ソードアート・オンライン ~白の剣士~
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焔
前書き
戦闘回、いってみよー!
シオンは剣先を死神に突き付けた。その時、彼の脳内にはある声が響いている。
『にぃに、分かっているかもしれませんが《クロスオーバーシステム》はまだ完全ではありません。私とリンクできる時間は一分半だと思ってください。それ以上リンクすれば・・・』
『俺の脳に負担が掛かり最悪、脳が焼ききれる』
『はい、もしものときは私から強制的に解除します』
『分かってる、一分半か・・・』
シオンが考え込んでいるうちに死神は急速接近し、大鎌を振り上げた。その軌道をそらすように彼は刃をかすらせた。
「上等だ、一分で片付けてやる」
再び剣からは炎が上がり、シオンは上段に構えた。
「はぁああああ!!!」
勢いよく降り下ろすと死神の左肩にかけて大きな傷が入った。それから手を休めず細かい攻撃を繋いでいく。
「す、すごい・・・」
「俺たちが敵わなかった相手を・・・」
「圧倒してる・・・」
『残り一分です!!』
「『了解!』はぁああああ!!!」
刃同士がぶつかり合い火花を散らす。後ろへと大きく飛躍したシオンは剣先を地面に着けるように構えた。
「なんだ?」
「あんな構え見たことない・・・」
「シオン・・・」
『ユイ一つ試したいものがある、構わないか?』
『にぃに?』
『やらせてくれ、何かが、見えそうなんだ』
『・・・分かりました。ただし、一度きりです』
「『ありがと』さて・・・」
シオンは目を閉じ、深呼吸すると再び死神を見た。間合いは10メートル弱、そこからさらに縮まっていく。
『“これ”をSAO使うのは初めてだな、だが・・・』
彼の口には笑みがあった、あの七十四層での戦いの時のような笑みが。
「何とかなるような気がすんのは、なんでかね!」
手に力を込める。彼はこの感じがどうも懐かしく思えた。
「《焔星剣流》一の太刀・・・」
シオンが踏み込んだ次の瞬間・・・。
「えっ・・・!?」
「一体、何が・・・」
それは一瞬の出来事だった。すでにシオンは死神の後ろにつき、その後死神はエフェクトとなり消えた。
「一の太刀・・・“昴”」
シオンはチンッと刀を鞘に納めた。
「見えなかった・・・」
「はぁ、はぁ、ユイ。“リンク・リリース”」
『は、はい!』
直後、シオンとユイは《クロスオーバーシステム(COS)》を解除し、その場に膝をついた。
「「「シオン(君)!!!」」」
「にぃに!!!」
全員がシオンへと駆け寄った。倒れこみそうなシオンの体をエリーシャが支える。
「はぁ、はぁ・・・さすがに無理したか」
「シオン・・・」
「ユイ、さっきの戦いどのくらいだった?」
「脳へのダメージがギリギリのところでした。時間で言うならば一分です・・・」
「そうか、これから少し調整だな」
「おい、シオン」
「ああ、キリトか。お前の聞きたいことは分かってる、とりあえず・・・」
シオンは安全地帯の中にある黒い立方体の石机を見た。
「あそこで話そうか・・・真実を」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
それからユイはすべてを話した。自分がカーディナル、すなわちSAO全体の制御を行っているシステムの開発者が試作したメンタルカウンセリングプログラム、AIであること、プレイヤーの負の感情を蓄積させていき崩壊していったこと、そして俺たちをモニタリングしているときに見かけたこと。
