少年と女神の物語
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第四話
前書き
これで今日の投稿は終わりです。
では、本編へどうぞ!
さて、もう既に夜と言ってもいい時間、俺とアテは教会にいた。
ロンギヌスの槍の最後のパーツを受け取り、それともっていたものの合成、呪詛を込めるなどの作業をしてもらっている。
「ねえ、今更だけどあんなものを復活させてどうしたいの?」
その光景を見ていたら、アテが話しかけてきた。
まあ、神様からしたら当然の疑問なのだろう。自分達ですら危険な代物を人間が使おうとしているのだから。
「理由か・・・まあ、大したことじゃないよ。ただ単にいざというときのためにも武器はそろえときたいだけ」
「いざというとき?」
「そう。うちの姉弟(兄妹)は普通じゃない人の集まりだから、どんなことがあっても可笑しくはないんだよ。だから、そんなときのための武器」
たとえばカンピオーネが「無聊を収めに来た」、とかいいだしたり。それぐらいはまあ有り得る。
「そっか・・・話してても分かったけど、武双は家族のことが大事なんだね?」
「これは俺だけじゃなくて、神代全体が、だけどな」
間違いなく、家族のためならばカンピオーネにもまつろわぬ神にも刃を向く。
神城の人間にとって、最優先すべきなのは神城の家族のことなのだ。
「そっか・・・私もそうなれるかな?」
「なれるさ。暮らしてるうちに、自然と染まっていくよ」
実際、俺が神代に来たときもそんな感じだった。そのころはまだ姉が三人に妹が一人だったけど、それでも一週間でなじみ、染まったんだ。八人になった今、染まらない理由がない。
「じゃあ、早く他の人にも会いたいな・・・」
「そのためにも、このロンギヌスは早く完成させないとな。これが完成すれば今こっちにいる二人には会えるし」
そう話しながら、ロンギヌス完成のための儀式を見ていると・・・急に教会の壁が吹き飛んだ。
「ほう・・・何か不穏な気配を感じたと思い来て見れば、予想通りのことをしておる」
そして、その穴から二.五メートルくらいの、髭を生やした、目つきの鋭い人のようなものが入ってきた。
それが放つものに反応し、教会の人たちも儀式をやめてその人を見る。
「さて、わが過ちを片付けるために探しておったらこのような場に出くわしたわけだが、いかようにすべきか・・・ん?」
それは悩みながら、まるで俺達が見えていないかのように教会の中を見回し、俺のほう・・・いや、正確には、
「そんな・・・なんでここに・・・」
俺の横で震えている、アテに視線を止めた。
「ほう、そこにおったのか。アテよ、神性はどうした?まさか、それすらも失ってしまったのではあるまいな?」
その台詞の中に引っかかるものを感じ、俺はアテに尋ねる。
「なあ、今アイツアテって言ったよな?なんでそのことを・・・」
「それは・・・それは、あそこにいるのが、私を殺そうとしている・・・」
そういわれて、俺は慌ててそれを見る。すると、確かにそこから神性を感じる。
勘違いかと思って教会の人たちを見るが・・・そこには、片膝をつき震えている集団があった。
まちがいない、こいつが・・・
「お・・・御身は、いかなる神でしょうか?」
それでもなお、俺は信じることができず、そうたずねた。
「まさか、我が名を知らぬわけではあるまいな?このギリシアにおいて主権を握った、我の名を」
だが、その期待はあっさりと崩された。もう勘違いのしようがない。こいつは・・・
「ギリシア神話における主神。時にサバジオス、ユピテル、ディアウスなどとも同一視される神」
「ほう、そこまで知っておるか。うむ、それが我だ!」
自然と口を突いて出る、その神についての知識。そして、そのままその名を言ってしまう。
「ゼ、ゼウス・・・!」
「うむ!われがギリシアにて天を制し神!まつろわぬゼウスである!」
ありえない。何故ここにアテがいると分かった。今アテは神性を失っているはずだろう。
いや、そうじゃない。ゼウスはアテに反応してきたわけじゃないんだ。
あくまでも、ロンギヌスに反応した。ありえないと考えもしなかったことが、起こってしまっただけ。
「さて、主神の名の下に、まずはそのものたちを裁くとしよう。考えてみれば、まだ我は顕現した証を残しておらん」
「か、神よ!どうか、どうか御慈悲を!」
「我ら、この儀式には裏はございませぬ!ただ壊れたものを直そうとしただけで!」
ひざまづいている人たちは必死になってそういうが、ゼウスは相手にもしない。
「では、アテの前に裁くとしよう!」
そういって、ゼウスは何か槍状の物・・・おそらく、雷であろう槍をつかみ、その集団に投げる。
そして、その一撃で人は跡形なく消え、ロンギヌスが乗っている祭壇だけが残った。
「そんな・・・ここまで圧倒的に・・・」
「うむ、これであの儀式は終了した。あのもの達には、どこか悪意があったゆえな。容赦はせぬ」
悪意、それはいったいなんだったのだろう?完成したロンギヌスを奪うとか、そんな感じだろうか?
