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宇宙を駆ける一角獣 無限航路二次小説

作者:hebi
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第二章 四話 ロボットは漢の浪漫

ユニコーン 外壁

ユニコーンの外部装甲板、そこには黒いカラーのコンテナが貼り付けられていた。
そして、そのコンテナの上には磁力靴を履いた白野がレーザートーチを振り回して合図を送っていた。

すると、かなり遠くの方でバーニアが光る煌めきが見え、直ぐに接近して来る。
無骨なデザインである。色はネージリンス艦載機でお馴染みの黒と緑で統一されており、角ばった装甲板がこれまで存在したどんな艦載機よりも特異な印象を見るものに与えている。
このデザインの元ネタは、白野が昔見たアニメに出てきた【ジェガン】というモビルスーツ。
そのバーニアの光のヌシは、ゆっくりと減速すると白野のレーザートーチの誘導に従ってオープンしたコンテナの中にゆっくりと侵入。完全に中にはいるとコンテナのドアが閉じた。

それを確認すると、白野は船外活動服のヘルメットにつけられた通信機でジェガンのパイロットに連絡する。

『バーク。新型の感想はどうだ?』

『最高です。全ての性能が高い水準でまとまっています。後は専用兵装の開発と、ユニコーンがこいつを運用できるように改造するのみです。』

『その件ならここの改装ドックが使えたはずだな。......よし、戻ってきてくれ。この後ユニコーンを改装ドックに回す。』

『了解。これより帰還します。』

そう、ユニコーンには本来艦載機を運用する能力がない。
が、白野とバークは対空戦闘に備えて艦載機を使えるようにするための改造プランを用意していた。
そして、海賊が残して行った資材と設備を使ってそれを実行するつもりなのだ。

が、今はまだその改造をしていなかったのでコンテナを外部装甲板にくっつけて間に合わせていたのである。
コンテナの上から船内に戻った白野はレーザートーチを置いて艦橋へと向かった。



惑星シャンプール 海賊のアジト

一方その頃ギリアスは、シャンプールに建造されていた海賊のアジトを捜索していた。
海賊が使っていた内装モジュールの設計図などがギリアスの狙いである。
航行関係のモジュールが高性能化して内装スペースに空きができればその分戦闘関係のモジュールを詰められるのだから。

このアジトはなかなか入り組んだ構造で、そこここに二股通路やエレベーターが設置されており、もしも立てこもられたら相当攻めにくかったことだろう。

そんな入り組んだアジトをギリアスが捜索すること二時間。アジト最深部のOPパネルからデータを調べていたギリアスはあるデータを発見する。

「お、こいつは!」

データにラベリングされたネームには【航海艦橋】とあった。
航海時のデータをより最適化して艦船運用にフィードバックするための艦橋であり、これを搭載すればその艦船の速度に関する性能を向上させることができる。

ギリアスはそのモジュールのデータをデータプレートにコピーするともときた道を引き返した。



惑星シャンプール 改装ドック

ギリアスが海賊のアジトを漁っている頃、白野とバークはユニコーンにカタパルトを搭載するべくハッスルしていた。
作業用ワークローダーなどを使用してほとんど突貫工事並みの速度で作業を進めて行く。

まず、ユニコーンの最大の特徴である艦首に搭載された大出力プラズマ砲【メテオプラズマ】の下部ユニットが一度取り外され特徴的な外観を形作っていた船体下部のスペースがフリーとなる。
そして、フリースペースを利用してユニコーンの内装モジュールを搭載するための内部スペースを確保、これによりようやくカタパルトとそれと接続される艦載機の格納庫を増設するための準備が整う。

白野とバークが悩んだ末に採用したカタパルトはネージリンス系統の空房よくあるレールカタパルトではなく、通常の打ち出しカタパルトであった。
レールカタパルトは良くも悪くもスペースを食う。
ヤッハバッハのダルタベル級は、逆にカタパルト自体を武器にするユニークな発想だったが。

ともかく、カタパルトの搭載が開始される。
こうした元々の仕様にない大幅な改造は個人の手でやるしかない。
マイナーチェンジなどの比較的簡単な作業なら改装ドックの自動操作で十分事足りるが、残念ながら本来無いカタパルトを取り付けるのは個人の手でやることの範疇に入る。

で、バークがやたらハッスルしているのだ。
ゴリゴリだのガンガンだのと派手な音を立てながらカタパルトを内部スペースに増設して行く。
ユニコーンの居住スペースにもその音は届いているが、事前に工事のお知らせをしていたのとバークの技術狂いと部屋の防音設備が合間って誰も気にすることはなかった。
唯一オペレーターのゲイケットは船外からそれを楽しそうに眺めていたのだが、他の一般クルーは外で何が行われているのか知らない。

ちなみに、経理担当のバウトは新たに艦載機の操縦経験のあるクルーを採用する注文を付けられたので、完璧な採用リストを制作した後、医務室のエーヴァに胃薬を貰いに行った。



