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メモリアル・ヴァフェ

作者:黒霧12
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1話 第二メモリアル・ヴァフェ分隊

 
前書き
プロローグで書いてなかったのですが、主人公は少年で、主人公が所属する分隊のメンバーが中心で話が進んでいきます...はい 

 
 僕が生まれた場所は紛争真っ只中の場所だ。血なまぐささと硝煙の匂いが立ち込めるそんな場所だった。父は日本人で短い黒髪、長身で細身筋肉質だったがひょろっとしていた。仕事は何とも言えない傭兵という仕事で小規模な争いから国と民間軍との大規模な紛争にも参加していたらしい。母も日本人で長髪黒髪、大和撫子という言葉がふさわしい人だ。父がまだ日本にいたころ知り合い、結婚、父の反対の押し切ってわざわざ戦場にまでついてきたらしい。母に対し「どこまで頑固なんだろう」と僕は思う。
 
 何はともあれ僕はそんな家庭に生まれた少年だった。紛争が起こるような地域とは思えないほどの教育をしてくれたし、いろんな遊びや経験をされてくれた。何より、父も母もすごく僕を可愛がってくれた。母はいつもそばにいてくれて見守ってくれたし、父も仕事から帰ってきた直後でも頼んだら遊んでくれた。「かわいいなぁかわいいな」と連呼されて若干引きもしたが、僕は幸せだった。
 
 僕が6歳ある日、僕は無断で父の部屋に遊びに行った。そこには独特の冷たさを纏った凶器ばかりが並んでいて、それが逆に興味を誘ったのだ。僕は息をひそめながらその部屋に入った。スパイのような気分だった。足音が静寂に包まれた部屋に波紋のように広がる...。それが緊張感を高め、なぜかワクワクした。
 
 すこし開いた扉から差し込んだ光が差し込み、埃っぽい空気とある銃を照らしあげた。L96A1、約1.1m6.5kg最大有効射程1500m現代的なすらっとしたボディに独特なストック、はっきり言ってその銃に美しさを感じた。命を無慈悲にただ冷徹に刈り取るもののはずなのに、なぜか惹かれた。部屋の一番奥にあるそれに僕はただ茫然と歩き、汗ばんだでたつかみ持ち上げた。体にかかる重量、冷酷な冷たさが体にひろがり、馴染んだ。ほぉと息を吐き出し銃を凝視する目を閉じる。さっきのワクワクとは違う、心地よい感じ気を抜いたら寝てしまいそうな感じに包まれた。

 余りに心地良すぎた。だから、父が来ているのに気付けなかった。僕が父に気付いたのはもう部屋に入ろうとしていた時だった。急いでおこうとしたが、間に合わなかった。父がドアを開けた。ここは部屋の奥ドアからまっすぐ行ったところだった。必然的に部屋に入ったら最初に目に入る。

 父が銃を持っている僕を見つけた時、すごく悲しそうな顔をしていた。しまったと思うが体が凍り付いてしまって指一本動かせない。父はいつもより大股で歩いてきて、僕に覆いかぶさるようにして、僕から銃を取った。そして銃を床に置くと、父はしゃがみこんで目線を合わせてから僕に行った。

「お前がこれを握る必要はないんだ。これは殺す道具であって助ける道具でも強い道具でもない。強い人ならこれは持たない、自分の心で受け止める。これを持つということは、嫌なことには暴力を向け、自分をふさぐことだ。だから、これはもう触らないでほしい」

 父は優しく微笑み「わかったかい?」といった。ぼくはただただ「うん」と答えることしかできなかった。そのあとは、父と手をつなぎ部屋を出て、母の夕ご飯を食べたのを覚えている。



 それから年月が経ち、僕は12歳になった。黒髪なのは両親からの遺伝で少し長めに切ってある。目は蒼色。身長は平均的で、体は広大な自然で遊んだことにより引き締まっている、だがやっぱりがっちりというよりかは細めな体格をしている。やっぱり人種的細身なのかと思っている。
ともかく今日は近くの川に淡水魚狩りに来ている。今日は紛争に行っている父が帰ってくるので、ならべく新鮮な魚で塩焼きを作りたいと言う母の願いからだ。もちろん母に「お願いっ」と言われれば何でも引き受けるし、体が動かせるしちょうどよかったと思っている。手に持つのはモリ。石を削って木に付けたという、古風感というよりも古代感溢れるモリを握っていた。季節は夏、川の独特の冷たさは子供にとって最高だと思う。川は意外に深く胸ほどの深さががあるところもあった。が、深いほうが好都合、僕が、人魚になれるのではと思えるぐらいに川を泳ぎまわり遊んだことは言うまでもないだろう。

