魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第33話 機動七課にて………
「ほな、みんなお疲れさん。色々あったけど明日1日休日や。しっかり休んどいてな」
機動六課に戻ったスターズとライトニングの面々。時間も23時を回っていた事もあり、ヴィヴィオはバルトの背中で静かに寝息をたてている。
「あの、はやてさん………」
「何やエリオ?」
「大悟さんの容態は………?それにスバルさんも………」
「スバルの方は大丈夫や。一応2、3日安静と言われとるけど直ぐに復帰できるやろ。問題が神崎君なんやけど………」
そう言って言葉が詰まる。
「まさか何か大きな後遺症とか………」
「それは大丈夫や。戦いも出来ないことはない。せやけど………」
「何があったんです?」
あの場にいなかったスターズ、ライトニングのメンバーが迫る勢いで問いかける。
「………大悟くん、敵に指の爪を全部剥がされたんや。その影響で爪が完全に生えるまで物を持ったり、手を握ったり広げたりするだけで痛みが伴いそうなんよ。お医者さんからは最低でも1ヶ月は安静。そこからも戦闘は控えるようにやって」
「爪を全部………」
「痛そう………」
「昔の拷問だ。相当な痛みだと思うぜ」
エローシュの最後の言葉で更に空気が重くなる。
「それで加奈ちゃんは大悟君の看病で特別に1週間有給を取ることになったから、スターズは暫く4人や」
「分かりました」
ギンガが返事をし、聞いたはやても頷いた。
「それじゃ解散や。明後日は平常訓練やから寝坊せえへんでね」
もう既に夜も遅いこともあり、はやての一言でその場は解散となった………
「ふぅ………」
ヴィヴィオをベットに寝かし、バルトは椅子に腰かける。
「聖王器ね………何故今頃になってそれぞれの使い手が決まる?」
そうバルトか1人、口走る。
「ヴィヴィオが居たからか?俺がバルバドスを目覚めさせたからか?それともこれから何かが起こるって言う凶兆か?」
小さく呟きながらバルトは腕を組み色々思い返してみた。
「バルバドス、お前は何か知らないか?」
『我は使われることの無かった聖王器である。故に何も知らん』
「だよな………ったく、面倒な事になってきた………俺に大悟、そして恐らくヴィヴィオが加藤桐谷に渡したあれも………」
『メンテナンスかい?』
「はい、どうもセレンの調子がおかしいんです」
深夜、寝静まった機動七課の自室を抜け出し、桐谷は宿舎の屋上へとやって来た。
誰もいないことを確認し、スカリエッティへと連絡を繋げた。
スカリエッティ印の物で連絡先は指定できないが、盗聴されない特殊な連絡機器である。
『確かセレンのメンテナンスは機動七課入隊前に念入りに行った筈だが………何かあったのかい?』
「分かりません。起動はするし、技も使えるんです」
『ん?それなら問題ないのでは?』
「いえ、バリアは何故か張れなくなりましたし、セレンが無反応なんです。いきなりバリアジャケットになるとどうしても驚いちゃって………」
『なるほど………分かった。取り敢えず見てみよう。ちょうどノーヴェがこっちに来ているからノーヴェに行くように伝えるからノーヴェにセレンを渡してくれ』
「ありがとうございます、セレンをお願いします」
『任せてくれ』
そう言って通信が切れた。
「セレン、一体どうしたんだ………」
そう桐谷が問いかけても依然反応が無いままなのであった………
「よし、準備OKだな………」
「バルトさん………」
「なのは!?一体どうしたんだこんな朝早く?」
次の日の早朝、機動六課の面々がまだ寝静まっている中、1人静かに準備をしていた。
そしてバルトの想像通り、誰にも見られずに行けるとそう思った矢先だった。
バルトの前に、私服姿のなのはがいた。
「バルトさん、こんな早くから行くんですか?」
「ん?ああ、結構遠い場所だからな。それにヴィヴィオが起きてたら行くってごねそうだろ?」
「確かにそうですね………だけど遠くって何処ですか?」
「こればっかりは教えられねえな」
「じゃあ何しに行くんです?」
「これも言えん」
「何で………」
そう言って押し黙るなのは。
「なのは………一体どうしたお前?」
「どうした?じゃないです。バルトさんは私に何も教えてくれないじゃないですか!!」
