪姉ちゃん! あの、そんなつもりで言ったわけじゃなくて」

開始早々に四苦八苦な状況だが、基本中のキホンは進めていった。


つづく
 
 

 
後書き
最近、執筆のモチベーションが下がっています・・・
どうしよう、手が動かない・・・

そんな状況でようやくかけた新話です。批評をよろしくおねがします。

それと最近「IS×とある碧空の暴風族」を妄想してみたり。
一夏が1年だけとある碧空の世界に転移、ATを習って帰ってきて
微弱チートで俺すげー(俺強ではない)を発揮していたり。
この妄想、文章にしたいけど、とある碧空がまだ終了していないからどうしようかと・・・
読者の皆さま、どうでしょうか? 
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