惑星シャンプール 海賊のアジト

ユニコーンが大規模改造をしていた頃、ギリアスはアジト内部をくまなく捜索していた。
さらに何かあるのではないかと思ったのだ。

そして、今はアジトの中層にある廊下に立っていた。
廊下には幾つかの扉があり、それはどれも電子ロックするための端末が取り付けられている。
どうやらここは収容施設のようなものだったらしい。

「......?開かねえ?」

扉を一つづつ開けていたギリアスだったが、最後の一つのドアが開かない。ガチャガチャと開閉ボタンを押すも、その硬く閉ざされた扉が横にスライドする様子はカケラも無い。

「仕方ねえ」

一歩下がり、腰のスークリフブレードを抜く。
それを一振りすると、電子ロック端末が真っ二つに切り裂かれショートの火花を上げる。
もう一度開閉ボタンを押すと、今度は開かずの扉がスライドしてその中を晒す。

「............む?誰だね?」

なんと、中には捕虜にされていたのだろうやつれた姿の男が縛られていた。

「あんたこそこんなところでなにしてやがる。スカーバレルの連中はみんな逃げちまったぞ。」

「おや?そうなのか。なるほど。確かに少し前から看守の姿が見えないわけだ。」

能天気な返答に面食らったギリアスであった。



ユニコーン タラップ

バークがカタパルトを搭載するべくドカチンやってる間、白野は経理担当のバウトと協力して今回の新型艦載機開発に注いだ予算を算出していた。
これでも責任感のある男なので、自分の趣味で始めたことでクルーに負担がかかると理解し、それを軽減すべく部下にやらせればいいことを自分から買って出るのである。

超高性能携帯型量子演算装置【ソロヴァン】を駆使して予算の概算を行う二人。

「......手に入れた資材はどの程度余ってましたっけ?」

「レアメタル系がざっと32トン。装甲材が50トン。艦船内装モジュールの既製品が合わせて21種類。食糧などの生活必需品がユニコーンの換算で一ヶ月分ある。ギリアスが分捕った分は外しているからな。」

分捕り品のリストからつらつらと報告する白野。
報告された内容に合わせてバウトはソロヴァンのコンソールをタイプしデータを入力する。

「生活必需品はそのままいただくとして......余った装甲材、レアメタル、内装モジュールのネージリンスでのレートから換算すると......そうですね、概ね44635Gは下らないでしょう。ただし、一箇所で纏めて売ると買い叩かれますから惑星ごとに一定の量売り払う方法を取るとすれば一週間でだいたい5000Gの収入になるでしょう。」

かなりの大幅な収入である。
小マゼランの豪商も、これほどの稼ぎをする程の規模の会社はセグェン・グラスチくらいでしかない。

「潤いますね。」

「そうだな。拠点を一つ潰しただけにしては相当な見返りだ。」

「大マゼランではこうはいきませんでしからね。やはり、小マゼランは治安が悪いから海賊も好き勝手に活動出来るのでしょうかね?」

「だろうな。カルバライヤにしろネージリンスにしろ、仮想敵国との睨み合いに終始するあまり国民の生活を脅かす海賊の対策にまでは手が回っていないのだろう。国民の生活水準が下がれば、その国民の支援の元で成り立っている軍隊など容易に弱体化するというのにな。」

「バカなことですね。」

「ああ。そうだな。......ま、全員が全員そうとは限らないだろうが。」

例えばワレンプス大佐のような前線の軍人はそのことを理解しているだろう。しかし、そうした軍人に命令を下す政治家がそのことを理解できていないのだからどちらにせよ無意味である。

この収入の今後の使い道に対して検討を始めた白野とバウトであったが、しばらくしてユニコーンが係留してある改装ドックの横にある作業用キャットウォークからギリアスが大声で呼びかけてきた。

「おーい!」

「どうした、ギリアス?」

「あんたに会いたいって言ってるやつがいるぜー!」

「俺に?」

白野は軽く当惑する。こんな惑星に白野の知人などいない。

「スカーバレルの連中に捕まってた奴みたいだ。」

人質に取られていたのだろうか?だとすれば、成り行き上助けない訳にはいかない。
白野はバウトに後のことを任せると、ギリアスのいるキャットウォークに歩いて行った。



惑星シャンプール 空間通商管理局 待合室

シャンプールにも空間通商管理局はもちろん存在する。海賊たちの溜まり場状態になっていたので、酒やタバコのすえた匂いが漂っていたのだが。
しかし、この時代の空調はグレイトな性能を持っているのでそんな一生消えないクラスの悪臭も三時間あればフローラルな薔薇のかほり漂う落ち着いた空気へと変貌する。

そんな待合室に、白野とギリアス、そしてギリアスに救助されたやつれた男が座っていた。
この男、名前をゴルドーと言うらしい。
エルメッツァの惑星アルデスタの国立研究所でレアメタルの研究をしていた研究者で、技術研修のためにネージリンスに来ていたところを海賊に襲われてとっ捕まってしまったらしい。

