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インフィニット・ストラトスの世界にうまれて

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ルームメイトは緑髪の眼鏡っ娘 その二

「遅い!」

第二アリーナのグラウンドに到着した俺たちを出迎えてくれたのは、腕を組んで待っていた鬼教官こと織斑先生である。
くだらんことでも考えていたのか、さっそく織斑先生に叩かれている一夏。

「ご指導ありがとうございます」

一夏が鬼教官にお礼を言っている。
インフィニット・ストラトスに登場する女子はやたらと人の心を読むのが上手いからなあ、俺も気をつけるとしよう。
俺たちが一組の列に入ると、セシリアが話しかけてきた。

「ずいぶんとゆっくりでしたのね」

なぜか視線はこちらを向いていた。
このタイミングでこのセリフ、一夏に話しかけてると思ったら、俺かよ。

「やあ、セシリアさん。随分とご機嫌なようだな」

「機嫌など良くはありませんわ。ところで何だったんですの? あの自己紹介の時の三文芝居は」

「三文芝居って……、酷いな」

「そこの二人、うるさいぞ!」

織斑先生の声が飛んでくる。
俺と会話をしながらも妙に一夏が気になる様子を見せるセシリア。
声の音量を落としてセシリアに話しかけてみる。

「そんなに一夏が気になるのか? もしかして、惚れたか?」

「なっ! このわたくしセシリア・オルコットが、極東の島国の黄色い猿を好きになるなんて……そ、そんなことなどありえませんわ」

肌が白いもんだから紅くなるとまるわかりだぞ、セシリア。
そんなに真っ赤なんだ、今日のセシリアはきっと三倍早く動けるだろうさ。

「珍しいこともあるもんだな。女尊男卑の権化というべきセシリアが男に惚れるとは、今日の授業中に空から隕石でも降ってくるんじゃないか? 違うな、むしろ空からセシリアが振ってくるべきだろう。そして偶然を装い一夏の胸に飛び込めばいい」

「わたくしを、ば、馬鹿にしてますの?」

「そこ、何度言わせるつもりだ。いい加減にしろ!」

スパーン、スパーンと軽やかな音が二度響く。
二度目の注意を受けた挙句、出席簿アタックを二人で仲良くくらった俺とセシリアは、頭を擦りながら会話を終了させることになった。

第二グラウンドに集合している全員が当然のごとくISスーツを身に着けている。
男子を除き、女子のISスーツは制作メーカー、選んだ本人の好みによって多少の形状の違いはあるが、ワンピースまたはレオタードに酷似している。
肌の露出が多いのは動きやすさを考慮してのことだそうだが、年頃の男子がいるこの状況では目の毒、というかむしろ目の保養になるな。
心がとても豊かになる気がする。
そのうち、男子にいらぬ劣情をもようさせるとして国際的に着用禁止になるんじゃないか? そして全身タイツみたいなISスーツに……それはそれで好きな人もいそうだが。
「アーサーさん。目がいやらしいことになってますわよ」

セシリアの表情はまるで汚らわしい物を見ているかのようだった。

「俺が他の女性を見ていたのが気にいらなかったのか? だったら、セシリアだけを見ているよ」

冗談のつもりだったのに、セシリアに思いっきりローキックを足にくらった俺は悶絶することになった。

第二アリーナのグラウンドで行われる、格闘と射撃を含む実践訓練の授業が始まって間もなく、まずは戦闘の実演をしてもらうことになり、織斑先生は専用機持ちなら始められるということで、セシリアと凰鈴音に声をかけた。
前に出ろと言われた二人は、ぶつぶつと何かを呟きながらやる気がなさそうな歩き方をしながら織斑先生のところまで進み出た。
そんな二人に織斑先生は近づき何かをささやく。
すると急にやる気を出し始めた。

「やはりイギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」

「まあ、実力を見せる機会よね! 専用機持ちの」

セシリアは見れば解るが、その隣にいるツインテール女子が中国代表候補生、一夏のセカンド幼なじみの凰鈴音か? って、あれ? 俺たちが自己紹介をしている時、後ろの席に座ってた気がするんだが。
ウチのクラスに凰鈴音までいるのか? ということは、クラス代表戦の時のゴーレムⅠとの戦いはどうやって解決したんだろうな。
なんか見たかった番組を見逃した気分になる。
それは諦めるにしても、まずいなあ……少しずつ自分の知っている原作知識とずれてきているぞ。
この世界の歴史の流れがまったく読めなくなってきた。
それにしても、セシリアと凰鈴音はやる気がみなぎっているな。
一夏のハーレム要員にとっての魔法の言葉を聞いたからだろうな。
『あいつにいいところを見せられるぞ』だったっけ?
いきなり必殺技ゲージがマックスって感じだろうな。
二人とも手からナントカ波とかナントカ砲とか出せるんじゃないか? 凰鈴音のISの名前なんてそれっぽい名前だし。
なかなか始まらない戦闘実演。
セシリアは自分の相手は凰鈴音なのかと言うと、それを聞いた凰鈴音は返り討ちよなんて言っている。
二人とも隣にいる人物が対戦相手だと思っているようだ。

「慌てるなバカども。対戦相手は――」


女の子が空から降ってくると思うか、こんな書き出しで始まる物語があった気がする。
今まさにそんな感じだ。
キィィィィィン――。
空気を切り裂く音と、ジェットエンジンのファンが高速で回転する様な金属音とが入り混じったような音が頭の中を駆け巡る。
アニメ版だと、ぴゅぅーとかいうコミカルな音だったんだがなあ。

「ああああーっ! ど、どいてください~っ!」

俺は咄嗟にISを展開、危険が迫る一夏を助けるために突進していく。
背後から謎の物体に突撃を受けた俺は、その反動で一夏に突っ込んだ。
金属が激しくぶつかり合い、擦れ合う音とともに数メートル吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がりながらようやく止まる。
周囲には土煙がもうもうと舞い上がり視界が悪い。
呼吸した時に、土煙を肺に吸い込んだようで俺は咳き込んだ。
そんな状況の中で、自分がおかれている状態を確認する。
とうやら、仰向けに転がっているらしい。
土煙の向こうにうっすらとだが青空が覗いていたからな。

「一夏、大丈夫か?」

「ああ」

一夏の返事が返ってきた。
どうやら無事なようだ。
俺の身体も痛みは感じない、大丈夫だろう。
危険だと思って咄嗟に助けちまったが、ここはほっといても良かったんだよな。
なんて思っていると、胸のあたりに圧力を感じた。
そして、例えるならこんな音が似合うだろう。

ぐにゅ。

「おい、一夏。男の胸を揉んで楽しいか?」

「え? おっ! 悪いすぐに退くから」

「織斑くん……こんな場所で……男同士でなんて……、やっぱり織斑くんは男の子が……」

シャレにならんぞ! なんてこと言うんだこの人は。
こうなったのはあんたのせいだろ? と口をついて出そうになる。
この声の主は、見なくても解る。
俺たちに突撃してきた人間、それは山田先生だ。

「おい、一夏。早くどけ! 山田先生が激しく変な誤解をしているぞ!」

「あ、ああ。すまん」

一夏は立ち上がると俺に手を伸ばしてくる。
俺は礼を言ってその手を取り立ち上がった。
怪我はなかったが精神的には大ダメージを負った気がする。

「ほほほほほっ」

この高笑いはセシリアか? 見れば腰に手を当てこちらを見据えている。

「知りませんでしたわ。そんなお趣味がおありだったなんて。女性に相手にされないからって男に走るだなんて……まったく無様ですわね! ですが、一夏さんをそんな趣味に巻き込むのことは、このわたくし、セシリア・オルコットが許しませんわよ」

