ハイスクールD×D―魔法使いのキセキ―
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月光校庭のエクスカリバー
第35話
前書き
球技大会の放課後です。
是非見ていってください。
ザーザー
球技大会が終了して間も無く雨が降り始めた。
部活対抗戦では、イッセーたちも二回戦から復帰しオカルト研究部が優勝と言う結果となった。
だが全員が一丸となっていたわけではない。
パンッ!
部室に乾いた音が響いた。
祐斗が部長にたたかれた音だ。
イッセーに庇われてからも終始ボケっとしていた。
時折貢献はしていたモノの祐斗は無関心でいた。
「どう?目は覚めたかしら?」
部長が怒るのも無理はない。部長が怒ってなかったらイッセーがキレていただろう。
だが祐斗の事情を知らないイッセーや俺が言ったところで的外れになりかねない。
なら事情を把握しているだろう部長が言うのがいいだろう。
頬を叩かれても無表情、無言だった祐斗がいつもの表情に戻った。
いやいつもの表情を作ったと言った方がいいか。そんな表情をして部長に言った。
「もういいですか?球技大会も終わりましたし、練習をする必要はもうないでしょう。少し疲れたので普段の部活は休ませてください。昼間はすみませんでした。調子が悪かったようです」
「木場、マジで変だぞ?」
「君には関係ないよ」
イッセーの問いかけにも冷たく返す。
「関係無いかもしれないが、心配なんだよ」
「心配?誰が誰をだい?悪魔は利己的なものだ。まぁ今回は主に従わなかった僕が悪いかな」
祐斗らしくないな。むしろ普段なら立場が逆だ。イッセーが心配される立場なのに今回はイッセーが心配する側に回っている。
「眷属一丸でまとまっていこうってのにこれじゃ困るぜ。ライザーとのゲームで感じただろう?フォローしあって行こうぜ?仲間なんだから」
「仲間か・・・君は熱いね。最近僕はね、何のために戦ってるか思い出していたんだ」
「何の為って・・・部長の為じゃないのか?」
その問いに即返した。
「違うよ」
そして、祐斗は強い意志と深い憎悪を持って続けた。
「僕はね、復讐の為に生きてるんだ」
「それでは、失礼します」
そのまま祐斗は部室を出て行った。
「おい!木場!」
「待てイッセー。俺が行く」
追いかけようとしたイッセーを止めて言う。
「だけどよ」
「お前が行ったら下手したら火に油だ。ならまだ俺の方がいい。
部長。そういう事ですから俺も失礼します」
「ええ、祐斗をお願いね」
「小猫、祐斗の鞄を頼む」
「・・・了解です」
俺も祐斗を追って部室を後にした。
◇◆◇
すぐに追いかけたんだが、追いついたのは学園から離れた場所だった。
祐斗はこの土砂降りの中、傘もさしていなかった。
「頭冷えたか?」
「朔夜君ひとりかい?」
「ああ。イッセーも着いてくる気だったが事情を知らないあいつだと最悪喧嘩になりそうでおいてきた」
「事情を知らないのは朔夜君も同じじゃないかい?それとも部長から聞いたのかな?」
「いや、聞いてないから俺も事情は知らない。だが当たりは着けてある。
・・・聖剣に関係があるんだろ?」
祐斗がおかしくなったのはあの写真を見てからだ。
イッセーも感づいているようだ。
「・・・さすがだね。当たりだよ」
「このくらいならイッセーも感づいてる。それで簡潔にでも話してくれないか?」
「僕は教会で行われた聖剣エクスカリバーの適合計画、『聖剣計画』の失敗作さ。その被験者の中で処分を免れた・・・いや処分されてのち、部長に拾ってもらった存在だよ」
聖剣に殺されたとかじゃなく計画の被害者か。
聖剣は悪魔等、魔に属するものに必殺となる。それもエクスカリバーなんてかなりの有名どころの剣だ。そこまで上位となれば所有者が限られる。その適合計画と言うことは人為的に適合者を作る計画みたいだな。
「『木場祐斗』と言う名も部長からもらったものさ。さっきの態度は『木場祐斗』としては失格だった。でも、僕は計画唯一の生き残りとして聖剣に復讐しないといけないんだ!」
おおまかには理解した。あの写真に写っていた聖剣を見てから『木場祐斗』としてではなく、『計画の生き残り』と言う面が出ていたと言うことだろう。
今の祐斗は復讐に囚われすぎている。最悪このままどこかに行ってしまいそうだ。だからそうならないように言葉を掛けようとした。
びちゃ。
雨音に交じって水を蹴る音が聞こえた。
俺と祐斗は音のした方を見ると、そこには神父が居た。
間が悪い。今の祐斗は虫の居所が悪いなんてもんじゃない。それに祐斗は教会を憎んでいる。以前アーシアの話を聞いたときに殺気だっていたんだ。最悪この神父を問答無用で殺しかねない。
仕掛けてくるのなら返り討ちにするがこちらから仕掛けるのはいただけない。
だが、その神父は口から血を流して倒れた。
背中には刺し傷があり、雨を流れる血の量からして貫通している。
位置的には心臓を貫いているだろう。
祐斗は動いていない。ならだれがやった?
