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中二病が主人公になったら?

作者:アガセ
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第8話

「You still have lots more to work on・・・」
「・・・!?」

雲隠れの忍は声がした方を向く.。
するとそこには、爆発に巻き込まれたはずの男、ナルトが仁王立ちしていた。

「き、貴様ぁ!何故生きている!?」
「あれは・・・影分身だ。」
「じゃあ、あの散らばっている肉片は何だ!?」

男はあちこちに散らばっているものに指をさして問う。

「あれは、相手を油断させるためのフェイクだ。
丹精込めて作った手作りソーセージ(煮る前)だ。
そして、アンタ方の目の前に降って来た金色の糸は自分の髪を少し毟って飛ばしたものだ。
ちなみに、爆破に使ったのは起爆札ではない・・・ニトログリセリンだってばよ。」

ナルトは不適な笑みを浮かべながら、さらに続けて言う。

「影分身の服の首元にジェルで覆ったニトログリセリンを仕込んだ。
ニトログリセリンはちょっとの衝撃でも爆発するものだから、クナイで斬られた瞬間にボンッ・・・だ。」

そして、どうだと言わんばかりのドヤ顔をする。
馬鹿にされたような眼差しを向けてくるナルトに対して、雲隠れの忍たちは顔に青筋を立てる。

ちなみに、起爆札を使わなかったのは単にナルトの気分の問題でもあるが、ニトログリセリンは起爆札と違って受動的に爆発させることが出来るので、爆破タイミングを逃しにくいと判断したからである。

・・・話を戻そう。
敵を何人か動揺させることには成功したので、ナルトはこの機を生かして一気に攻めることにした。
ナルトはクラウチングスタートのポーズを取り、

「Ready・・・GO!(パフッ♪)」

何故かラッパの音がしたが、これが鳴るのとほぼ同時にスタートを切り、猛スピードで駆け出した。
まず、一番近くにいた忍に猛烈な勢いで迫り、

「やられたらやり返す・・・(えいっ♪)」

と言いながら相手を思いっ切り殴り飛ばした。

以下同様に、

「倍返しだ!(ファイア♪)」
「グハッ!」
「十倍返しだ!(アイスストーム♪)」
「ギエッ!」
「百倍返しだ!(ダイアキュート♪)」
「ゴハッ!」
「業務改善命令!(ブレインダムド♪)」
「ウゥッ!」
「懲戒解雇!(じゅげむ♪)」
「グフッ!」
「自己破産!(ばよえ~ん♪)」
「ゲバッ!」
「自己破産!(ばよえ~ん♪)」
「オエッ!」
「自己破産!(ばよえ~ん♪)」
「ブベラッ!」

と立て続けに、さらに下っ端8人を一気に殴り倒した。
残るは、ヒナタを抱えている忍頭ただ1人。
尋常じゃない勢いで次々に倒されていく下っ端を見て、自分の命の危険を感じたその男はヒナタを抱えたまま一目散に逃げ出そうとした。
しかし、一歩目を踏み出そうとする直前にナルトが瞬身の術で男の目の前に現れた。

「おおおお、小○曽ぉー!!!(ばばばば、ばよえ~ん♪)」

と狂ったように叫びながら、これでもかというくらい大きく振りかぶり、盛大に忍頭の顔面を殴りつけ遠くへ吹っ飛ばした。
吹っ飛ばされた忍頭の体は木を数本なぎ倒し、大木にぶつかった所で勢いが収まり、小さく「ばたんきゅ~・・・」と呟いて木の幹をずるずると擦りながら地面に落ちていった。

「オール・ハイル・ブリタァァァニア!!!」

自分が勝利したことにナルトは歓喜の雄叫びを上げた。

しかし・・・

「あっ、ヒナタもろとも吹っ飛ばしちまった・・・」

慌ててヒナタの方へ駆け寄ると、彼女の手の甲や足首にいくつか擦過傷が出来ていた。
幸いなことに、彼女の顔には傷一つ付いてなかった。
それを見て少しホッとする。

「よしっ。これでいいかな。」

ナルトは、気絶している忍10人を木に縛りつけ、ヒナタを背負って森を出ようとした。
しかし、歩き出した瞬間"ブチッ"っと嫌な音がし、途端に右脚に激痛が走り、地面に倒れてしまった。

