ソードアート・オンライン~剣の世界の魔法使い~
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第Ⅰ章:剣の世界の魔法使い
死神たちの宴
目をあけると、そこには多くの人々が座っていた。アインクラッド第七十五層ボス部屋が、ついに発見され、今日、その大規模攻略作戦が決行される。先日、《血盟騎士団》をはじめとする複数のギルドが合同で結成した先遣隊パーティーがボスに挑んだ。
結果は、全滅。
十人ずつに分かれて攻撃を行おうとしたが、最初の十人がボス部屋に入った瞬間、扉が閉まってしまったらしい。いかなるアイテムを使っても、どれだけ攻撃しても、扉は開かなかったそうだ。
「まぁ、普通そうだろうなぁ」
俺はその話を聞いたとき、そう呟かざるを得なかった。どう考えてもダンジョンの壁っていうのは【不死属性】だ。どれだけ叩いても壊れないのは当たり前。まぁ、今まで退路を塞がれる、ということの無かったボス戦だ。そんな常識を忘れ去ってしまうほどに衝撃的だったのは認めよう。
結局、次にボス部屋の扉が開いたとき、そこにはボスも、前衛の十人もきれいさっぱり消え去っていたという。第七十四層のボス部屋が《結晶無効化空間》だったらしいので、恐らく今回結晶は使えなかっただろう。それでも、と《黒鉄宮》まで確認しに行ったところ、十人の名前には、しっかりと横線が刻まれていたらしい。
今回、過去最大級に難易度が高いと予測されるアインクラッド第七十五層ボス攻略戦には、いままでにないほどの戦力の結集が急がれた。《神聖剣》ヒースクリフはもちろん、《二刀流》の《黒の剣士》キリト、《閃光》アスナも招集された。大中小様々なギルドから精鋭が送り込まれ、普段は攻略に参加しないハイレベルプレイヤー達も攻略に参加する。
そんなわけで、俺達も現在、ホームタウンである二十七層からここ、アインクラッド第七十五層主街区《コリニア》へと転移してきたわけだが―――――。
「おい、見ろよ、あれ……」
「おいおい、マジかよ……」
「金眼に漆黒の刀……オマケに大剣を背負った赤髪の美少女……」
「間違いねぇ、マジモンだ!!《殺人大砲》だ!!」
《攻略組》プレイヤーたちの畏怖、羨望、好奇、嫉妬そのほかもろもろの感情を含んだ視線が、俺達に向けられる。
「コクライとヒバナだ……すげぇ、本物見たの初めてだよ俺」
「ヒバナさん、うわさには聞いてたけどマジで美少女だな。アスナさんよか可愛いぞ……」
……多くが俺の隣に立つ相棒に向けられたものだったようだ。
「こーくん、なんかみんなの視線が怖いよ……」
ヒバナが引っ付いてくる。声とは裏腹に、その表情は非常に楽しそうである。冗談で言っているのだ。と、言うわけで俺は冗談と本気の混じり合った答えを返してやる。
「安心しろ、あんな奴ら俺が一思いに消してやるよ」
どこぞの顔無し姫から「そんなのだから友達が減るんですよ」といわれる性格の悪さをここぞとばかりに発揮して、凄味のある表情で嫌らしきモノどもを睥睨する。とたんに卑下た表情は鳴りを潜め、プレイヤー達はあわてて退散する。
「これでどうだ」
「……あたしの中では評価が上がったけど、皆の評価は下がった気がするよ……」
隣でヒバナががくりと脱力する。
ドヤ顔の俺達が広場の一角に堂々と居座ると、複数名を除いて多くが場所をあけ、遠くに逃げ出していく。恐らくは俺達の……主に俺の評判、というか悪評に恐怖を覚えたのだろう。
俺とヒバナは、二人で一人のユニークスキル、《雌雄剣》の使い手だ。しかし、それは騒ぎになるとめんどくさいので周りの奴らには伏せている。問題は、俺のもつもう一つのスキルだ。
