ワンピース*海賊と海軍、七武海と白髭。「永久の愛を」《1st》
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第一章
*エースとの別れ*
雷が泣いた日。5
ミィル『リ・・・ノ・・・?』
ラフュー『リノ・・・・!』
あれから何が起きたのかは分からない。
他の人からすれば五分しか経っていないけど
あたしにとっては数時間も時が経ったような感じだった
真っ暗だったあたしに視界にところどころ戻っていくと
皆が青ざめた顔であたしを見ていた
リノ「・・・・・・」
レオン『大丈夫か?!』
ハンコック「リノ待っておれ!!すぐに包帯を・・・!!」
リノ「・・・いいよ・・・」
ハンコック「今・・・何と・・・?」
リノ「お願い」
ミィル『うん』
あたしの両手から出ている血を見下ろすと
ミィルが力を使って傷ついた手を治すと前みたいに綺麗な手に戻った
ハンコック「それなら・・・安心じゃな・・・!」
あたしにはもう、そんな幸せな未来は無い
あたしにはもう・・・エースも・・・ジジイもいない
・・・あたしのことを認めてくれたエースも・・・
唯一の家族であるジジイも・・・死んだ・・・
二人とも・・・もう・・・この・・・世界にはいない
ハンコック「・・・リノ・・・?どうしたのじゃ・・・?」
ギガル『おいおい・・・正気を失ったんじゃ・・・ねーよな・・・?』
ラフュー『ギガル!!』
ギガル『わ、悪かったって!!』
皆が何かを言っていたとしても
あたしの耳には何も入って来なかった
泣きすぎて涙はもう出ない
今なら誰かが攻撃をしても・・・普通に死ねそうな気がする
そう思ってレオンの背中から下りて海に向かって歩き出した時
「「うわああああ!!!」」
リノ「・・・?」
空に向かって飛んでいくジンベエと気を失った蛆虫船長たちがいた
そのまま落ちそうになる二人を受け止めようと走り出す蛆虫ども、
けどジンベエが行き成り空で止まったかと思うと
どっかで見たことのある蛆虫がジンベエの身体を掴んでいた
無心に右手の人差し指を空に向けてジンベエたちに向けて振り下ろすと
ハンコック「よせリノオオオ!!!」
ジンベエたちの周りで飛んでいるマグマに電撃が命中していく
飛んでくる大砲も、白髭海賊団の蛆虫どもを殺そうとする海兵どもにも落雷が命中する
皆「・・・(唖然)」
けど、大きな落雷が赤犬の上に落ちそうになった時・・・
リノ「・・・・・・」
黄色い何かが、落雷を跳ね返した
〝何か〟が跳ね返した落雷があたしたちの元へと迫って来ると
盾が落雷を吸い取り誰も怪我することなくあたしたちは
少し離れた場所で閃光を当てようとする奴を見上げた
黄猿「ちょっとちょっと~邪魔しないでくれよ~」
誰が邪魔してるって?
それはあんたでしょ?
リノ「……消えて」
黄猿「お前さんも海軍を裏切る気か~?
ま~あ、センゴクさんが敵と見なすって言ったからには
お前も始末しなくちゃいけないんだけどね~」
いつもみたいに目が隠れるまでフードを深く被ると言った
リノ「そう。あたしを殺す・・・ね」
黄猿「ん~?」
リノ「殺すことはまず不可能かもね。
第一・・・あたしに触れられるかも分かんないのにね」
黄猿「良い度胸だね~」
あたしの周りにいたレオンたちが身構える
そしてあたしの横にいるハンコックから殺気が出ている事に気付くと
今最優先すべき事を考えた
リノ「・・・ハンコック・・・悪いけど先に行ってて」
ハンコック「大丈夫なのか・・・?」
リノ「・・・大丈夫だよ。それに・・・早く・・・助けてあげて」
ハンコック「・・・健闘を祈る」
リノ「ありがと。ベガルス!メリーサ!ミィル!ハンコックを助けてあげて!」
ベガルス『ああ!』
ミィル『分かった!』
メリーサ『潜水艦とやらを見つけた時、ミファルに伝える!!』
リノ「分かった!!」
先に走り始めたハンコックの後を追ってベガルスを先頭に
ミィルとメリーサがその後ろを走る
マール『どうする?オレも行くか?』
リノ「・・・その方がいいかもね。ごめんお願い」
マール『任せろ』
リノ「ミファル!」
ミファル『分かった!』
構えたミファルの目が赤くなると走り始めたマールとハンコック、
それからベガルスたちの姿が消えた事だけが分かると黄猿の両手が光り始めた
黄猿「もう言い残す事は・・・何もないよねぇ~?」
リノ「・・・ならこれを元帥に伝えてくれる?
