少年は旅行をするようです
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少年は剣の世界で城を上るようです 第四層
Side キリト
「うらぁ!」
ガギン!
『ゲギャギャギャァ!』
「クソッ、こいつどんだけレベル高いんだよ!さっきからどんだけ叩き込んでると思ってんだ!」
戦闘開始から15分。強さはそうでもない為ソードスキルを叩き込めるミミックだが、どうやらHPが異常に
高いらしく、HPバーは遅々として減らない。雑魚モンスターにも見られるパターンの変化が未だ見られない上、
今みたいにテツオのメイスを掴んだりするものだから、フォローに回らないといけない。
「何とか位置が逆になれば、逃げる隙もあるってのに……!!」
「だけどあいつ、後ろ見せりゃ瞬間移動バリの移動技使うぞ!もう一人高火力出せる奴がいりゃぁな!
キリト、知り合いに誰かいないのか?今すぐ来れる奴!」
「居る事はいるが、今俺は手が離せない!ササマル……いやサチ!ノワールってプレイヤーにWis飛ばしてくれ!
N・o・i・rだ!Nは大文字!」
「わ、分かった!」
ノワールさんへのメッセージをサチに任せ、俺はミミックへの攻撃を続ける。
下手をすれば10や20は上の層のボスレベルのHP持ちに、あの人達の火力でもないとやってられない。
何故シュウマじゃなくノワールさんかと言うと・・・まぁ、あの人女の子好きだからな。
「め、メッセージ飛ばしたよ!すぐ来るって!」
「あの人らなら10分で来るだろう。それまで持ちこらえればそれでいい!」
「安全第一な、了解!」
それからはササマルの言う通り安全第一――元々考慮する程の攻撃も無かったが――に、隙が出来た時だけ
ソードスキルを叩き込む戦法を取った。だがそれから僅かして、ミミックの攻撃パターンが変わった。
『ゴグァァ!!』
ゴゥッ!
「うぉっ!?ちょ、攻撃パターンいきなり変わったぞ!つか速い!!」
「猫の代わりに宝箱被りやがって……!防御に専念しろ、どれだけ攻撃力上がってるか分からん!」
先程より重く速くなった攻撃を、なんとか剣を合わせて弾く。
ソードスキルを使えれば隙も出来るんだが、目が追いついても発動までの"溜め"が間に合わない。
・・・いや、一つだけ出鱈目に出の早い技があるんだが、あんな連続技を使えば、嫌でもレベルの話になる。
「(シュウマ達が来るまでの辛抱だ……大丈夫だ、防御に専念すれば。)」
ギィン!
「しまっ……!」
『ギュォアァア!』
ガィン! ガギン!
「な……!」
「こいつ、さっきより攻撃が正確に……!?」
その刹那、テツオ・ダッカー・ササマルの武器を立て続けに弾き飛ばすミミック。
馬鹿な・・・SAOのモンスターのAIは戦闘中進化するのは周知の事実だが、いくらなんでもこの上方修正は!?
とそこまで考え、最早余裕がない事を悟り、先程使うのを躊躇ったソードスキルを発動させる。
「"サンドライト・マーガット"!!」
ガィンガィンガィンガィンガィンガィンガィンガィン!
『ゲギャギャギャギャギャ!』
「今の内に装備しなおせ!俺がこいつの攻撃を弾く!」
「お、おお、分かった!」
習得度750で手に入れた、片手剣8連続攻撃。攻撃力は初期スキルの"スラント"程度だが、その出の速さは
ダガー並みだ。しかも、このソードスキルは連携可能・・・!
「"ホリゾンタル・スクエア"!!」
キン キン キン キンッ!
『ゲギョッ、ゲゲギャァァアアア!!』
スキル名通り四角を描く様に剣線が走る。先の技で既に体制を崩していたミミックに吸い込まれるように
クリティカルヒットした四連撃は、初めて目に見える程のダメージを与えた。
それに焦ったかのように攻撃が激しくなる。な、なんだこいつは!?まるで生きているような・・・。
『ゲギュォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
「ひっ…………!」
今まで笑うようにしか声を発しなかったミミックの咆哮に俺たちは怯んだだけだったが、サチは違った。
徐々に徐々に入り口の方へ後ずさり、そして―――
「いやぁぁああああああ!!」
「サチ、後ろだ!!」
走り出したサチに反応し、ミミックが俺の前から消え去る。後ろを振り返った時には、その長い腕を
振り上げていた。駄目だ、間に合わない―――!!
――ガギィン!