「いやはや......捕まった時は焦りましたよ......貴方がたにはいくらお礼を言ってもたりません。」

「気にするな。もとより地上の人間に手を出すスカーバレルのやり方は俺たち0Gドッグの嫌悪の対象......」

「そう言うこった。そんなことより、お前はこれからどうするんだ?」

ギリアスに尋ねられると、ゴルドーは困ったように頭をかいた。

「いや、それが私はこの通り無一文なのでして......出来ればお二人の船に乗せていただいて最寄りの星で降ろしていただければと......勿論、客扱いしてもらうつもりはありません。なんなら倉庫に詰めてもらっても構いません。」

「そこまではせんさ。しかし、最寄りの星といってもそれで帰る事ができるのか?」

「大丈夫です。ネージリンスになら、どの星にもアルデスタの研究所と提携している研究所がありますから。お礼は、そこでさせていただくと言う事で。」

「.........いいだろう。君の乗船を許可する。ただし、船内で勝手に動きまったりするなよ?いま、船の全面改装中だ。作業用ワークローダーに踏み潰されたら目も当てられんからな。」

「勿論です。」

こうして、ユニコーンに化学者のゲストが来たのである。



ユニコーン カタパルト増設予定スペース

ゴゴゴゴゴゴ............

ズドドドドドドドド............

ガリガリガリガリガリガリガリ............

チュイーン............チュイーン............チュイーン............

浪漫で動いている漢、ハル・バークにとってコレ以外の表現方法は不要である。
ちなみに、艦載機の設計を含めると彼は四日寝ていない。ハル・四徹・バークである。

「おーい!バーク!降りて来な!」

ラーメンの岡持ち片手に火花を散らす作業用ワークローダーに向かって金属音をぶち抜いても聞こえる大声で怒鳴っているのはユニコーンの食堂のおやっさんである。
休憩時間のたびに戦場のような様相を呈すユニコーンの食堂でクルーの怒号や皿が割れる音にも負けず通る鍛えあげられた腹式呼吸から叩き出される重低音はどんなに周りが騒がしくとも確実に対象の耳に届く。
防音措置がされているはずの作業用ワークローダーのキャノピーですら、その例外ではない。
甲高い金属音とエンジンの鼓動を止め、バークがキャノピーから出てくる。

そして、飛び降りた。
スタッと無駄に見事な着地を見せてバークはおやっさんの岡持ちからラーメンを受け取る。
こうしてユニコーンの一日は過ぎてゆく。



惑星シャンプール 改装工廠制御室

さて、バークがユニコーンにカタパルトを搭載するためにドカドカと改造を加えている間に、白野はジェガンの兵器テストをやっていた。
機体が出来ても武器がなければ宇宙を漂う棺桶となんら変わらないのである。
武器......ここでいうと一般的な艦載機に搭載されているようなパルスレーザーのようなチャチなもの満足するような白野ではないのである。
来るべきアレとの決戦に備えてなるべく装備を整えるべし。というのが白野の考えである。

幸いな事に、大マゼラン時代に購入した艦載機の設計図から【超縮レーザー】なる物のデータを入手していたので、対艦載機に対する武器は、それをマニュピレーターに保持出来るようにライフルの形に加工してやればいい。
その設計図はすでに完成していた物を流用するため、割と簡単に出来上がった。現在海賊達が使っていた改装工廠の一部で十丁ほど試作型を製作中である。
対空はそれでいいとして、問題は対艦兵器である。

艦船の装甲は硬い。大きさの制限によってどうしても物理的な装甲厚が確保できない艦載機に比べるとそれはそれはトンデモない硬度を持っている。
艦船装甲に決定打を与える事の出来る小型荷電粒子砲を最初に開発できたネージリンスが未だに艦載機分野で小マゼラン他国の優越を許していないのはそういうわけなのである。
白野の理想としては、艦砲射撃並みの威力を持つ艦載機兵器を考えつきたいのだ。
対艦ミサイルをバズーカ砲に装填して近距離でぶっ放すとか......
母艦からエネルギー供給を受けるタイプの大型荷電粒子砲を作るとか......

「なるほど。それはいいアイデアだ。」

自分で考えた大型荷電粒子砲と対艦ミサイル装填バズーカ砲の設計をし始めた白野。その手はコンソールパネルの上を高速で往き来した。
二三時間経っただろう。そうすると、白野はエンターキーを押して設計を確定した。

【大型荷電粒子砲、対艦ミサイル装填バズーカ】

そう記入されたデータプレートを片手に、白野はまたもやコンソールパネルを操作し始める。すると、コンソールパネルの隣りにデータプレートを挿入するためのスリットが出てくる。
そこにプレートを突っ込み、【テスト実行】のボタンを押す。
すると、正面にバーチャルグラフィックが投影される。
こうして、新兵器開発は進んで行くのだ。

続く


 
 

 
後書き
なかなか筆…というかタイプが進まずに申し訳ない。
 
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