その答えはすぐにわかった。
「「っ!?」」
驚異的な殺気が俺たちに向けられ、祐斗は魔剣を、俺は杖を出す。
ギィィィンン!
剣同士がぶつかる音が響く。
殺気の主は祐斗と鍔迫り合いをする。
そいつも神父服を身に纏う少年神父。
「やぁ。お久しぶりだねぇ」
「フリード・セルゼンっ!」
この町に潜んでいた堕天使達を襲撃したとき、唯一逃がした神父フリードだった。
「お前まだこの町に潜んでいたのか?」
「いんや。あの後武者修行の旅に行ってまいりまして、いい感じにパワーアップしたんで約束通りロマンチックな殺し合いをやりに戻ってきました」
変わらない狂った言い回し。本当に腹立たしい。
「今の僕は至極機嫌が悪くてね」
「グット・タイミィング!こっちも神父狩りに飽きてたところなんでねぇ!いつかの再戦がてら試し切りさせてくださいよ!」
フリードが構えていた長剣からオーラが発せられた。
「その輝き!そのオーラ!まさか!?」
それを見た祐斗は驚愕した。
発せられる聖なるオーラはフリードの元上司の堕天使だったレイナーレの放つ光の槍とは比べ物にならないモノで、それはフリードの持つ長剣から出ている。
そして祐斗の反応を合わせ考えると行きつく答えは一つ。
「お前の糞魔剣と俺様の聖剣エクスカリバー。どっちが上か試させてくださいな!」
祐斗が憎んで止まない聖剣エクスカリバーだ。
今日は本当に間が悪い。
◇◆◇
「死ねや!」
「フッ!」
ギィィン!
祐斗の魔剣とフリードの聖剣が打ち合う。
鍔迫り合いのまま祐斗は魔剣の力を発動させる。
「光喰剣!」
魔剣が闇に染まり、聖剣に絡みつくが。
「それぇ、無駄っすからぁ。残念でした!」
聖剣の輝きに弾かれた。
「確認したかっただけさ。その剣が本物かどうか。これで心置きなく破壊できる!」
祐斗はそのまま剣を力任せに振りぬき、正面から連続で切りつける。
「この聖剣の餌食になるキャラに合わせてきてくれましたか!」
フリードはそれらを往なしている。
今の祐斗は剣を破壊することしか頭に無いせいか、いつもの戦い方をしていない。
正面から突き崩すのはバカ一直線のイッセーのやり方だ。
おまけに援護しようにも祐斗がフリードに粘着しており、尚且つ祐斗の動きがいつもと全く違うため援護が出来ない。
「ぐあっ!」
そして大振りになったところをフリードに狙われ、祐斗は二の腕を斬られた。
「知りませんでした?この剣はクソ悪魔キラー用の武器なんだよ?」
切り口から煙が上がっている。聖なる力が祐斗の身を焼いているようだ。
足の止まった祐斗を追撃するためにフリードは剣を振り上げている。
「やらせるか!ファウンテン・アロー!」
俺は上空に向けて水を放つ。その水は雨に溶け込みフリードに襲い掛かる。
「チッ」
フリードは雨に紛れる水の矢を剣を回転させることで雨もろとも弾いて見せた。
いまのは明らかにおかしい。以前戦った時より剣の速さが圧倒的に上がっている。
「せいっ!」
俺の攻撃に対処するため上に意識を向けていたフリードは足元に居た祐斗の足払いをもろに受けて尻餅をついた。
「っ!汚ぇ!」
「悪魔らしいだろう!ハッ!」
祐斗の横薙ぎの一閃を情けない動きで躱したフリードは立ち上がりそのまま対峙した。
「ありゃ?」
突如フリードは間抜けな声を上げ意識を逸らした。
「セイッ!」
その隙を狙って祐斗が突きを放つが躱され
「悪い。お呼びがかかったわ。それじゃ、バイなら!」
ギィィィィン!
言葉と共に以前と同じ閃光玉を投げつけ逃亡を図った。
「逃がしたか・・・」
以前は追い詰めた時に使ったのでまだ逃げないと考えていたから諸にくらってしまい逃がしてしまった。
「祐斗、腕を見せろ。治療する」
「・・・」
返事はないが腕を見せてくれるだけまだ理性的か。すぐにでもフリードを探しに行くと思っていたから。
祐斗の腕を治しながら考える。
呼び出しがかかったと言ったからアイツはまた誰かと共にいるんだろう。
と言うことはそいつ、もしくは組織がこの町にいる可能性があるということだ。
それにフリードが聖剣を手に入れた方法も気になる。
「傷は塞いだが、聖剣で受けた傷だ。無理はするなよ」
治療の完了を告げるが祐斗は立ち尽くしたままだ。
無理もないだろう。ここ最近上の空だった原因で復讐の元凶が現れたんだ。俺には計り知れない思いが渦巻いているんだろ。
また、この町で何かが起こる。
後書き
フリード再登場。
相変わらずフリードの口調を表現するのは難しいです。
感想お待ちしております。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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