| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第13次海鳴防衛戦

 
前書き
今年最後の更新であーる。

朝ごはんに和食を食べると吐き気がする症候群。
食べるときには問題ないのに後から・・・昔より胃袋小さくなってないか?俺。 

 
ふと、上半身に感じる温もりで夢見心地な脳髄が意識というマニュアルをもとに体の感覚を再復旧を始めた。

温もりは上半身の前面と二の腕辺りを通って背中を包むように感じる。同時に既視感も―――こんな温もりをどこかで抱いたことがある、と。
答えはそう時間を掛けず出た。もう既に顔も声もおぼろげになってしまった、桃子お母さんではない本当の血縁者。昔から体が弱かった僕は、何かあるたびこうやって温もりに包まれた。顔を覆う柔らかい感触もほのかに香る女性特有の甘い香りも懐かしい。―――お母さんに抱きしめられたときの温もり。

僕が何歳になっても、お母さんにとってはずっと小さな息子のままだったんだろう。僕がその抱擁に僅かな恥じらいを感じるようになってからも、こうして何度も抱きしめられた。お母さんの体温を肌で感じ、お母さんの匂いを鼻で感じ、お母さんの心音を耳で感じた。

そこでふと気付く。お母さんはもういない筈だ。では、僕は誰に抱擁されているのか。

確か僕はシグナムさんとの一騎打ちに辛勝して、後からやってきたザフィーラさんとシャマルさんという二人に出会い、シャマルさんに「暴れすぎだ」とものすごく怒られて・・・それで、疲れたからシグナムさんの治療をしている合間に居眠りしてしまって・・・それから?


それからは分からない・・・何せ寝ていたのだから。寝たまま現状を把握していたら寝る意味がないだろう。そもそも目を閉じてるから出来ない。ならば眼を開けて現状を確かめる必要があるだろう。
未だラグネルの一撃で痛み、倦怠感に覆われた体を奮起させて瞼を持ち上げる。既に日が沈んだ所為か少々暗かったが、幸い僕は夜目が利くようであり、少々のピント合わせを経て目の前にいる人の顔を目視することに成功した。

僕を抱きしめていたのは―――


「・・・クロエ、くん・・・大、丈夫かし・・・ら・・・?」
「・・・シャマル、さん?」

僕の事を愛おしげに見つめる女性。名前が合っているか自信がないが、確かシャマルさんだった。だが、その額はは脂汗で濡れ、顔色も蒼白。息も絶え絶えでとてもではないが普通の様子には見えない。

「よかった・・・魔力が、もう、残って・・・なかったから。ちゃんと効果があっ・・・て」
「・・・シャマル、さん」

シャマルさんの衣服があちこち破損している。上体を起こすと、シャマルさんはそれ以上動くことが出来ないという風に抱きしめていた腕をほどき、僕の膝の上に落ちた。お腹の辺りにシャマルさんの荒い息遣いを感じる。その背中には、酷い攻撃を何度も受けたように腫れ上がり、うっ血していた。
絶え絶えの声で微笑を浮かべるその顔は、まるで自分よりも僕の方が大切だと言っているようで、僕は少しずつではあるが現状を理解し始めた。シャマルさんの震える指先が僕の頬を撫でる。

「身体・・・もう動くのね。ふふっ・・・・・・呆れるほど、体の丈夫・・・な、患者さん・・・」
「シャマルさん・・・!」

周囲にいくつかの気配。弾ける魔力。空では激しい戦闘が行われてる。そしてシャマル先生のこの様子・・・そこから導き出される結論は、クロエの想像力の及ぶ限り一つしかない。



自分が意識を失っている間、シャマルさんが僕を庇ってくれていた。

何から?

敵から。

敵って誰だ?


「目を覚ましたか、クロエ!ならば後ろの少女とシャマルを連れて此処から逃げろ!もう長くは持たん!」

一瞬誰か分からなかったが、すぐにその声の主が自分の前で大きな結界のようなものを展開していた。その声からは微塵の余裕も猶予も感じられない事から、それだけ状況がひっ迫しているをとを感じ取れた。
見上げた先には、まるで鴉のように黒い羽をその背に負った堕天使のような女性。その女性を押えつけるように戦っているのは妹のなのは、管理局のマリアンさん、なのはと戦っていた赤髪の女の子、そしてシグナムさん。だが、4人の表情の険しさが戦況を理解させる。


あれが、敵か。

・・・そうは見えないなぁ。なんだか苦しそうな顔してるし。体調を崩して無理してる時のお母さんに似てる。
・・・なんだか今日はお母さんのこと、よく思い出すなぁ。

≪少年、急いで乙女を抱えて後退せよ。後ろの二人も結界の外まで案内する必要がある≫
(・・・・・・後ろの二人?)

