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ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
  百六話:踊り子さんと女子トーク

「さっきの話?……って、なんでしたっけ?」

 色々あって、色々と忘れてしまったんですけれども。
 なんか、ありましたっけ?

「ヘンリーさんのことよ。ドーラちゃんが女の子で、ヘンリーさんのお仲間で。ヘンリーさんも知ってたなら、なるほどそうねって話」
「ああ。そんな話、してましたね」
「あー……。ねー……」
「ああー……。そりゃ、無理も無いわよねー……」
「え?なんですか?みなさん、揃って」

 クラリスさんの言葉に、踊り子さんたちが揃って頷き始めました。

 なんだなんだ、この疎外感。

「クラリスさん……?みなさん……?」
「ああ。ごめんね、ドーラちゃん。ヘンリーさんがね、あまりにも無反応だったものだから。私たちも、見た目が資本だし。ちゃんと磨いてるし、それなりに自信はあったのよ?私はこれでも、ここじゃ一番人気なわけだし。それがねー……」
「あたしたちはともかく、クラリスにすら全く興味無さそうだったもんねー。あれは、びっくりしたわー」
「そうそう。もう、女に興味無いんじゃないかってねー?そっちの趣味の人なのかと思えば、そんな風でも無いし。もう、なんなんだろうって」
「……すみません、みなさん。後で、よく言っておきますんで……」

 ……耐性を付けてしまったことが、こんなところで響いてくるとは!
 女性に、特にクラリス姐さんに、恥をかかせるだなんて!

 耐性があるからってお気遣い的な部分は放棄しないで欲しいものだし、人生二回目でしかも今回は王子様経験アリなんだからそれくらい自力でできておいて欲しいが、女性の扱いというものについて後でよく言って聞かせないと!

 と、内心で決意を固める私に、クラリスさんが手を振りながら言います。

「ああ、いいのいいの。他にお目当てがいるとか、好みの問題なんかで私に興味持たれないのも、まああることだし。私も含めて誰にも、ってのが引っ掛かってたけど、それももうわかったから」
「そうそう。こんな娘が、近くにいたんじゃねー。それはもう無理よー」
「さっさと諦めて、正解だったわねー。知ってれば、最初から行かなかったけど」
「そうねー。それでも行くなんて、バネッサくらいなもんよねー」
「……」

 やはり、私のせいか。
 ドーラちゃんが、ヘンリーの中で基準になってるんだろうか。

 ……いやいや、待て待て。
 私で、耐性が付いたんだから。
 私にも、反応しない可能性がまだ存在して、いないことも無いかもしれないわけで。

 ……今、確認できない可能性のことを考えるより!
 今、得られる情報を集めるべき!
 前向きに、建設的に行こう!!

「……バネッサさんて。どんな方なんですか?」
「あー。やっぱり、気になるんだー?」
「素っ気なく放ってきちゃったくせにー。もー、可愛いんだからー!」
「……そうではなくて。単に、仲間として。気になるだけです」
「はいはい。そういうことに、しときましょうねー」
「……」
「あ、ごめんごめん!怒んないで!バネッサね、バネッサはねー。しつこいわね」
「……しつこい、ですか?」

 ……いきなりの、マイナス評価!

 取りようによってはプラス要素とも考えられるけど、明らかにこの表現はマイナス評価されてます!

