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自由の灯り

作者:光龍牙
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第二十八話

 
前書き
あと少しでカダイフ砂漠は終わりです
 

 
少女、カノンノは突然の出来事に戸惑いを隠せないでいた。
あの時、サンドファングたちにこの身を貫かれそうになった時、突然の強風がカノンノたちを襲いサンドファングはそのまま吹き飛ばされ、自分もその強風によって吹き飛ばされると思っていた。
瞳を閉じながらいずれ来るであろう衝撃を待った。しかしいつまでたっても体の浮遊感は訪れず代わりに温かくて優しい感触がカノンノの両肩と両足に訪れた。
恐る恐る瞼を開くと視界には漆黒に染まった黒髪、真っ黒でどこか闇を思わせる左目をし、見たものは足がすくんでしまいそうな雰囲気を放つ少年が映った。
だが、カノンノはその少年に全く恐れや恐怖を感じなかった。
その少年が見せる微笑みはいつも一緒にいるディアの・・・愛おしい人の微笑みと同じだったからだ。
だからカノンノは確信した。この人はディアだと。
そんなことを考えていたら不意に優しくて温かい光がカノンノの体を包み始める。
治癒術上級魔術のキュア。ディアは無詠唱でそれを唱えたのだ。
癒しの光は一瞬でカノンノを包み込むと先の戦いで強打した肩、爪で切り裂かれた左腕、牙で噛まれ致命的ダメージを負った腹部の傷をものの数秒で回復させた。
ディアはカノンノの傷が完治したのを確認すると、ゆっくりとカノンノを地面に下ろし、二刀の双剣を引き抜く。

「ここで待ってて、すぐに終わらせてくる」

そう言い残すとディアは双剣を振るってから地面を蹴り、駈け出した。
ディアの威圧に圧倒されサンドファングたちは一瞬を体をビクつかせ体を硬直させる。
だがすぐに威嚇をしながら尾を構えると臨戦態勢をとる。

「さっきみたいにはいかないよ。それに、僕にもう石化は通じない!」

右手に持っていた片手剣を空中に回転するように放り投げ、腰に身につけている双銃の一つ、〈絶望の闇〉と呼ばれるデスぺリア・アンブラーを抜き取る。
右手でその引き金に手を掛け走るのをやめず、そのまま前方のサンドファング目掛けて発砲をする。
激しい轟音が砂漠に鳴り響き意表を突かれたサンドファングは反応が遅れる。
回避することは叶わないが自身の鉄の強固を誇る尾で銃弾を受けとめる。
だが、デスぺリア・アンブラーの貫通力と威力は市販されている拳銃を遥かに超え、留まることなく回転し続けサンドファングの尾に罅を入れる。
そのまま尾ごと頭を打ち抜いてくれれば良かったのだが、サンドファングはその要望には応えず自身の体と尾を斜め横に反らし、突然軌道が変わった銃弾はサンドファングの逆方向。
巨大な岩にぶつかると軽々とそれを貫通し、岩には見事な風穴が空いた。
しかし、銃弾に気をとられたサンドファングは完全にディアの事を忘れており、それに気付くと急いでディアに向き直る。
だが、時既に遅し。ディアにはそのわずかな時間だけサンドファングの意識が自分からそれただけで十分だった。
一瞬でディアは先程銃弾を放ったサンドファングに肉薄すると、左手に握られている片手剣を振るい、サンドファングの体に一太刀浴びせる。

「せい!!」

銀色に光り輝く刃が深々と肉を切り裂き、刃に真っ赤な液体が付着する。
そのままデスぺリア・アンブラーを先程の片手剣のように空中に放り投げると銃と入れ替わるように放り投げた片手剣が落下してくる。その柄をユーリのように鮮やかに掴み取る。
そのまま剣の一閃を繰り出す。
今度は剣先が肉を抉り取るように体の中にどんどん沈んでいく。
サンドファングは苦しみながらも何とか抵抗しようと己の牙でディアの腕に噛みつき顎に力を込める。
そしてもう一体のサンドファングとアイコンタクトを取ると、もう一方のサンドファングは尾を構えながらディアとの距離を縮めていく。
ディアは噛みつかれ血が滴り落ちる腕を見ながら苦痛に顔を歪めるが、それでも休むことなく手を動かす。

