真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
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反董卓の章
第3話 『…………では、いよいよだな』
前書き
ようやくPCが復旧しました。
一週間のお休み、すいませんでした。
疲れた……ほんとうに疲れましたよ。
―― 袁紹 side ――
「お~ほっほっほっほっ! この袁・本・初が! 何進大将軍様のご無念を晴らしましてよ! お~ほっほっほっほ!」
「姫ぇ~、じゃなかった、袁本初様~!」
「何ですの、猪々子さん。言い直さなくてもよろしくてよ?」
「え? いいんですか? 公路様の部下がいるんですから、あたいなりに気を使ったんですけど」
「ああ、そういえば美羽さんの部下も同行していたのでしたわね。鎧が違うから忘れていましたわ。それにしても、なんであの華琳さんの所の兵に似たようなものをつけているんですの?」
「なんででしょうねぇ? 鎧の間に合わせがなかったんでしょーか?」
「まあ、なんでもいいですわ。それよりも小帝陛下と陳留王様はどうしましたの!? 斗詩さんは、まだ戻られないんですの?」
「そういや遅いですね~……なにやってんだろ、斗詩のやつ」
「れ、麗羽さまぁ~! た、大変です~!」
「遅いですわよ、斗詩さん! 一体、どうしたというのですの!?」
「そ、それが~逃げた張譲たちが、董卓軍を引き連れて洛陽に向かっているそうです~」
「ぬわぁんですてぇ!? 張譲側に、董卓がついたというのですの!?」
「そ、そのようです~……しかも、小帝陛下や陳留王様もご一緒のようで」
「ま、ままままま、まずいですわ! これでは、わたくしたちの方が大罪人になってしまいますわ!」
「ひ、姫ぇ! どうしましょぉ~」
「とと、とりあえず鄴に戻り……」
「お待ちください、本初様……今、何もせずに戻られては、全てが水泡に帰します」
「あなたは……」
「あ、最近雇った文官さんですね。確か名前は……」
「顔良様、今は急ぎますので。それよりも、本初様。これは好機です」
「好機? この状況が好機ですって?」
「は。幸い、この宮中には何皇后がおります。太后に自身のお子を呼び戻す文を書かせるのです。その上で、張譲と生き残りの宦官が、お二人を騙して董卓の元に向かわせたとして、董卓に残りの十常侍を殺させるのです」
「そ、それでは、何進大将軍の仇を討ったというのが、董卓になってしまうじゃありませんの!」
「はい。それで董卓は、大虐殺の汚名と洛陽を手中に収めた大罪人となります」
「………………」
「で、でも、董卓が小帝陛下と陳留王を守るためと言ってしまえば……」
「はい。ですので、何皇后を鄴へ連れ帰るのです。そうすれば小帝陛下は、董卓を認めるわけには行かなくなります」
「………………」
「そ、それって人質じゃ……」
「顔良様。何太后を張譲という魔の手からお救いするためです。何進大将軍を殺したのは紛れも無く十常侍。ここに残れば必ず殺される、そうお伝えするのです。必ずや同行なさるでしょう」
「でも……」
「ここに残れば、殺されることが明白なのは事実。でしたらお助けするのが、何進大将軍への恩義を返す事にもなりましょう」
「…………わかりましたわ。何太后にお会いして、すぐに書状をお願いしますわ! 行きますわよ、猪々子さん、斗詩さん!」
「はい!」
「ま、まってくださいよぅ。なんか、なんか引っかかるんですけど……」
「本初様、急ぎませんと。董卓が洛陽に到着してからでは水泡に帰します」
「そうですわね、急ぎますわ!」
「ま、待ってくださいよぅ………………」
「……………………………………」
―― 公孫賛 side 北平 ――
「本当か!?」
「は! 間違いなく劉伯安様、直筆の書状にございます」
使者が私の前で、頭を垂れる。
その手に持つ書簡は、まぎれもなく皇室の落款が押されていた。
その書状は……劉虞から、私宛への書状。
しかもその内容は……
「では、本当に……」
「はい……伯安様は、今までの自身の為されたことに深く後悔を抱き、伯珪様に謝罪したいとのことです」
「おお…………」
信じられない。
あれだけ民を蔑ろにして、諌めた私を蛇蝎のように嫌っていた劉虞が。
急に私に謝りたいだなんて……
「一体、どういう心境の……」
「……ここだけの話ですが。伯安様は、まるで悪い夢を見ていたようだと」
「……は?」
悪い夢?