今日これより・・・あたしはアンタの敵に回る、とね」
黄猿「ほぅ・・・」
ラフュー『それでこそ私たちの頭領だ』
ギガル『なら今日からやりたい放題って訳だな』
エルノ「そうだな。今日から海軍の目など気にせず暴れられるって事だな。
・・・ならコイツも好きにやってもいい、という訳だな?リノ」
リノ「・・・手を抜いたらあたしが殺すから」
『『「ああ!!」』』
あたしの隣にいたミファル以外の奴らが黄猿の元に向かって飛んでいく
黄猿の光に触れそうになったラフューがミファルの時渡りで別の場所に移動される
黄猿「これはどうだね?<八尺瓊勾玉>!!」
ギガル『任せろ!』
お腹を大きく膨らませたギガルの口へ吸い込まれるように黄猿の光の弾丸が吸い込まれる
黄猿「おー?」
エルノ「ミファル!」
ミファル『分かってる』
ギガルの近くにいたエルノとレオンが時渡りでギガルの後ろへ後退されると
黄猿が逃げないようにとラフューが大きな氷の壁を作り上げると
氷で出来た大きな手が黄猿を掴んだ
ラフュー『行け!!ギガル!!』
ギガル『お返しだッ!!!!』
リノ「行けッ」
ギガルの口から光の弾丸が黄猿に向かって飛ばされると
黒雲から大きな落雷がピンポイントで黄猿に命中する
大きな煙が上がると煙の中から真っ黒焦げになった黄猿が氷の地面に叩きつけられた
ラフュー『ギガルと爆弾対戦しようとしたからだ、ざまあみろ』
さっきまでミファルの時渡りで空を飛んでいたレオンたちが下りてくると
倒れている黄猿に向かってラフューが黒笑いを浮かべる
・・・まあ確かにラフューの言葉、一理あるかも。
ギガルが光線とか弾丸とか吸い込んだら倍返しされるんだよね
何でそんなに力を強めて返してくるのかは分からないけどさ・・・。
リノ「・・・行くよ」
ミファル『けどリノ・・・メリーサから連絡、来てない』
リノ「・・・はぁ・・・それじゃあハンコックたちが今何処にいるのかも分からないか・・・」
エルノ「困ったな」
相手の頭の中に話しかける力を持ってるのはメリーサだけだから
あたしたちが何をしても意味ないんだよね
リノ「レオンどうしたの?」
レオン『あれを見ろ』
ギガル『何かあったか?』
ひとりだけずっと何処かを睨んでいたレオンの隣に立って
レオンが見てる方に目を向けた時・・・
あたしたちの方を真っ直ぐに見る見覚えのある男が立っていた
リノ「・・・」
さっきまでは戦っていた蛆虫海兵どもも、
ジジイの息子たちとやらも皆が皆、仲間の救護に当たっていた
・・・成る程。アイツがこの戦争を終わらせたって訳か
エルノ「あの男は・・・赤髪のシャンクス・・・」
ギガル『戦いに夢中で気付かなかったぜ・・・いつ来たんだ?』
ラフュー『さあな』
リノ「・・・行くよ」
アイツが来たって事はあたしはもうここにいる必要はない
・・・もう嫌な思いをしなくて済む
そう思って一歩踏み出した時、
シャンクス「待てよ!お前・・・リノだよな?」
下からあたしの名前を呼ぶ声が聞こえた
あたしが何と言おうと・・・シャンクスは一人で喋り始める
シャンクス「やっぱりそうだよな?久しぶりだな~!
