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インフィニット・ストラトスの世界にうまれて

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閑話

とある日の夕方。
室内はまだ明るく、照明を灯すにはまだ早いといった時刻。
時系列的には、山田先生が俺の様子をひょっこり見に現れた後ということになる。
ベッドに寝ている俺からは見えないが、窓の外を眺めれば部活動をする女子生徒たちの姿が見えるかもしれない。
俺は怪我人ということで、特にすることもなくベッドに転がっているんだが、特にするべきことがないというのは良いことばかりではないようで、色々なことが頭に浮かんでくる。

俺は上半身を起こし、少し長い前髪を指で弄りながら考え事をしていた――というか、とあることで思い悩んでいたと言ったほうがいいだろう。
前髪を弄ったからといって、俺の脳ミソではさくっと悩み事が解決する訳でもないのだが、まあこれは、キメポーズであり様式美である。
日本人は格好から入るという話もあるからな。
悩み事を解決するにも、まずは格好から入っているんだとそう思っておいてくれ。
ともかく俺はこうすることによって悩み事が早く解決しそうに感じているだけだ。
あまり気にしないでほしい。

俺が思い悩んでいることとは何なのか。
それは、『福音』戦のことである。

やらないで後悔するより、やって後悔するほうが良いという言葉があるが、今回は逆だった。
俺はこの世界に介入したくないと思いながらも、なんだかんだ言って首を突っ込んでいる。
したくなければ何もしなければよかった。
ただ、何もせず、見ていればよかった。
だが実際はどうだろう。
なまじ原作知識があるばかりに調子に乗った挙句、こんなザマになっている。
自分では良かれと思って行動したのだが、そうではなかったらしい。
今更ながら猛烈に後悔している。
やっちまった感がハンパない。
原作を思い出せば、あの『福音』線で一夏が箒を庇い負傷することでコアとの対話ができ、セカンドシフトへと至っていると思える。
そして、箒も自分を庇って負傷した一夏を目の当たりにしたことで、性格に変化をもたらしたかもしれない。
確認できていないが、それを丸ごと無くしてしまった可能性がある。
だからこうして思い悩んでいた。

俺はこれからどうすればいい……。

両手で後頭部を支えるようにして抱え、ベッドに上半身を預けると、何かが軋むようなそんな音が俺の耳に届く。
穢れなどないような真っ白な天井を見上げながら、俺は考えを巡らす。

こうなったら一夏を――というか、『白式』を無理矢理にでもセカンドシフトに至らしめるしかないが、今は良い方法が思いつかない。
また余計なことをやらかして、どんどん泥沼にはまっていく気がするんだが、背に腹は代えられない。
困ったときのタバえもんこと篠ノ之束にでも相談するか? いやしかし、顔は見知っているが、連絡先を聞けるほどの関係じゃないしな。
連絡先が解りそうな人間といえば箒か織斑先生だが、だからと言って、俺が聞いたところで教えてくれないだろう。
何のためかと疑われるのがオチだ。
それにもし連絡が取れるとしても、俺の頼みごとを聞いてくれるとは限らない。
物事を楽観的に考えれば、俺が頼まなくても篠ノ之束のことだ、何かしらの騒動を巻き起こしそうな感じはするってとこだろうが、先のことは解らないからな、だから俺はこう叫んでいた。
篠ノ之束、臨海学校での件の借りを返しやがれと。
しかし まあ、篠ノ之束がこれから何をやらかしたとしとも、それは他人任せの他力本願で、結末が俺の思い描いた物とは大分違う可能性があるが、俺は自分の取った行動の結果の責任も取れず、他人任せになってしまうそんな状況で、どんな結末が待っているのだとしても文句を言える立場にはないだろう。
篠ノ之束は俺をいったいどんな風に思っているんだろうな。

「まったく、余計なことをしてくれたよ。邪魔するなって言ったのに。これだからバカの相手するのはイヤなんだ。私もアレで解るだろうと思って言ったんだから自分にも責任は多少はあるかもしれないけど……あっくんにはもっと解りやすくこう言って上げれば良かったかな? 『何もするな』と」

くらいは思っているかもしれないな。
俺というイレギュラーの存在によって、俺の知る歴史と大きくズレてしまったこの世界。
それを平凡の中の平凡。
『平凡・オブ・ザ・イヤー』を飾れるほどの平凡。
時空を越えてやってきた平凡がIS学園の制服を着ていると言っていいこの俺が、知っている歴史へと戻すことが可能なのかと思う。
考えるまでもなく答えは単純にして明快で――無理だろう。
確かにここはインフィニット・ストラトスの世界なのだが、俺はこうしてこの世界に存在している訳で、やりたいようにやればいいじゃないかとも思う。
だがどうしても好きだった物語だっただけに前世の記憶に引きずられてしまう。
結局のところ、なるようにしかならないのだろう。

照明が必要なほど薄暗くなった医務室で、俺は照明を灯すことなく天井を眺めながらこう思っていた。
人間なんだから間違うこともあるだろう。
そうだとしても、俺はこれからも自分がベストだと信じる選択をしていこうと心に決めていた。 
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