「ご自身でも、なぜあのような非道を行ってしまったのかわからない、とお嘆きなのです。最初は、わたくしも何を仰せなのかと思いましたが……伯安様のお嘆き様は、とても嘘偽りの様子とは思えなく」
「…………つまり、お気を狂われていた、そうご自身でおっしゃっていると?」
「……は。正直ご自身でもそうとしか思えないと、お嘆きあそばされております」
……どういうことだろうか。
仮にも皇族である劉虞。
その劉虞が、自身の非を認めただけでなく、自身を蔑むことを周りに漏らしたと……?
皇族として、自身を貶める行為をするような人物だったとは思えないのだけど。
「確かに劉伯安様は、洛陽にいた頃の噂では民を想い、部下に分け隔てない扱いをなさり、仁義を尊ぶ方とは聞いていたが……」
「はい。古くから仕えるわたくしめにも、今の伯安様は平原に参られる前の伯安様に戻っております。あの虐殺や暴虐をしていた姿とはまるで違う……まさしくあれは、別人のようでした」
「……誰かがすり替わっていた?」
「……いえ、そのようなことは。たしかにご自身でした。人が変わられた、と思うておりましたが……」
そんなことが……ありえるのだろうか?
人間が、そんなに簡単に人格そのものが入れ替わるなどと……
「その証、というわけではありませんが、伯安様は全ての集めた私財を、民にお返ししました。その上、洛陽のご自宅や家具を売り払って、平原の復興を行うと……」
「な…………なんだってぇ!?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
皇族が、民のために自分の身を削って尽くすと!?
それではまるで……まるで……
桃香じゃないか……
「それが本当なら……………………いや。劉伯安様が、本心から改心なされて統治なさるというのであれば、私としても協力は惜しまないつもりだ」
「おお……!」
「ただし! 本当に改心なされたかどうかは…………平原の状況を見て判断する。そう、お伝えくだされますか?」
「……わかりました。必ず伯安様にお伝えいたします。それと、お詫びの献上品がございますが……」
「御無用に。それらは、平原の復興の資金に当ててくださるよう、劉伯安様にお返しください。その上で、必要ならば……復興のために使うということであれば援助する、ともお伝えいただきたい」
「お、おお…………おお…………ちゅ、中郎将様のご温情には、誠に頭が下がる思いです。必ず、必ずや伯安様にお伝えいたしましょう」
使者は、そう言って何度も頭を下げつつ、王座の間から退出した。
だけど、私はその場を動けない。
正直、困惑していたのだ。
あの劉虞が……突然、改心するなどと。
民から根こそぎ財を奪い、不平不満を漏らすものは惨殺し、反乱を起こした民を……私が説得した者までだまし討ちにまでした、あの劉虞が。
「一体、どういうことなんだ……?」
―― 賈駆 side 洛陽 深夜 ――
まずい、まずいわ。
すぐにでも対応しないと……
このままじゃ、月は……ただの謀反人になる。
「詠ちゃん……」
「月……大丈夫よ。必ず、なんとかなる……ううん、なんとかしてみせるわ」
「私より、このままだと小帝陛下が……」
くっ……
そうね。あの十常侍どもは、本当に何とかしないとまずい。
宦官の大部分を殺した袁紹が、何太后を人質に鄴に戻って十日。
残された太后直筆の書簡を発見し、小帝陛下は散々悩んだ。
でも、それを見た張譲は…………突然、暴挙に出た。
まさか、小帝陛下を無理やり退位させて、陳留王様を献帝とするなどと……
「小帝陛下が『お母様を裏切れない』って言っただけで、小帝陛下を退位させるなんて……」
「……それだけじゃないわ。張譲のあの口ぶりじゃ、小帝陛下をすぐに亡き者にする気よ」
「だめだよ! 助けなきゃ!」
「わかってる! でも今動けば、私達のほうが小帝陛下を亡き者としたとして一緒に排除されるわ! 相手はあの丁原様を、十常侍殺害の容疑者として不当にでっち上げた奴らよ!? このままじゃ月も……」
「だけど……でも……」
丁原様には、袁紹たちを引き入れた容疑がかかっている。
それだけでなく、宦官を自ら殺したとも……
その上、今回の十常侍殺害の嫌疑には、何故か私達の名前まで上がった。
完全に虚偽。
そんなこと、当時洛陽にいなかった月にできるはずもない。
ましてや月は、張譲たちが庇護を求めてくるまで長安にいたのだ。
どうやって宦官虐殺などできるというのだろうか。
張譲は、今回のことで全ての政敵を、偽りの罪を被せて粛清するつもりなのだ。
それは、自身を助けた月すらも……
「こうなったら……張譲を殺すしかないわ」
「詠ちゃん!?」
「このままじゃ、月が謀反人として処刑される……そんなの、ボクには我慢できない!」
「待って、まってよ、詠ちゃん。他になにか手が……」
その時だった。
「た、大変やで! 月、賈駆っち!」
突然、張遼――霞が、部屋に転がり込んくる。
「し、霞さん……?」
「もう! この忙しい時に、何が大変なのよ!」
「ち、ちちちちょ、張譲が、張譲が殺されたんや!」
「「えっ!?」」
あの張譲が!?
