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生還者†無双

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拠点

山の騒動が一段落し蓮華達の拠点としている街に着いた
まぁほとんど寝ていたから詳しい場所は分からんが……
確か袁術がどうとか言っていた気がする
道中どうやってたどり着いたかも知らん、目が覚めたら屋敷に着いてた
ドサッとベットに身体を放り投げて見知らぬ天井を見て考える
弾と手榴弾を結構消費してしまったのが少々痛い所だ
しかし出し惜しみしている状況じゃあなかったのも事実
五体満足で生還出来たのだから御の字だ
「久々にこいつを脱ぐか」
おもむろにAMスーツを脱ごうと思った暁
かれこれ桃香の所出てからろくに手入れもしてない
パッと見るだけで所々に赤黒い血が固まっているのが目に入る
全く……随分酷使しちまった、ガタきてるかも分からん
首元の圧力バルブを捻るとパシューと圧力が抜けていく
するとあっとゆうまにスーツが縮む
上下のスーツを脱ぎ去ると素晴らしくスッキリした気分になる
爽やかな余韻に浸りながらも本来の目的を果すべく目の前のスーツに目を向けた
どこか破損した所は無いか、不具合は即死に直結する為
上下裏表入念にチェックしていく……



うむ、流石AMスーツだ……大したキズは一つもねぇ
オリハルコン繊維と装甲板で補強された頑強な強化外骨格
銃砲爆撃ですら耐えきるスーツを剣や弓でキズなどつく筈がない
ただ機械式である為に、こまめな整備が必要なのだ
しかし、本格的な補給も整備も絶望的な状況では夢のまた夢
無い物ねだりしても仕方あるまい
「結局、自分で出来る範囲内でやるしかねぇのか……」
上下のスーツを引き続き最低限出来る手入れをしようとした矢先
不意にガチャと部屋の扉が開いた
「暁?話があるんだけど……」
蓮華が部屋に身体半分入れた時点で硬直している
そりゃパンツ一丁の男が服をガン見してるの見りゃ固まるわな
部屋の時が止まっている
暁は思考をフル回転させて言い訳を考えるが……
待てよ、そもそも俺は全然悪くないだろう?
だって部屋で着替えていただけだぜ?
しかし……まさに嵐の前の静けさとはこの事だ
これで叫ばれたら今度こそあの女になます切りにされるな
いずれにしろ……詰んだ
変態、痴漢、一体どんな事を叫ばれるのか……
もう全ては手遅れだ……こうなりゃ甘んじて罰を受けようではないかっ

「暁の身体って傷跡だらけね……」
「あぁ……まぁな」
叫ばれると思っていたから肩透かしを喰らった暁
間抜けな返事をしてしまったと内心焦っていた
身体の傷を言われたので今一度身体を見てみる
ほぼ全身に切り傷、火傷や銃創等大小様々な傷跡が刻まれ
まるで暁の激戦の歴史を物語っているようだ
今思えば世界中の戦場に赴き戦いに明け暮れた生活
ジャングル、砂漠、遺跡、市街地、どれも酷い戦場だった
敵も味方もゴミみたいに死んでいく……日常
だが此処もそう大差の無い酷い戦場の一つになる
蓮華の顔を見ながらそう確信をしていた
「なぁ……流石にこの状況不味いと思うのだが」
「ご、ごめんなさいっ」
顔を真っ赤にして回れ右を慌ててする
「まっ別に良いけどよ、別嬪の嬢ちゃんに見られて悪い気はしねぇ」
別に気にする事なく軽快な動作で脱ぎ捨てたズボンを取る
とりあえずズボンを履いてスーツをベットに投げ部屋を見回す
上半身は相も変わらず裸のままだが、窓を見付けて勢い良く開けた
すると清々しい風が部屋を吹き抜けた
「んで、別に俺の裸見にきたって訳でもないのだろ?」
「そ……そうね!夕食の準備が出来たから……」
「まじか!んじゃさっさと行こうぜ」
Tシャツをバックから出して着ると蓮華を置いて部屋を出ようとする
「ちょっと待ってっ!その格好で行くつもり?!」
「あぁ?まぁそうだな……そのつもりだが?」
「もう良いわ……とにかく行きましょう、待たせるのも悪いしね」
そう言うと二人は足早に部屋を後にした……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「貴様!何だその格好はっ!」
「Tシャツ」
「てぃしゃつ?また訳の分からん事を……!?」
案の定、食堂らしき所に入った瞬間にあの女に怒鳴られた
全くうるせぇ女だねぇ本当……
飯の時くらい静かに出来ねぇものかね
片耳を塞ぎながら椅子に座ろうとした瞬間

