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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~

作者:biwanosin
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短編 あるお盆の物語 ⑬

では、一番派手な戦い、一輝たちのところに戻ろう。

そこでは、地上から巨大な火の散弾が絶え間なく、四方八方に放たれ続け、三人の人間がそれを避け、カグツチに向けてお清めボイスの大砲、形なき様々なもの、斬激が放たれ続けるという、カメラが有ったら映画のバトルシーンも真っ青な映像が取れる状況になっていた。

「何なんだこの状況は!?最初からクライマックスか!!?」
「神との戦いでこの程度、なんでもないだろう!白澤と戦ったときのことを思い出せ!」
「一方的に惨殺したよ!こんな派手にはなってねえ!」
「楽しくおしゃべりをしているとは、余裕だな人間!」

そして、大声でそう言いあっている二人に、カグツチが飛び交っているものより一回り大きな火の玉を放つが、

「吼えよ、ベル!」
「ウォォォォォオオオオオオオオオン!!!」

それは今までと同じように、ベルの遠吠えによってかき消された。
カグツチ自身は音を超える速さで動けるが、火の玉はそうではない。
一輝たちにぶつかるよりも早く、火の玉にぶつかり、消し去ってくれるため、何度も二人のみを救っている。

「悪い慈吾朗、助かった!ついでに、エアボム!」

一輝はお礼を言いながら、近くの空気を体積が一万分の一になるくらい圧縮し、カグツチに投げる。

「む・・・なにを、」
「開放!」
「ぬうううぅぅぅぅ!」

もちろん、空気なのでカグツチには見えず、開放した際の衝撃でカグツチは軽く飛ばされた。

「あああ・・・あれ、結構疲れるんだよな。」
「かなり便利な技だな。いざとなったらまた、使ってくれないか?」
「白夜、オマエにはちゃんと俺の能力の代償についていったよな?かなりの負担なんだぞ、あれ!」
「まあまあ、本当にいざと言うときじゃよ。二度も通じるとは思えんが、それゆえの作戦はある。」

三人はその隙に集合し、作戦会議を始める。

「二人に聞くけど、このまま続けて、勝てると思う?」
「無理じゃろうな。」
「無理だ。」

一輝の問いに、二人は即答した。

「なら、打開策として思いつくのは?」
「ワシは、白夜の奥義じゃのう。一輝が何か隠しているのなら、それもよいと思うが。」
「俺は何も隠してないよ。まだ習得できる見込みすらない奥義なら有るけど。」
「そんなものを頼ってなんになる。」