「ウッ・・・痛ぇな、畜生・・・右脚が逝っちまったか・・・」

ナルトの右太もも前面の筋肉が肉離れしてしまったらしい。
しかも、腫れて内出血までしている。
どうやら、いつもより重りの重量を上げて演習に臨んだらしく、雲隠れの忍との戦闘でさえも重りを外さずに猛スピードで駆け続けた上に、瞬身の術まで使ったことで過剰に脚に負荷を掛けてしまったのが原因と見られる。
とりあえず、ナルトは根気で全身の重りを外し、巻物に収納した。
そして、ヒナタを背負って辛うじて左足だけで立ち、右脚の痛みを堪えながら森を出ようと歩き始めた。

歩くこと15分、何とか森を抜け、演習を開始した場所に戻ることができた。
右脚を引きずりながらヒナタを背負って帰ってきたナルトに気付いて慌てて駆け寄ってきたイルカ先生に事情を話し、そのまま病院へ連れて行って貰う。

病院で診断した結果、ヒナタはただ意識を失っているだけなので、数日間、病室で寝かせることになった。
ナルトの場合は右太ももの大腿四頭筋が完全断裂ではなく部分断裂していただけだったので手術する必要はないが、通院しての治療は難しいと判断され、ナルトも入院することになった。
内出血が収まるまでアイシングとギブスによって固定、収まったら今度は通院に切り替え、温熱療法とリハビリによって治療、ということになった。

しかし、一日寝たらケロっと治ってしまったナルト君。
何という回復力・・・。九尾宿しているからってチート過ぎだろ・・・。
これを見た担当医がめっちゃ落ち込んでいる。
そりゃあそうだ。昨日、懸命に考えて作った治療プランが一日にして・・・。
まあ、ド○えもんも言ってたもんね・・・「アニメ制作なんてわけないよ」って。だから、気にしたら負けだよね・・・。

さて、現在ナルトはヒナタのお見舞いに来ている。
片手に花束を持って、そして果物をいっぱいに入れた籠をもう片方の手に提げている。
病室のドアをノックしたが返事がなかったので、そのままドアを開けて中に入った。
やはり、まだ寝ているようだ。
花瓶の水を換え、持ってきた花を挿して元々あった場所に戻し、その横に果物の入った籠を置いて、そしてベッドの横にイスを持ってきて座る。

ヒナタの顔を眺め始めてからどれくらいの時が経ったのだろうか。
低い位置にあった太陽も今はかなり高い位置にあり、少しばかり西に傾き始めている。
病室では、廊下の人が歩く音や台車を押す音以外聞こえない。
今か今かと起きてくるのを待つが、見舞いに来た時から少しも変化が見られない。
なかなか目が覚めてくれない様子を見て、ナルトは思う。

"演出・・・やり過ぎたな、こりゃ・・・。『敵を騙すには、まず仲間から』と思ってやったけど、これは間違いだったな・・・。"

時刻は午後3時を回った頃―未だ目が覚める気配はない。

"そういや、眠りに落ちた姫を目覚めさせるのは『王子様の口付け』と相場が決まっているんだっけ?
こ、これは・・・チャンスじゃないのか!?"

ナルトの頭の中には「アタックチャーンス!」とガッツポーズをした児○清さんが・・・。
ナルトは意を決して身を乗り出し、目標に向かって徐々に口を近づけていく。
だが、あとちょっとという所で瞼がゆっくりと開き白い眼が見え始めたので、ナルトは慌てて顔を離した。

「ん・・・」
「ひ、ひひひ、ヒナタ?」
「・・・ん?あれ・・・?な、ななな・・・ナルト・・・君?」
「おはようだってばよ、ヒナタ。」
「あれ・・・これって・・・夢?」
「い、いや~、ちゃっかり生きてるよ?あの時は影分身を爆発させただけだ。ビックリさせてゴメンな・・・。」
「な、ナルト君・・・!!」

ヒナタはナルトが生きていたことに感極まり、顔面をグチャグチャにして泣き始め、ナルトに思いっ切り抱きついた。
ヒナタの涙はナルトの着ている服を胸の辺りからジワジワと別の色に染め上げていく。
ヒナタが泣き止むまで、ナルトは、「ゴメンな」、と何度も呟きながら幼子をあやすかのように頭を撫で続けた。 
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