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鉄槌と清風

作者:deburu
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29部分:28:聖王教会


28:聖王教会

 闇の書の事件が解決し、リインフォースもはやての家で暮らし始めて数日、年が開けて翌年…三が日が過ぎたころにクロノから連絡がはいった。
 休暇がようやくとれたので、以前言っていたベルカ自治区聖王教会の知り合いに合わせてくれるそうだ。
 クロノと共に転送ポートを乗り継いで付いたのはミッドチルダの一角、大きな教会が少し先に見える場所。

 「でかっ、あれが聖王教会なのか?」

 「正確にはベルカ自治区だな、教会はあの大きい建物で、付属の魔法学校もある」

 「はぁ…しかし、ミッドの中央とはなんか雰囲気違うな」

 「建物は古い物がおおいからな、眺めていても仕方がない、いこうか」

 「おうっ」

 廻りには信徒なのか、住人か同じように自治区へ向かう人々。
 近づいていくとクロノより少し身長の高い少年、髪は緑で伸ばしている…が、此方へ手を振っている。

 「やぁ、お久しぶり、クロノ君」

 「ヴェロッサか、久しぶりだな…でも、今日来る事は知らせてなかったと思ったけど?」

 「ははは、そこはあれだよ、僕にも独自の情報網がね、そっちの子が…?」

 「あぁ、彼が」

 「八坂良彦です、今日はクロノ執務官に聖王教会の案内をおねがいしてます」

 「うんうん、僕はヴェロッサ・アコーズ、一応査察官とかしているよ」

 「基本あまり仕事をしてないから、肩書きは無視してもいいぞ」

 「ヴェロッサさん、よろしくお願いします」

 「あぁ、呼び捨てで良いし、口調も改まる必要は無いよ、面倒だろう?」

 「…んじゃ、ヴェロッサで、よろしくな」

 軽い挨拶をしていると、ふとクロノが

 「…なぁ、良彦…僕のときは最初から呼び捨てじゃなかったか?」

 「だって、14歳だとは思ってなかったし、同年齢位かと」

 「…そうか、まぁなれているからいいけど、君もなのはたちと同年齢には見えないぞ」

 「…良く言われるよ」

 お互い視線を合わせ、何か共感するように頷く良彦とクロノ。

 「まぁまぁ、この後義姉さんの所にいくんだろう?」

 「あぁ、その予定だが…一緒に来るのか?」

 「まさか…シスターシャッハに怒られに行く予定はないよ、少し時間があったから挨拶しに来ただけさ、一応この後仕事でね」

 「そうか、では、そのうち時間があえば何処かでゆっくり話でもしよう」

 クロノとヴェロッサが軽く会話して、ヴェロッサは楽しそうに転送ポートの方へ歩いていく。
 それを見送ってから、クロノが

 「さて、教会に向かおうか」

 「りょうかい」

 そういって、案内する為に先導して歩いていく。
 中世の西欧風建物の中を歩き大きな教会へとたどり着く、入口には紫の髪をしたいかにもシスターと言った少女がクロノに気付いて、此方に一礼。
 其処へ近づいていき

 「ごきげんよう、シスターシャッハ…お久しぶりです」

 「ごきげんよう、クロノ執務官、お久しぶりです」

 お互いに挨拶し

 「こちらが、以前お話した…良彦、彼女はシスターシャッハ…さっきのヴェロッサとこれから会う人の世話係みたいな感じかな」

 「よろしくおねがいします、八坂良彦です」

 「丁寧にどうも、シャッハ・ヌエラ、修道女です」

 手を差し出し握手……お互いの視線が合わさり、何かに気付いたように同時に微笑む。

 「時間があれば、一度おねがいできますか?」

 「えぇ、此方こそお願いします」

 良彦の突然の言葉にシャッハは普通に頷き…クロノは困惑。

 「さてでは、騎士カリムも待っていますし行きましょう」

 「あ、あぁ、そうだな」

 「はい、おねがいします」

 すっと手を離し、シャッハ先導で教会の中へ…しばし歩いて、一つの扉の前に…シャッハのノックにどうぞと声がして、中へ入る。
 中は執務室らしい部屋、壁には本棚があり、執務机では金髪の少女が羽ペンで書類を書いていたのか、ペンをペン立てに戻した所だった。

 「ごめんなさい、いま終わった所だから」

 椅子から立ち上がり此方へ来る少女…紺色のロングスカートのワンピースに、黒の長袖ジャケット、腰から鎧の腰垂れを左右のみ短くつけ、黒のスカートのようなもので左右から後を覆っている。

 「聖王教会教会騎士団騎士、カリム・グラシアです」

 初対面の良彦の綺麗に一礼。

 「八坂良彦です、忙しい所申しわけありません」

 良彦もいそいで、騎士の礼を取る。

 「それじゃ挨拶はこれくらいにして、本題に入っていいかしら?」

 「本題…俺今日見学のはずなんですけど」

 「先日の戦闘記録をみてな、聞きたいことがあるそうなんだ」

 「クロノ執務官…?」

 「カリムは管理局の理事官であるからな、閲覧許可が下りたんだよ」

 「そういう事か…それで質問とは何でしょう、騎士カリム」

 苦笑しながらカリムに向き直る。

 「クロノ執務官から多少の報告は受けていますし、記録も見ています…貴方は、清風の騎士リヒトヴェッテル・ベシュテンバーグの子孫だと言うのは間違いありませんか?」

 「とりあえず、俺が受け継いだ記憶が確かで、ゼピュロスが本物なら、そうなると思います」

 「では、いくつか質問しますので答えてください」

 と、カリムからリトの時代の事であろう質問をいくつかされ、それに答える良彦…ゼピュロスとカートリッジも実際に見せる。
 質問の答え、ゼピュロス、カートリッジなどで、ようやく納得したのか、微笑むカリム。