何年ぶりだろうな・・・六、七年か?本当に懐かしいな・・・」
リノ「・・・はぁ・・・ちょっとここで待ってて。すぐに戻る」
ギガル『ほーい』
レオン『気をつけろ』
リノ「うん。ミファルお願い」
静かに頷いたミファルの頭を軽く撫でると
溜息を付きながらシャンクスの前に立った
シャンクス「へえ~・・・面白い仲間を見つけたんだな」
リノ「要件は何」
腕を組んであたしの前に立つシャンクスを見上げると
さっきまでは軽く笑っていたくせに真剣な顔をした
シャンクス「皆の治療が終わったらエースと白髭の弔いをやるつもりだ。
・・・お前も出ないか?」
リノ「いい」
シャンクス「・・・本当にいいのか?辛くならないのか?」
リノ「任せる」
辛くなるに決まってる
どうしてあの時助けてあげられなかったんだろうとか、
どうしてあの時もっと優しくしてあげれなかったのかなとか
自分の事を責めて責めて・・・
途中で抜け出すぐらいなら最初から出なければ良かったって後悔するから
・・・辛くなるなら、後悔しちゃうなら・・・行かない方がいいんだ
シャンクス「これからは・・・どうするんだ?」
リノ「は・・・?」
シャンクス「王下七武海の〝海姫〟として生きていくか、
―――白髭エドワード・ニューゲートの〝娘〟として生きてくのか・・・」
リノ「・・・知ってたんだ」
シャンクス「レイリーさんから聞いた」
リノ「知ってて・・・何でもっと早く・・・来なかったの?」
少しだけ悔しくて声が震えてたとしても気にしなかった
シャンクス「・・・悪かったな」
リノ「もう・・・いいよ」
シャンクスは悪くないのに何で八つ当たりしてるの?
全部悪いのは助けれなかったあたしなのに・・・
・・・あたしのせいなのに・・・何で・・・?
だけどやっぱり知らなかったのはあたしだけなのか
ジジイの船でシャンクスと初めて会った時から、コイツはあたしがアイツの娘だって事を知ってたのか
リノ「・・・あたしはもう・・・海軍には従わない。
これからは自由にやらせて貰うから・・・」
少しだけ離れた場所に立っていた大仏男が眉間に皺を寄せ、拳を震わせていた
・・・地獄耳のアイツが今の会話を聞いてなかったはずがない
昔からの勘でそう思った
センゴク「そうか・・・なら・・・海賊として生きていく、という事か?」
リノ「そう」
センゴク「・・・成る程な。
お前は今日から・・・我々の敵だ!・・・覚悟しておけ」
リノ「・・・・・・あっそ」
クルっと振り返るとあたしはレオンの隣に移動していた
レオン『もういいのか?』
リノ「・・・うん・・・メリーサから何か来てる?」
ミファル『来てる。ハンコックが場所、突き止めたみたい』
リノ「・・・そっか」
ミファル『リノ?』
静かに深呼吸をすると目を閉じた
もうこれ以上ここにはいられない
リノ「ミファル あたしを・・・九蛇城に連れて行ってくれない?」
そう言うとほぼ全員が驚いた目であたしを見た
レオン『だが・・・いいのか?』
リノ「・・・うん。」
フードをちゃんと被って顔を見られないように、
気持ちを悟られないように皆より少しだけ早く歩いた
こんな事しなくても もう気付かれてるかもしれない
けど、皆には無理して欲しくないから
あたしのせいで嫌な思いはしないで欲しい
・・・だからあたしは一人になりたい
リノ「・・・ハンコックに会ったら・・・ごめんって伝えといて」
最後の最後まで皆の顔を見ずに止まると
目を閉じるとあたしは真っ暗で静かな自分の部屋に来ていた
リノ「・・・やっと・・・戻ってきた」
やっぱりこの部屋は落ち着く
ローブをとって近くの椅子の背もたれにかけると
ベッドの上に倒れこんだ
リノ「・・・エース・・・」
もう辛い思いをしなくて済むって思ったのに
脳裏に思い浮かんでくるのはさっきまでの嫌な光景だけ
もう・・・嫌だよ・・・
・・・せっかく・・・会えたのにまた・・・別れちゃうなんて
もう・・・会えなくなるなんて・・・嫌だよ
エース・・・会いたいよ・・・!