「ある日、いつものようにモニターしていると、他のプレイヤーとは大きく異なるメンタルパラメーターを持つ三人のプレイヤーに気付きました。その脳波パターンはそれまで採取したことのないものでした。喜び・・・安らぎ・・・でもそれだけじゃない・・・。この感情はなんだろう、そう思って私はその三人のモニターを続けました。次第にそれは四人となり、会話や行動に触れるたび、わたしの中に不思議な欲求が生まれました。そんなルーチンはなかったはずなのですが・・・。あの四人のそばに行きたい・・・。少しでも近くにいたくて、わたしは毎日キリトさんとアスナさんのプレイヤーホームから一番近いシステムコンソールで実体化し、さまよいました」
「それが、あの二十二層の森ってわけか・・・」
シオンはエリーシャに支えてもらいながら言った。ユイはゆっくりと頷き、
「はい。キリトさん、アスナさん、エリーシャさん、そしてシオンさん・・・わたし、ずっと、皆さんに・・・会いたかった・・・。森の中で、皆さんの姿を見た時・・・すごく、嬉しかった・・・。おかしいですよね、そんなこと、思えるはずないのに・・・。わたし、ただの、プログラムなのに・・・」
「プログラム、か・・・そんなもん、俺たちも一緒だ」
「えっ・・・?」
シオンは一歩前に出て黒い石机に触れた。
「現実では生身の身体があったとしても、この世界では所詮俺たちはデータの塊に過ぎない。だが、心はある」
シオンはユイの隣に座った。
「ユイ・・・お前の居場所はどこだ?無いなら俺が、俺たちが、お前の居場所になってやる。居場所ってのはそいつが心からいたいと思うから居場所なんだ。お前の、心からいたい場所は何処だ?」
ユイはその言葉に涙を流し、言った。
「わたしは・・・わたしは皆さんと一緒にいたいです!パパやママ、にぃにやねぇねと!!!」
「おし、分かった。おーいキリトー、ちょくら手伝え」
シオンはユイを石机から降ろしてキリトを呼んだ。
「な、何だよ?」
「お前、プログラミングは得意な方か?」
「ま、まあそれなりには」
「ハッキングは?」
「まあ、なんとか、ってハッキング!?」
「いや、この場合クラッキングかな?」
「そっちのほうがマズイよな!!てか、何でそんなこと・・・」
「GMアカウントでシステムに割り込む、ここまで言えば分かるよな?」
「ッ!お前、まさか・・・!!」
シオンはニヤッとして石机にホロキーボードを表示した。
「時間がない、急ぐぞ」
「あ、ああ!!」
シオンたちは早速作業へと取りかかった。高速でスクロールする文字列が表示され、アスナとエリーシャはそれをただ眺めていた。
「なに、これ!?」
そんなもんお構い無しに俺はキーを叩く。しかし、このままでは時間がない。
そこで・・・。
シオンはキーを叩くのを止めた。
「・・・シオン?」
「しゃーねー、久々に・・・」
シオンは指と首をパキパキと鳴らすと、目の色を変えた。
「・・・本気出すか」
口元はいつも以上に笑っている、いや、ニヤついている。
「カーディナル、いや、茅場昌彦。覚悟しとけ、今テメーの身ぐるみ全部剥がしてやるからよォ・・・」
そして再びキーを叩き始めた。しかし、その速度は先ほどの比ではなかった。
「は、速い!!」
「にぃに!」
「シオン!ユイちゃんが!!」
ユイを見ると身体がどんどん薄くなっていることがわかる。時間がないことを察知したシオンは解析へと急ぐ。
「あと、少し・・・」
「間に合えェええええ!!!」
最後のキーを叩くとキリトとシオンの身体は弾き飛ばされた。アスナとエリーシャ、そしてユイが駆け寄った。
「キリト君!!」
「「シオン(にぃに)!!」」
シオンは倒れながら親指を立てている。どうやら成功したらしい。
しかし、ユイの姿はだんだん薄くなっている。
「シオン君!ユイちゃんが!!」
「いや、これでいいんだ」
「えっ・・・?」
「ユイをあの状態にしたままならゲームクリアしたときにシステムごと恐らく消されるから、システムから切り離して誰かのローカルメモリーに保存することでそれを回避しようとして、なんとか成功した感じだ」
「容量はギリギリだけどな・・・」
「それで、誰のローカルに?」
「しばらくは俺が預かるよ、今後の戦いに備えて《COS》の調整もしないといけないしな」
「《COS》?」