その言い草、さっきセシリアをからかった時の仕返しのつもりか? まったく、したり顔で嘘をつくんじゃない。
俺にはそんな趣味はない。

「い、い、いちかーっ! いつの間に、 そ、そんな趣味に走ったのよ。昔はノーマルだったのにーっ」

ISを展開した凰鈴音は、持ち手の上下に半月状の曲線を描く青龍刀をくっつけた様な武器をぐるぐると回しながら近づいてくる。

「鈴、誤解だ! 今も昔も男になんて興味はない! 本当だ。そうだろ? アーサー」

焦る気持ちはわからんではないが、なんで俺に振るんだよ、俺はお前の過去の出来事なんぞ知らんぞ。

「見損なったぞ、一夏。しばらく見ない間に根性が腐りきったようだな。後で鍛えなおしてやる。お、男同士でなんて、不潔だ!」

今のはどうみても事故だろ? ポニーテール女子の篠ノ之箒さん? どういう経緯でそんな思考に至ったのか教えてくれないか。

「一夏……、アーサー……、あー、うん……、ごめん。なんでもないよ」

シャルル、いや、シャルロット! 俺たちをそんな可愛そうなものを見るような目で見ないでくれ、頼む。
このカオスとも言うべき状態を見かねたのか織斑先生が助け船を出す。

「お前たち、いつまで馬鹿騒ぎを続けるつもりだ? さっさと授業を始めるぞ」

鬼教官の一声でこの場はおさまった。

これから模擬戦が始まる。
号令と同時に飛び立った二機のISは、セシリアのブルー・ティアーズと凰鈴音の甲龍。

「い、行きます」

二人のあとを追うように山田先生は空へと飛び立った。
教室での授業の時と違い目は真剣そのもので、いつもと違ってIS操縦時に冷静に見えるのは、さすがは元日本代表候補生といったところか。
空中を見上げた織斑先生はシャルルに山田先生の扱っているISについての解説を求めた。
シャルルは「あっ、はい」と返事をすると、さっそく解説を始める。
ここからは俺が代わりにお伝えしよう。

今日、紹介するのは山田先生が使用しているISについてである。
フランスが誇るIS開発メーカー、デュノア社が発表した『ラファール・リヴァイブ』。
現在、世界中で開発が急がれている第三世代型IS、その一つ前の第二世代型である『ラファール・リヴァイブ』は一世代前ということもあり時代遅れと感じてしまうかもしれない。
だが実際『ラファール・リヴァイブ』という機体を動かしてみれば解るのだが、第三世代型にも劣らぬ性能をたたきだし安定性を発揮するのには驚かされる。
まさにラファール、疾風の名に恥じないISと言っていいだろう。
フランスのIS職人が丹念に部品を作り、妥協を許さない匠たちが一つ一つの工程を手間と暇を惜しむことなく丁寧にISを組み上げていくことでようやく完成し、ファクトリーから生まれ出ることができる至高のISが『ラファール・リヴァイブ』なのである。
人と場所を選ばず使用できるのは一見器用貧乏にも感じられるが、それこそがこのISの最大の特徴であり、とても汎用性が高いということを証明しているのだ。
誰にでも扱いやすく、オプション装備も充実、どんな戦闘局面にも対応できるマルチロール機。
その信頼性の高さから多数の国で制式採用され、一部の国ではライセンス生産も行われている。
第二世代型としては最後発でありながらも世界第三位のシェアを誇るのは、その信頼性の証と言えよう。
ISの紹介はこんなもんでいいか。

空を見上げれば、そろそろ戦闘が終わりそうだ。
山田先生が射撃してセシリアの誘導し、凰鈴音とぶつかったところでグレネード弾を発射、弾は命中し爆発が起きる。
煙の中から出てきたセシリアと凰鈴音は絡み合いぐるぐると横回転しながら地上に落下してくる。
そして地面と激突、もくもくと土煙を上げる。
土煙が晴れると、グラウンドにクレーターを作った二人は、絡み合ったままの状態で口喧嘩を始めた。
喧嘩の内容は聞くべきものはないだろう。
どっちが悪い悪くないと言い争っているだけだしな。
二人の連携が取れていないのが問題だろう。
せめて役割を決めてから模擬戦すれば、山田先生相手でももうちょっと粘れた気がするんだがなあ。
セシリアと凰鈴音の言い合いはしばらく続き、一組と二組の女子にくすくすと笑いが起きるまで続いた。

