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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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点と点を繋ぐ物語

 
前書き
この物語を、唐突にブラウザが閉じた上に復元失敗した作業と文字に捧ぐ。 

 
 
~ウォーク・アンド・ウォーク~


「・・・駄目ね、あいつ電源切ってるわ。普段ならかけて2秒で返事返してたくせに肝心な時に・・・」
「苗ちゃんが連絡付かないなんて珍しいね?何があったんだろ・・・」

なのはに「明日大事な話がある」という旨を受けて戸惑ったすずかは、取りあえずそれと同じメールが送られたアリサに呼び出されて歩きながら話していた。丁度どうすればいいか分からずに相談したかったのだから渡り舟と言えるだろう。アリサも同じようなものだったらしく、もう一人苗に連絡を取ったのだが・・・どういう訳か最初は電話に全く出ず、改めてかけなおしたら電源を切っていた、という訳である。

「良くないことに巻き込まれてなきゃいいけど・・・」
「ないない、300%くらいない」

すずかは知らないがアリサは知っている。苗がヤの付く人を素手で戦闘不能に追い込めることを。その事実はアリサの心の中での苗の存在を「心配するだけ損する存在」というランクまで押し上げていた。

なお、その二人の後ろでは「神人」と呼ばれる某有名憂鬱なラノベに出て来る巨人が複数の9歳児と骨肉の戦いを繰り広げている。が二人は全然気づいていない。

「ぎゃぁぁーー!?無理無理絶対無理!あんなのに突っ込んだら上条さんペチャンコになっちゃいますのことよ!?」
「バカ言えこのウニ頭!暴王の月が効かなかった以上お前のそれが頼みの綱なんだよ!!」
「お前はいいよな!?身体能力強化出来て!!」
「あぁ!?暴走のリスク一切なしのお前の方が十二分羨ましいわ!」
(僕帰っていいかな)

動じるとか動じないとかそれ以前に気付いていないというのはどうなのだろう。彼女たちにとってはそんな戦いは些事の範疇に収まるのだろうか。

「翠屋って営業時間いつまでだっけ?」
「確か6時までじゃなかったかな?」
「ということは・・・今から急いでもギリギリかぁ。次の機会にしよっと」
「ご飯前のスイーツはどうかと思うよ・・・」
「何よー!アンタなんて特にダイエットとかしてないくせに全然贅肉増えないし!優良遺伝子!?優良遺伝子なの!?」
「ち、ち、違うよ!!」
「どもるのが怪しい!正直に白状(ゲロ)りなさい!」

乙女の悩みをぶつけあう二人の横を世にも奇妙な姿の形容しがたい存在が通り過ぎていく。二人は知らない上に気付いていないが、それらは数年後にここから離れたとある町で目撃される「使い魔」と呼ばれるなんとかシード関連の存在に酷似したものだった(実際には全世界にいたのだが深く気にしてはいけない)
二人を襲う素振りを見せる使い魔。しかしタッチの差で9歳児軍団が現れてそれは阻止された。

「タル・ンダ!」
「よし今だ!構え・・・ふぁいあ!」
「あ、あの・・・私たち当然のように銃使ってるけどいいのかなぁ?」
「いーのいーの非常時だし!それにしても平野と相良がここまで使えるとは思わんかったなぁ」
「「ロッケンロォォーーール!!」」

・・・が、これまた二人は気付かない。銃声響き渡る市街地を何事もなかったかのように通り過ぎていくのは、本格的に戦闘が始まる直前にそこを通り過ぎていることに加えてもう一つ理由があった。

「何か今日は騒がしいわね?青龍事件(シャイン編第一話参照)ほどじゃないけど」
「あ、あれと比較すれば大抵の事件は小言だと思うよ?あれは町どころか国中大騒ぎだったし。最近は国会で怪獣対策組織を本気で造るべきじゃないかって議論があるくらいだし」
「そんなアホな組織作ってる暇と予算あったら別の場所に生かすべきだわ。本当に必要なのは懐柔対策ね」