「そうね。本人は、一途(いちず)とか言ってるけどね」
「脈が無い相手でも、とにかく食らい付いていくのよね。むしろ釣れないほど、燃え上がっちゃうっていうか。見た目は控えめな感じに取り繕うから、うっかり騙されて絆されちゃう男も、割といるのよね」
「そうよ!それであたしは、男を盗られたのよ!」
「他人のものでも、遠慮無いもんねー。さすがに勝ち目の無い戦いはしないっていうか、クラリス相手の時はあっさり退()いてたけど。それでも行かなかったわけじゃないし、退くときも未練タラタラだったけど」
「何よ、それじゃあたしがバネッサに負けてるみたいな……負けたけど!!」
「まあまあ。結局、すぐ目を覚まして戻ってきたんでしょ?バネッサの、底の浅さに気付いて。一途なのも、次にもっといい相手が見付かるまでのことだし」
「まあね!あんなのに一時でも引っ掛かる男なんて、こっちから願い下げだけどね!」

 ……なんか、評価が散々なんですけど。

 ……いやいや、待て待て。
 なんかとっかえひっかえみたいな話になってるけど、次のもっといい相手が見付からなければ、そのまま一途な状態が続くんじゃね?
 イケメン王子様のヘンリー以上の相手って、そうはいなくね?
 よっぽどの資産家相手で、金に目が眩んだとか無ければ。

 ……ありそう。
 ここまでの話を聞いた限り、そんなこともやりそう。

 いやいや、先入観はイカン。
 ちょっと気が多いだけの、良い娘かもしれないじゃない!

「あとは、そうねー。上っ面ね。ハリボテね。中身が無いっていうか」
「表面を、取り繕うのはホントに上手いんだけどね。鵜呑みにしちゃうと、痛い目見るのよね」

 ……ダメじゃん!
 これは、ダメなヤツじゃん!

 え、なんか無いの?
 なんか、プラス要素は、無いの?

「あの。何か。……褒めるところは、無いんですか?」
「え?今までので、最大限褒めてたつもりだけど?言ったでしょ、取り繕うのは上手いって。あと、ある意味一途だって」
「恋愛というか、男を落とすことにかける執念も、ある意味長所よね。真似できないわ、あれは」
「……例えば。例えばの話、ですけど。バネッサさんが、ヘンリーを落とせたとして。……結婚、すると思いますか?」

 私の苦し紛れの質問に、踊り子さんたちが顔を見合わせます。

「……色々、無理のある設定ねー……」
「……万が一落ちたら、バネッサとしてはあり得ない大物を釣ったことになるから。バネッサは、結婚したがるだろうけど。……まず、落ちないでしょうねー……」
「仮に、仮によ?なにかの間違いで落ちたとして、すぐに嫌気が差すでしょうね。ヘンリーさんが」
「既成事実を作って、それを盾に脅すくらいかしらね。あるとしたら」
「既成事実を作るのが、まず無理じゃない?相手がヘンリーさんじゃ」
「そこはほら、酔い潰してなんとか」
「強そうだったわよ、割と」
「ならほら、一服盛って」

 そこまで!?
 そこまでしないと、無理な感じなの!?

「……例えば。本当に、例えばの話ですけど。二人が、結婚したとして。……幸せに、なれると思いますか?」

 私の質問に、踊り子さんたちがまた顔を見合わせます。

「無理でしょ」
「無理ね」
「バネッサは、幸せかもしれないわね。いい男を落として、自慢するのが生き甲斐みたいなもんだから。自慢しまくれる旦那をゲットして」
「ヘンリーさんは、不幸の極みよねー……。こんな娘が隣にいたのに、何もあんな……。……考えただけで、可哀想になってきたわー……」

 ……そんなに!?
 そんなに、酷いの!?

 そんなダメな相手の前に、私はヘンリーを差し出して、置き去りにしてきてしまったの!?


 焦燥感に駆られて、浸かっていた湯船から静かに立ち上がります。

「……帰ります」
「え?どうしたの、急に」
「ヘンリーを、助けに行かないと!守らないと、不幸な結婚生活から!」
「ちょ、落ち着いて、ドーラちゃん。しないから、結婚とか。仮定の話だから、全部。かなり無理のある仮定だったから、全部」

 立ち去ろうとした私を引き留めようと踊り子さんたちが腕を掴んできますが、今こうしている間にも、ヘンリーが!