シュッ

突然暁に向かって箸が飛んできた
しかし飛んできた箸を掴むと何事もなかったのように席に着いた
箸が飛んできた方を見ながらニヤリと笑いながら呟いた
すると部屋の隅から小さな人影が現れる
「中々やんちゃな嬢ちゃんだが、箸の使い方間違ってるぜ?」
「へぇ~やるじゃない、シャオ結構本気で投げたのに」
「まだまだ甘いな、止まって見える」
「どんな男が来たのかと思ったけど合格ね!シャオの近衛にしてあげる!」
「へぇ!そりゃ光栄だ(棒)もう飯食って良いか?」
「むぅ~全然光栄に思ってないでしょっ」
暁に近づきポカポカと叩いている
座っていても長身なので子供が大人に何かせがんでる様に見える
あまりにも無視されるので暁に後ろからしがみついていた
「な……なにしやがるっ」「無視するのが悪いのよー」
呆気にとられていた蓮華があわてて謝罪をした
「シャオ、いい加減にしなさい!暁……ごめんなさいね」
「えぇーだってぇお姉さまだけずるい~」
「ず……ずるいって、私と暁は」
しどろもどろになっている蓮華を気にする事なく暁は飯を食べていた
食っておいてこんな事言うのもあれだか……後漢末期にこの中華料理
麻婆豆腐、麻婆茄子、湯麺に餃子か……
毎回思うが……ありえんな、美味いから良いけども
久々のまともな飯に舌鼓を打ち箸を進める
弾薬、食糧、消費しちまった物を今後どう節約していくか
そしてこのチグハグな歴史で俺の知識が何処まで通用するのか……
「暁?聞いてる?」
「すまねぇ、聞いてなかった」
「貴方の事を聞いていたのよ」
「俺の事?何にも面白くもねぇぞ時間の無駄だ」
「そんな事はないわ、知りたいの」
「良い男は過去を語らんもんなんだよ、ご馳走さん」
席を立つとそのまま部屋を出ていった
まぁ俺の事話しても理解出来るはずもないし
未来から来ました~なんて言ってる奴を信じる馬鹿がいるかよ
ぼーっと歩いているといつの間にか練兵場に来ていた
へぇ、結構広いじゃねぇか……丁度良い
いつの間にか自然と身体が動きだしていた
突きや蹴り、軍隊格闘特有の無駄のない動きでシャドーをしていた
「おい」
不意に暗闇から呼ばれて振り返ると
片手に剣を持った甘寧がいた
おいおい、物騒だな……俺の格好がそんなに気に食わなかったか?
「あん?なんだ?」
「相手してやる……かかって来い」
「嫌なこった、やる気が出ねぇ」
「私じゃ不満かっ!」
横一線の鋭い薙ぎ払いを紙一重でかわした
ほとんど感覚だけで避けた様なもので背中に冷たい汗が滲んだ
「あぶねぇなっ!正気かっお前!」
「うるさい!黙れ!」
訓練用の刀とはいえ当たれば只では済まないだろう
ましてAM スーツは脱いでいるので尚更ヤバイ
だがスーツを着ていないからって別に関係ない
当たらなければどうと言う事はないと、何処かの大佐が言っていた
繰り出される刃を避けて続け、ましてや反撃に転じている
雑兵ではなく歴戦の武将相手に無手でだ
暫く一進一退の攻防が続き、極め手が無いまま互いにに距離をとった
「暁 巌……貴様一体何者だ」
「藪から棒になんだ?」
「その強さ、黒い鎧、火を吹く筒……貴様は一体なんだっ!」
「それを聞いてどうする」
「孫家に……蓮華様に仇なす脅威は此処で斬る」
訓練用の刀を投げ捨て、愛刀を構える
刀身が僅かな光を反射しさながら邪悪な剣のようだ
対する暁は表情一つ変える事なく対峙しながら喋った
「俺は……俺だ、それ以下でもそれ以上でもねぇ」
「答になっていないっ」
思春は飛び上がり刀を振りおろした
今放てる渾身の一撃
だが奴は避ける素振りも見せず立っている
馬鹿な……死ぬ気か!
しかしもう止められない、蓮華様の為にそのまま死ねっ