こうして彼女たちは他愛ない会話をしながら進み、結果として闇の書の残滓との戦闘に巻き込まれかける羽目になるのだった・・・

この二人、結構大物である。





~プレシア・アンド・プレシア~


気味が悪い。素直にそう感じた。

だっておかしいではないか。フェイトはどう見てもどう考えても失敗作の紛い物に過ぎない。そんなのにお前は、この世界のプレシアはどうして愛など注げるというのか。それはまるで人形を本物の子供と思い込むパラノイアのようだ。理解に苦しむ。

利き腕が違う。呼び方が違う。そしてあのアリシアとは思えないほどに愚図で愚鈍で無能。あれがアリシア?違う。あれは出来損ないだ。それで十分だ。それ以上の価値など見出せるはずもない。

「貴方は本当に正気なのかしら?」

塵屑を愛する人間などいない。いればそれは精神異常者に他ならない。

「あら、じゃああなたの正気は貴方以外の誰が保証してくれるの?」
「・・・」

アリシア、と言おうとして止めた。アリシアはもうすぐ生き返るのだからわざわざ声に出して説明する必要もないと考えたからだ。代わりに目の前の自分そっくりな狂人に向けてため息を吐く。

「さっき正気かって聞いたわね。ハッキリ言って私と貴方の最大の違いは『見解の相違』ってやつよ」
「何を・・・ごほっ、ごほっ・・・!」
「無理せず黙って聞きなさいな」

気に入らない。その余裕ある態度。自分は全て解っているとでも言うように見下ろす目に点る憐れみが何よりも気に入らなかった。だが、この目線の差こそが二人のプレシアの力の差をそのまま表現している。杖を握る手に力が籠るが、忌まわしいフェイトの教育係だったあの使い魔がこちらを見ている以上不意を衝くのは難しかった。

「私にとってフェイトは2人目の子供なのよ。アリシアとフェイトの間に貴賤の差はないし、確かに昔は嫌ったことはあるけど今は受け入れている。フェイトも・・・むしろ受け入れられてないなら私今ここで立ってられなゲブハァッ!?」
「プレシア、想像だけで吐血しないでください」
「グフッ、ゲフッ!・・・はぁはぁ、フェイトに嫌われたら私生きていけないのよ!」
「正直何言ってるか全然分からないわ」

そのまま死んでしまえ、と心の中で呪詛を吐く。こいつを見ているとどうしてかフェイト以上にイライラさせられる。消飛ばしてしまいたい。そうすればアルハザードへ至れるのに。どうして邪魔をするのか。自分はアリシアを諦めて人形で満足してるくせに、私が本物を手につかむのは許せないとでもいうつもりか。何ともひがみっぽいことだ。

「私にとっちゃアリシアもフェイトも私の子供。そりゃ生き返らせることが出来ると言われればよこしまな心が湧かないとは言わないけど・・・でもそこが最大の違いよ」

この世界の私が断罪するように私の目の前に杖を振り下ろす。

「アリシアと書かれた皿に注がれた(ミルク)は私のせいで零れ落ちてしまったわ。そして私はその悲しみを紛らわすために元々入っていたミルクと全く同じミルクを皿に注ごうとした。そこまでは同じ」

くだらない、本当にくだらないたとえ話だ。くだらないからこそこいつが次に何を言うかもおぼろげながら見当がつく。だからこそ、意味が分からない。理解できない。こいつは一体なぜそのような発想に至ったのかが。

「貴方はその皿に注がれるミルクは”あの日あの時”に失ったものと完全に一致するものでなければならないと考えた。だから”再現”出来ず温度や品質が違うものは貴方にとってすべてが価値のないミルクになる。でも、たとえ完全に一致するものでなくともミルクはミルクだと思った私はもう一つの皿にフェイトと書いて、そこにミルクを移した」
「塵に受け皿なんて必要ない」
「そこが私を私たちに別ったのよ」
「・・・もう御託は沢山よ。結局死ぬほど気味が悪いあなたは私をどうするのかしら?」

ジュエルシードを拘束する封印が融けない。あの忌々しい使い魔め、消えてなお私の邪魔をするのか。

「貴方はジュエルシードを奇跡を起こすロストロギアだと”思い込んでいる”みたいだから、そこを突き崩すわ」
「!?・・・な、何を言い出すの、貴方は!?」
「天才をナメんじゃないわよ?ジュエルシードの正体とアルハザードの秘密くらいもう知ってんのよ!」

何を。
こいつは。
何を言っている。
ジュエルシードの正体?アルハザードの秘密?なぜ私の知らないことをこいつが知っていると?