 存分に泳ぎ回り、朝ごろ来たはずなの太陽が真上に来た頃、僕は淡水魚狩りもとい魚とりをはじめた。川に潜りゴーグルをつけた目で周りを見渡す。若干この川は濁っており魚を見つけるのが難しいのだが、それにしても魚が泳いでなさすぎる。おかしいと僕は思った。少なくとも泳ぎ回っているときには魚を見かけた。なのに泳ぎ疲れて岸に上がって少し休んでただけなのに、ここまで泳いでないのは変だ。やっぱり一回上がろうと思い、岸を目指し始めたとき僕はそれを感じた。どこかから視線を感じそっちに体が引っ張られるような、そして見られている部分がさされるような感じ、そう殺気だ。

 僕は死にもの狂いで岸に泳いだ、無理に動かしているせいで方が悲鳴を上げるが、それを押しつぶし泳いだ。幸い岸が近かったのですぐつけた。そしてその判断があっていたと痛感させられた。川からこちらを見ているものがいるのだ。二つの大きな目それは確実にこちらをとらえ、今すぐ食い殺してやるという意志に燃えていた。それは魚影2,3mはあるかという魚影だった。濁っていてもわかるその存在感に、僕は恐怖した。考えるより早く足が動いた、大きめの石が多い河原を足首を痛めながら全力で走る。川の中にいるアレにこれ以上近くにいてはいけないと思ったのだ。が、相手も甘くない。食い殺すと目にたぎらせるだけあって、そのまま川の中にいるということはしなかった。すぐさま水面からアレが跳ね出る。黒光りする外皮、イルカのようだけど少し違う目が大きめだ。そう僕はこれが何か知っている。母から教わった。そうあれはヘイディファイント。イクチオサウルスに酷似したヘイディファイント。イクチオサウルスは魚のような姿を持つが実際は水棲「爬虫類」つまり、バージョン2。普通じゃ傷つけられない。

 ヘイディファイントがひれを使い綺麗走り出す。速かった、正直追いつかれると思った。圧倒的な存在感を背に走りながら考え続けた。もう少しで森逃げ込めば...その前に食われるっ。じゃあどうするここで立ち向かうか?でもどうやってやるなら一撃で殺さなければ.......この時ある記憶、否思い出がフィードバックした。美しい銃、父の殺すための道具というセリフ、そうこれだ。僕は確信した。この場にはないがあの銃がここに来るのはなぜかわかった。走っている体に足を踏み込むという方法で急ブレーキをかけ後ろを振り向く。目の前には開かれた口、だが今度は恐怖はない。その代りにあったのは優越感、自然と僕は笑っていた。腕を構え叫ぶ。

「こいッッ!!!!」

 飛び込んできたのは、冷酷さと何とも言えない暖かさ。疑問もなく引き金を引く。炸裂音と主にかかる衝撃が心地よいと思った。撃ち出された銃弾はヘイディファイントを、こいつのコアを撃ちぬいていた。生気を失い目の前に崩れ去るヘイディファイント。立ち続ける僕。「よかった」という言葉が唇からこぼれた。緊張がほどけたのか、走りつかれたのか...僕はそこで意識を失った。ただ失う瞬間、「私の銃大事にしてね」といった気がした。










 次、目が覚めた時僕は家のリビングで母に抱かれていた。近くの椅子には父が座っており、悩んだ顔であの時僕のところに来た真っ白いL96A1を見ていた。少し体を揺らすと僕が目覚めたのに気付いたらしく、顔を覗き込んで話しかけてきた。それはあまりにも予想外な質問だった。

「ねぇ、あなたは奴らと戦いたい?」

 母はこんなふうに争いを進めるようなことはしない。だからなおさら、意味が分からなかった。僕は父に疑問の視線を送る。すると、それに答えるように父はどういうことか細かいことを話してくれた。

 つまり要約すると、僕はメモリアル・ヴァフェを手に入れたので、ヘイディファイントと戦うことができる。でも父さん母さんは戦ってほしくない。しかし放っておけば、そのうち政府の役員が来るので早めに聞いて少しでも長く考えられるようにしたということらしい。因みに来るのは日本政府、もし戦うのなら軍隊に所属させられ、当然ここを離れ帰国することになるらしい。