一体誰に…………
「そ、そんでその殺した本人が……月に保護を求めてきとる」
「……………………え」
「なんですってぇ!? 一体誰なのよ!」
「それが……………………呂布なんや」
霞の言葉に、私と月はその場に固まった。
―― 張遼 side ――
「……連れてきたで」
ウチが呂布を部屋に案内すると、その姿を見た月も賈駆っちも、目を見開いて硬直する。
その気持はわかる、わかるで…………なにせ、今の呂布は。
その褐色の肌すら覆い隠すような色で、全身が塗り固められているのやから。
そう……鮮血の『紅』で。
「呂布さん……」
「あんた……その姿は」
二人が呟く。
そこに、ウチの後ろからちっこい人影が、震えながら顔をだす。
「れ、恋殿を助けて……くださりやがれ、です……」
「…………あんた、だれよ?」
うちの足元に隠れるちっこいのに、気付いた賈駆っちが呟く。
「ね、ねねは、姓は陳、名は宮、字は公台といいやがります……です。れ、恋殿を、恋殿を、助けてほしいのですぞ!」
……ウチに言えたことやないけど、言葉尻はもうちょっと丁寧に言ったほうがええんとちゃうやろか?
「助けるって……呂布、あんた張譲を殺したって本当なの?」
「…………ホント」
ボソッと呟く呂布。
その姿は、全身が鮮血に染まりながら無表情で呟くため、ウチが見ていても異様に怖い。
「う…………と、ともかくそんな姿じゃ話もできないわ。霞、呂布を水浴びさせてきて」
「了解や……こっちやで」
ウチが案内すると、呂布が付いてくる。
……なんでか、陳宮まで付いて来たんやけど。
ともあれ、井戸の水で全身の血の後を落として着替えさせる。
不思議なことに……あれだけ無表情が怖いと思っていた姿も、全身の血を洗い落として綺麗になると、人懐っこい可愛らしさが見え隠れするようになるのにはびっくりや。
そして、ついでに着替えさせた陳宮もさっぱりした様子で、再び月と賈駆っちの前に座る。
「……それで、話を戻すけど。張譲を殺したのは本当なのね?」
「…………ホント」
「何故? どうして殺したの?」
「………………お母さん」
「……は?」
「…………許せない」
「………………?」
賈駆っちが、ウチを見る。
いや、ウチを見られてもわからへんって。
「れ、恋殿は、こう申されておるのです。『恋殿の母にも等しい丁原様を、無実の罪で謀反人として捕らえた挙句に殺した張譲が許せなかった』と」
「!?」
「…………丁原様まで」
「そんな……」
ウチもそのことに驚いている。
まさか、あの丁原様が……
クッ!
ウチを取り立ててくれただけでなく、月と引き合わせてくれたあの丁原様までも……
おのれ、張譲ども!
「れ、恋殿を助けて下さい! 恋殿は間違ったことはしていないのです! 悪いのは、母君とも呼べる丁原様を殺した宦官のやつなのです! 恋殿は仇を討っただけですぞ!」
「ウチも賛成や……呂布、胸を張ってええで。丁原様はウチにとっても月と並ぶ大恩人やった……よくぞ、その仇を討ってくれた。礼をいうで!」
「…………?」
「ん? ウチか? ウチの名は、姓は張、名は遼、字名は文遠や。いや……ウチにとっての大恩人の仇を討ってくれたんや。あんたには、うちの真名『霞』を預ける。受け取ってんか!」
「…………恋。真名、預ける」
「れ、恋どのぉ!? 初めて会った人間に真名を預けるなんて……」
「…………(フルフル)霞、いい人。お母さん、言ってた」
恋…………そうか。
丁原様は、ウチのことを恋に話していたんやな……
「………………ぐじゅ、そかぁ! 恋、これからよろしゅうな!」
「………………(コク)」
「ちょ、ちょっとぉ! 私や月を置いてきぼりで、二人で和んでいるんじゃないわよ! まだ呂布を受け入れると決めたわけじゃないのよ!?」
「なんやて!?」
賈駆っちの言葉に、思わず詰め寄る。
「どういうことや、賈駆っち!」
「か、顔が近い、顔が近いわよ! もう!」
ぐい、とウチの顔を両手で引き離す賈駆っち。
けど、ウチはそんなん関係ない。
「恋は、丁原様の仇を討ったんやで! ウチらが守らんでどうするんや!」
「確かに丁原様には色々お世話になったけど! 私達が守るのは月なのよ!? 月の立場を考えてから発言してちょうだい!」
「せやかて……!」
「え、詠ちゃん……私も、呂布さんは守るべきだと思うの」
「月!?」
おお!