「だけど、一服盛られたら!」
「だから、盛るとかその仮定も。そこまですればなんとかってだけで、そこまでしそうってわけじゃ……絶対にしないとも言い切れないけど、バネッサなら。燃え上がり過ぎて、我を忘れたら」
「ダメじゃないですか!やっぱり帰ります、離して!」
「一服はともかく、大丈夫よ。まだ」
「……まだ?」

 安心できるようなできないような言葉の真意を確認するべく、一旦、動きを止めます。

「基本的に、カマトトぶってるから。相手に押し切られて仕方なく、って状況を作れない限り、出会ったその日にどうこうなることは無いわよ。だから、まだ大丈夫」
「バネッサはしつこいけど、別に頭がいいとか要領がいいとかは無いから。よっぽど油断してなければ、その後だって基本的には大丈夫よ。ただ、しつこいから。早く諦めさせないと、そのうちうっかり、ってことはあるかもしれないけど」
「なら、やっぱり!早く、今すぐに!諦めさせに行かないと!……って、どうやって?」

 そんなにしつこい相手を、どうやって諦めさせようと言うのか、私は。

「ああ。それは、問題無いわよ。ドーラちゃんがいるんだから」
「そうそう。言ったでしょ、勝てない戦いはしないって。クラリス相手で退いたんだから、ドーラちゃんなら余裕よ」
「そうなんですね!」

 それなら、いつもヘンリーがやってくれていたように!
 私が、恋人のフリをすれば!
 アッサリと、追い払えるわけですね!!


 ……そんなに、上手くいくものか?

 バネッサさんから見てクラリスさんは、人柄も含めてよく知ってる相手で、だからこそ勝てないと踏んだわけで。
 いくら外見が可愛くても、中身をよく知らない相手であれば。
 相手の人となりを見極めて、完全に負けを悟るまで。
 やっぱり、諦めてくれないんじゃないだろうか。

「……そんなに。……上手く、いきますかね?……バネッサさん、私のこと、知らないし。クラリスさんと違って」

 急に弱気になった私を、踊り子さんたちが鼻息も荒く取り囲みます。

「そんなの!世の中にはレベルの違い、次元の違いというものがあるのよ!問題無いわ!」
「大丈夫!あたしたちが付いてるから!実際に明日、試してみましょう!結果は火を見るよりも明らかだけどね!」
「そうよ!思い知らせてやりましょう、バネッサに!誰を、敵に回したのかを!高望みし過ぎなのよ、いつもいつも!」
「そうよ!いい男には、いい女!いないわけが無いのよ!本当に一途に想い続けてたというわけでも無いくせに、身の丈に合わない、脈も無い相手にでも簡単に纏わりついて!少しは、身の程を知ればいいんだわ!」
「きゃー!ドーラちゃんを、着飾らせるのね!?楽しみー!どんなのがいいかしらー!」
「やっぱり可愛い系かな?それとも、セクシー系?」
「清楚系も捨て難いわね!」
「大人っぽい綺麗系もいいんじゃない?」
「ダメよー、ここは若さを見せ付けていかないと!思い知らせてやるんだから!お呼びじゃないって!!」

 ……なんか踊り子さんたちが、異様に盛り上がり過ぎてるんですが。

 ……急に、冷静になってきた。

「……あの。ヘンリーがバネッサさんに惚れる可能性も、無くは無いですからね?もしもそうだったら、私は邪魔しませんからね?」

 恐る恐る、声をかけてみましたが。

「それは無い」
「絶対無い」
「無いから」
「無いわね」
「うん!邪魔は、決定ね!」
「むしろあっちがお邪魔って話よね!」

 満場一致で、切り捨てられました。

 そうか、そんなにか。
 そんなにもダメな娘か、バネッサさんは。
 一応確認はするが、覚悟は決めておこう。


 ……とにかく!

 バネッサさんがどうでも、ヘンリーの幸せは、私が守るから!! 
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