こいつは―――何を言い出すつもりだ?





~フライ・アンド・フライ~

最初は迷子の女の子を送り届けるだけの筈だった。それが、どこをどう間違えてこうなったんだろう。ニルス・ゴダイ空曹は後々に書かされるであろう始末書の多さに頭を抱えた。

「あの・・・ここからは僕たち管理局の仕事だから、そろそろ引き返して・・・」
「痴れ者めが。芥ごときが我に命令するでないわ!」
「だいじょーぶだいじょーぶ!ボク達はお兄さんよりずっとずーっと強いんだからやられたりしないよ!」
「いやそういう問題じゃなくてねぇ・・・」

困ったな、と空を駆けながらニルスは頭を掻いた。

件のユーリの友達を見つけたニルスは彼女を預けてすぐさま行くべき場所があったのだ。その場所は海鳴市の中心部に近いビル街。そこで行われている激しい戦闘とアースラからのスクランブルコールを聞いたニルスはすぐさま状況を把握し、さらに追い打ちをかけるようにマリアンから送られてきた救援要請を受けていたので急いで現場に急行する必要があった。

今現在、町は非常事態に置かれている。市街地以外の場所にも正体不明の存在が民間人を襲い、町上空の数か所で戦闘が発生中。原因は海鳴市全体を覆う次元交錯線の乱れにあると思われるが、肝心の大本が全く把握できていないのが現状だ。
よってニルスは自分の専門分野である戦術補助の役割を全うするために現場へ急行していたのだが・・・何故かその後ろをユーリとその友達・・・レヴィとディアーチェがついてくるのだ。

ユーリ一人の時は気付かなかったが、残りの二人は明らかにデバイスを持っていたので3人は魔導士なのだろう。なぜこの星に不法滞在しているのかも後で聞かなければならない。しかも明らかに危険と分かっている現場についてくる・・・どうしよう?
子供3人だし裏に何かある可能性もある。現地協力の仮魔導士ってことで誤魔化すことは可能だが3人の魔力量は・・・ちょっとシャレにならない。これでフリーならば管理局は何としてでも彼女たちを自分の側に引きずり込もうとするだろう。それだけの・・・管理局内部のパワーバランスを揺るがしかねない力だ。

こういうのはクルトの方が得意なんだけど・・・と困りながら、チラリともう一度後ろを見る。

「お待たせしました。遅れて申し訳ございません」
「許す。それより防衛プログラムだ!アレのコアは元々エグザミアを内包していた部分。依代を抑えるにせよ最低一度は動きを封じる必要がある。我等4人ならば時間稼ぎは出来ようが・・・滅するのは不可能だ」
「激しく力を使いすぎると依代の身にどんな悪影響があるか分かりません。どうにか動きを封じる方法を考えないといけませんね?」
「う~・・・頭使うのはパス!じゃないと頭が火を噴いちゃうよぉ~」

(・・・増えてる、だと・・・!?)

なんかなのはちゃんに似た顔で似たデバイスを持った女の子が追加されていた。しかも何やら事情を知ってそうな話をしている。というか帰る気は一切ないらしい。

「あのー!もう引き返せとか言わないからせめて僕のいう事ちょっとは聞いてね!?」

「断る!紫天の主は我ぞ!何故王たる我が貴様の如き芥と・・・」
「あ、はい!それは大丈夫ですお兄さん!」
「っておいユーリぃぃ!?我を裏切るのかっ!?」
「大丈夫だよディアーチェ。お兄さんとっても優しかったし」
「表面上優しい奴が一番危ないのだ!我はお前が知らない人にホイホイついていかないか果てしなく不安になって来たぞ!?」
「しかし、どちらかといえば内向的なユーリが今日初めて会った人間をここまで信用するとは・・・お兄さんさん、貴方は”じごろ”と言われる人間ですか?」
「お兄さんは名前じゃないから!僕の名前はニルスだから!あとジゴロって何の話!?」
「ユーリがそう言うんならいい人だよね!よーし、僕がお兄さんさんの敵を吹き飛ばしてやろーう!レヴィ・ザ・スラッシャー!とっかんしまぁーーーーっす!!」
「あ、待ちなさいレヴィ・・・聞いていませんね。カバーに入りますが構いませんか?ニルスお兄さん」
「あー、うん。いいよ(だめだこりゃ)」
「こらシュテル!貴様よもや態と我に許可を求めなかったのではあるまいな!?心なしか最近我への風当たり強くないかー!?」

ここは今夜限りの児童養護施設「紫天幼稚園」。人手不足につき、従業員募集中。
採用条件は・・・マテリアルズの誰かひとりでも力づくで止められること、かな?