さすがは月や!
「呂布さんは丁原様のために戦ったんだもん……その呂布さんを守ることは、丁原様への恩返しになると思うの」
「月…………ま、まあ、確かに呂布を捕らえても私達にはなんの益もないわ。生き残った十常侍……あとは段珪ぐらいだろうけど、これ幸いと呂布共々私達まで暗殺しかねないし……」
「せやせや! 恋はウチらで守るんや!」
「霞、あんたは黙ってなさい!」
なんやのん、賈駆っち~……つれへんやん。
「詠ちゃん……」
「う…………わ、わかったわよ。どの道、明日の朝には参内してから小帝陛下にお目通りを……」
賈駆っちがそういった矢先――
「た、大変だ!」
突如、部屋に入ってくる人物がおった。
あ、バカや。
「誰が馬鹿だ!」
「ああ、すまん華雄。で、どないしたんや?」
「そ、それが……陳留王様、いや、献帝陛下がいらしていると……」
華雄の言葉に。
その場にいた全員が凍りついた。
―― 袁紹 side 鄴 ――
「た、助けてくれぇ! し、死にたくない! 死にたくないんだ!」
「まったく……聞くのも汚らわしいですわ! 猪々子さん、すぐに連れて行きなさい!」
「はい、姫!」
わたくしの言葉に、猪々子さんと兵士に拘束された男が引きずられていく。
だれであろう、十常侍である段珪だった。
「まったく…………本当に何を考えているのでしょう。抹殺しそこねた本人が、抹殺しょうとしたわたくしを頼ってくるなど……愚かとしかいいようがありませんわ!」
「は……まったくです。しかも相手は、小帝陛下を殺害した大罪人……そんな人物を、本初様が許すはずもないでしょうに」
わたくしの言葉に賛同するのは、斗詩さんではない。
先日、わたくしの危機を救う提案をした文官の一人。
その功績を讃え、わたくし付きの相談役とした。
「陳留王様を献帝に仕立てあげ、小帝陛下は廃位の上、弘農王に封じた挙句に毒殺ですって!? よくもそんなことをした上で、わたくしの元に庇護を求めるなどできたものですわね!」
「まったくです……まさに厚顔無恥といえるでしょうな。しかし張譲は呂布に殺され、小帝陛下殺害は董卓がやった、と段珪自身は申しておりますが……」
「その董卓さんから、献帝陛下直筆の書状と共にあらましが書かれていましてよ。それを知らずに、さも全部董卓さんがやったかのように……あれでよく、国の重鎮でいられましたわね」
まったく……これでは何皇后を人じ……いえ、お救いした意味がありませんわ。
そのお子である小帝陛下が、お亡くなりになったのでは……
「……しかし、これはまた好機かもしれませぬ」
「? どういうことですの?」
「段珪は、全て董卓がやった……そう言いました。そして宦官直筆の告発文です。つまり……これは公文書、ということです」
「そうでしょうけど……董卓さんの方は、献帝陛下直筆ですのよ? どちらを信じるかといえば……」
「そちらの書状は、献帝陛下を脅した董卓が無理やり書かせたとしたら……どうなりますか?」
「!?」
献帝陛下の書状が…………?
「今、宮中……いえ、洛陽は董卓の手の中です。その武力を背景に献帝陛下を脅し、自身がやった小帝陛下殺害を段珪になすりつけた……そうとも考えられるのです」
「………………」
「董卓には、我々が行った宦官大虐殺の汚名をも被ってもらうのです。その上で小帝陛下の殺害し、献帝陛下を傀儡にして洛陽の権力を独占しているとしたら……」
「そ、そんな………………」
「信じる側にとってどちらの言い分を信じるか……いえ、はっきりいいましょう。現在においては、信じた側の主張が正しい状況になるのです」
「!?」
信じた側の主張が、正しい……
つまり、わたくしが段珪の主張こそが真実だと、そう周りに触れを出せば……
董卓一人が、全ての非道の象徴となる。
そして、それを討伐したものにこそ……
「では、わたくしが董卓を倒せば……」
「いえ、それは少々まずいかと」
「は!?」
あなたが言っていたのは、そういう意味じゃありませんの!?
