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ヘタリア大帝国

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TURN110 法治その九

「ご自身は極めて質素でしかも血は好まれない」
「ただ厳しいだけの子供だというのですね」
「悪意はないのだ、そして非道もされない」
「だからですか」
「ソビエトに勝利を収めてもあの方を処罰しないでもらいたい」
 これがジューコフの出す条件だった。
「このことを確かに約束してくれるのならばだ」
「枢軸軍に加わって頂けますか」
「そうさせてもらう」
「わかりました、しかし」
 それでもだとだ、ここで山下はジューコフに答えた。
「それは今ここでの口約束ではありませんね」
「貴国の帝から正式に約束してもらいたい」
 閣僚達の口約束ではなく、というのだ。
「そうしてもらいたい」
「左様ですか」
 山下はジューコフとまずはここまで話してそれからだった。
 己の隣に座る東郷に顔を向けてこう問うた。
「どう思う」
「帝に約束してもらうかどうかか」
「そうだ、このことは大きいぞ」
 国家元首の約束だ、軽い筈がない。
「非常にな」
「帝にお話しよう、それからだ」
「戦後のカテーリン書記長の身の安全の保障をだ」
「すぐに帝にお話しようか」
「そうだな、すぐにな」
 二人で話してそうしてだった。
 東郷と山下は一旦ジューコフの前から退きすぐに御所に赴いた、そこで帝にジューコフとの約束の話をした。
 するとだった、帝の傍に控えていた宮内大臣兼侍従長であるハルがその鋭い三角系の眼鏡の奥の目を怒らせて言って来た。
「なりません!」
「ああ、やっぱりですか」
「そうです、ソビエトが帝に何をしたか」
 宮廷襲撃のことである。
「それを考えると」
「全くですな、あれは不敬に過ぎます」
 外相である宇垣もその機械の顔で言う。
「宮中を襲撃し帝の偽者を使い工作をするなぞ」
「そうです、カテーリン書記長許すまじです」
「ここは処刑とまではいかずとも処罰を求めるべきです」
「そうしなければなりません」
 これが二人の意見だった、そして内相の五藤はというと。
「そうですね、この場合は」
「内相の意見は」
「はい、いいんじゃないかと思いますが」
 こう山下に答えるのだった。
「水に流すという訳にもいかないことですが」
「ではどうしろと」
「カテーリン書記長に謝罪してもらえば」
 それでだというのだ。
「帝に。それでいいかと」
「ふむ、そうだな」
 その話を聞いた首相である伊藤も言う。
「私もそれでいいと思う」
「ジューコフ元帥の参加は大きいですし」
「しかもソビエトもそれならと思うだろう」
 謝罪だけで済む寛大な処置ならというのだ。
「それではな」
「いいですね」
「うむ、処罰となるとだ」
 やはり重いというのだ。 
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