「それはお前が知る必要の無い事だからだ」
「知る必要の無い………?聖王器、あれを見たとき2人でコソコソ話していましたよね?いつも一緒に居る私も蚊帳の外ですか?」
「よく見ている………」
呆れならがバルトは自分の頭を掻く。
「ああ、言えない。気軽に言えることじゃないからな」
「そうですか………」
悲しそうな顔で俯くなのは。そんななのはのにバルトは困った顔をして再び頭を掻いた。
「はぁ………悪い、俺にも何でヴィヴィオがあんな風になるのか良く分かってないんだ。………だからこそアイツと初めてあった場所を見に行く。もしかしたらアイツの手掛かりが分かるかもしれないからな」
「それで頑なに行き先を言わなかったんですね………でもそれだったら私に言ってくれても………」
「バカ正直なお前に行ってバレたらどうする?あくまでも内緒にだ」
「でも初めて会った場所ならヴィヴィオちゃんも喜ぶんじゃ………」
「ねえよ絶対にな………」
冗談では無く真面目な顔で言うバルトに何も言えなくなる。
「だから何か分かるまでは俺は誰にもこのことを話すつもりはねえ。例えなのはだとしてもな………」
「バルトさん………」
悲しそうな顔をしなくなったが、今度は戸惑っているのが分かった。
「ふうっ………結構話し込んじまったな。じゃあヴィヴィオをよろしく頼む」
これ以上一緒に居ると余計な事を話してしまう、そう思ったバルトはここで話を切り上げ、さっさと出発することにした。
「………はい、分かりました。けれどヴィヴィオちゃんに何が起こっているのか、分かったら教えてくださいね」
「ああ。………なのは、行ってくるな」
「行ってらっしゃいバルトさん」
少し名残惜しそうになのはから離れていくバルト。
(結構いい女になってきたななのは………)
なのはの見送る姿を見ながらそんな事を思い、バルトは機動六課を出発した。
「必ず帰ってきてくださいね………」
なのはを包み込む大きな不安は消えていなかった。このままバルトを行かせてしまったらもう二度と会えなくなるのでは無いかと言う不安。
だからそこ事件に巻き込まれた後にも関わらずあまり寝付けず早朝に起きてしまったのだが、それが幸運な事に今から行こうとするバルトに会うことが出来た。
「結局全て聞くことは出来なかったな………はぁ………私って単純………目的だけしか教えてくれなかったのに満足しちゃってる自分が居る………」
嘘かもしれない。しかしずっと何も教えてくれなかった事を話してくれたことになのははとても嬉しく思っていた。
「本当に………バカだな私って………」
バルトの姿が見えなくなるまでずっと見つめているのだった………
「えっと………ここだよな………?」
スカリエッティから渡された地図の通りにノーヴェは機動七課の前へと来ていた。
「何か機動六課とは違って厳しそうな雰囲気だな………まあいいや、取り敢えず桐谷の所へっと………すいません!」
「はい、何でしょう?」
「加藤桐谷の知人なんですけど、桐谷に会うことは出来ますか?」
「お名前は?」
「ノーヴェ・イーグレイです」
「ノーヴェ・イーグレイさんですね………はい、承っております。桐谷さんは現在訓練中ですね………いかがしますか?」
「あの………訓練を見てる事って出来ないんですか?」
「そうですね………少々お待ちください」
そう言って受付の男は内線で電話を掛け始めた。
「………はい、桐谷さんの知人で………ええ、イーグレイと名乗っております………はい、分かりました」
電話が終わると受付の男は受付から出てきた。
「部隊長から許可が下りましたので、ご案内しますね」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
ノーヴェは受付の男の案内の元、中へ入っていった………
「ここから訓練の様子が確認できます。訓練は後1時間ほどで終了すると思うのでごゆっくりご観戦下さい。ちなみにお飲み物はあそこに自販機が、洗面所は出で正面にございますのでそちらをご利用下さい。それと1つ注意事項です。ここはセキリュティが厳重になっており、勝手に歩かれると反応してしまうので、桐谷さんが来るまではトイレ以外は退出しないで下さい」