 「貴方は【風王】直径の子孫という事になりますね、清風の騎士の名はそのまま受け継いでください、此方でも登録しておきます」

 「はぁ、ありがとうございます」

 「ごめんなさいね、突然こんな話しで…古代ベルカの業と記憶を持つ人は希少なので、面倒でも確認を取っておかないと後でもめるのよ」

 「まぁ、なんとなく判るんで構いませんよ、騎士カリム」

 苦笑しつつ答える良彦、ふと思い出す手土産。

 「そういえば、これを忘れてました、よろしければどうぞ」

 差し出すのは翠屋の箱、シュークリーム詰め合わせだ、クロノから案内のとき紹介する人がいると聞かされていたので持ってきたのだ。
 それを差し出すと、カリムは嬉しそうに微笑み。

 「シャッハ、折角だしお茶にしましょうか」

 「では準備します、騎士カリム」

 そういって、お茶が用意され、早速シュークリームも準備される。
 ゆっくりとお茶を飲んでいると。

 「そういえば、良彦さんは管理局に入るので?」

 「んー…実際の所はなやんでます、受け継いだ記憶があるんでベルカ自治区の方で騎士として、というのもありかな、と」

 「では、私と同じように教団騎士としての叙勲と、管理局での仕事を両立と言う形にしては?」

 「家柄とか無いけど大丈夫でしょうか?」

 「では、私の直属の騎士になってもらって、管理局には派遣と言う形にすればどうでしょう?」

 カリムと良彦の問答に、小さく頷くクロノ。

 「それなら問題ないと思う、まぁ、陸は良い顔はしないかも知れないけど、大丈夫だろう…それに清風の騎士の名を教会で認められる訳だし、カリム配下なのも問題ないだろう」

 「問題ないならいいけどな…と、良いですけど」

 言い直す良彦に微笑むカリムとシャッハ。

 「なれた言葉使いで構いませんよ、騎士良彦」

 「そうですね、見ていて違和感しか覚えまえんし」

 「おうふっ、じゃぁ普段どおりで」

 二人の好意に素直に甘える良彦、ふと疑問が浮かぶ。

 「そういえば、シスターシャッハは…騎士ではないので?」

 「シャッハは、修道騎士ですね、シスターでありいざと言う時は騎士でもあります」

 「あぁ、やっぱり」

 「やはり、とは?」

 良彦の問いに答えたカリムがくびをかしげる。

 「先ほど握手した時に、手の感覚で…武器を使っている人だと」

 「私もそれは判りました、ただ騎士良彦は無手ですよね」

 それに答える良彦とシャッハ。
 苦笑するクロノ、カリム。

 「そういう事でしたか、後で模擬戦でも行うおつもりで?」

 「時間があれば、かな、俺は泊まりでもまだ学校が休みだからいいんだけど、クロノの時間が」

 「今日だってやっと取れた休暇だったからな」

 苦笑する良彦とクロノ、其処へ

 「では、騎士良彦は此方が責任を持って送りますので、滞在が可能なら数日泊まって行ってはいかがですか?」

 カリムが、微笑みながら提案する。

 「えーと、今日4日だから、2泊くらいはできるかな?」

 「時間がおおければ、案内できる場所も増えますし、問題なければ部屋を手配しますが」

 呟く良彦にシャッハが問い

 「それなら、午後から僕は戻ってもいいかな、エイミィが時間あったら買い物行きたいとか言っていたし」

 「ん、俺はいいよ」

 その言葉にクロノが提案して、良彦はあっさりとそれを受け入れる。

 「じゃぁ、シャッハ部屋の準備と案内は任せます、私はもう少し書類を片付けないといけないから」

 「判りました騎士カリム…では、騎士良彦、クロノ執務官、こちらに」

 お茶を切り上げ、立ち上がる一同

 「あぁ、騎士良彦…シュークリーム美味しかったですよ」

 にこっと微笑んで礼を言うカリム。

 「じゃ、又来る時買ってくるよ、騎士カリム」

 答える良彦。
 お互いに微笑みあい、3人は部屋を出る、クロノはそのまま良彦とシャッハに別れを告げて、外へ向かっていく。

 「では、此方へ」

 シャッハの案内で、教会の一室に通され。

 「逗留には此方を使ってください、騎士良彦」

 「ありがとう、シスターシャッハ…えと、此処って?」

 「教会騎士団騎士の部屋です、いまは使う人が居ない空き部屋なので」

 「そっか、了解…じゃ、ありがたく借りるよ」

 小さく頷き、少ない手荷物、小さなバック程度だが、を置いて。

 「んじゃ、案内よろしくシスターシャッハ」

 「はい、では参りましょう」

 そして、二人揃って歩き出す…向かう先を楽しみにしながら。
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はやてより一足はやく、カリム、シャッハ、ヴェロッサと対面…古代ベルカの記憶持ち、王族の血筋ってことで、ベルカの騎士で管理局出向みたいになりました。

次回は、案内と模擬戦でしょうか。
 
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