「魔物同士の協力は厄介だな・・・けど」

今度は左手に握られていた片手剣を空中に放り投げると、淡い光沢を放ち白銀色に輝き見る者全てを照らしてしまいそうな光をイメージさせる銃を取り出す。
漆黒に染まるデスぺリア・アンブラーとは対照的な銃。
その銃でまず腕に噛みついているサンドファングの顎目掛けて引き金を引くと音速を超える弾丸が顎を打ち抜き、力が抜けた一瞬を狙って腕だけを引き抜き落下してきたデスぺリア・アンブラーを掴み取る。
セイント・グリン。〈聖なる閃光〉
デスぺリア・アンブラー。〈絶望の闇〉
相対する光と闇。一方は全てを照らしだす存在。一方は全てを飲み込む存在。
本来の性質の光と闇は共存する事などあるはずがなかった。しかしこの二丁の銃は違った。
お互いは市販の拳銃の精度を遥かに上回っていた。そしてセイント・グリンとデスぺリア・アンブラーもお互いを上回る能力を持っていた。
セイント・グリンの弾丸は音速の超え、銃口から放たれた弾丸は閃光そのもの。
そして様々なマナを大量に蓄積できるため闇属性以外のマナを融合させた弾丸を放つことが可能だった。しかし威力がその分弱まってしまい相手を確実に仕留める事ができなかった。
しかしデスぺリア・アンブラーはそれと真逆の性質だった。
速さは並みの銃以下。だが放たれた銃弾は黒く染まり全てを飲み込む闇そのもの。
威力はライフルと同等、もしくはそれ以上だった。さらに小規模な爆発も起こせた
マナはごく一部しか蓄積されず、闇属性のマナ以外は使用不可能。しかし命中すれば必ず相手を仕留める必殺の銃弾だった。
その二丁の銃は互いが互いを支えることによって力を限界まで引き出すものだった。
だが、その力ゆえ扱えるものは現れず、だからリカルドも扱わず元あった場所に戻そうとまで考えた。
そこでディアに出会った。知り合いのイリアが使えなかったら諦めようと思った代物をディアはいとも簡単に使いこなしたのだ。



まるで光に満たされながら、心の闇を受け入れるように・・・





◆ ◆ ◆ ◆ ◆




双銃の引き金に指を掛け、こちらに接近してくるサンドファングに銃口を向ける。
そのまま引き金を引く。乾いた銃声が砂漠に響く。
音速を超える弾丸はサンドファングの左足に命中し動きを止める。
漆黒に染まる銃弾は速さはないものの、今の射撃相手は足を撃たれ動けないのと意識を足に持っていかれてる為、銃弾は容易に肩に吸い込まれていった。

「・・・!!」

漆黒の弾丸は肩に直撃すると小規模な爆発を起こし、右肩を吹き飛ばしていた。
肉の破片などが砂漠の砂に飛び散っているのがわかる。
突然自身の肩が吹き飛んだのを理解したサンドファングは戦慄する。
ディアはそのまま追い打ちをかけるため、一度デスぺリア・アンブラーを腰に戻し神速のスピードでサンドファングに接近する。
それと絶妙なタイミングで先程放り投げた片手剣が落下してきたので空いた片手でそれを器用にキャッチする。

「ウイングレイジ!!」

片手剣で相手を空中に斬り上げてからセイント・グリンの弾丸で追撃する秘技。
元は海賊職業専門の技だったが、双剣と双銃を扱い並みはずれた成長スピードと見真似を得意とするディアにはそれが簡単に繰り出すことができた。
数発の弾丸がサンドファングの体内を貫通するとディアは片手剣を地面に突き刺し再度デスぺリア・アンブラーに手を掛ける。
体を打ち抜いたときにサンドファングの真っ赤な液体が顔に付着するが今は気にしないでおく。
漆黒の銃を抜き取ると白銀色に輝く銃とクロスさせてから、円を描くようにゆっくりと双銃を動かす。
すると円が描かれた軌跡が光輝きだし、辺りには禍々しい邪悪なオーラが立ち込める。

「光と闇は交わりし時、新たな深淵の希望を紡ぎだす!」

突如ディアの足元に魔方陣が現れ、闇のオーラを纏った光の光弾がいくつも結晶化される。
円の軌跡はさらに輝きを増し、現れた魔方陣からは無数の闇が溢れディアを飲み込み始める。

「打ち抜け!!X(エックス)バスタぁぁぁぁ!!!」

ディアが叫ぶと同時、無数の光弾は一直線で空中にいるサンドファングを容赦なく襲う。
闇が相手を蝕み、止めに光の光弾が相手を打ち抜く。光と闇の奥義。
共存しないはずの力が共存すれば無限の力を紡ぎだす。それを知らしめるのには十分だった。
闇は空気に溶け消え光は無数の輝きを残しながら分解していき、完全に消滅したころにはサンドファングも跡形もなく消え去っていた。
それと同時にディアの漆黒に染まった黒髪は元の銀色に輝く銀髪に戻り、闇を思わせる左目もエメラルドのような綺麗な色をした黄緑色に戻っていた。



続く






















 
 

 
後書き
次でカダイフ砂漠編は完結する予定です!
しばらく休んでたのに読んでくれてる人がいて嬉しいです!
今回の秘奥義のX(エックス)バスターは本来、光だけの技ですが自分なりにアレンジを加えました 
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