「本初様一人が董卓を倒しても、洛陽の簒奪者という汚名が残るだけです。それでは董卓を討ち取れても、次に本初様が誰かに討たれます」
「そ……それじゃ、どうしたらいいんですの?」
わたくしの問いかけに、その男は強かにニヤリと口を曲げて笑みを浮かべた。
「周辺の諸侯に書状を出すのです。洛陽を席巻し、官民問わずに大虐殺、その上小帝陛下まで亡き者にした挙句に、献帝陛下を傀儡に……これを討伐し、献帝陛下をお救いするのが漢王朝に対する義である。そう檄文をだすのです。宦官の正式な公文書がある以上、大義名分は立ちます。そうすれば諸侯は、こぞって参集に馳せ参じましょう」
「ですが、それでは董卓を倒したという名声が……」
「なれば、袁本初様が総指揮をとればよろしい。盟主として各諸侯をまとめ、董卓を討つことができれば……貴方様が漢王朝に巣食う害虫を排除した英雄になれます」
「わたくしが…………英雄」
英雄……………………わたくしが、えいゆう…………………………
………………ふふ、ほほほ………………お~ほっほっほっほっ!
「確かにそうですわね! 盟主! そう! この大連合の盟主は、四代にわたって三公を輩出した名門汝南袁氏の、わ・た・く・しこそ、相応しいのですわ! わたくしが総指揮をとって、華麗に見事に董卓さんを討ち滅ぼしてあげましょう!」
「はは! では、さっそく檄文の製作に入ります!」
「よろしくお願いしましてよ…………」
わたくしは、にこやかに彼の名を呼ぶ。
「唐周さん」
「ハハッ!」
その時、わたくしには彼が顔を伏せていたから……見えなかったのですわ。
彼の顔が…………邪悪に満ちた笑みを浮かべていたことに。
―― 于吉 side ??? ――
『あの小物は、うまくやったようだな』
そのようですね。
『フッ……拾い物だったというわけか。あんな小物がな……』
小物ゆえ、ですよ。
歴史に介入するのは名の通った人物を操るよりも、ああいう小物を動かしたほうがうまくいきます。
『名の通った……劉虞か。まあ、傀儡を解いてしまえば、本来の性格に戻るのは当然だが……まさか、あそこまで劉備のような人物だとはな』
自分の財産の全てを投げ打って平原を復興させようとは……正直、私にも意外でしたよ。
『フッ……こうなると、劉備と血が繋がっていると思ったほうがいいぐらいだな。隔世遺伝か?』
どうでしょう…………まあ、この時代の皇族にしては異端ではあるでしょうね。
元々、かなり善人ということでしたし。
とはいえ、最後は歴史にある通り、本性を疑わせて死んでもらいますがね。
『ああ、あの妻や妾の豪遊の噂か……フッ。女など、結局はそんなものよ』
おや、気が合いますね…………やはり、左慈は私の事が。
『勘違いするな。喋るな。考えるな。思念波は、貴様のゲテモノ趣味もダダ漏れなのだぞ。俺にそういう趣味はないと、何度言えばわかる』
………………本当に、つれないですねぇ。
お兄さんは、だんだん泣きたくなってきましたよ。
『やかましい。それより……公孫賛は檄文に賛同するのか?』
それは劉虞に泣きつかせますよ。
劉虞自身には兵がいない上、その余裕が無いのも事実ですからね。
劉虞本人の傀儡の糸は切れていませんし、その配下にも傀儡にしているのはいますから。
『そうか…………まあ、そちらはいい。あとは…………』
劉備、ですか?
そちらも大丈夫ですよ。
彼は約束を破りません。
なにより……同盟相手が、こちらの傀儡なのですから。
『…………では、いよいよだな』
はい。
いよいよ…………反董卓連合、その悲劇の開幕です。
楽しくなりますよ、きっとね………………クックック。
後書き
……あれ?
今回、盾二くん欠片も出てないよ?w
消える前の分には書いていたはずなんですが……どうにもその部分が思い出せませんでした。
ようやく準備が整いました。
反董卓連合の章、ようやく開始です……予測では5話からだったので、だいぶ短縮しました。
たぶんPC 壊れなければ……普通に長々と董卓側の状況を書いていたかもしれません。
よかったのか、悪かったのか……
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