問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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短編 あるお盆の物語 ⑫
では、最後の霊獣。第一部隊のところである。
「で、どうしますか?個人的には、様々な形で我ら人間の先祖を助けたヤタガラスを退治することに少々ためらいがあるのですが。」
「とはいってもなあ。」
二人はそんな会話をしているが、その間にもヤタガラスは攻撃をしてきており、二人は全力で避けている。
「コレだけ攻撃をされているのでは、そんなことも言っておれんぞ?」
「ですよね・・・」
「まあ、一輝も人々に知識を与えてきた白澤を殺しておるのだし、手を出してくるのであれば仕方なかろう?」
「皆がハク殿のような方であればよいのですが・・・そうも行かないですね。」
鈴女はそう言いながら、式神を大量に開放する。
「ひとまず、私がアレの気を引きますので、拳殿はその隙に。」
「うむ、了解した!」
二人は作戦通り、鈴女の式神でヤタガラスを牽制し、拳がその隙に雷を纏った拳を振るう。
だが、手を三本持つヤタガラスは、器用にその攻撃をいなし、空から悠々と攻撃を繰り返す。
「槌壁!我らを守れ!」
そして、その攻撃は鈴女の式神によって防がれる。
普通ならば式神程度で霊獣の攻撃を防ぐことは出来ないのだが、土御門の式神は全て妖怪が元となっている。
ただ防ぐ、ということに特化していれば防ぐことが出来るのだ。
「さて・・・縛れ、紅緋!」
「効かぬよ、そんなもの!」
が、攻撃となるとそうは行かない。
今現在、ヤタガラスに対してダメージを与えるだけの攻撃は出来ていないのだ。
「貫け、雌黄!」
「雷よ、われに大いなる加護を!」
「効かぬといっておるだろう!」
二人はただ貫通力に長けた攻撃を放つが、ヤタガラスは当然のようにそれを弾く。
が、二人の狙いは、完遂される。
「行ってください、拳殿!」
「うむ、任された!」
「ほう、我と同じ場に立つか!」
拳はその間に雷に乗って飛び、さらに自分の体の一部を雷にする。
そして、拳はそのまま、二人の攻撃を弾くことで二本の腕がふさがっているヤタガラスの元まで飛び、
「雷豪一拳!」
思いっきり、防ぐのに使われた三本目の腕ごと殴り飛ばす。
ヤタガラスは勢いよく地面にぶつかり、土煙を上げる。
「ふう・・・追撃はやめたほうがいいか?」
「でしょうね。変に追いかけても・・・」
「ハハハハハハ!我に土を着けるか!よい、よいぞ陰陽師よ!」
強い風が・・・ヤタガラスの羽ばたきによる強い風が吹き、土煙が晴れると・・・そこには、高笑いを上げるヤタガラスが立っていた。
そして、その三つの手にはそれぞれ曲刀が握られていた。
「その力に敬意を記し、我も武をとろう!これを人相手に抜いたのは初めてだ、誇りに思うがよい!」
「それはありがたいですね。ただ、現状だけを見れば迷惑だが。」
「俺は嬉しいぞ!どうせやるなら全力でなければな!」
そう言いながらも、鈴女は式神を放ち、拳は己が身で突っ込む。
が、式神は一瞬で細切れになり、拳の一撃も軽く防がれる。
拳の拳が切れなかったのも、ただの偶然だ。少しでもお互いの攻撃の威力、纏った雷の量が違えば、拳のひじから先はなくなっていた。
「わが身よ、解けよ!」
「む・・・面妖な術を・・・」
拳は一瞬のうちに危険だと判断し、自分の体を完全に雷に解いて、鈴女のいるところまで後退する。
「危ない危ない・・・本当に、危ない・・・」
「ええ、先走りすぎましたね。さすがに、あの剣を甘く見すぎました。」
「うむ・・・鈴女は、まだ何か手が?」
「一応、切り札は残してあります。この状況で使っても無駄な気がしますし。」
「では、それはギリギリまで温存すべきだろうな・・・隙は俺が作ろう。」
拳はそう言いながら自分の身に雷を落とし・・・蓄電量を上げていく。
そして、雷のクラスも上げていき・・・神鳴りの領域まで、上昇させる。
「我らが神よ、その象徴たる力の一端をわが身に与えよ。雷ではなく神鳴り、御身の音そのものを、我が力とせん!」
そうして、拳は色のない雷を身にまとい、ヤタガラスを睨みつける。
「そこまでの神鳴りをつかえるとは、見事也!」
「ただ使うだけではなく、もはや我が手足、その刀にも負けませぬぞ!!」
拳はそう言いながら神鳴りを放ち、同時にそれを纏った体で突っ込んでいく。
そして・・・
「雷閃槌!」
「ぬお!?」
ついに、三本の刀を溶かし、ヤタガラスを地面に叩き落した。
さらに、溶けた刀によってその場に軽く固定されている。
「まさか、我が刀によって動きを阻害されようとは・・・」
「そして、その命を終わらせることにも繫がります。」
そう言いながら、鈴女は身中の式神を開放する。
「来い、消炭!我が敵を喰らい尽くせ!」
「ぬ・・・龍、だと!?」
そう・・・鈴女の切り札の式神は、龍を従わせて式神にしたもの。
あくまでも倒したわけではないため、霊獣殺しに名を連ねてはいないが、これが、鈴女を席組みの一員たらしめている一因だ。
「・・・鳥だ。」
「・・・は?」
「美味そうな、鳥だ。」
「ま、まさか・・・」
「・・・いただきます。」
「ぎゃああああああああああああ!」
そして、動けなくなったヤタガラスは、消炭によって美味しくいただかれた。
こうして、三つ目の戦いは終了した。
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