「分かりました」
「最後に、何かございましたら入り口近くにある通信機で私の所へ直接ご連絡出来ますのでご利用ください」
「はい、ありがとうございます」
一通り説明をした受付の男は説明が終わると静かに部屋を出て行った。
「さて、ここまではドクターの予想通りだな………」
『レジアス・ゲイズのと接触?』
『そう。彼と世間話でもいい、何でもいいから彼と話してみてくれ』
『そんなの何か意味あるのかドクター?』
『私は昔の彼しか知らないからね、今の彼を知るいい機会だ。………それに彼自身極端な性格をしていたから、イーグレイ博士の名前は桐谷君が話しているから必ず接触してくるだろう』
『本当に?』
『………多分。まあ今回は桐谷君のデバイスのメンテナンスだからそこまで気にしなくていいよ。あくまで接触してきたらでいい』
「さて、後はこの部屋にやって来るかだけど………まあ取り敢えずは………」
そう呟きながら窓の方へと向かう。
「やってるやってる!」
外では各色に分けられたゲシュペンストが桐谷のアルトアイゼンに向かっていた………
「くそっ~!?機動力有りすぎるんだよ………!!」
「リーガル、しっかりしなさい!!アンタが隊長の注意を引き付けてくれないと射撃しているお姉ちゃんが狙われるでしょ!!」
「無茶言うなって………この近接格闘用のAパックはクロスレンジ中心の武装と機動力を強化した分、ノーマルのゲシュペインストよりも防御が薄くなっちまったんだからよ………」
ゲシュペンスト強化武装。
それがジェイル・イーグレイが考えたゲシュペンストの強化プログラムだ。
A(アサルト)タイプの武装は両手のプラズマステークに加え、両足にもステークを展開出来るようにし、更に両腰に魔力刃のブレードを取り付けた事でクロスレンジの戦闘に特化した形にした。機体を軽くしたことで常にホバー状態での戦闘を可能とし、流れるような動きと以前とは違う小型ながら強力な出力を出せるブースターによって空中戦、高速戦闘も可能とし、突貫時のスピードなら桐谷のアルトアイゼンにも劣らぬスピードを出すことが出来る。
しかしデメリットとしてはアルトアイゼンとは違い、更に装甲が薄くなった上に、射撃武器がスラッシュリッパーだけとクロスレンジで戦わない限り、上手く戦えず、たとえ戦えたとしても高威力の魔法を使われれば一撃で落とされてしまう危うさもある。
ある意味一番扱いづらいタイプで、ベーオウルブズの中でも今の所桐谷とリーガルしか最低限扱えない。
「分かってるわ。だからこそ私もあなたを援護してるんじゃない………」
そう言ってライフルを構える青いゲシュペンスト。
リーネの扱うゲシュペンストはC(カスタム)タイプと呼ばれる、いわゆる今までのゲシュペンストを純粋にパワーアップさせた武装となっている。
右手にプラズマステークと左手にマシンキャノンと基本装備はゲシュペンストに似た武装となり、更にライフル、マシンガン、腰部にあるスラッシュアンカー背中に内臓されたスラッシュリッパーとミドルレンジの戦闘に特化した武装となった。
当然機動力もあり、Aタイプには劣るが、普通のゲシュペンストよりも空戦、そして機動力とバランスの取れた装備となった。
現段階でこのタイプを管理局のバリアアーマーの主として、レジアスは本局の方に申請している最中なのである。
「フィーネさんの攻撃は?」
「まだ完全に直撃してない………」
リーネの姉、フィーネが使うゲシュペンストの装備はB(バスター)タイプ。
ロングレンジ中心の武装となっている。
アルトアイゼンの様に両肩に巨大な砲撃魔法が放てるバスターキャノンに、ロングレンジライフル、そして背中のブースター代わりに散弾するマイクロミサイルがある。
基本的な戦い方は遠距離からの射撃のみで、攻め寄られた場合はCタイプと同じくステークとマシンキャノンで戦う。
しかしバスターキャノンやミサイルを追加したため、かなり機体を重くし、スピードも殺してしまった。
当然装甲は他のタイプよりかは硬いのだが、それでもデメリットを消せるほどではない。
「隊長凄すぎだろ………いくら俺達がシミュレーターしかまだ新装備を使った事無いからってここまで差が出るとは思ってなかったぜ」
平然と立つ赤い鎧の狼を見て、リーガルが呟く。