~ライブ・アンド・ライブ~

己は死ぬのだろう、とぽんずは自分の死期を自覚した。それと同時に、脆く儚い自分身体が切断され、視界が闇に堕ちた。

痛みを感じる暇もないほどの酷い肉体ダメージの中、ぽんずは自分の身体とは全く別の事を考えていた。


『この猫は?』
『ああ、その子はカナダオオヤマネコのメスです。大きいでしょう?それでまだ生後一歳なのですよ?』
『マジですか!?ということは・・・これからもっと大きく?』
『成長すると身体の長さが1メートル近くになることもありますね。大きさゆえに買い手がつかないままこんなにでっかくなっちゃいました』
『触っていいですか?触っていいですよね!?』
『ええ、どうぞ』

『この子下さい!』
『毎度あり、といいたいところですが・・・ちゃんと買える環境があるか調べてからですよ?』



『買っちゃった買っちゃった♪んん~ふさふさしててあったかーい・・・♪』

『よし!今日からお前は我が(おおどり)家の一員となるのだ!』

『うーん・・・どんな名前にするかな・・・ってこら!何をゆずぽんずの容器にじゃれついてますか!お前の名前ぽんずにするぞ!』

『ただいまー!ぽんずおいでー!毛繕いしたげるから!』

『いやーおっきくなったねぇ・・・でも、前より更にもふもふ♪』

『私、いつまでこんな生活送るんだろう。いつまで続くんだろう・・・』

『・・・駄目だよぽんず。お願いだからもう少し餌は我慢して。いい子だから、ね?』

『ぽんず。来て・・・今日は一緒に寝よう?』

『ごめんねぽんず。給料減らされちゃった・・・だからそのモフモフで慰めさせてくれよぅ~!』

『あっはははははは!濡れぽんずだ濡れぽんず!スリムになったねぇ~♪』

『もーだめ。ぽんずのいない生活なんて耐えられなぁい・・・うへへへ。幸せぇ~・・・』

『大丈夫、ぽんず?もうすぐ病院着くからね?だから・・・』

『いやーただの体調不良でホンット良かった!生きた気がしなかったよ~』

『ほれほれ、この辺を撫でられるのが気持ちいいんでしょー?』

『お手!伏せ!ツッコミ!・・・何でツッコミだけ出来てんの?』

『記念さつえーい!ぱしゃっとな!ぬふふ・・・これは私の家宝、ぽんずファイルに永久保存するのだー!』

『ねぇぽんず。この家が出来たのって、この世界における私の家族の存在確立を弄ったせいなのかな?』

『えっと、あれが槙原動物病院か~・・・あまりお世話にならないことを祈ろうか』

『ぽんずのもふもふは世界一ィィィィィッ!超えるものは存在しないッ!!』

『ひゃっ!くすぐったいじゃんか~・・・・・・うん、なんかありがとね?』


これは人間で言う走馬灯というやつなのだろうか、とぽんずは思った。
底無しの沼にずぶずぶと身を沈めるような暗く寒い感覚・・・そんな中で、ぽんずは思う。

世界を越えても主従になったのだから、きっと苗と自分の縁は容易には切れないだろう。今まさに命が消尽しようとしているこの瞬間にも、その考えに確信を感じた。

いつか、どこかで、どんな形でも。願わくばその時も人と猫の関係で。
輪廻転生の果てに、またお会いしましょう。
苗―――他の誰より心が脆く、故に愛おしい我が飼い主よ。


その思考を最後に、ぽんずの魂は天へと導かれるように空を昇った。
 
 

 
後書き
何で更新してないのにランキングあがってんの?
それはそれとして、シャマルさんがワームスマッシャー使う夢見ました。 
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