そのスキルの名前は、《殺人刀》。エクストラスキルと呼ばれる特殊なスキルの中で、ユニークスキルとは言わずとも習得者が非常に少なく、他のスキルと比べて威力が段違いに高いスキル、《十五超技》だ。習得人数は、俺の知っている限りで三人。
《殺人刀》の効果は、簡単に言ってしまえばその名の通り《殺人》だ。かといって、別にPK用のスキルである、ということでは無い。このスキルは、刀の極意と言われる《魔剱》とよばれる現象を発動させるスキルだ。遠距離技のないSAOに置いて、《魔剱》によって打ち出される衝撃波の飛翔距離反則級だ。それでいて、このスキルの習得者が圧倒的な少なさである理由は、ひとえにその習得の難しさにある。《十五超技》と呼ばれているスキルの習得者は、それぞれ3~10人という超少数だ。特に《殺人刀》は最も少なく、その習得が難しいことを物語っている。
《殺人刀》の解禁が行われたと思しき階層にいる、一人のNPC。彼が、このスキルの習得のヒントをくれる。
『全ての刀に関する天部の才をもち、なおかつ人きりの経験があること――――それだけにとどまらず、真の境地へと至っていること』
すなわち、《曲刀》から始まる刀系のスキルを速攻で完全習得し、なおかつ《刀》スキル完全習得時点で五人以上の殺人経験があること。最低でもそれを満たしている必要があり、そのほかにも様々なパラメータが必要である。俺達《習得者》が、《習得者》たりえているのはほぼ完全なる偶然、といっても過言ではない。そもそも《十五超技》というのは、ほぼユニークスキルに等しい希少性をもち、習得もランダムパラメーターである可能性が高い、習得条件がはっきりとしていない物なのだ。
今回の攻略には、ヒースクリフのおっさんが連絡のつく限りのすべての《十五超技》持ちを集めているようだった。俺の他に《殺人刀》を使うプレイヤーは見当たらないが、《薙刀》や《大鎌》のような《十五超技》の持ち主が所々に見受けられる。
「……ヒースクリフさんも、本気出した感じだね」
「ああ。相当にやばいな、これは。あのチートなおっさんがこれほどまでにツワモノどもをかき集めるとは……」
ヒースクリフとは、一度だけ戦ったことがある。あの時、俺はあのおっさんがチートクラスの力を持つ……否、正真正銘のチーターであり、俺達『プレイヤー』では決して勝てない存在であることを知った。まぁ、俺があれを暴いちゃうのもなんかよくなさそうなので、今まで伏せていたのだが。というか俺も見間違いだと信じたい。ヒースクリフのHPが黄色になりかけたその瞬間、奴に届いたはずの剣がはじかれ、表示されたその文字――――
――――【不死存在】の文字が。
***
《黒の剣士》と《閃光》が姿を現す。たしかクラインという名前だったはずの赤髪の刀使いと、エギルという名前の斧使いが彼らに話しかける。どうやら顔見知りらしい四人は親しげに会話する。そういえばデュエルの時にシェリーナの隣に座ってたよなあのおっさん達。
しばらくして、転移門がひときわ大きく輝いた。現れたのは、真紅の鎧に身を包んだ《聖騎士》と、その配下の剣士たち。言わずと知られた《神聖剣》ヒースクリフと、《血盟騎士団》の幹部たちだ。
「諸君、今日はよく集まってくれた。知っての通り、今回のボス戦は相当苦戦することとなりそうだ。下手をすれば、攻略組が全滅、ということもあり得るやもしれん。しかし、我々なら必ず勝利を掴めると信じている」
ヒースクリフの言葉には、他人をひきつける力があった。段々攻略組達の士気が上がっていくのを感じる。
「では、ボス部屋の前まで回廊を開く」
ヒースクリフが、転移結晶とよく似た、しかしより濃密な青色のクリスタルを取り出す。おぉ……というどよめきが《攻略組》に走った。