白夜にはっきり言われているが、一輝に気にする様子は一切見られない。
このころの一輝は、奥義を継ぐ気など一切なかったので当然だが。

「じゃあ、作戦として使うのは白夜の奥義で。慈吾朗もいいよな?」
「うむ、構わんぞ。ワシは、後の者の為にも出来る限り手は出さんがのう。」

ちなみに、四行前くらいからカグツチは戻ってきて攻撃を続けているため、三人はあまりはなれずに避けている最中だ。

「面白い業を使うな、人間!楽しくなってきたぞ!」
「そうかい。なら、これからもっと楽しませてやるよ!」

一輝はそう言いながら、日本刀を鞘に納め、左手で鞘を、右手で柄を持つ。

「ほう、居合いか?」
「残念ながら、ハズレだ!」

そして、一輝はそのまま、カグツチに向かって走り出した。

「ただ走り込むだけとは、無謀であるぞ!」
「避けるくらいはするよ!」

一輝はそう言って、カグツチが放ってくる火の槍を避けながら、それでも一切速度を緩めずに走り進む。

左右に動くことで火の槍を避けるためすれすれのところを通ったり、肩に当たったりするが、一輝は一切、体の軸はぶれない。

「ちょこまかと・・・だが、これでしまいだ!」

が、近づけば近づくほど避けるのは難しくなるわけで・・・カグツチの放った槍は、正確に、一輝の心臓を貫いた。

「「一輝!」」
「ははは!これで一人、」
「心頭滅却、常住戦陣。」

が、一輝の足は、止まらない。

「な、何故止まらぬ!なぜ血が流れぬ!」
「鬼道流剣術、奔り。六の型!」

そして、一輝はカグツチのすぐ目の前まで来て、本気で踏み込み、姿が消える。

「あやつ、いったいどこに・・・」

カグツチは一輝の姿を探す。そして、すぐ後ろで、音がした。
チン、と、刀を鞘に納める音と、

後斬り(のちぎり)、五連!」

という、技の名を言う一輝の声が。

「な・・・貴様、いつの間に・・・いや、それより何故、」

動ける、と言うカグツチの言葉は、自分の真横でなった音によって、止められた。
別に、大きな音がしたわけではない。ただ、ザン。ザザザザン!と言う斬激の音と、ボトッ、と言う、何かが落ちた・・・カグツチの腕が落ちた音だ。

「わ、我が腕が、切り落とされただと!?」
「どうだ、予想外の出来事は楽しめたか?」

驚愕に染まるカグツチに、一輝は冷静にそう返した。
一輝の表情には、一切の苦痛の色がない。

「オイ一輝!オマエ、その傷で・・・」
「そんなこと言ってる場合か、白夜!おれがこの程度(・・・・)の傷でどうにかなるわけねえだろ!それより、早く喰わせろ!」

一輝が白夜の台詞をさえぎって叫びながら、風を使いカグツチの腕を白夜のところに飛ばすと、

「クッ・・・喰らえ。」

白夜も状況を思い出し、妖刀にカグツチの腕を喰わせる。
そして、カグツチの腕が贄として足りないわけがなく、妖刀は輝きだし、チャージが完了したことを告げる。

そして、白夜は言霊を唱える。

「日ノ本の神々よ、我が声にこたえてくれ。」

それは、日本では鬼道の奥義の次に珍しいことが出来る奥義だ。

「我が刀に宿りしは物の怪、神の躯。我が献上する贄である。」

それは、人としての身分を、一時的に捨てるものだ。

「我は、これの対価として力を望む。汝らの力を、その一部を、和が手にせんと欲す。」

そして、言霊は完成する。

「我が声を聞き届けし神よ、願わくば、我に大いなる力を!」

白夜の言霊が終わると、天から神々しい光が降りてきた。
その神々しい光り・・・日本神話の主神、アマテラスオオミノカミの一部は、白夜の体に入り込み、神々の力の一部を与えた。

これが、白夜の受け継いだ奥義。
神の力の一端を、贄を捧げることによって自分のみに降ろし、使役する奥義だ。
もちろん、神の力を借りるのだから相当な量の贄が必要になるし、どの神が力を貸してくれるかは、その時しだいと言う、運の要素が大きい面もある、不安定な奥義だ。
だが、使いこなせれば、神の力なのだからかなりのことが出来る。

「太陽よ、我が敵に裁きの一撃を!」
「ぬ、我に火をぶつけるか!我が姉弟、アマテラスの力で!」

そして、白夜は太陽神アマテラスの力で太陽の火を放ち、カグツチは自身の火で応戦する。
普通ならば太陽が勝つのだが、白夜は一部を借りただけなので、互角の争いとなっている。

「一輝、大丈夫か?」
「慈吾朗か・・・まあ、大丈夫だよ。自分の血だから、頭痛もないし。」
「ほう・・・なるほど、そう言うトリックか。」

慈吾朗はそう言いながらも、一輝に治癒札を押し付ける。

「どうせおんしは持っていないのじゃろう?気休めにはなるじゃろう。」
「本当に気休めだけどな、ここまでの傷だと。」

一輝はそう言いながらも札を受け取り、自分の傷に当てる。

「で?ここからどうするんだ?」
「白夜がこのまま勝てれば万事解決じゃが、そうもいきそうにないしのう。吼えよ、ベル。」
「ウォォォォォオオオオオオオオオン!!!」

慈吾朗はいつまでたっても拮抗が敗れない二人の間に向けて、お清めボイスを放ち、白夜に合流する。

「さて、そろそろ終わりにせぬか?白夜も奥義を発動できたことじゃし、ワシも使えばいけると思うんじゃが?」
「そうだ、な!」

白夜は途中でカグツチが撃ってきた攻撃を弾き、話を続ける。

「だが、一輝は大丈夫なのか?」
「心配しなくていい。俺が、この程度で死ぬはずがないだろ?」

一輝がそう言うと、白夜もそれで納得したようだ。

「じゃあ、これ渡しとくよ。」
「ああ・・・さすがに、しないわけにはいかんか。」
「じゃのう・・・霊獣程度であれば気にせんのじゃが。さて・・・混ざれ、ベル!」
「ウォォォォォン」