「さて、これで諸君にもIS学園の教員の実力は理解出来ただろう。以後は経緯を持って接するように」

ぱんぱんと手を叩いて織斑先生はみんなの意識を切り替える。

「次は実習を行う。各専用機持ちはグループのリーダーをやってもらうからな、いいな? では分かれろ」

織斑先生が言い終わると、専用機持ち以外の一組と二組の女子たちは一斉に目当ての人物へと物凄い勢いでなだれ込んでいく。
まるでバーゲンセールとかタイムセールとかそんな感じだ。
誰が作ったか知らないが、下馬評の予想通りに一番人気と二番人気の一夏とシャルルのところに人が集まっていく。
見る間に二人の前には長蛇の列が出来ていった。
二人からすれば「圧倒的じゃないか! 我が軍は」といったところだろうか。
俺の前には、一人の女子がぽつん立っていた。
数少ない、貴重な戦力だ、友好を結んでおこう。
この子の名前は何だろうな。

「えっと、名前聞いていいかな?」

「布仏本音だよ~」

と言った女子はにっこりと笑う。

「えっ、のほほんさん?」

思わずそう口から漏れた。

「……のほほんさん?
あー、わたしの名前縮めたんだー。わたしのことはこれからそう呼んでいいよー。わたしはアーサーくんって呼ぶから。いいでしょ~?」

「ああ」

とても人懐っこくて、間延びした言い方は本物っぽい気がする。
今は制服じゃないから解らなかった。
本物ののほほんさんなら、制服の上着の袖がやたらと長いだろうから後で確かめてみよう。
こうして俺は、第二アリーナのグラウンドで、初めてのほほんさんに出会った。

織斑先生に目を向ければ、一夏とシャルルの二強状態に思うところがある様で、

「この馬鹿どもが……。出席番号順に一人ずつ各グループに入れ」

面倒臭そうに低い声を出している。
次にもたついたらIS背負ってグラウンド百周というありがた迷惑なお言葉を頂いた。
なんだそれは? それを達成出来るとしたら、生身の身体でIS相手に戦闘出来る織斑先生か篠ノ之束くらいだろう。
これを聞いた専用機持ち以外の女子たちは、蜘蛛の子をちらすがごとく移動した。

「最初からそうしろ」

生徒の移動を確認した織斑先生はふっとため息を漏らす。
各グループに並んだ女子たちは織斑先生にバレない様に、おしゃべりを続けている。
一夏と同じグループで良かったねとか、シャルルに私はフリーだよとアピールしてみたり、凰鈴音から一夏の情報を聞き出そうとしたり、セシリアのグループだと嘆いてみたり色々である。
唯一おしゃべりがないのがラウラ・ボーデヴィッヒのグループである。
張り詰めた空気と、グループに並んだ女子たちへの冷たい視線。
彼女のグループの女子たちは皆うつむきかげんだった。
直立不動で無駄口を言わないのは軍人だからか? そのうち並んでいる女子たちを見据えながら、うしろで腕を組んで練り歩き、「貴様ら!」 とか怒鳴り声を上げ、「私の言った言葉にはすべてイエスサーと答えろ、それ以外は認めん! 解ったらすぐに返事をしろ」とか言いだしそうだな。
実習の結果が思わしくない女子には自主規制が必要なほどの容赦ない罵倒の嵐が襲ってくるんだろう。
ラウラ・ボーデヴィッヒのグループの女子が可愛そうになる。

実習では『打鉄』か『リヴァイブ』のどちらかを使うことになる。
好きな方を選んでいいらしいが、早い者勝ちらしい。
山田先生は生徒たちにキビキビと指示をだし、その姿が実に堂々としたものだ。
今は眼鏡を外している山田先生はいつもより三倍――いや、五倍は可愛く見えた。