「《クロスオーバーシステム》、さっき死神との戦いで見せたやつ」
「そういえば、あれって何だったんだよ?」
「それは私が説明しよう」
その声はシオンのつけていたネックレスから聞こえた。
「だ、誰!?」
「なんだよアルモニー、お前こっちでも喋れるのかよ?」
「あの力を発動したお陰で私もこっちでもある程度話せるようになった」
「シオン、こいつは?」
「話は後だ、それより《クロスオーバーシステム》についてだが、これはシオンとこのゲームにいるものとリンクしてそのリンク先の能力を引き出すことができるシステムだ」
「このシステムを使えば先ほどのように、ユイとリンクして戦うこともできる。ただし・・・」
俺は少し薄くなっているユイに目を向けた。ユイ頷き、
「もちろんメリットもあればデメリットも存在します。それは、《クロス・オーダー》と同じように時間制限があるということです。《クロス・オーダー》なら時間オーバーしても一定時間使えない、もしくは動けなくなるだけですみますが、《COS》はリンクするために脳に直接アクセスするため、やり過ぎれば脳に負荷が掛かります。そして最悪・・・」
「負荷に耐えきれず、脳が焼ききれて死ぬ」
その言葉にその場にいるアルモニー、ユイ、シオン意外は息を飲んだ。
「乱発厳禁、生ける爆弾といったところだ」
「そんな・・・」
「だが、調整次第では少しはまともになるはずだ」
「でも・・・」
「それでも、他のプレイヤーよりは死ぬリスクが高くなる・・・」
キリトの言葉に空気が重くなった。
しかしそんな中、シオンはため息をついた。
「はあ、ったくなーに辛気くさい顔してんだよ。今更どう言ったってしょうがねーだろ?それに、俺は後悔してねーよ」
シオンは立ち上がり、ユイに向かって歩き始めた。
「このデスゲームが始まったときからすでに死ぬ覚悟は出来てるつもりだ、それに親父にも言われたしな」
「お父さんに?」
「ああ、“悔いなく生きたければ行動しろ!”ってな!」
シオンはいつもの屈託のない笑顔を見せた。
「ユイ、これからは俺の妹として、サポーターとしてよろしくな」
シオンはユイの頭を撫でた。ユイはその感触を味わうかのように目を細めた。
「何だか不思議です、にぃにに撫でられると自然と心が暖かくなります・・・」
「そうか、今のうちに堪能しとけ!」
「はい・・・」
次第にユイの身体はだんだん薄くなっていった。
「パパ、ママ、ねぇね、わたし本当に幸せです!」
「ああ、またなユイ」
「また、会おうねユイちゃん」
「お姉ちゃんずっと待ってるから」
「はい!パパ、ママ、ねぇね、そして・・・」
ユイはシオンの方を見た。
「にぃに・・・大好きです!!」
そう言ってユイは光と共に消えた。
それからしばらく沈黙が続き、
「行っちゃったね・・・」
「ああ・・・」
「もう少し、お話したかったなー・・・」
そんな中、シオンはネックレスの色がイエローからオレンジに変わっていることに気づく。
『これは・・・』
『ユイが加わったことにより色が変わったのだろう』
『そうか・・・そっちはどうだ?』
『問題ない、数日すればこちらにも対応するだろう』
『そうか・・・その間は大変だとは思うが調整頼むよ』
『了解・・・シオン』
『ん?』
『感謝する・・・』
『そりゃこっちの台詞だよ、・・・《相棒》』
そして、シオンとアルモニーは見えない拳を合わせた・・・。
後書き
なんか、シオンからどす黒い何かを感じた作者でこざいます。
何だかシオンがだんだんだんだん黒く、そして爆弾背負ってるように見えてきました。
肩の荷はいつおりるのか心配です。
コメント、待ってます!!( ̄∇ ̄*)ゞビシ!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ
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