それから数日後。
あたしはいつものように部屋で泣いていた
誰かが部屋のドアをノックしても出る事なく
レオンたちの声が聞こえても部屋の外へ出る事はなかった
そして今日もいつものようにベッドの上で泣いていた時・・・
「「プルプルプル~ プルプルプル~」」
暗くて静かな部屋に誰かのでんでん虫が鳴り始めた
ベッドから下りて机の上に置かれてるでんでん虫を見ると
鳴っていたのはハンコックのだった
涙を拭って溜息を付くと椅子を引いて座ると受話器を取った
「「ガチャ」」
リノ『・・・もしもし』
いつもだったら真っ先にハンコックが何かを言い始めるのに
あの五月蝿い声は聞こえなくて眉間に皺を寄せた
リノ『・・・ハンコック?』
――あたしがそう言った時、
?『よぉ・・・リノ、元気か?』
でんでん虫から聞こえてきたのは全然違う人で
受話器を持っていた手が震えた
リノ『・・・何の用』
ルフィ『あっ!!待ってくれ!!切らないでくれ!!
少し話がしたくて電話したんだ』
リノ『話なんてない』
・・・あたしって本当、弱いな
何で人に八つ当たりする事しか出来ないのかな
ルフィ『本当にちょっとだけだから!!』
リノ『・・・何』
ルフィ『ハンコックから聞いたけど・・・お前、部屋から出てないんだってな。
飯を食わねーと死ぬぞ?それにお前の仲間も心配してるぞ?』
何なのコイツ・・・
・・・あたしに説教するつもりで電話をした訳?
ルフィ『俺さ 色々考えたんだけど・・・レイリーのおっさんと修行をする事になった。
二年後に皆と再開するその日まで・・・強くなろうって決めたんだ』
リノ『・・・』
あたしが黙ってると
蛆虫船長はあたしの事なんか気にせず話し続ける
ルフィ『今度は誰も悲しませない為にも、
誰も傷つかせない為にも・・・そしてお前を守る為にも俺は強くなる』
は・・・?
・・・あたしを守る・・・?
リノ『やめて』
何があたしを守るなの?
リノ『あたしはあんたに守られなくても生きていける、現に今もこうして生きてる!!』
ポロっと溢れた涙を服の袖で拭くと言った
リノ『エースに言われたからなの?
兄の最後の頼みだからそれぐらいは守ろうって?そんなの嬉しくなんかないから』
あたしって本当に弱いな
蛆虫船長はあたし以上に傷ついたのに悲しみを乗り越えた
なのにあたしはまだ悲しみの中に囚われたまま
ルフィ『・・・確かエースにも言われたなぁ』
リノ『なっ・・・』
ルフィ『けどこれは俺の意志だ。
お前が何と言おうと俺はお前を守る、それだけだ。じゃあな』
「「ガチャ」」
相手から一方的に電話が切れると
受話器を戻して仰向けになるように床に寝転んだ
リノ「・・・・・・はぁ」
・・・あたしってどうすれば強くなれるのかな
どうすれば悲しみを乗り越えられるのかな
・・・あたし、どうすればいいの
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