「おやおやおやおや、これはいけない。黒髪美少女相手に何してるのかね、このグロい不思議生物は。」
「シュウマ……!助かった!」
振り下ろされる刹那、サチとミミックの間に割り込んだシュウマは、あの剛腕を片手に持った大鎌の石突で
いとも簡単に止めていた。更に左腕を振り上げようとした時、その細い左肩口に、恐ろしい精度と速度を持って
長槍が突き刺さった。
『ゲッギョオオオオオォォアアアアアアアアアアアアアアアア!?』
「あらあらあらあら、いけないわねぇ。美少女相手に何してるのかしらねぇ、このグロテスクな蟲は。」
「の、ノワールさん………。」
「自分の嫁くらいキチンと護ってあげなさい。と言うか、私は今物凄く機嫌が悪いの。」
下層で見慣れた長槍を装備し直し、"ゴゴゴゴゴ"とか"ドドドドド"といった擬音を背負ったノワールさん。
そしてそれを逆手に持ち陸上の投げやりのように構えると、赤いライトエフェクトが包んだ。
まさか、さっきのがソードスキル・・・!?
「"カイン・エグゾカンス"!!!
―――ィンッッ
なんてね?」
ボゴォンッ!!
『グエァ…………!』
投擲された長槍は、ミミックに反応を許さず頭(?)である宝箱の左半分を抉り取った。
部位欠損・・・って、ボスにしか無い筈だ。こいつ、まさか隠しボスなのか!?
「だからそのソードスキル技名違うだろうと……。」
「あら良いじゃない。挙動が殆ど一緒なんだから。」
『グルォギョェァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「「うるさい!!」」
ドゴザンッ!!
「うっわぁ……アレ何モンだよキリト。」
俺達が苦労どころか命を賭して戦っていた相手をボコボコにしている彼らを見て、テツオが若干引きつつ
問うてくる。あの見た目から察せないか・・・。俺が思っていたよりも、中層プレイヤーに情報・・・と言うか
噂の詳しいところは流れていないらしい。
「シュウマとノワールさんだよ。……ギルド"死神の翼"の、通称"死神一家"だ。」
「死神……って、攻略組み最強の!?」
「何でお前…………そんなのと知り合いなんだよ?」
「そ、それは「ギャーギャーやってんな!お前らの不始末だろうが!後ろからでも攻撃しろ!!」あ、ああ!」
シュウマの怒声(助けとも言うか)に意識も漫ろになっていた俺達は、ミミックの後ろに回り込み、
その隙だらけの背中へソードスキルを連発させる。入り口を盗み見ると、サチは槍を抱えこちらを見ている。
・・・怯えているかと思ったけど・・・あれは・・・。
「うぉっ!?」
ガギン!
「ボケッとするな!残り三割だ、普通ならここでパターン変化が入る!」
「そんなの関係ないわぁ~、一瞬で終わらせてあげるから。シュウ、合わせてね。」
「ノワールになら言われんでも合わせるぞ?」
「あらそう。なら!」
ノワールさんが言うや否や、シュウマは後方へ素早く飛び退く。体術まで習得しているのか・・・。
パーティじゃあまり使う機会が無いスキルだと思うんだが。
と、そこでノワールさんが至近距離で先程と同じ挙動を取る。それと同時に俺たちのソードスキルがヒットし、
ミミックのHPが赤く変わり―――挙動パターンが変化した。
『ゲッギョォァァ!』
「なん、だ……?自分の口に手突っ込んだ!?」
自分の口・・・いや、宝箱の中に手を入れ、何かを掴み引きずり出す挙動を見せるミミック。
まさか、こいつ・・・!!
『ゲゲゲゲギョォゲギャギャ!』
「剣……!?」
「―――!拙い、ソードスキルだ!!」
「いいえ、それでお終いよ。」
ミミックが大剣を取り出し、ソードスキルと同じライトエフェクトに包まれる。同じくしてノワールさんの
長槍も先程と同じライトエフェクトに包まれ・・・ミミックの姿が掻き消えた。いや、移動したのだ。
俺たちの前方3m、後ろを向いたシュウマの方へ。相手の特性を利用した?そんな危険な事を平然と・・・!
『ゲルルギョァg「"カイン・エグゾカンス"!!!」
ドッ――――――――パァン!!
見慣れたノワールさんの黒槍がミミックの右腕部分に吸い込まれると、風船が弾けた様な音を立て、右手が
吹き飛んだ。それを合図に、シュウマの大鎌が薄紫のライトエフェクトに包まれ、逆三角形型に奔る。
「―――"閻魔座興"。」
『ゲギャァ―――――――』
バッシャァァァァァァ!