ベルは慈吾朗の言葉に従い、慈吾朗の体に入り、その身を預ける。
すると、慈吾朗に犬のような髭が生え、犬歯も長く、鋭くなる。

大したことはしていない。ただ、犬神を自分の身に憑けただけだ。

「では、行くとしようか!」
「おう!」
「OK!」

三人はそれを合図に跳び、カグツチを重心とする正三角形の頂点に立つ。

「む、散ったか・・・」

そして、急に散ったことで一瞬迷っている隙に、白夜は刀を鞘に納め居合いの型を取り、慈吾朗は右腕に呪力を込めてそこだけが人狼のような姿になり、一輝は自分の周りに空気を集めて荒ぶらせ、刃のドームを構成する。

「だが、全員を撃てばよいだけのこと!」

そして、カグツチが強力な一撃を準備しようとする間に、三人は行動に移す。

「居合い、太陽斬刃!」
「犬神憑き、部分開放。犬鎌!」
「エアブースト、荒れ狂い!」

ほぼ同時に、だが微妙にタイミングをずらし、白夜、慈吾朗、一輝の順にカグツチを斬る。

「まさか、我が斬られる、だと・・・!?」
「俺があの程度で腕を落とせたんだから、全力を出せばいける。」
「ははは・・・確かに、言われてみればそうであるな。」

一輝がはっきりと言うと、カグツチはいっそすっきりしたようで、表情から驚愕が消える。

「だが、我は再び光臨する!その時また、合い間見えようぞ!」
「いや、貴様はもう二度と、復活せん。」
「じゃのう。今から、封印するのじゃから。」

そして、一輝が止めを刺したことで具体的に魂が現れると、三人は片膝をつき、一輝が渡したもの・・・封印用の瓶を地面に置き、片手で印を斬る。

「「「封印陣、三魂分離の陣!」」」

同時にそう言うと、魂が三等分され、瓶に入り、三人が同時に蓋をして封印の札を貼る。

「ふう・・・終わった~・・・」
「じゃのう。そして、治療士も来たようじゃ。」

慈吾朗がそう言いながら遠くを見ると、羽を生やして、一輝のところに一直線に飛んでくる人影が見えた。
見た目からすると、一輝と同い年くらいの少女のようだ。

「え、あ、と、止まらないです~!」
「・・・なにやってんだ、オマエ・・・」

そして、一切減速せずに飛んで来るそれを、一輝は空気をクッションにして受け止めた。

「ありがとうです、一輝。」
「あんなことがあったのになんともない辺り、流石は霊獣(・・)だよな・・・」

一輝はそう言いながら、その少女を地面に下ろす。

「で、怪我をした人はいるです?ぱっと見はいないみたいですが。」
「いや、一輝が死の危険があるレベルで重傷だ。」
「はいです?」

少女は首をかしげながら、一輝を見る。

「こんなぴんぴんしてるのにです?」
「ああ。見るか?」
「キャッ!」

一輝がTシャツをめくって見せると、少女は手で顔を覆い、それでも指の隙間から見て、

「って、何これです!?心臓のあるところがくりぬかれてるです!?」
「ああ。カグツチにやられた。」
「ほえ~・・・なのに血液の循環が問題なく起こってるあたり、やっぱり一輝です~。」
「どういう意味だ。ってか、早く治してくれ、ハク。」
「あ、了解です!」

ハク・・・鶺鴒(にはくなぶり)はそう言って、一輝の傷の治療を始めた。

そうして、一輝の傷を治し、四つ目の戦いは終了した。
 
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