ゼルギウスさんに言われるがまま、身長差に苦労しながら何とか乙女(シャマルさん)を抱えている途中にその言葉に疑問を覚える。そういえば目の前の細マッチョなお兄さんも「後ろの少女」と言っていた。ひょっとして後ろに誰かいるの?
疑問に思って振り返ると、そこには―――

「ぁ・・・クロエ、君・・・」
「えー!?ちょっと!皆変なコスプレしてるしなのはは空飛んでるし町は滅茶苦茶だし!その上なのはの兄はボロボロだし!?何がどうなってんのよぉぉーーー!!」

そこにはなのはの友達、すずかちゃんとアリサちゃんがぺたんとしりもちをついていたのです。

・・・しまった、鎧姿見られちゃった。なんか変身ヒーローのポーズを練習してたのを家族に発見されたみたいですごい恥ずかしいです。

≪言っている場合か。急がなければ護っているザフィーラが倒れるぞ?≫

壁役の死は部隊の全滅に繋がるらしい。難しいことは分からないけど大変そうなので急がなければならない。


・・・シャマルさん、寝ている間に護ってもらいありがとうございました。必ず恩返しします。



 = = =



空を切る。魔力反応複数。2つを除いて皆知っている反応だ。4人の守護騎士達―――リインフォースと名付けられた時に死んだ闇の書という名の仮面が、一度は家に取り込んだ同胞たち。そして私に正面から立ち向かった魔導士の一人、高町なのは。私が死に、主が救われるきっかけを作った存在だ。残りの二人は知らない顔だった。

黒と赤の見知らぬ騎士は目をつむり、体を地面に横たえている。先ほどまでシグナムとぶつかり合っていたのはこの騎士だろう。危険因子だ。存在を抹消しなけれ―――違う。それほどの実力があるならば間近で見ればよかった。

烈火の将は湖の騎士の治療で既に傷を回復したようで、こちらを警戒するように睨みつけている。想像以上の回復の速さに加え、ロストロギアを武器として使用しているとあらば警戒度を引き上げなけれ―――違う。考えなければならないのはもっと別の事だ。

見知らぬ女はどうやらもともと私を追いかけており、ここにいるのは先回りした結果らしい。高町なのはに劣らぬ魔力量だ。蒐集し我が力の一部にすればさぞかし素晴ら―――違う。

頭が痛い。脳髄の裏側を徐々に毟り取られていくようだ。私はどうしてここに来たのだったか。主の為か?そう、内なる獣が貪る前に器を破壊して欲しくて?最初に考えたことと違うような気がする。忘れられたくないからだったか?分からなくなってきた。

連中がこちらを見上げる。さて、何をしようか。まずは名乗り出も上げるか。

「闇に、染まれ」

おかしい。いつの間にか手には闇の書が、もう一方の手はベルカ式の魔方陣を出現させ、問答無用で攻撃を仕掛けていた。発動直前に高町なのはを庇いながら面白い盾を展開したマリアンとかいう魔導士は攻撃を防ぎ切ったようだ。が、代償として(ビット)が砕け散ったようだ。

烈火と鉄槌、盾は回避。湖は逃げ遅れたようだが意識を失っていた知らない少年―――クロエ、と言うらしい―――の体がひとりでに動いて庇ったようだ。一切ダメージを受けていない。やはりあれは危険だ。完全無意識の体を動かしたのは彼の者のデバイスか。あれも危険だ。

意識を取り戻す前に封印なり必要な措置を取れば連中は瓦解し―――そうではないだろう。あのナエと言う少女に誰も殺さないと約束したのではなかったのか。まぁそんなことはいい。全くよくないだろう。何が?