リーガルとリーネもさることながら、フィーネもバスターキャノンは使ってはいないが、ロングレンジライフルで狙い撃ち、桐谷を狙うがまだ一撃も確実に被弾していなかった。
「重いですぅ………ただでさえ肩が凝りやすいのにまた凝っちゃいますぅ………」
リーガルとリーネから遠く離れた所でフィーネはロングレンジライフルを地面に置き、愚痴を溢す。
「重いとは聞いてましたけどシミュレーションじゃこんなに重くなかったですぅ………ううっ………この大筒邪魔………」
『戦闘中だぞ、文句は終わってからにしてくれ』
いきなり念話が入り、慌てて回りに目を向けるフィーネ。
桐谷が仁王立ちしてフィーネの方を見ていた。
『さて、シミュレーターとの違いも大体分かったろ。次は本気で攻めにいくから覚悟しろ!!』
「リーネ、来るぞ!!」
「アンタもしっかり抑えなさいよ!!お姉ちゃんも援護射撃しっかりね!!」
『が、頑張る~!!』
「桐谷容赦無いなぁ………」
訓練の様子を眺めながらそんな事を呟く。
「動きがぎこちないのに容赦無い攻撃………あの軽装のバリアアーマーにクレイモアなんて………」
「あれは正面から向かって行ったリーガルがアホなだけだ」
後ろからいきなり声が聞こえ、振り向くとそこには髭面の男とその秘書らしき女性がいた。
「初めましてだな、私は部隊長のレジアス・ゲイズだ。こちらは副官のオーリス」
「よろしくお願いします」
「あっ!!この度はどうもありがとうございます!!私、ノーヴェ・イーグレイです!!」
まさか本当に接触してくるとは思っていなかったノーヴェは慌てて挨拶をした。
「いや、構わんさ。私としてもこれほど技術提供してくれるイーグレイと言う科学者に興味があったからな」
そう言って笑みを溢す。その顔は罠に掛かった獲物を見るようだとノーヴェは思った。
「博士も自分の研究していたバリアアーマーが先に世に出てきてショックだったみたいです」
「だが、その分じっくりと研究が出来たことでここまでの成果を得られたのだ。結果的に良かったと言うことだ。博士にも言っておいてくれ。約束はともかくゲシュペンストは恐らく採用されるだろうと」
「分かりました。それだけでも喜んでくれると思います」
思ったより柔らかく話すレジアスに肩透かしを食らった。
(案外いい人なのかも…………)
「まあそれでも桐谷の使うアルトアイゼンには歯が立たないんだがな。あの機体をあそこまで使いこなせる桐谷は大したものだ」
「そうですが………」
表ではなんて事の無いように見せているが内心は大喜びだった。
(やっぱり好きな人が褒められると嬉しいな………)
「………ところで今日は一体何をしに?」
「あっ、桐谷のもう1つ………バリアアーマーじゃない方のデバイスを受け取りに来ました」
「セレンか。確かにこの前バリアアーマーを使わず、訓練しようとしたら調子が悪いと言っていたな………」
「はい、それで博士に連絡があったんです。メンテナンスを頼むって。それで今日時間があった私が受け取りに来たんです」
「そうか………」
そう呟くと少し考え込むレジアス。
「分かった、一部だけで済まないんだがゆっくりしていってくれ」
「はい、ありがとうございます」
そう再び柔らかい口調で言った後、オーリス共に部屋から出ていった。
「オーリス」
「はい、何でしょうか?」
「あの小娘にサーチャーと諜報員で追跡を。一応発信器も付けられるようだったら取り付けておけ」
「分かりました」
そう言いレジアスはオーリスと別れたのだった………
「ふう………お疲れ皆」
「鬼!!俺マジでクレイモアトラウマになりますよ!!」
「だがあれを避けられるようになれば、どんな攻撃が来ても避けられるだろう。データ上なら可能なんだし後は乗り手次第だな」
「うっ………」
そう言われて返す言葉の無いリーガル。
「リーネは射撃精度だな。ただ当てれば良いじゃなくて、ちゃんと狙う場所も決めて撃つべきだな。どんな固い相手だろうと必ず脆い部分はある。それを見つけ狙い撃つ。それが出来れば完璧だな」
「はい!!」
嬉しそうに元気良く返事するリーネ。
「フィーネもリーネと同じく射撃精度。ロングレンジからの長距離射撃は決まれば無防備の相手に攻撃することも可能だし、逆に敵からの攻撃も受けづらい。更にバスターキャノンはかなりの高威力の攻撃なんだから重いとか文句を言わないように」
