この明るい星空の下で。
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三咲の三年前、夏の思い出。
私は泣いていた。
ずーっと泣いていた。
ずっと育てていた捨て猫が死んだ。
中学一年生の夏だった。
「うぁーんうっ、えっぐうっ。」
泣いても猫が帰ってくるわけでもない。
そんなことはわかっていた。
しかし泣いてしまうのだ。
そんな茹だるような暑さの橋の下であの人に出会った。
運命の出会いだ。
「どうしたんだ?」
「育ててた猫が、猫がぁ・・」
「・・・死んじゃったのか・・・」
「・・・・うん・・・」
「大丈夫・・・命はね・・巡っているんだ。」
「巡る?」
「そうだ・・・猫が死んでしまってもその代わりに
新しい命が生まれている。」
「えっ?」
段ボールの中には死んだ猫の下に小さな猫が三匹生まれていた。
「ほんとだ!」
「ほらね♪こうやって子供のためにこの猫は悔しいけど死んだんだ。
だから元気を出して!」
「うん!」
「じゃあ、お兄ちゃんは行くから。」
「まって!お兄ちゃんの名前は?」
「・・・・・十六夜 奏だ。」
私はそのあとお母さんに頼んで猫を飼ってもらった。
そして中学二年、水上先輩にあった。
水上先輩は、あの人のように・・頑張っていて・・・
かっこよかった。
だから私は水上さんをみていた。
ずーっとずーっと。
だけど・・・そこには大きな壁があった。
水上先輩は、好きな人がいたのだ。
名前も顔も分からない、でも憎かった。
私を見てもらいたかった。
気付くと私は誘拐事件を決行し水上先輩まで監禁していた。
そこに水上先輩の好きな人がやって来た。
殺してやろうかそこまで考えた。
だけど、
「椎名!やめろ!」
ダメだった。
あの人だった。
何にも一生懸命なあの人だった。
もうやけくそになって水上先輩を殺そうかと思った。
駄目だった。
奏先輩、あなたは私を救ってくれた。
怪我もさせたのに、迷惑もかけたのに、
まだ私にも同じように接してくれる。
奏先輩、私はあなたのことが大好きです。
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