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Missアニーの証言

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第三章


第三章

「俺だってよ。ここんとこ一年彼女なんてよ」
「だからあたしが」
「御前なわけねえだろうが」 
 またアニーに言ってやった。
「証拠はあるのかよ。俺のガキだって証拠は」
「じゃああと一月待ってみる?」
「当たり前だろうが」
 憮然として答えてやった。
「それからだ。話は」
「わかったわ。それじゃあさ」
「何だよ」
 いい加減しつこいと思った。だが今は聞いてやった。というか今のこいつの目を見ていると聞かざるを得なかった。そうさせる目だった。
「若しその子がね」
「ああ」
「あんたそっくりだったら?」
 こう言ってきた。
「それで血液型も一緒だったら?どうするの?」
「有り得るかよ」 
 俺はせせら笑いながら返してブラッディマリーを一気にあおった。
「そんなことはよ」
「けれどその有り得ないことがあったら?」
「その時は神に誓って言うさ」
 あえて強く言う為に神様を出した。
「御前と教会に言ってやるよ」
「赤ちゃんと一緒に」
「そうさ」
 また言ってやった。
「赤ちゃんは絶対に神様に祝福されるべきなんだよ」
「それはそうね」
 私生児とかそういうのは大嫌いだった。実際のところアニーには何が何でもその腹の中のベビーの父親を見つけろと言ってやりたかった。最近じゃ結構変わってきたらしいがそれでも生まれてから神様に祝福されない子供はずっとそれで差別され続ける。思えば忌々しい話だ。教会のそういうところはあまり好きじゃない。
「それじゃあそういうことでね。ドレスはもう用意してあるから」
「ドレス!?」
「ウェディングのよ」
 悪戯っぽく笑っての言葉だった。
「それ用意しとえくからね。楽しみにしててね」
「勝手にしな」
 最後にこう言ってやった。アニーはスキップするかのように上機嫌で帰っていった。俺はその後姿を見届けてからまた酒を注文した。今度はジントニックだった。
「馬鹿か?あいつ」
 こう言いながらそのジントニックを口に含んだ。結構きつくてそれがかえっていい感じだった。
「俺が親父なんてよ」
「覚えてねえのかよ」
「御前は」
「全くな」
 こう仲間達に答えた。全員酒に戻っていた。
「そんなのはよ。初耳だぜ」
「初耳か」
「驚いたなんてものじゃねえ」
 こうも言った。
「っていうかマジかよ」
「だからよ。マジみたいだぜ」
「アニーはよ」
「嘘を言う奴じゃねえだろ」
 仲間の一人はこうも俺に言ってきた。見ればそいつが飲んでるのは今俺が飲んでるのと同じジントニックだった。たまただだったが何か妙な縁も感じた。
「アニーは」
「それはそうだけれどな」
 俺はそれは知っていた。
「あいつはな。それはないな」
「だったらよ。やっぱり」
「御前じゃないのか?親父は」
「あのベビーのよ」
「そんなわけねえだろ」
 俺はこのことは意固地なまでに否定した。
 
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