《回廊結晶》。ゲート出口を設定した場所に、瞬時に転移できる高性能なアイテムだ。転移結晶が持ち主だけを対象としているのに対し、回廊結晶は効果時間終了まで何人でも目的tに送ることができる。上層の宝箱やモンスタードロップでしか出現しないため、非常に貴重で、プレイヤー同士の取引では高額で取引される。
ヒースクリフが最初にゲートを通る。その後、《血盟騎士団》やキリト達が続く。
「いこう、こーくん」
「ああ」
最後に残った俺とヒバナは、一つ頷きあうと、回廊の中に入って行った。
再び開けた視界は、アインクラッド第七十五層のボス部屋の目前だった。安全地帯になっているらしく、結構広い。装備の最終確認を行う。
「ヒバナ、準備いいか」
「うん」
俺はいつもの、金色の装飾の入った漆黒のコートを羽織り、黒銀色の胸当て、レギンス、小手を装備する。腰の刀の滑り具合を確かめる。抜刀時に《滑り》が足りないと、《魔剱》の初動モーションとシステムにとらえてもらえないのだ。
ヒバナの服装も、戦闘衣へと変更されていた。肩口から先がない黒いミニスカ浴衣。しめ縄のようなもので絞めつけているせいで、ヒバナの他人より大きな胸が強調されている。腕の部分に赤い包帯、その上から俺のものと同じデザインの黒銀色の小手。下半身はホットパンツからすらりと伸びた足は、膝から先をやはり赤い包帯で覆い、これも俺と同デザインの黒銀色のレギンス。背中にしめ縄のようなもので縛られていた、普通のより一回り巨大な大剣が抜き放たれている。
全員が戦闘準備を終えたと思われる時点でヒースクリフが立ち上がる。
「それでは行こうか。―――――解放の日のために!!」
「おおおおおおおッッ!!」
ヒースクリフがボス部屋の扉を押し開ける。プレイヤー達がときの声を上げ、突入する。背後で、ボス部屋の扉がしまった。
ボス部屋の中は静かだった。静かすぎる。不気味な静寂が、プレイヤー達を怯えさせる。
「おい……」
誰かが耐えかねたように声を漏らした、その時―――――
「上よ!!」
アスナが叫んだ。全員が上を見る。
そこにいたのは、白骨でできた百足。鎌の様になった腕を振り上げて、ボス――――名を、《The Scull-Ripper》が落下してくる。スカスカな見かけによらずボスは大分重いらしく、図ズン、という音と地響きが鳴る。その衝撃で、幾人かのプレイヤーがたたらを踏み、逃げ遅れる。
「キショァアアアアア!!」
骨百足は両手の鎌を振り回し、逃げ遅れたそのプレイヤー達を吹き飛ばす。バウンドし、地面に転がったそのプレイヤーたちのHPが、消滅していた。直後、爆散エフェクト。隣でヒバナが息をのむ気配。
「一撃、だと……!?」
キリトが小さく叫ぶ。その驚愕は俺にも理解できた。攻略組の中でも、レベルが比較的高いものと低いものに分けられる。今回参加しているのは全員がレベルが高い存在達。そんな彼らが、まさか一瞬で撃滅されるとはだれも想像していなかっただろう。
プレイヤーたちの間に緊張が走る。骨百足の追撃が警戒され――――しかし、奴の取った行動は予想を大きく外れたものだった。
飛び上がったのだ。バッタのように、無数の足を使って。再びボス部屋の天井に張り付いたボスは、今度は鎌を天井に深々と打ち付ける。砕け散った岩石が落下してきて、プレイヤー達が吹き飛ばされる。ボスの鎌ほどの攻撃力は無いが、それでも最前線のプレイヤーのHPが一瞬で半減するほどだ。凄まじい威力。
その後も、ボスは天井から降りる気配なく、鎌を打ち付け、岩石落しを続ける。時たま、飛び降りたかと思うと鎌による殺戮を行い、再び上空に逃げる。
「これは……まずいか?」