 どうするか、僕にとっては簡単でわかりきったことだった。僕は起き上がり父に向かって言う。

「僕、戦いたいよ。父さんは銃は殺すための道具といったけど、僕は誰かを助ける、守る道具だと思うんだ。だから僕は行きたい」

 それを聞いた父は難しい顔をしていたが、すぐに笑い「じゃあ、準備しないといけないなっ」といつものように言い放った。母もそれにつられ笑い、「向こうではどうやって新鮮なお魚でに入れましょう?」なんて冗談を言った。僕もそれにつられ笑い、近くにあった僕の銃を何気なくなでていた。





 

 帰国するといった日から数日、着々と準備はすすみ、いよいよ明日出発というところまで来ていた。
 もちろん、眠れるわけもない。これぞピクニックの前日の法則だっと僕は思う。僕は薄手のタオルケットを上げたり蹴ったり、しながら明日への興奮を抑えていた。なにせ初めての旅行であり、初めての母国なのだ。日本がどういう国でどんな文化は母からだいたい教わっているつもりだが、それでも聞くとみるとでは大違いというぐらいだし、とまだ見ぬ国への興味を募らせていた。ふと寝返りをうつとあの銃が目に入る。僕はまたもや銃を撫でていた。それは新しいおもちゃを手に入れた子供のようであった。僕はふと思い立ち銃に話しかける。

「あの時、聞こえた声は誰だったのかな?」

 その時強い睡魔が襲い眠りに引きずり込まれた。そして夢を見た。部屋にいる幼い日の僕を夢の子が連れ出してくれるという夢だった。部屋というには曖昧で、霧でできた箱みたいで、冷たく縛りつけてくる空間そこから夢の子引っ張り出してくれた、という何とも不思議な夢だった。

 朝を迎える。燦燦と降り注ぐ太陽の光と小鳥の声が良かった。そんな朝のなか、今までも家に別れを告げ、僕は日本に旅立った。僕が降り立ったのは岐阜に設立された集合要塞都市の近くにある空港だった。空港と言っても今のように娯楽施設はなく、ヘリポートと滑走路が2,3本という質素なものだ。
 出迎えてくれたのは、白衣を着た青年でいかにも博士ですという人だった。白衣の人がニコニコしながら歩き出し、僕の近くまでる来て口を開いた。

「やぁ、軍への志願歓迎するよ。私は君の上官の平野だ、よろしく。なんせ、対ヘイディファイント系の兵士は少ないからね。慢性的な人手不足なんだ。しかも、銃のメモリアル・ヴァフェなんて珍しい。君ガンベイビーかい?」

 ガンベイビー、それは一時期流行った小さい子に持たせて銃のメモリアル・ヴァフェを作ろうとする風潮のことだ。残念ながらガンベイビーには武器の認識が甘いことがあり性格破綻者が多い傾向がある。また、普通に考えれば、子供に武器を持たせるなんて親としてどうか、という意見が多発し、今ではガンベイビーとその家族は忌み嫌われることとなっている。

 母から教えてもらっていたので、それを知っていない僕ではない。自分だけでなく父母も馬鹿にされたように感じたので、肩にかかっている銃が入ったバックを握りしめる力が増す。後ろを振り向くと父と母が並んで立っている。二人とも気にしていないようで笑顔を絶やしてはいなかった。それを見るとイラつきが収まった。前に向き直りはぁと一呼吸してから、満面の笑みで失礼な博士に言い返した。

「僕はガンベイビーなんかじゃありません。父も母もそんな人じゃありませんし、自分は武器に適切な意識を保持していると自負しています。あんまり失礼だと怒りますよ?」

 それを聞いた平野さんは少しひきつった顔であはは...という乾いた笑いを吐いた。
 
「あ~...君が所属するのは第三遊撃隊の第二メモリアル・ヴァフェ分隊だよ。階級はないことになってる。だから、戦場では上からの命令を無視して、分隊で独自行動してもいいことになっている。まぁ臨機応変にしてくれってわけだよ。基本的に寮生活で平日は軍のなかにある学校に通い勉強、放課後はトレーニング、祝日は申請が出してあって、日曜の21時までに帰ってこれるなら出掛けるのは自由だよ。もちろん恋愛もねっ」

 平野さんは子供っぽい笑みを浮かべ、グーと手でやっている。なんだろうこの人からみずらい...。

「説明はここまでだよ。もっと詳しいことは寮の君の部屋に資料送っとくから。じゃあ、自己紹介してくれるかな?」

 僕はこくりとうなずき、少し声をはりあげ名乗る。場所は空港だが気にしない。

「僕は今回、軍に所属することになった。舞花 柊です。よろしくお願いします」 
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