都合、僅か四撃。それだけでボス程もあるミミックのHP三割は吹き飛び、25層の大型ボスと遜色ない量の
青いポリゴンとなって四散した。
そのポリゴンが次々とアイテムやコルとなっては消え、そして、昨日上がったばかりの俺のレベルを
更に上げる程の経験値を残し、消えた。
「目ぼしい……アイテムは特に無いな。消耗品系以外は全部やるよ。結局こいつも持ってなかったか……。」
「あ、ああ。後で皆で分けるよ。ありがとう、助かったよ二人とも。」
「安い良い事よ。こんなので美少女を護れるなら、ね。」
トレードし終わると、颯爽とサチの方へ歩いていくノワールさん。・・・な、なんだか胸騒ぎが・・・。
「大丈夫だった?メッセージくれた子よね。えっと、サチちゃん。」
「は、はい、大丈夫です……!あ、あの、ありがとうございました……!」
「いいのよぉ、気にしないで。あなたみたいな可愛い子がこんな所で死んじゃったら、人類の損失だもの。
何より私が嫌よ。」
「は、はいぃ………///」
頭を撫でられ、湯気が出るのではと言うほど真っ赤になるサチ。・・・凄いなSAO。あそこまで感情が
出るのか。もじもじしていたサチだが、バッと顔を上げると―――
「お、お姉様って呼んでもよろしいですか!?」
「ええ、構わないわよ、サチ。」
おかしな事を言い出した。って、即効OK出しちゃった!?
Side out
Side 愁磨
「仲間がお世話になったようで、ありがとうございました!お陰で命拾いしました。」
「いいわよ、別に気にする事じゃないわ。」
「そーそー、可愛い子の為なら地球の反対側だろうがぶっ飛んで行くさ。」
「俺等の事はどうでもいいのかよ……。」
あのグロいモンスターを倒してから一時間少々。俺とノワールはアリアを連れ、何故かキリトが所属している
中堅ギルドのハウスへやって来て、基地ゲット&生還おめでとうパーティに参加していた。
リーダーらしいケイタと名乗ったプレイヤー含め、他のギルメンも俺達にはにこやかだ。
例の黒髪美少女・サチちゃんは・・・ノワールの向かいに座り、うっとりと眺めている。
「それで、その……何故助けに来てくれたんですか?」
「だからさっきも言ったじゃない。美少女の為よ!!」
「あー……聞き方が悪かったっすね。何で助けに来られたんですか?」
その質問に、事情の読めた俺達はどう答えてよいのやら思案して居ると、メイス使いが立ち上がった。
確かテツオとか言ったか―――は、少々離れた所で暗くなっているキリトを睨みながら、言った。
「キリトの知り合いとかでな、キリトが前持たせている間にサチがメッセージ飛ばしたんだ。
何でこんな有名人と知り合いかは……本人から聞けばいいと思うんだが?
まぁ俺は大体事情読めて来たんだがな。明らかに高レベルのソードスキルを使って、攻略組と知り合いなんて。」
「それは………!どういう事だ、よ、キリト……?」
「………お前が察した通りだよ、ケイタ。俺は………攻略組の一人でベーターだ。
レベルだってお前達よりも30は上だ。……俺は、お前達を騙していたんだ。」
「そういう……事か……。通りで初めて行くダンジョンのモンスターにも、落ち着いて対応してた訳だ。
お前にとっちゃ、飽きる程狩ったモンスターだもんな……!!」
キリトが秘密を打ち明けた事にケイタは激昂し、テツオはキリトを睨み続けている。しかし、他の男二人は察した、
得もすれば得心が行ったような表情だ。サチちゃんは・・・もう置いておこう。
そして、責められても顔を伏せたまま何も言わないキリトに掴みかかった。
「お前は!!俺達みたいな中堅ギルドを守って、越に浸って!憐れんで!それで満足か!?」
「………あぁ、お前達を守って、自分の強さに酔って。凄く……満たされてたよ。」
「―――このっ!!」
ガツッ!
「き、キリト…!だ、だいじょうぶ?」
そのまま殴りつけられ、テーブルに体を叩き付けた。が、オブジェクトとして設置されたそれは動く事もなく、
キリトはそのまま床にずり落ちた。逸早くサチちゃんが反応し、甲斐甲斐しくキリトの傍に膝を付いた。
・・・が、それは悪手。それを見た二人は更に怒気を上げ、斬りかからんばかりの勢いだ。
「サチ!お前はそいつの味方をするのか!?そんな……裏切り者のビーターを!!」
「け、ケイタ……その、私は………。」
「……いいんだ、サチ。俺が悪いんだ……。」
「で、でも……!」
キリトとケイタ・テツオに挟まれ、サチは今にも泣きそうだ。しかし、ギルドで一番信用しているキリトが
責められているのを看過出来ない子なのだろう。三人の顔を行ったり来たりしては俯きを続け、
当の三人(と言うか二人)は糾弾を続けている。・・・・・あーあ、拙いなぁ。そろそろキレるぞ?
「お前みたいな……お前みたいなビーターが、俺達に関わる資格なんてな―――」
「うっざぁぁぁぁぁぁい。何時までやってるのかしらぁ~?」
ケイタが決定的な一言を言おうとしたその時。俺の横に座った黒いお方が、黒い怒気を発して場を支配した。
Side out
後書き
メインのネギま詰まり気味。お話回が続きすぎてるんですよね。
修行の様子とか書くの超苦手だから余計。
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