無意識のうちに呟いていた。ボス部屋の天井は、地味に《魔剱》の効果範囲より高かった。つまり、斬撃が当たらない。それに、度重なる骨百足の攻撃で、そもそもこちらが攻撃できない。かなりピンチだ。
「それでも、やるしかないよ」
隣で、ヒバナが呟く。どうやら同じことを考えていたようだ。頷きあった俺達は、スキルウィンドウから『そのスキル』を選択し、《起動》を推す。直後、俺とヒバナの体が、淡い光を宿す。さらに、俺は白、ヒバナは黒の中華剣に武器を変える。
《雌雄剣》の、お披露目だ。
「行くぞヒバナ!!《クロスレンゲキ》!!」
「了解!」
ボスが何度目かの落下。そのタイミングに合わせて、地面を蹴る。俺とヒバナの攻撃が、左右対称の全く同じモーションで、ボスを吹き飛ばした。
「きょしゃぁあ!?」
ボスが驚愕の悲鳴を上げる。自分に攻撃は当たらないと思っていたのだろう。吹き飛んだボスをねらって、再びの《クロスレンゲキ》。全く同じところにヒットした攻撃が、ボスのHPを削っていく。
《雌雄剣》の専用技、《クロスレンゲキ・ソードスキル》。現在、五種類のそれが俺達には使用可能だ。《クロスレンゲキ》はただの息の合った同時攻撃ではない。攻撃の威力は、通常のソードスキルの二倍。それも、二人合わせてではない。それぞれが、二倍なのだ。例えば二人の剣士が全く同じ威力100のソードスキルを打つとする。大体ソードスキルは左利きプレイヤーのために、左右逆の軌道でも放つことができる。それが全く同じスピード、威力、タイミングでヒットして、100+100で200だ。しかし、《クロスレンゲキ》は単体で100の威力をもち、それだけでなく二倍される。つまり、200+200で、400。加えて、俺達の《雌雄剣》専用武器《干将・莫邪》は、お互いの技の威力をさらに二倍にする。つまり、400+400で、800だ。
「俺達がこいつが飛び上がるのを防ぐ!!その隙に攻撃してくれ!!」
「わかった!!」
俺の叫びに、キリトが応じる。黒と白の二刀をもった《黒の剣士》と、流星のごとく光をまき散らす《閃光》が、ボスのHPを削る。ボスの斬撃攻撃は、ヒースクリフが自慢の防御力で防いでいく。
「まったく、大した防御力だよ……なっ!」
俺達も、今度は《クロスレンゲキ》とは違うソードスキルを打つ。カテゴリ的には《刀》に入る《干将・莫邪》だが、《雌雄剣》のスキル共用能力で、ヒバナも刀のソードスキルが使える。二倍増しの威力にされた斬撃が、ボスをえぐる。
しかしボスも負けていない。鋭い無数の足それぞれで、群がるプレイヤーを吹き飛ばす。時折、ぱりん、パキン、といった、プレイヤーの消滅音が響くが、俺達はそれを無理やり意識の外に叩き出して戦った。
「うぉおおお!!」
キリトの二刀が、流星群のような輝きを纏ってボスを貫いていく。
「「りゃぁあああ!!」」
俺達も全身全霊を振り絞って《クロスレンゲキ》。四倍増し斬撃によって、ボスの体が粉々に砕ける。《黒の剣士》の二刀が、ボスに最後の一撃を叩き込む。
「きょしゃぁあああああああ!!!」
骨百足が、耳障りな悲鳴を上げて砕け散る。
「終わった、のか――――?」
俺達は床にへたり込むと、ボス部屋の奥、開く次層への扉を見た。そして、瞠目する。
扉は、開いてなどいなかった。いまだ、強固にその扉しまっている。つまり―――――
「「皆駄目だ!!まだ終わってない!!」」
キリトと俺がほぼ同時に叫ぶ。
直後、上空から、何かが落下してきた。
最初の骨百足の落下の1.5倍ほどありそうな規模の地響き。落下してきたのは、もう一体の骨百足――――名を、《The Dead-Ripper》―――――
「キョシャァアアアアアッッ!!!」
屍の狩り手が、二対四本の腕を振り上げる。その先端は、骸骨の狩り手よりも長く、巨大な鎌になっていた。