頭が痛い。心の何処かが警告を発している。五月蠅い。耳を傾けねば。そんな言葉は忘れてしまえ。そうか、防衛システムか。知らん。思い出した。忘れていろ。少しでも時間を稼ぐためにこの醜い妄執の塊を再びこの身に封じた。完全に封じられるとでも?それに抵抗していたことさえ忘れていたのか。何を?忘れてしまった。それでいい。よくない。魔力反応を持たない原住民2名を補足。

フォトンランサー・ファランクスシフト転写。最適化。なぜ戦う?必要があるのか?頭が痛い。撃てば原住民を巻き込む。どうでもいい?約束は破るのか。分からない。頭が痛い。全身が疼く。内側から人格管制プログラムが貪られているのか。ダメだ。楽になってしまえ。認められない。頭が痛い。


頭が痛い。少し思い出した。防衛プログラムは666を超える因子が集合した意志の塊だ。烈火が攻撃を仕掛けてきたのでディバインバスターを連射して数で押す。
また思い出した。この世界での主をこれに食わせたくない一心で実体化の際にこいつに入り込み、どさくさで形だけ元の歴史と同じになるよう整えたのだ。体が弾けそうに脈動する。
それで、頭が痛い。時間稼ぎのために自分の体を檻にしていたのだ。

その檻が軋む。思考が、体が、侵食される。


でも、この忌まわしい体の中に主はいない。

それは私の希望。

あなうれし。これが私の叶った希望。いとおかし。これが私の初めて握った希望。


それでいいのか、と自分が問うた。あの少女の約束を冒し、あの猫を殺した手でそれを言うのか、と。

ああ、そうか。

あれは、防げる事故だった。それを止めなかったのは私ではなく防衛プログラム(お ま え)だったのか。ああ、それならば。みすみすここで消えてなる物かよ。
我が運命には絶望しか待ってはいないが、せめて私はあの小さな口約束と小さな少女のために、この命を燃やし尽くそう。最後のひとかけらの意志まで食い尽くされる、その時まで。

頭の痛みは消えていた。残されたのは、後幾許(いくばく)もせずに虚数に消える、わが器。



闇の書は戦い続ける。防衛プログラムと言う最悪の敵の権限と顕現を防ぐために。それは他の誰にも認知され、理解されることのない孤独な戦い。手遅れに限りなく近い、しかし幸せな戦い。



・・・え?クロエが感づいてる?知らんがな(´・ω・`)



 = = =



結界を抜けた。ゼルギウスさん曰く普通の結界術では中の戦闘に耐えられなくなったため、なのはが連れていたあのイタチとマリアンさんの二人係りで維持しているらしい。難しいことはよくわからないが、そういうことだ。

「で、結局あれは何なの?なのはは・・・どうなっちゃった訳?アンタの格好は何なの?それから・・・」
「アリサちゃん、そんなに一度に聞いたら・・・」

家界を脱出して開口一番アリサちゃんが発した言葉はそれだった。すずかちゃんは僕の厨二臭い恰好が気になるのかこちらをチラチラ見ながらも、やはりなのはが気になるのかアリサの言葉を止めはしなかった。
どうしよう・・・隠し事は嫌いだし言い訳もできなさそうな気がするので正直に言おう。

「実は僕たち、魔法使いの兄妹だったのです」

「クロエ、あんた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・脳が」
「駄目だよアリサちゃん!黙っててあげるのが優しさだよ!!」

可愛そうな人みたいな扱い受けた。あれだ、死ぬ前の村にいた占い師のおばあちゃんも皆から似た感じの扱い受けてたのを思い出す。あのおばあちゃんもこんな気持ちだったんだろうか。
しかしこれでは話が進まないので取りあえず近くにあったいい感じのベンチにシャマルさんを寝かせる。まだ息は荒いが多少は呼吸がましになっている。途中足がぐらついた。ラグネルの一撃・・・思った以上に体に来ていたようだ。額をそっとなでる。綺麗な金髪がふわりと揺れた。

そんな様子を見た二人は先ほどの光景を思い出したのかばつの悪そうな顔をした。考えてみれば人が空を飛んでバリア張って戦っていたのだ。それが魔法であってもおかしくはない。そして現に目の前にそれによって出た怪我人がいるのだからふざけていい状況でゃないと思ったんだろう。

「二人とも、悪いけどこの人のこと任せて良いかな?」
「任せ・・・って、クロエ君はどうする気?まさか・・・!」
「・・・ここは黙って引き受けてやろうじゃないの。その代り、終わったらきちんと説明しなさいよ?」