「ううっ………は~い………」
嫌そうに返事を返すフィーネ。
「今日の訓練は終わりだ。それぞれ休憩後自分の仕事に戻ってくれ」
「「「はい!!」」」
「よし、解散!!」
桐谷の言葉で宿舎へと戻っていく3人。
「桐谷さん」
「あっ、受付の………どうしました?」
「ノーヴェ・イーグレイ様がお待ちです」
「ああ、ノーヴェ来たんですね。何処ですか?」
「3階の展覧室です」
「分かりました、ありがとうございます」
お礼を言った桐谷はそのまま3階へと向かった。
しかし先を行く3人にはこの会話が聞こえていた。
「………ノーヴェ?」
「確か隊長の家族だって言ってた人よね?」
「どんな人なのかしら~?」
「………行ってみるか?」
「駄目よ!せっかく家族の人が来てるんだから………」
「もしかしたら彼女かも………」
そんなリーガルの言葉に固まる2人。
「桐谷さん、そう言う話あまり好きじゃないのか話さないじゃん。あのイケメンにクールで気遣いが出来る。………いない方がおかしくないか?」
「「確かに………」」
「だろ?やっぱ気になるよな………」
そんなリーガルの言葉に姉妹の2人も意を決したのか互いを見て頷いた。
「リーガル、行くわよ!」
「ノーヴェさんに会いに行きましょう!」
「あっ、はい………」
2人の勢いに押され気味になりながらついていくのだった………
「桐谷!」
「ノーヴェ!久しぶり!!」
部屋に入った桐谷にノーヴェが笑顔で応えた。
「悪かったなわざわざ来てもらって………」
「いいよ、ちょうどこっちに居たし。それに………桐谷の頑張ってる姿も見れたしね」
少し照れながら言うノーヴェ。
「そうか………」
「それに本当はウェンディ達とこの前六課に行ったとき七課の方も見に行こうって話になったんだけど、基本一般人立ち入り禁止ってなってたから………」
「まあ今回みたいに新型のバリアアーマーのテストを行っていたりするからな。敵もバリアアーマーを使っている以上どうしてもな………」
「六課は結構明るい職場って感じがしたけど七課はなんかギスギスしてるのもそのせい?」
「はやてとレジアス部隊長じゃ雰囲気も変わるさ」
「どう、リーガル?」
「あんまり聞こえない………この際サーチャーを使って………」
「隊長に気づかれるよ~」
桐谷とノーヴェが話している部屋の外でリーガル達3人が壁に耳をあてて聞き耳を立てていた。
「駄目、やっぱり私じゃ何も聞こえないわ」
「私も駄目ですぅ………」
「やっぱりアンタの耳が頼りなんだからしっかりしなさい!!」
「いや、何でリーネが偉そうに命令してんの?ここは土下座しておねがいしm………」
「何か言った?」
「何も言っておりません!!」
右手だけゲシュペンストのプラズマステークを展開し、目の前に構え、リーガルを黙らせた。
「あのな………いくら壁の外でもそれだけ騒げば気がつくぞ?」
「「あっ………」」
「全く、興味あるなら直接聞けばいいだろうが」
聞けるわけ無いだろ!!と目で訴えるリーガルとリーネだったが当の本人はコーヒーを飲みながらノーヴェと会話を再開したので気が付いていない。
「で、この3人が同じ部隊のメンバー?」
「ああ、男がリーガル、姉妹はフィーネとリーネだ」
「姉妹ってどっちがどっち?」
「私がフィーネです~」
「私がリーネです」
「ああ、なるほど。私はノーヴェ・イーグレイです、よろしく」
そんな簡単な挨拶を済ませ、話は桐谷について。
本人を置いていって4人で勝手に盛り上がっていく。
そして気が付けば1時間程過ぎていた。
「あっ!!2人とも休憩終わっちゃっう!!シャワー浴びて準備しないと!!」
「嘘だろ!?やばっ、ドやされる………!!」
「お姉ちゃん、ミルクティー終わり!!早く行くよ!!」
「ああっ~もう一杯だけ………」
とそんな感じで3人は慌ただしく部屋から出ていった。
「全く………」
「桐谷は良いのか?」
「俺は一応民間協力者って扱いだからな。あの3人と比べるとやることが少ないのさ」
「そうなんだ………」
嵐の様に3人が去っていった事もあり、嵐の後の静けさが2人を包む。
「あの………さ………」
「だけど本当に良かったよ」
「えっ?」