「アテ、早く逃げよう。今の、神性を失っている間なら逃げれさえすれば、」
「いえ、無駄です。ゼウスから逃げることなど・・・出切る筈がありません」
アテははっきりとそう言い、ゼウスを見る。
「さて、次はそこの我が偽りだ。覚悟はできておろうな?」
「もちろんです。唯、一つだけ願いが」
アテはゼウスにはっきりとそう返す。
気がつけば、アテの体から震えは消え去っていた。
「願い、か。狂気である貴様からそのような言葉が聞けるとはな。何だ?言ってみよ」
「大したことではありません。ただ、私を助けてくれたこの人間・・・」
そう言いながら、アテは俺のほうを見る。
「私のことを、家族だといってくれた武双だけは、殺さないでいただきたい」
「オイ、アテ!お前、何言ってんだ!」
神様同士の会話に割り込むなど、無礼極まりないのだろう。
それでも、俺は割り込んでいた。割り込まずには、いられなかった。
「お願い、武双は黙ってて。このまま上手くいけば、武双だけは逃がせる」
「そんなことじゃない!なんでそこまで」
「だって、家族のことを一番に考えるのが神代なんでしょ?」
アテは俺の目をまっすぐ見ながら、そう言って来る。
「それに、今の私は女神アテであると同時に神代アテ。最初で最後の、神代らしさだよ」
そういって、アテはゼウスのほうへと歩いていく。
「私の願いはこれだけです。どうか、お聞き入れいただきたい」
「ふむ・・・いいだろう。我が名を知っていたその人間は、生かしておいてやる」
そう言いながら、ゼウスは先ほども使った雷の槍を握る。
アテはそれを避けようともせず、両手を広げて向かいいれる体勢だ。
「では、さらばだ。我が偽りよ!!」
ゼウスはそういって雷の槍を投げる。
アテは、それでも避けず・・・一筋の涙を流しながら、その場に立っている。
そして、その涙を見た俺は・・・
「神槍、絶刃!」
アテの前に走り、『召喚』した槍を使い、その雷を上方にはじいた。
弾いた瞬間に槍はバラバラになったけど、十分すぎるくらいの働きはしたから、問題ない。
「武双、貴方一体・・・」
「何のつもりだ、人の子よ?」
俺の前後にいる神様はそういってくるが、俺はただ、神代として当然のことをしただけだ。
「別に、ただ家族を守ろうとしただけだ。俺の家族、神代アテをな!」
そう言いながら、槍を二本召喚し、構える。
普通はやらない槍の二槍流。これが俺の一番なれた型だ。
「自分を守るために命を投げ出したものの気持ち、酌もうとは思わんのか?」
「そうです!何故私が大人しくしていたと!」
確かに、普通ならそうすべきなのかもしれない。だが、そんな普通は神代にとってはどうでもいい。
「思わないな!神代の人間は、何があっても、何をしてでも家族を守る」
「そのために、神に逆らうことになろうともか?」
「ああ」
「そうか・・・では、最後に今一度、考え直す時間をくれてやる」
そういって、ゼウスは俺達のほうをにらみ、
「人の子よ、早くその女神をこちらに渡せ」
「あの・・・私なんて見捨てて、早く逃げてください」
ここで、物語は冒頭へと戻る。
後書き
こんな感じになりました。
お分かりいただけたかと思いますが、この作品はかなりやりたい放題でございます。
では、感想、意見、誤字脱字待ってます。
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