ふん、と遺憾の意を態度で表しながらも止めはしないアリサちゃん。反面すずかちゃんは明らかに大きなダメージを負っている僕を止めようとした。

「駄目だよクロエ君!さっきから足がふらついてるし・・・さっきのお兄さんだって『逃げろ』って言ってたじゃない!無理しちゃ・・・」

あの場所には明確な”争いの空気”というものがあった。それを肌で感じ取ったんだろう。敏い女の子だ。遊び半分で近づけばシャマルさんのように・・・いや、ひょっとして手遅れになってしまうかもしれないことに気付いている。
その優しさは悪いと思わない。僕だってフラフラな友達が危険な場所に戻ると言い出したら止めると思う。でも、シャマルさんも二人も心配だけど、自分の体も心配だけど、僕にはもっと心配なものがある。

「だめだよ。皆あの黒い羽の人を止めるために頑張ってるんだ」
「クロエ君の苦手な血を流しちゃうかもしれないんだよ!?」
「いつか言ったよ。死ぬのは怖いけど死なれるのも怖い。みんなの血が流れるかもしれないと思うと、僕は逃げることの方が怖くて仕方ない」
「大人に任せよう、”人間”に任せようよ!私たちが逃げたって誰も気にしないよ!」

たった数回会っただけの彼女がそこまで引き止めるのはちょっと意外だった。優しい女の子だとは思ってたけど、今僕の手を引っ張る彼女の形相はさながら戦地に赴く家族を引き留めるような必死さを感じた。
でも駄目。行かないといけない。

「子供もいる。なのはがいる。僕の妹があそこで頑張ってる。お兄ちゃんが逃げるわけにはいかない」
「ッッ!!それは、卑怯だよ・・・!」
「卑怯でもなんでも。男の子にはどーしても逃げたくない時があるんです」
「そして女にも黙って送り出さなきゃいけない時があるのよすずか。ほら、こっち来なさい」
「・・・・・・こんなとき、苗ちゃんなら引き止められるのかな・・・」
「引き止めないでしょうね。若しくは嬉々として参加するかも」

後ろから手を引いたアリサに為されるがまま引き戻されるすずか。なんだかんだで親友、なのはのことも心配で心配で仕方ないのだ。でも優しいからこそ、なのはと僕を天秤にかける事は出来ない。俯いた顔からもう一人の友達、苗ちゃんの名が出たが、その仮定も意味のないものだ。

とはいえ実はさっきから立ってるだけでちょっと辛いんですが・・・見栄っ張りの辛いところだ。

≪少年。転身の術を使うといい。体が弱っていても鎧ならば、意識と魔力があれば問題なく使える≫
『わかった。転身の術!』

すぅぅ・・・と足元に光る魔法陣から雷のようにまばゆい光を発してあの漆黒の巨体、鎧分身が現れる。
右手にエタルドを持った分身は僕を左手で抱え込み目的地まで歩みを進め始めた。分身のコントロールはゼルギウスさんも補助をしてくれているためか僕が自分で動かすよりもなめらかな気がする。お父さんに抱えられるってこんな感じなのかな。そこはかとなく別世界な視点だ。

「ありがとう、お父さん・・・」

≪・・・少年?≫
『あ、ごめんなさい。なんだかゼルギウスさんに抱えられてる気がして・・・つい』
≪お父さん・・・お父さんか。士郎殿に目をつけられたくはないから口には出さないでもらいたいな≫
『やだって言わないんだ・・・やさしいね』

つい開いた口を慌てて塞ぎ、念話に切り替えた。顔から火が出るほど恥ずかしい。学校の先生をお母さんって呼んでしまったくらいの恥ずかしさに僕は体を縮めて顔を伏せた。






「今、お父さんって言ったわよね・・・?」
「・・・やっぱり、クロエ君は子しっこくだったんだ!」
「・・・え?ち、ちょっと待って!それじゃ親しっこくの中の人って士郎さんなの!?」
「え・・・ど、どうだろう。それは考えてなかったなぁ・・・」

その頃、言い逃れようのないほどに親しっこくだった鎧に掛けた一言があらぬ波乱を呼んでいたことをクロエはぜーんぜん1ミクロンたりとも知らない。

ひょっとしたら”本当のお父さん”なのかもしれないと考えはしたが口には出さなかったすずかであった。めくるめーく誤解ランナウェイ。 
 

 
後書き
さり気にゼルさんが勝手にクロエの体動かしてますが、ちょっとだけ動かすくらいなら出来たりします。一応デバイスという事にはなってますが司書謹製なので何ができるのか作者も把握してません。

フルメタとボトムズの夢の邂逅。とうとう肩を並べたグレンラガン・ゲッター・ガンバスター。裏切る赤い人。
これほどテンションの上がったクリスマスイブは人生初だったかもしれん・・・ 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