必殺の刃が暁に迫る
本気の勢いかよ、こっちは疲れてんのによ……
だがアイツも手負いだ、避けれない速さじゃあねぇっ
思いもしない決闘に悪態をつきながら迫りくる刃に目を向ける
刹那の撃鉄が頭の中で弾け、刃の軌道を見極め身体が即座に反応した
ギリギリのタイミングで刃の軌道から身体を外す
刃先が薄着の暁の肌を掠めた
渾身の一撃の刀身は地面を大きく穿つ
その一瞬の隙を見逃すはずもなくどす黒い殺気が辺りを包んだ
元々カウンターを狙っていたのだ、正に予定通りの展開
地面にめり込んだ剣を足で踏み押さえつけ
「しまっ……!?」
「もらったぜっ!」
死に体になった思春に豪腕を振りきった
や……殺られるっ
この殺気……尋常ではないっ!
武人としての経験からして……奴は本気だ
目を瞑り迫りくる必殺の拳が己の命を刈る瞬間を待った
しかし、いくら待っても殴られた衝撃も痛みも無いのはどうゆう事だ?
恐る恐る目を開けると視界一杯に拳が見えた
顔ギリギリ鼻先の所で拳を止まっている
鋼も打ち砕きそうな猛者の鉄拳
こんなものが当たったらと思うとゾッとする……
即死か……もしくは酷く不自由な生活を送る羽目になるだろう
思春は腰を抜かしたのか安堵からなのかその場に座りこんでしまった
目の前の男を忌々しげに睨み付ける
真剣勝負(一方的)で手加減をされた悔しさ、恐怖、怒り
様々な負の感情が湧き出てて……叫ばずにはいられなかった
「何故……止めたっ!情けかっ!」
「そんなんじゃあねぇよ」
「私はお前を殺そうとしたんだぞ!」
「んなこたぁ、知ってる」
「では何故だっ!私は殺す価値も無いかっ!こんな屈辱……」
バッと暁はしゃがみ思春と同じ目線の位置になり
鼻先に指をビシッと突き立て吠えた
「お前本当に自己中な奴だな!いいか良く聞けよ、こんなくだらねぇ所でお前本当に死にたいのか?」
「そ……それは……」
思わぬ反撃に言葉が詰まってしまう甘寧
混乱する彼女を気にする事なく暁は更に捲し立てる
「俺は孫家だか孫悟空だか知ったこちゃねぇ、だが一時とは言え仲間になった奴を殺るのは寝覚めが悪いんだよ!」
夜の練兵場に暁の声が響く
松明がパチパチと燃えている音
ビューと乾いた風が吹き抜け砂を飛ばす
静かな夜の沈黙が暫く続いた
「わ、私が仲間だと……?」
沈黙を破り思春が尋ねた
「俺はそう思っていたが」
「お前を2回も殺そうとしたのだぞ?」
「ふっ、戦場での事は恨みっこ無しだろ」
暁が苦笑しながら思春に向けて手を出す
キョトンした表情でその手を見ていたが直ぐに握り立ち上がる
中々身長差がある二人だが不思議と違和感はなかった
松明の光と月明かりだけの薄暗い練兵場
あまり良く表情は見てとれないがお互い清々しい顔をしている
「まぁ何だ、これからよろしく頼むぜ甘寧」
「思春だ」
「あ?それって真名じゃ……」
「そうだ!私の真名は思春……これからそう呼べ!」
顔を背けながら思春は言った
直後、脚の爪先から頭のてっぺんまでマグマが駆け抜けた
恥ずかしさか、単なる戦闘直後の高揚か
バグバグと心臓が速足で鼓動いている
何だ?何なんだこの感じはっ!顔が熱い!身体も熱い!
チラっと暁の顔を見ようとするが……直視出来なかった
この一連の行動と思考は心の中でしているつもりだった……が
実際には独りでぶつぶつ言いながらモジモジ身体を動かしている
そんな思春を見て暁は本気で心配をしだした
「お……おい?大丈夫か?」
「わ……私は平気だっ問題ない!」
「いや、全然平気じゃあねぇだろうよ……」
その後、蓮華が回収に来るまで何かに取り付かれた様な状態だった




 
 

 
後書き
明けましておめでとうございます

2014/1/21 少々修正しました 
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