「ベインズ、山田先生に見惚れてないで、練習機を運んできてさっさと実習を始めろ! 朝の自己紹介の時のアレは単なる茶番かと思ったが……なるほど、本気だったとはな」

織斑先生は面白い物を発見したいたずらっ子のような笑みを見せる。
俺は慌てて回れ右をすると、訓練機を取ってくると言い残し、自分のグループの前から逃げ出した。

俺が持ってきた練習機は『リヴァイブ』だ。
これからやることはグループ全員で、午前中をかけISの装着と起動、あと歩行までやるのである。
専用機持ちは何をするのかというと、乗り降りやら装着のサポートである。
ISってのは意外と大きい。
全高は三メートルほどあるだろうか、意外と乗り降りが大変なのだ。
俺の予想を裏切り、俺たちのグループの実習は滞りなく進んでいく。
スパーン、スパーン、スパーンと乾いた軽快なリズムの音がどこからか聞こえてきたが、どうせどこかのグループが織斑先生の出席簿アタックをくらったんだろう。
たぶん一夏のグループだろうな。
しばらくすると俺たちのところに山田先生が様子を見に来た。

「どうですか? ベインズくん」

「ウチのグループは順調ですよ」

と言って声をかけてきた人物を見る。
そこには当然だがISスーツを着た山田先生が立っていた。
ISスーツは身体にぴったりと密着している。
いわゆる男の夢と希望が詰まっていると言われている部分が強調され、思わず目が吸い寄せられてしまう。
年頃の男子ならば致し方ないだろう。
山田先生はなかなかご立派なものをお持ちのようで目のやりどころに困る。
そこで山田先生から視線を外し、やや斜め上、空中を眺めた。

「どうしたんですか? ベインズくん。空中に何かありますか?」

「いえ、空中には何もありませんが、一身上の都合がありまして……」

「一身上の都合とは何ですか? とにかく人と話す時はちゃんと相手を見ないといけませんよ」

まったく、それが出来れば困ってないよ。
まあ、仕方ない部分もあるだろう。
今までIS学園には男子なんて存在いなかったんだから意識する必要などなかったろうしな。
顔を見て欲しければせめて上着くらい羽織ってください、山田先生。
俺はちらちらと山田先生はの顔を見るがどうしてもご立派なものが目に入る
山田先生の特盛りさ加減は見る角度は選ばないらしく、俺に対し存在感をいかんなく発揮してくる。

「先生ー。アーサーくんはー、先生のおっぱいがとっても気になるそうです~」

こ、この聞き覚えのある声はのほほんさんか! バカ、なんてこと言うんだ、俺を社会的に抹殺するつもりか?
のほほんさんの言葉を聞いた山田先生は、俺の顔と自分の胸を交互に見る。

「え、えーと……ベインズくん。見てました?」

俺は正直に見ていたと伝え頭を下げ、再び顔を上げた時には山田先生の顔は真っ赤になっていた。

「女性として興味を持ってくれるのは大変嬉しいのですが、でもやっぱり歳の差とか立場とか色々と問題がありますし……」

俺が困り果てていると、

「山田君、何をしているんですか、何を」

俺の危機を察したのか織斑先生が颯爽と表れた。
やはり頼りになるのは織斑先生だけのようだ。

「えっと、これは、あのっ……」

織斑先生に遅れているグループをみるように言われた山田先生はこの場から去っていった。
山田先生が名残惜しそうな表情をしていたように見えたのは、きっと気のせいだろう。
ほっと一息と言いたいところだったが、のほほんさんが俺に声を掛けてくる。

「ねえねえー、アーサーくんー。あれやって~」

のほほんさんが指差す方向を見れば、一夏が女子をお姫さま抱っこしてISまで運んであげていた。
それを見た後、のほほんさんを見ると顔には期待に満ちた満面の笑み。
しかも、なぜか俺はグループの女子から注目を集めていた。
俺は仕方なくISを展開すると、のほほんさんをそっと抱え上げると、リヴァイブまで運んであげた。
のほほんさんはかなりはしゃいでいたが、そんなにいいもんか? お姫さま抱っこって。
周りからはこんな声が聞こえてくる。

「ズルイ」

「いいなあ」

「次はわたし」

「わたしも男子のグループになりたかった」

「むしろ、わたしは女子の方がいい」

「デュノアくん、わたしにもあれやって」

といった具合。
こんなことが三年も続くのか、俺はこの学園生活を耐える事が出来るだろうか……と本気で不安になった。 
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