つまり、骸骨の狩り手は前座に過ぎない。この《屍の狩り手》こそ、この階層真のボス――――
「うそ、だろ……」
誰かが小さくつぶやく。名前も知らぬプレイヤーか、キリトか、それとも、俺自身か――――。
『『『うわぁああああ!!!』』』
プレイヤー達が半狂乱に陥る。ボス部屋の入口に向かって駆け出すが、いまだその扉は固く閉ざされている。
「きょしゃぁあああ!!」
ボスの腕の鎌が、フィールドを薙ぐ。プレイヤー達が、ポリゴンに変わっていく……。
「こんなの、ないだろ……」
赤髪の刀使い、クラインが呟く。
「こーくん……」
「大丈夫だヒバナ。お前は俺が守る」
「……うん」
普段の快活さを失った、不安げな声をヒバナがあげる。彼女を抱き寄せ、勇気付けてはみたものの、俺をもってしてもこの状況はかなりやばい。それでも、最後まで戦い切らなければならない。勝利という、ただその二文字だけを信じて―――――
絶望的なまでの破壊力を秘めた鎌が振るわれる。恐怖で凍りついたプレイヤー達が、俺の腕の中でヒバナが目を閉じる。彼女を強く抱いて、無意識のうちに俺も――――
しかし、俺達を死がかき消すことは無かった。おそるおそる目をあけた俺達の目に飛び込んできたのは、白銀の鎌をもった、巨大な漆黒の死神が、ボスの鎌を弾き返す瞬間だった。
「な……」
「うそ、あれって……」
キリトとアスナが絶句する。死神の頭上に浮かんだカラーカーソルはダーククリムゾン。レベル105以上でなければ太刀打ちが難しい――――即ち、アインクラッド第九十五層以上の強さを持ったモンスターであることが明らかである。
死神の名は、《The Fatal-scythe》―――――名前を彩る《The》のワードは、ボスの証。だが、これはどういうことだ……!?
「皆さん、大丈夫ですか!?」
聞き覚えのある声が、フィールド内に響き渡ったのはその時だった。
その人物は、思いもよらないところから現れた。――――背景である。ボス部屋を構成する岩の壁、その隙間から、ひょっこりと金髪の少女が顔を出す。死地の真ん中だというのにもかかわらず、攻略組のプレイヤー達がその美貌に息をのむ。アスナやヒバナに匹敵する可憐な少女、彼女を、俺は知っている――――
「「シェリーナ!?何でそんなところから……」」
キリトと俺が同時に叫ぶ。なんか今日は妙に奴と気が合うな。
「ディスティ!!しばらくその百足を押さえていてください!!」
『―――――』
ディスティ、と呼ばれた死神が、シェリーナに向かって頷く。これはどういうことか……。ボスモンスターは、いかなる手段をもってしても、手なずけることはできない。なのに、なぜ――――。それは、ヒバナ、キリトやアスナ、そして全てを知っているかのように見えたヒースクリフにですら驚愕すべき出来事だったようだ。
死神が鎌を振るう。ボスとボスの激しいぶつかり合いの中、介入不可の戦場に、シェリーナと、あと一人見知らぬ青年が降り立った。青年は、まさに《魔法使いの杖》としか言えない杖を振りかざして、叫んだ。
「《異形の楽園》の勇士たちよ!!今こそ安寧の殻を破りて、勇者が為にその力振るう時!!」
壁が、崩れる。そこから表れたのは、三十体余りのモンスター達。全員がこの場にいる攻略組のものとよく似たオーラを纏っていた。
「全軍、突撃―――――!!」
『Ooooo――――――――!!!』
そして、三メートルに迫る大きさの黒い巨龍を戦闘に、異形の戦士たちが、屍の狩り手に向かって突撃した。
後書き
次回、チートVSチート……
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