「だってさ、俺の身勝手でお前達にも迷惑をかけたし、本当だったらちょこちょこ帰るつもりだったけどそれも出来ないし………結構心配してたんだ。だけど元気そうで本当に良かったよ。本当に悪かったな………」
申し訳なさそうに言う桐谷。
特にノーヴェに関しては家の全ての事を任せてるので一度しっかり謝ろうと思っていたのだ。
「大丈夫だよ私たちだってもう来年大学生なんだし、桐谷が居なくたってしっかりやれるよ」
「そうか………?」
「大丈夫!!」
そんなノーヴェの言葉に桐谷の表情も柔らかくなった。
「………だけど居なくたって大丈夫!!って力強く言われるとそれはそれで寂しいな………」
「えっ!?べ、別に桐谷が居なくなってやりたい放題してるなんて事無いからな!!」
「そうやって力強く言われるとな………怪しい」
「大丈夫だって!!………私だけは」
「庇おうとする気は無いんだな」
そんな会話の後、互いにを見つめ大きく笑い合う2人。
「何か懐かしいな」
「少ししか経っていないけど確かにね」
「ああ。………そうだ!!上手く時間が出来たら4人で何処かへ遊びに行かないか?」
「いいね!!………だけど加奈はいいのか?」
「大悟が嫉妬しそうだから却下。文句言われたら全部大悟のせいにしちまえ」
「そうだね。そうすれば怒りは全部あの神崎に………分かった。楽しみにしてるよ!!」
笑顔でそう答えるノーヴェに桐谷も笑顔で「ああ!」と答えた。
その数分後、ノーヴェは桐谷に手を引かれ、入り口へと案内され、帰路へと着いた。
(桐谷楽しみにしてるからな………だから絶対………)
その後に続く言葉を思い浮かべそうになったが、激しく首を振り、かき消した。
「先ずは追っ手を撒かないとね………クア姉大丈夫かな?」
そんなノーヴェの心配も杞憂に終わり、無事自分の博士の元へと戻った。
「何故だ!何をしていたんだ貴様らは!!!」
そして数日間、機動七課の部隊長の怒りは数日では収まらないほど荒れていた………
時を少し遡る。
「やっと着いたか………ったく、何でこうも遠いんだかな………」
朝方、なのはに見送られ出て行ったバルトは4時間と長い時間を掛け、目的地の場所へと着いた。
「約2年か………もうそんなに経つんだな………」
そう呟きながら研究所へと入っていく。
中は荒れ果てており、人の居た形跡も無い。崩れた壁、壊れた機材、無造作に捨てられたままの物。全てがゴミの掃き溜めと言われているような酷い有様だった。
「2年前もこんなだったっけか………?」
ハッキリ言ってバルトは2年前の研究所の様子を殆ど覚えていない。
あの時バルトの頭にはバルバドスの事、ヴィヴィオの事、そしてこれからどうするかで頭が一杯だったからである。
「さて、先ずは怪しい所を片っ端から見ていくか………」
そう呟いて2年前の記憶と2年前に手に入れた記憶を元に先ずは自分の寝ていた部屋へと進んでいった。
「とは言ったものの………どこだっけ?」
結局片っ端からドアを蹴り飛ばし中へ入るバルト。
「ここは研究室D室か………おそらくこの部屋にも何か………」
書類が散りばめられた部屋の中を強引に荒らすバルト。
「ちっ、ハズレか………」
何を根拠に言っているのか暫く荒らしてからそんな事を呟く。
「まあいい、次の部屋に………」
そう言って次の部屋に進もうとしたときだった。
「うおっ!?」
日が入らない研究室は薄暗く、足元の物に全く注意が行ってなかったバルトは、何かに躓いたのか大きく体制を崩して、近くの本棚に思いっきりダイブした。
「あたたた………何やってんだ俺は………」
痛む左腕をさすりながらダイブし粉砕した本棚を見る。
「ん………?」
ふと、そんな本棚の間から四つ折りになっている紙を見つけた。
「何だこれ?」
そう思い紙を広げ、内容を確かめる」
「これは………!!!」
そこにはこう書かれていた。
『バルトマン・ゲーハルト、プロジェクトF計画』と。
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後書き
ここがターニングポイントですかね。
パソコン無いけど頑張ります!!
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